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最終更新日:2024/12/09
DX人材とは?
DX(デジタルトランスフォーメーション)が企業の競争力を左右する重要な経営課題となる中、その推進を担うDX人材の確保・育成が喫緊の課題となっています。
経済産業省の試算によると、2030年には最大約79万人のIT人材が不足すると予測されており、特にDXを実現できる高度な人材の不足は深刻さを増しています。しかし、単なるITスキルだけでなく、ビジネス視点とテクノロジーの両方を理解し、組織の変革を推進できる人材が真のDX人材として求められているのです。
そこで本記事では、DX人材について求められている役割やスキル、育成方法などを詳しく解説していきます。

DX人材とは、一般的にDXを推進するために必要なスキルを備え、実際に組織の変革を実行できる人材を指します。
しかし、DXという概念自体が企業や産業によって異なる解釈や目標を持つように、DX人材に求められる要件も、各企業が直面する課題や目指す方向性によって大きく異なります。たとえば、テクノロジー企業では高度な技術力に重点が置かれる一方、製造業では現場のプロセス改善とデジタル技術を結びつけられる人材が求められるなど、業種特性による違いが顕著です。
また、同じ企業内でも、「経営層には戦略立案とデジタル技術の理解を併せ持つ人材」「現場レベルではデジタルツールを活用して業務改善を進められる人材」など、役割や階層によっても求められるスキルセットは変化します。
こうした多様性があるからこそ、各企業は自社のDX推進において、どのような人材が必要なのかを明確に定義することが重要となっています。

DXが急速に進展する現代において、DX人材の役割がますます重要視されています。その背景には、以下の要因が挙げられます。
コロナ禍は、企業の働き方に大きな転換点をもたらしました。突如として迫られたリモートワークへの移行において、迅速にデジタルインフラを整備し、オンラインでのコミュニケーションツールやクラウドサービスを効果的に導入できた企業と対応が遅れた企業との間で、生産性や従業員満足度に明確な差が生じることになりました。
感染症の流行が落ち着いた現在でも、この時期に構成されたデジタル基盤は、ハイブリッドワークやフレックスタイム制など、より柔軟な働き方を可能にする重要な資産となっています。
さらに、今後も働き方の多様化は加速すると予測され、従業員の多様なニーズに応えながら、業務効率と創造性を高めるデジタル環境の構築が不可欠となています。このような背景から、変化する働き方に対応したデジタル変革を推進できるDX人材の重要性は、ますます高まっているのです。
デジタル化が急速に進む今日の経営環境において、DX人材の不足は日本企業が直面する深刻な課題となっています。特に、少子高齢化による労働人口の現象が加速する中、デジタル技術を活用して生産性向上や業務効率化を実現できる人材の確保は喫緊の課題です。
さらに、多くの日本企業では長年培ってきたアナログな業務プロセスや慣習が根付いており、デジタル変革への移行が遅れがちです。
このような状況下では、既存のビジネスモデルを見直し、デジタル技術を活用した新たな価値創造を実現できるDXの重要性は一層高まっています。なぜなら、DXの成否は企業の競争力や存続に直結する経営課題であり、確かな知識とスキルを持ち、組織全体への変革を推進できる人材なくしては、その実現は困難だからです。

出典:経済産業省|「デジタルスキル標準」をとりまとめました!
