AI-OCRとは?OCRとの違いや種類・導入メリット・比較のポイントを解説
最終更新日:2024/12/03
AIとOCR技術を組み合わせたソリューションがビジネスプロセスの自動化と効率化を推進しています。この技術は、手書きや活字の文書からテキストデータを正確に読み取り、デジタル化することで、手作業によるデータ入力の時間とコストを大幅に削減します。
また、RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)と連携することで、業務効率化がさらに進みます。デジタル変革(DX)を推進する上で、業務効率を向上させることが可能です。
本記事ではAI-OCRの特徴やメリット、デメリットや製品の比較ポイント等を紹介します。この記事がAI-OCR導入を検討している方々に有用な情報を提供できれば幸いです。
AI-OCRとは?
AI-OCRとは、AI(人工知能)を活用したOCR(光学的文字認識)のことを指します。OCRとは、スキャナなどで読み込んだ画像に描かれた文字をテキストデータに変換する技術です。AI-OCRはOCRに対してAIを応用し、あらゆるフォントや手書き文字、さらには曲がったり、ぼやけたりした文字でも正確に認識できるようにしたものです。
また、変換したテキストデータが何を意味するのかをAIが理解し、文脈に合わせた処理ができるのも特徴です。AI-OCRにより、文書のデジタル化やデータ入力作業の自動化が可能となり、効率化と精度向上に寄与できます。OCR技術の仕組みについて知りたい場合は、以下の記事をご覧ください。
【参考】無料のOCRフリーソフト14選!PDFや手書き文字をテキスト化
「AI-OCR」と「OCR」の違い
AI-OCRとOCRの違いは、AI技術の導入による処理能力と読み取り精度の向上にあります。
従来のOCRは、単純に画像から文字を読み取る技術でした。一方、AI-OCRは、人工知能(AI)の技術を組み合わせることで、より複雑な文字認識を可能にしました。
たとえば、書体やフォーマットの異なる文書、手書きのテキスト、画像の歪みやノイズがある場合には、従来のOCRでは読み取りが難しい場合がありました。これは、通常のOCRが機械的なルールや形式的なフォーマットを基に変換を行うためです。
しかし、AIならば機械学習や深層学習により形式外の複雑な書体や曖昧模糊とした画像も見分けられます。このAIの能力をOCRに付加することで、高い精度で文字を認識できるようになったのです。また、AIは学習能力を持つため、使用するほどに認識精度が向上するという特徴も有しています。
AI-OCRの導入により、企業は大量の文書データを迅速かつ正確に処理することが可能となり、業務効率の向上やコスト削減に寄与しています。
AI-OCRの仕組み
AI-OCRのプロセスは以下のステップで構成されます
1.前処理
入力された文書画像に対し、ノイズ除去、画像の二値化、補正などの画像処理技術を適用し、認識精度を高めるための最適化を行います。
2.特徴抽出
ディープラーニングモデルが画像内の特徴を抽出します。この段階では、畳み込みニューラルネットワーク(CNN)などのアルゴリズムが用いられ、文字の形状や線の太さ、曲率などの特徴を識別します。
3.文字認識
抽出された特徴を基に、再帰型ニューラルネットワーク(RNN)や長短期記憶(LSTM)モデルなどが文字や単語を認識します。これらのモデルは、文脈や単語の連続性も考慮し、より正確なテキスト変換を実現します。
AI-OCRを業務で利用する3つのメリット
AI-OCRを利用するメリットとしては、主に以下の3点が挙げられます。
- 高い識字率を実現できる
- フォーマットが異なる帳票にも対応できる
- RPAや基幹システムとの連携で業務効率化
高い文字認識率を実現できる
AIが搭載されていない従来のOCRは、あらかじめ設定されたロジックの範囲内でしか文字の識別を行うことができませんでした。しかし、AI搭載型のAI-OCRであれば、読み取った文字をデータとして蓄積できます。その蓄積されたデータをもとに学習していくことで、文字認識率を少しずつ高めていくことができるのです。
たとえば、1度目の識別で文字を読み間違えてしまっても、その「読み間違えた結果」を学習していくことで、次回以降の文字認識に活かせるようになります。この作業を繰り返すことによって識字率が向上していくため、一人ひとり癖が異なる手書き文字への対応も行いやすくなります。
フォーマットが異なる帳票にも対応できる
従来のOCRでは、文字の読み取り位置や項目といった詳細を定義した上で、読み取りを行わなければなりませんでした。その点、AIが搭載されているAI-OCRであれば、文字の読み取り位置や項目を自動抽出することが可能です。そのため、紙の資料をスキャンするだけで簡単に文字を認識させられるようになります。
