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順天堂、熱中症入院患者の高精度な予後予測AIモデルを開発

最終更新日:2021/05/29

順天堂大学は、日本救急医学会による熱中症データベースに機械学習を適用し、熱中症入院患者の高精度な予後予測が可能なモデルを開発しました。来院時点における意識障害や肝機能障害が予後不良予測の重要因子であることが明らかになりました。

このAIニュースのポイント

  • 順天堂大学は熱中症入院患者の高精度な予後予測が可能なモデルを開発
  • 日本救急医学会による熱中症データベースに機械学習を適用
  • 来院時点における意識障害や肝機能障害が予後不良予測の重要因子であることが明らかに

順天堂大学医学部附属浦安病院救急診療科の平野洋平 准教授らの研究グループは、日本救急医学会のデータベースに、AIの機械学習手法を用いることにより、入院した熱中症患者の生命予後を高精度で予測するモデルの開発に成功しました。

近年、機械学習を用いた予後予測ツールは、従来の予測手法よりも優れた結果を示すことが多く、医療現場で広く開発・応用されています。そこで今回研究グループは、機械学習を用いた熱中症の予後予測モデルの開発に取り組みました。

さらに、熱中症の予後予測に関わる重要因子について比較検討を行った結果、来院時の体温だけでなく、意識障害や肝障害マーカーの上昇が予後予測に寄与していることを見出しました。この成果は、熱中症の治療選択サポートや治療の質の評価など、今後の熱中症診療の発展に利用されることが期待されます。

近年の熱中症予防の啓蒙活動の普及にも関わらず、熱中症の発生は依然として非常に多く、国内では毎年約30万人程の人々の健康を脅かしています。また、熱による健康被害を受けやすい高齢者が増加していることで、命に関わる重症熱中症の発生も増加しています。

このような背景から、医療従事者は熱中症に対して質の高い治療を行うことが求められています。熱中症の治療で最も重要なのは、迅速かつ効果的な冷却です。冷水への浸漬、氷嚢や濡れたガーゼによる冷却、扇風機の使用など、さまざまな冷却法がありますが、重症患者には、血管内冷却装置や体外循環補助装置など、より侵襲的な方法が選択されます。

しかし、臨床医にとって、個々の患者の状態に応じて適切な治療法を即座に決定することは容易ではないため、熱中症に対する臨床的な予後を予測するツールがあれば、これらの治療法を判断する際に役立ちます。さらに、予後予測モデルを利用することで、熱中症に対するケアの質を診療後に振り返って評価することも可能となってきます。

この研究では、日本救急医学会による「熱中症患者の医学情報等に関する疫学調査(Heatstroke Study)」のデータベースのうち、2014年と2017~2020年の計5年間分のデータを使用しました。熱中症症例の中でも、入院が必要であった症例のみを抽出しました。

また、来院時に既に心停止となっていた症例を除いた結果、全2393例が抽出。この全2393例のデータを、「機械に学習させ最適な予測モデルを作成するために使用するトレーニングデータ(1516例、2014年と2017~2019年のデータ)」と、「開発された機械学習モデルを実際に検証するために使用するテストデータ(877例、2020年のデータ)」に分類しました。

予測する対象は、入院中の死亡と設定。予測に使用する情報としては、年齢や性別などの患者情報、来院時の意識状態や血圧、脈拍などのバイタルサインの情報、及び来院後に採取された血液検査結果など合わせて計24の情報を使用しました。

最適な機械学習モデルを模索するために、ロジスティック回帰 (シグモイド関数)、サポートベクターマシン (SVM) 、ランダムフォレスト、XGBoostという多種類のモデルでの検討をした結果、分類評価指標としてよく用いられるAUROC(ROC曲線下面積)及びAUPR(PR曲線下面積)による評価では、検証されたすべての機械学習モデルにおいて、高い精度での入院中の死亡の予測に成功しました。

特に今回のような予測結果のバランスが偏っているデータでの評価指標としてよく使用されるAUPR(数値が高いほどよい精度)では、ロジスティック回帰で0.415、サポートベクターマシンで0.395、ランダムフォレストで0.426、XGBoostで0.528 の精度で予測できました。これは、患者の重症度評価に一般的に使用されるAPACHE-IIスコアと呼ばれる指標のAUPR 0.287を統計学的に有意に凌駕していました。

さらに、ロジスティック回帰、ランダムフォレスト、 XGBoostモデルの開発に寄与した予測因子の重要度を比較検討。来院時の体温よりも来院時の意識状態や肝障害マーカーの上昇が予後予測に重要であることを見出し、熱中症入院患者において、初の機械学習を用いた高精度な予後予測モデルの開発に成功しました。

この機械学習モデルは、熱中症治療選択のサポートや熱中症診療の質の評価など、熱中症診療の発展に利用されることが期待されます。また、熱中症患者の予後不良因子として、高体温のみならず、意識障害や肝機能の障害の進展が重要な因子であることが明らかになったことから、このような臨床状態になる以前に、高体温環境下での熱中症の予防対策を徹底すること、さらには早期の治療介入の重要性が示唆されます。

 

出典:PR TIMES

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