DX人材には、デジタル技術の専門知識だけでなく、ビジネス感覚やコミュニケーション能力など、多岐にわたるスキルが求められます。経済産業省は、上図のように、DX人材を位置づけています。
まず、これらのようなDX人材となるためには、以下のようなスキルが必要です。
DX人材には、具体的なデジタル技術を理解し活用できるハードスキルが不可欠です。なぜなら、DXの本質は組織やビジネスの変革にありますが、その実現手段として、デジタル技術の適切な活用が必須となるためです。
主要なハードスキルとしては、プログラミングやデータ分析の能力が挙げられます。プログラミングスキルは、デジタルソリューションの開発や既存システムの改善に不可欠であり、データ分析スキルは、ビジネス上の意思決定や業務改善に向けた重要な洞察を導き出すために必要です。
また、近年ではAIやクラウド技術の理解と活用能力も重要性を増しています。これらのハードスキルは、単に技術を理解するだけでなく、実際のビジネス課題解決に応用できるレベルまで習得することが求められており、継続的な学習と実践が必要となります。
DX人材に求められるスキルセットにおいて、ソフトスキルは極めて重要な位置を占めています。なぜなら、DXの本質は単なるデジタル技術の導入ではなく、組織全体の変革を通じて新たな価値を創造することにあるからです。
プロジェクトマネジメントやビジネスモデル構築能力は、デジタル技術を効果的に活用するための基盤となり、戦略立案力は組織のデジタル変革への理解と協力を得るための重要な要素となります。
また、社内外の多様なステークホルダーとの協働が必須となるDX推進において、高度なコミュニケーション能力は変革への理解と協力を得るための重要な要素となります。
さらに、既存の業務プロセスや組織文化における課題を的確に見出し、効果的な解決策を導き出す能力も、デジタル技術の導入以前に求められる基礎的なスキルとして重宝されています。
上記のようなスキルに加えて、以下のような資質も必要です。下表は、IPAが仮説付けている6つの適性因子です。
| 適正因子(仮説) | 概要 |
| 不確実な未来への創造力 | ・取り組むべき領域を自ら定め、新分野への取り組みを厭わず、ありたい未来を描き、挑戦する姿勢
・課題設定力 |
| 臨機応変/柔軟な対応力 | ・計画通りのマネジメントではなく、外部の状況変化や状況を踏まえ、目標を見失わずに、都度ピボットしながら進めていく姿勢
・当初の計画にこだわりすぎない |
| 社外や異種の巻き込み力 | ・対立する周囲のメンバーを巻き込むだけでなく、外部の「他者」との交わりを多く持ち、自分の成長や変化の糧にできる受容力 |
| 失敗したときの姿勢/思考 | ・一時的な失敗は、成功に向けた過程であり、失敗を恐れず、立ち止まらず、糧にして前に進めることができる姿勢 |
| モチベーション/意味づけする力 | ・自ら解決したい・取り組みたい課題を明確にし、自らの言葉で話すことができ、前向きに取り組みたいと感じられる姿勢
・主体性・好奇心 |
| いざという時の自身の突破力 | ・解決や困難な状況に陥ったときでも、諦めずに、様々な方法を模索し、壁を突破するためにリーダーシップを発揮する姿勢
・責任感 |
出典:IPA|デジタル・トランスフォーメーション(DX)推進に向けた企業とIT人材の実態調査
DX人材に求められる適性には、急速に変化する技術環境への対応力や問題解決能力、そして他者との協働が含まれます。これらの適性は、DX推進や競争の激しい業界での迅速な意思決定、複雑な課題への対応を可能にします。特に、自己学習の姿勢やスキルアップの意欲が重要で、企業が求める新しい技術や方法論に適応する力が欠かせません。
関連記事:DX人材の必要スキルとリスキリングの重要性。適正人材の見つけ方を解説

DX人材となりうる7つの職種(役割)について、それぞれの具体的な業務内容や求められるスキル、そしてDXにおける重要性などを交えて解説します。
プロジェクトマネージャーは、製品やサービスの企画・開発・リリー ス・その後の改善までプロダクトのライフサイクル全体を統括する重要な役割を担います。顧客ニーズの分析やマーケットリサーチに基づいて製品戦略を立案し、開発チームやデザイナー、営業部門など様々なステークホルダーと協力しながらプロダクトの価値を最大化することが求められます。
そのため、データ分析やビジネス戦略の立案能力に加え、異なる部門の専門家とスムーズに連携できるコミュニケーション能力が不可欠です。特に、ユーザー視点で物事を考えられる洞察力、複雑な課題を整理して解決できる論理的思考力、そして変化の激しい市場環境に柔軟に対応できる適応力を持つ人物が、この職種に適していると言えます。