請求書、発注書、納品書など、フォーマットの異なるさまざまな紙書類を柔軟にスキャンできるため、担当者の負担軽減にも繋げられます。
RPAや基幹システムとの連携で業務効率化
従来のOCRでもある程度の業務効率化は実現可能ですが、決められたフォーマットの帳票しか利用できないため、状況に応じてフォーマットを準備しなくてはなりません。この準備作業に大幅な時間を費やしてしまうと、業務効率が悪化することもあるのです。
その点、AI-OCRであれば「読み取った情報は何の項目なのか」「業務システムへの入力に必要となる情報はどの部分なのか」といった点も柔軟に抽出し、連携できるようになります。また、最近ではRPAや基幹システムとも柔軟に連携できるAI-OCRも多くなってきている状況です。そのため、従来のOCRでは不可能だった「抽出したデータを業務システムに入力していく作業」の効率化・自動化まで実現できるようになるのです。
AI-OCRのデメリット
AI-OCRを導入するメリットは数多く存在しますが、いくつかデメリットが存在するということも忘れてはなりません。主なデメリットとしては、以下のような点が挙げられます。
- 導入コストがかかる
- 100%の文字認識率ではない
- 縦書きに弱い
まずAI-OCRの導入には初期費用とランニングコストがかかるので、費用と効果を天秤にかけて判断する必要があります。また、AIの認識力が優れているといっても100%の認識率ではありません。さらに、AI-OCRは縦書きに弱いことで知られています。それぞれのデメリットについて以下で詳しく解説します。
導入コストがかかる
最も大きなデメリットとして挙げられるのは、やはり「導入コストがかかってしまう」という点です。どれだけの費用がかかるかはベンダーや料金プランによっても違いますが、だいたい初期費用が数万円から数十万円程度、月額費用が数万円程度の場合が多いです。
最近ではさまざまなAI-OCR製品が存在しているため、自社にマッチした製品を選ばなければ導入自体が失敗に終わってしまう可能性も否めません。また、自社で開発する場合には開発コストも損失になってしまう可能性があります。そのため、自社の課題をしっかりと洗い出してから、最適な製品を検討したり、開発したりしていくことが大切になります。
自社にマッチする製品を選ぶことができれば、人件費削減等の長期的なメリットが得られるので、デメリットとして捉える必要もなくなります。
100%の文字認識率ではない
AIを活用することで格段に文字認識率が高くなることをご紹介しましたが、100%の文字認識率を実現できるわけではありません。私たち人間にも見間違えがあるように、AIを活用したOCRであっても誤認識を行ってしまう可能性はあるのです。
ただ、学習を重ねていくことで認識精度は向上されるため、従来のOCRよりは遥かに高い精度を実現できます。また、最近ではAI-OCRの結果を人間が確認して納品するBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)も存在するため、それらを活用するのも一つの手段といえます。
縦書きに弱い
AI-OCRは縦書きに弱い傾向にあります。なぜなら、世の中の多くの帳票は横書きで書かれており、AIも横書きの学習データを中心に学習していることが多いからです。
そのため、自社が縦書きの帳票を使っている場合には、AI-OCRは横書きに比べて縦書きに弱い傾向があることを考慮して導入しなければなりません。ただし、AIに縦書きの帳票を学習させれば横書きと同じように認識できるようになります。学習データさえ蓄積されれば解消できる問題なので、大きなデメリットとして捉える必要はありません。
AI-OCRの主な種類
AI-OCRは、以下の3種類に分けられ、いずれもメリット・デメリットがあります。
種類 | メリット | デメリット |
汎用・定型フォーマット型 | ・抽出精度が高い ・事前定義により幅広い帳票に対応可能 |
・事前にフォーマット定義が必要 ・決められたフォーマットの帳票しか対応できない |
汎用・非典型フォーマット型 | ・手作業によるフォーマット定義作業が不要 ・幅広い帳票に対応可能 |
・事前に多くのAI学習が必要 ・学習なしでは精度が低い |
業務特化・非典型フォーマット型 | ・事前のAI学習が不要 ・既存システムとの連携が可能 |
・特定業務に特化した帳票にしか利用できない |
汎用×定型フォーマット型は抽出精度が高く、多くの帳票に対応できますが、事前にフォーマット定義が必要で、定義外の帳票には対応できません。汎用×非定型フォーマット型は手作業でのフォーマット定義が不要で多様な帳票に対応可能ですが、高精度な抽出には事前のAI学習が必要です。最後に、業務特化×非定型フォーマット型は事前のAI学習が不要で既存システムと連携可能ですが、特定の業務に特化した帳票にしか適用できません。以下で各種類を詳しく解説します。
