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最終更新日:2026/09/18
PKSHA AI Summit 2026 開催レポ
株式会社PKSHA Technologyは、2026年9月8日、ANAインターコンチネンタルホテル東京において「PKSHA AI Summit 2026」を開催しました。「人が主導し、AIが拡張する人間の未来とは」をテーマに、各分野の有識者や実務リーダーが多数登壇し、活発な議論が交わされました。
本記事では、イベントの締めくくりとして行われたクロージングセッション「AIが前提の社会で企業のコアとして残るものとは?」の模様をレポートします。
登壇したのは、東京大学大学院工学系研究科 技術経営戦略学専攻/附属人工物工学研究センター 教授の松尾 豊 氏、LINEヤフー株式会社 前代表取締役会長で現在AIソロプレナーとして活躍する川邊 健太郎 氏、株式会社PKSHA Technology代表取締役の上野山 勝也 氏の3名です。
AIソロプレナーとしての最前線の実践から、AI時代の組織と人間のあり方、そして日本企業がこれから勝つためのアプローチまで、多角的な議論が展開されました。

川邊 健太郎 氏(写真右)
LINEヤフー前会長の川邊氏は現在「道具を作る側から道具を使う側に回りたい」という思いから「AIソロプレナー」として活動しています。
現在実践しているのは、AIによる組織づくりです。経営部や法務部、開発部など各部署をAI人員で構築していると明かしました。一方で川邊氏は、若者たちがバイブコーディングを使いこなす姿を見て退任を決意したというエピソードに触れつつ、自身でAIの進化を実感したことで起きた意識の変化についても言及。「ユーザーの悩みはハイパースケーラーの万能なAIとの対話でほぼ解決できてしまう。少々の課題はもうサービス化しても意味がないと気づいた」と現状を語りました。
そのうえで「だからこそAIから遠い領域の事業を探し、それをAI駆動化することで利幅を増やす」というアプローチに可能性を見出しています。「地方には、儲かっていても人手不足で黒字倒産してしまう企業が多数存在する。そうした事業がAI化されれば、事業存続の実現や利益率の向上が期待できるのでは」と、ローカル領域におけるインパクトを示唆しました。

松尾 豊 氏(写真右)
AIによる業務代替が進む中で、人間の役割や組織の存在意義はどうなっていくのでしょうか。
松尾氏は、生体とコンピュータのニューラルネットワークに究極的な差はないと指摘。その上で「ルールを決める権利は我々人間にある。今後の人間の役割は、自分たちがやりたいことは自分たちでやり、やりたくないことはAIに任せるという形にシフトしていくのではないか」と、未来を展望しました。
上野山氏は、目標変数をプロットする(ゴールを決める)役割と、楽しさや喜びを享受する役割はなくならないと指摘します。「人は人と関わりたいと思うようにできている」ため、会社は単なる生活の糧を得る場から「同じ志やビジョンを共有し体験を楽しむためのコラボレーションの形として属する、といったフォーマットの時代になっていくのでは」と未来を展望しました。
川邊氏も上野山氏に同意したうえで「仕事は人生を過ごすうえでの選択肢の一つになり、企業は目的を共有したメンバーが集まって楽しむコミュニティへと変化していく」と語りました。

上野山 勝也 氏(写真右)
企業がAI前提の社会に適応するためには、「AI駆動型」への転換が求められます。
川邊氏は、これまでのインターネット産業を振り返りながら「最初からAI駆動型として企業を作った方が強いのでは。既存企業が大規模な組織改編の中でAI駆動に変わり勝っていくケースもあるだろうが少数ではないか」と分析します。また、既存企業に対しては、優秀なAIモデルを単純作業の処理にとどめている現状を打破し、経営戦略の中枢や社長の役割を担わせるべきだと提言しました。
一方で、大企業が変革を進めるには障壁があります。川邊氏は「自分の仕事が奪われる」という現場の心理的抵抗や、人事・評価制度といった雇用に関するハードルを越えられるかどうかが、組織におけるAI活用の成否を分けると語ります。
上野山氏も、「本当にAIのポテンシャルを社内に発現させるのであれば、組織構造をドラスティックに変えていく必要が明確にある」と述べました。「経営層が自身の登用システムも含めて、いかに組織をメタアップデートし続けられるか。デジタルやAIの動きを、どこまで自事業の機会として近距離で捉えられるか」が重要だと指摘しつつ、実際の進め方やアプローチは業界によって異なってくるとの見解を示しました。

最後に、日本企業がAI時代を勝ち抜くためのアプローチが議論されました。
松尾氏は、生産性が売上・利益のボトルネックになっている日本の現状を踏まえ「AIを使って生産性を上げると成果につながりやすいため、日本には相当やりやすい条件は揃っている。あとはAI駆動が当たり前という大きなムーブメントをいかに作っていくかだ」との見解を述べました。そして「とにかくやってみるというエネルギーと行動量が大事」と呼びかけました。
川邊氏は、日本は使う側(ユーザー)のツールの「使い方や楽しみ方」が世界最先端だと評価し、作る側にとっても「AI産業の裾野は広く、現業の中でも既存ビジネスをバリューアップさせるチャンスがある」と語ります。ただし、AI利用にあたっては、海外製AIへの依存による「デジタル赤字」を防ぐため「自社のトークン消費をいかに抑えるか、あるいはローカルAIを構築するかなど、作り方から工夫・検討すべき」と注意を促しました。
上野山氏は、リアル産業における日本企業のポテンシャルに注目します。全国の顧客ネットワーク整備の蓄積や、専門的技術の暗黙知、他国が追随できないノウハウの伝承が多く存在すると指摘したうえで「近未来、リアルのオペレーションがAIデバイス・AIエージェントと協働しながら、様々なビジネス変革が各所で立ち上がっていく。すべてをAIに明け渡すのではなく、企業理念をぶらさずに、如何にリアルオペレーションとAIが共進化する社内データループをデザインしていくかだ」と述べ、今後について期待を寄せました。
このほか、同イベントでは衆議院議員 前デジタル大臣の平 将明 氏や、Anthropic 公共政策責任者(日本・韓国)の吉田 朗 氏、さくらインターネット株式会社 代表取締役社長の田中 邦裕 氏などが登壇し、多様な講演が行われました。

田中 邦裕 氏
田中氏のセッションでは「そのデータはどこで処理されているか ー AI時代の情報資産と、置き場所の経営判断」をテーマに、AIの他国インフラへの依存リスクに言及。データの保管・運用を自国で担保する「デジタル主権」や国内投資による経済安全保障の重要性が語られるなど、AI活用を下支えするインフラ面の課題も共有されました。

また、会場にはAI活用の最前線を体感できるソリューションブースも設けられ、多くの来場者で賑わいました。PKSHA Technologyによる展示では、カメラの映像解析で駐車場管理や人物検索を行うフィジカルAIや、採用業務の選考や面接官のトレーニングに活用可能なHRソリューションなどが紹介されました。また、JAXAのクレーター解析技術を応用し、衛星画像から全国の空き地や店舗用地をAIで検索できる不動産ツール「WHERE」など、多岐にわたる領域での活用イメージが紹介されました。

AIの進化がかつてないスピードで進む中、企業は「ツールとしてどう使うか」だけでなく、「自社のビジネスモデルや組織、そして人間の存在意義をどう再定義するか」という本質的な問いに直面しています。「PKSHA AI Summit 2026」は、そんなAI前提社会を生き抜き、次なる勝機を掴むための確かなヒントと熱気に満ちた1日となりました。
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