ビジネスデザイナーは、企業や組織の事業戦略を創造的な視点から設計し、新しいビジネスの形を生み出す専門職です。従来の経営戦略やマーケティングの枠組みにとどまらず、デザイン思考を用いて顧客体験を重視した革新的なビジネスモデルを構築することが主な役割となります。市場調査・ユーザーインサイトの発見・アイデア創出・プロトタイピング・実装まで幅広いプロセスに携わります。
このような職務を遂行するためには、ビジネスデザイナーには論理的思考力と創造的思考力の両方が求められ、さらにビジネスとデザインの双方の視点を持ち合わせていることが重要です。
特に、複雑な課題を構造して理解する力や多様な関係者と協働するためのコミュニケーション能力、そして新しいアイデアを具体的なビジネスとして形にする実行力が必要とされます。常に好奇心を持って新しいことにチャレンジでき、かつ柔軟な発想で物事を捉えられる人材が適性を発揮しやすい職種と言えます。
UI・UXデザイナーは、デジタルプロダクトのユーザー体験全体を設計する専門職です。UIデザイナーはボタンやアイコン、画面レイアウトなど、ユーザーが直接目にする視覚的な要素をデザインし、UXデザイナーはユーザーの行動分析や課題発見を通じて、製品やサービスの利用体験全体を最適化する役割を担います。両者の職種は密接に関連しており、多くの場合、両方のスキルが求められます。
この職種では、優れた視覚的デザインセンスに加え、ユーザー調査や行動分析、情報設計の能力が重要となります。また、ユーザーの立場に立って考えられる共感力や、開発者やクライアントと建設的な対話ができるコミュニケーション能力も不可欠です。特に、細部への強いこだわりを持ちながらも、ユーザビリティを重視できる柔軟な思考を持つ人材が、この職種に適していると言えます。
データサイエンティストは、ビジネスにおける様々なデータを分析し、そこから価値のある洞察を導き出すスペシャリストです。具体的には、大量のデータから意味のあるパターンを見出し、統計的手法や機械学習を駆使して将来の予測モデルを構築したり、経営課題の解決策を提案したりする役割を担います。
この職種には、統計学やプログラミングなどの技術的スキルはもちろん、ビジネス課題を理解し、分析結果をわかりやすく説明できるコミュニケーション能力も求められます。特に、複雑なデータを粘り強く分析することや、常に新しい技術ツールを学び続ける姿勢が必要なため、論理的思考力が高く、好奇心旺盛で、データの背景にある本質的な課題を探ることに情熱を持てる人が向いているとされています。
先端技術エンジニアは、AI・IoT・ロボティクス・量子コンピューティングなど、最新のテクノロジーを活用したシステムや製品の開発に携わる専門職です。従来の技術領域にとどまらず、常に進化し続ける新しい技術に向き合い、その可能性を追求しながら、革新的なソリューションを生み出すことが求められます。
このため、高度なプログラミングスキルや数学的思考力はもちろん、新しい技術に対する強い好奇心と学習意欲が不可欠です。また、技術の進歩が早い分野であるため、自己啓発を継続できる向上心と失敗を恐れず試行錯誤を繰り返せる粘り強さも重要な要素となります。
さらに、複雑な技術的課題を解決するための論理的思考力とチーム内で専門知識を共有するためのコミュニケーション能力も、成功するエンジニアに共通する特徴です。
エンジニアやプログラマーは、コンピュータやスマートフォン向けのソフトウェア・ウェブサイト・システムなどを開発する専門職です。プログラミング言語を用いてコードを書き、新しいアプリケーションの開発やシステムの保守・改善を行い、時にはユーザーの要望に応じてカスタマイズも行います。
この職種では、論理的思考力と問題解決能力が不可欠であり、複雑な課題を細分化して効率的に解決できる分析力も重要です。また、技術の進歩が速いIT業界では、常に新しい知識や技術を学び続ける意欲と適応力が求められます。
チーム開発が一般的となっている現在では、他のメンバーと円滑にコミュニケーションを取れることも重要なスキルとなっています。特に、細部まで丁寧に作業を進められると緻密さと粘り強く課題に取り組める忍耐力を持つ人がこの職種に向いているとされています。
テックリードは、開発チームの技術的な指針を示し、プロジェクト全体のアーキテクチャ設計からコード品質の維持まで、技術面での統括的な役割を担う職位です。単なる優秀なエンジニアとしてのスキルだけでなく、ビジネス要件を理解した上で最適な技術選定を行い、チームメンバーの育成や技術的な課題解決をリードする責任も担います。
このため、高度な技術力と経験に加えて、リーダーシップやコミュニケーション能力が不可欠です。特に、複雑な技術的概念をわかりやすく説明できる力や異なる意見を調整しながらチームの方向性を定められる調整力が重要となります。