汎用×定型フォーマット型
「汎用×定型フォーマット型」は、読み取る帳票の種類は問わないもののフォーマットは指定する必要があるタイプです。読み取りにあたっては事前にフォーマットを定義し、「どこに何が書かれているか」を定義する必要があります。
事前に人の手によるフォーマットの定義作業が必要ですが、定義することで幅広い帳票に対して高い精度での読み取りを期待できます。書くことや場所が一定決まっている、「アンケート」「注文書」などへの利用に適しています。
汎用×非定型フォーマット型
「汎用×非定型フォーマット型」は、帳票の種類もフォーマットも問わないタイプのAI-OCRです。人の手作業によるフォーマット定義が不要であり、幅広い帳票に対応可能です。
ただし、このタイプではAIの事前学習が欠かせません。学習には時間がかかるケースもあり、未学習のフォーマットを使用している帳票に対しては精度が落ちる可能性があります。たとえば、各社のフォーマットは異なるものの書いてあることが一定共通している「納品書」「請求書」などには適していると考えられます。
業務特化×非定型フォーマット型
業務特化×非定型フォーマット型」は、自社が扱う特定業務への導入を前提としているタイプです。サービス提供事業者側が事前に済ませているため、自社で改めてAIによる学習を行う必要がありません。自社の既存システムと連携させることで、業務効率化に高い効果を期待できます。
ただし、自社業務に特化していることから、自社が業務で扱っている帳票以外には対応できません。大量の作業を必要とする業務に対しては、このタイプが非常に適しているといえます。
AI-OCR製品の比較ポイント
AI-OCR製品は、さまざまな企業が開発・提供しています。そのため、以下の特徴に注目して製品を比較し、自社に合ったものを選ぶことが重要です。
【AI-OCR製品の比較ポイント】
- 読み取りタイプ・精度
- 対応言語
- 操作性
- 他システムとの連携
- サポート体制
読み取りタイプと精度、対応言語、操作性、他システムとの連携、サポート体制が重要な比較ポイントです。印字と手書きの読み取りに対応した製品を業務に合わせて選び、必要な言語に対応しているか確認することをおすすめします。操作性は現場の使いやすさに直結し、他のシステムとの連携がスムーズであることが業務効率化に貢献します。信頼できるサポート体制も選定の大きな要素となります。以下でそれぞれ詳しく解説します。
読み取りタイプ・精度
AI-OCR製品には、「印字された文字」の読み取りが得意なタイプと「手書き文字」の読み取りが得意なタイプがあります。特に手書きの場合は、読み取り精度が低い製品もあるため要注意です。読み取る対象の特徴に合わせて、相性の良い製品を選ぶことをおすすめします。
また、現在・将来の業務に見合った読み取り精度か否かも、重要な比較ポイントです。導入時点で対象となる業務・帳票だけでなく、今後必要になると想定される業務・帳票に適した読み取り精度なのか確認が必要です。
対応言語
各AI-OCR製品には、対応言語の違いがあります。導入対象の業務において何語が求められるのかを念頭に置いて、各製品の対応言語を確認・比較しましょう。
国内でのやり取りに特化しているのであれば、日本語対応のみでも問題はありません。しかし海外展開をしている場合や取引先にグローバル企業がある場合は、多言語対応の製品が求められます。また、何語に対応しているのかも確認・比較することで、自社業務に適した製品を選定可能です。
操作性
AI-OCRは業務効率化を大きな目的として導入するものであるため、現場の社員が使いやすいことが求められます。自社社員が使いこなせて、業務効率化につながるかどうかを比較検討することをおすすめします。可能な限りシンプルで直感的に操作できる製品の方が、導入をスムーズに進められます。
トライアル期間を設けている製品も多いため、できる限り実際に使ってみて比較することがおすすめです。
他システムとの連携
自社で扱っている既存システムとの連携がうまくできなければ、業務効率化につながりにくいため、システムとの連携についても確認しておく必要があります。会計や顧客管理などの既存システムと連携させることで二度手間が発生せず、業務効率化を期待できます。
また、比較の際には連携できるか否かだけでなく、連携方法や連携のしやすさも確認がおすすめです。連携時には、多くの場合で「API」と呼ばれる通信のためのシステムを利用します。そのため、複数のAPIに対応している方が、既存システムとの連携を取りやすい可能性があります。
サポート体制
AI-OCRを導入すれば終わりではなく、その後継続的に利用していくものだからです。ため、トラブルが発生した際に必要なサポートが受けられないと、業務に支障が出てしまいます。
また、使用方法のフォローについても、重要なサポート内容の1つです。本来業務に費やす時間をなるべく削らないように、スムーズに導入できるかどうかを比較するようにすることをおすすめします。サポートの充実度は、業務効率化に影響する重要な要素なのです。
AI-OCRの選び方ポイントと導入までの6ステップ
AI-OCRを導入するためのステップは、主に以下の通りです。
- 読み取る対象を決める
- 読み取る量・枚数を把握する
- アウトプット先を確認する
- 各サービスを比較する
- PoC検証を行う
- 本格導入
まず、対象となる業務や帳票を特定し、その特徴に合わせて製品を選びます。次に、読み取る量や枚数を考慮して課金体系が最適か確認します。さらに、アウトプット先、つまり出力フォーマットや他のシステムとの連携を検討します。多くのサービスが存在するため、料金、精度、サポート体制などをしっかり比較検討する必要があります。ROI(投資対効果)も考慮しながら最適な製品を選びましょう。PoC(Proof of Concept)検証で製品の性能を試し、確認後に本格導入を行います。
おすすめのAI-OCR3選
DX Suite
DX Suiteは、AI技術を活用した高精度なOCR(光学文字認識)サービスで、紙文書やPDFからデータを自動抽出・デジタル化するツールです。領収書・請求書・契約書・アンケートなど、多様な書類形式に対応しており、手描き文字も高精度で認識します。
クラウドベースで動作し、インストール不要のため、どこからでも利用可能です。操作性も優れており、直感的なインターフェースで簡単にデータ抽出が行えます。
DX Suiteを導入することで、手作業によるデータ入力を削減し、業務時間を短縮。コスト削減とデータ活用の向上を実現し、企業のデジタルトランスフォーメーションを強力にサポートします。
SPESILL Smart md
SPESILL Smart mdは、医療現場での効率的な文書作成を支援する画期的なサービスです。AI技術を活用し、診療情報提供書や退院サマリーなどの文書作成を簡略化し、医師や医療スタッフの業務負担を軽減します。手書きや音声入力のデータをAI-OCRで迅速かつ正確にデジタル化し、テンプレートを活用した効率的な編集が可能です。
また、クラウドベースでの共有や保存により、チーム間での情報共有もスムーズに行えます。特徴として、迅速な導入・直感的な操作性・セキュリティを重視した設計が挙げられます。医療機関の生産性向上を目指し、患者対応の質の向上にも貢献します。利用プランも多様で、ニーズに応じた柔軟な選択が可能です。
検査票OCR
検査票OCRは、医療機関や研究施設で使用される検査票データのデジタル化を効率化する革新的なソリューションです。手書きの検査結果や複雑な項目が含まれる紙の検査票をAI-OCR技術によって迅速かつ正確に読み取り、デジタルデータとして活用可能にします。
特に、精度の高い読み取り技術により、業務の効率化と入力ミスの削減を実現。導入プロセスも簡単で、ファイルのアップロード・結果の自動読み取り・内容確認というシンプルな3ステップで利用できます。
ポイントとして、多様なフォーマットへの対応・高速処理・導入の手軽さが挙げられます。利用料金も明確に提示されており、導入後すぐに効果を実感可能です。医療機関のデジタル化促進やデータ活用を支援する強力なツールとして、さまざまな現場で活用が期待されています。
AI-OCRの導入ならAIsmiley
AI-OCRは従来のOCRより高度な文字認識が可能で、業務効率化に有用です。2022年1月にはペーパーレス化を目的とした法改正が実施され、電子データ保存がより実行しやすくなりました。また、2024年1月1日からは、電子取引で発生したファイルの電子保存が義務化されます。このような背景があるため、多くの企業において今後、効率的に紙の書類をテキストデータに変換する手段の確保が喫緊の課題となるでしょう。
AI-OCRは用途やニーズに応じて選ぶことが重要ですが、さまざまなタイプや製品があるため、なかなか適切に選ぶのは難しいかもしれません。
そこで、AIsmileyの資料の活用がオススメです。AIsmileyでは、実際に企業がAI-OCRを導入したエピソードをまとめた活用事例集や、現在販売されているAI-OCRの製品がひと目でわかるカオスマップを無料提供しています。AI-OCRの比較検討に役立つこと請け合いなので、ぜひご活用ください。
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