また、新技術への強い関心と学習意欲を持ち、チームメンバーの成長をサポートできる教育的な視点を持った人物がこの役割に適していると言えます。

DX人材の育成は、企業のDXを成功させる上で非常に重要な要素です。DX人材を中途採用している企業もありますが、職種によっては、自社で育成しているところが多いことがわかっています。
ここでは、DX人材を育成するためのステップとその具体的な取り組みとして、以下のものを解説します。
参考:IPA|デジタルトランスフォーメーション推進人材の機能と役割のあり方に関する調査
まず、自社のDX戦略を踏まえ、現状の組織体制や人材スキルを詳細に分析します。デジタル技術の導入目的や達成したい経営課題を明確にした上で、それらを実現するために必要な人材像とスキルセットを具体的に定義します。
現状とあるべき姿のギャップを特定することで、効果的な育成計画の立案が可能です。
特定した不足スキルに基づき、体系的な教育プログラムを構築します。デジタル技術の基礎知識から応用まで、段階的な学習カリキュラムを設計し、以下のようなオンライン研修やワークショップなどを組み合わせます。
特に重要なのは、技術スキルだけでなく、変革への意識や顧客視点といったマインドセットの醸成も含めた総合的な育成アプローチです。
座学で得た知識を実践に結びつけるため、実際のプロジェクトを通じた学習機会を提供します。経験豊富なメンターの指導のもと、実務に即した課題に取り組むことで、理論と実践の架け橋を作ります。
段階的に責任範囲を広げることで、自信と実行力を養成していきます。
定期的な評価とフィードバックを通じて、育成の進捗状況を確認し、必要な軌道修正を行います。達成度の評価だけでなく、直面している課題や不安点についても丁寧にヒアリングし、個々の成長段階に応じた支援を提供します。また、成功体験を共有し、モチベーション維持にも配慮します。
技術の進化に合わせて、常に最新の知識とスキルを習得できる環境を整える必要があります。社内外の研修プログラムへのアクセスやオンライン学習プラットフォームの提供、技術コミュニティへの参加支援など、継続的な学習機会を確保します。
また、チーム間での知見共有や、実験的な取り組みを推奨する文化も醸成していきます。
ここからは、DX人材についてよくある質問として、以下の3つに回答していきます。
DX人材に必要な資格は、企業の規模や目指すDXのレベル、個人のキャリアパスなどによって異なります。
DX人材に求められる資格は、単一の資格ではなく、多岐にわたるスキルセットを示すものです。具体的な資格よりも、DX推進に必要な能力を身につけているかが重要です。
具体的なスキルを獲得する方法としては、上記のカオスマップも参考にして見てください。
関連記事:DX初心者必見!スキルレベルを明確化する認定資格「+DX」開始。無料模試も公開
関連記事:E資格とは?G検定との違いや難易度、対策講座を徹底解説
従来のIT人材がシステムの専門家であるのに対し、DX人材はビジネスとITの両方を深く理解し、それを融合させることが求められます。これは、企業が単にITシステムを導入するだけでなく、デジタル技術を活用してビジネスモデルを変革し、競争優位性を築こうとする動きが加速しているためです。
関連記事:「IT人材は2030年に10万人余る」…AI人材不足時代は量より質を重視せよ
現在、DX人材の採用は非常に難しい状況とされています。DX人材の採用が困難になっている大きな要因は、デジタル化の急速な進展に伴うDX人材への需要の爆発的な増加に対し、人材の供給が追いついていないという需要ギャップです。
特に、データサイエンティストやAIエンジニアといった専門性の高い人材は著しく不足しています。また、多くの企業がDX推進を重要課題と位置付けていることから、人材獲得競争が激化しており、優秀な人材の確保には高額な報酬が必要となるケースも増えています。
さらに、DX人材に求められるスキルセットは、技術的な専門知識からビジネス理解力、コミュニケーション能力まで多岐に渡り、各企業の状況によっても求める人材像が異なるため、採用基準の設定や適切な人材の見極めが難しいという課題もあります。
DX人材とは、DXを推進するために必要なスキルを持ち、組織の変革を実行できる人材を指しますが、その要件は企業や業種によって異なります。経済産業省の予測では、2030年に最大79万人のIT人材が不足すると言われています。DX人材不足を解消するには、自社に不足している人材の明確化やカリキュラムの設計、OJT研修の実施やフィードバック、継続的な学習環境の整備というステップを踏み、自社で育成することが有効な策です。
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