AI感情分析とは?コールセンターで活用広がる感情認識技術
最終更新日:2024/04/04
視覚認識、行動認識など、AIやロボットの性能はどんどん人類に近づいています。昨今では、人間が持つ感情をAIによって読み取ろうとする感情認識技術の研究が進められており、幅広い産業分野での活用が進められている状況です。
その中でも、人手不足が特に深刻化しているコールセンターでは、大幅な業務効率化を実現できることから、AI感情認識の導入が積極的に進められています。コールセンターにAI感情分析を導入することで、どのようなメリットが得られるのでしょうか。
そこで今回は、AI感情分析の仕組みやメリット・デメリット、活用例などを詳しくご紹介していきますので、ぜひ参考にしてみてください。
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AI感情分析とは?
感情認識(感情分析)とは、人間の感情や気持ちの変化、表情などを読み取ることを指します。つまり、「感情認識AI」は、それらを行うことができるAIと言え、分析の対象は顔の表情や声、文章など、多岐に渡ります。
現在は、技術やサービスによって分析対象が異なり、試験的な段階のAIも多い状況です。しかし、将来的には「人間の言動」「脈拍の変化」「発汗の様子」「瞳孔の動き」など、より細かな変化を捉えて統合的に感情を判断できるAIの研究が進んでいく可能性もあるでしょう。
これまで、人間の感情を把握・分析するのは、およそ人間にしかできないものだと考えられていました。稀に人間の感情の一部を理解できると考えられている動物も存在しますが、まだ研究段階となり、はっきりとは分かっていない状況です。
当然ながら、コンピューターなどの機械も人間の感情は理解できないため、人間がどのような感情で接しても同じレスポンスになっていたわけです。しかし、近年はAIの技術が発展したことによって、人間の感情をも分析できるようになってきたのです。そのため、機械も人間の感情や気持ちを汲み取った上で、個別の対応を行えるようになってきています。
このようなAIの技術は、接客が必要となるサービス業やマーケティングなどにおいて特に重宝されるものとして、期待が寄せられています。
AI感情分析に注目が集まる理由
AI感情分析に注目が集まる理由としては、主に以下の2点が挙げられるでしょう。
・インターネット技術が日々発展しているから
現代は、インターネットが普及したことで、より簡単に情報発信を行えるようになりました。SNSや口コミサイト、YouTube等の動画投稿サイトなど、さまざまな媒体で情報発信を行うことが可能です。
これは、情報を発信しやすくなると同時に「情報を収集しやすくなること」を意味しています。感情分析に必要なデータを幅広く収集できるようになったということです。
最近では、サーバー上に膨大なデータを保存できるクラウドサービスも普及したため、コスト面でもハードルが下がり始めています。
・AIの技術が発展しているか
オープンリソース、ディープラーニングといった新しい技術が登場したことで、高精度かつ低コストでAIを開発できるようになってきました。そのため、感情分析を導入するハードルも下がり始めているのです。最近では、企業単位で利用されるケースも少なくありません。
AI感情分析の種類と仕組み
AI感情分析には、いくつかの種類が存在します。それぞれ、どのような仕組みで成り立っているのでしょうか。ここからは、AI感情分析の種類と仕組みについて紹介していきます。
音声から感情を解析
オフィスのエリアごとに360度カメラを設置し、表情の映像と音声のデータをリアルタイムで収集。AIによる感情の分析を行い、利用者のリラックス度などを把握する
音声から感情を分析するAIは、日本語や英語といった特定の言語に依存せず、「声の抑揚」や「声の大きさ」といった物理的特徴量の分析によって、感情を認識するという仕組みです。
音声によって人間の感情を判定できるようになれば、声だけでコミュニケーションを図る必要があるコールセンターでも、ユーザーがどのような感情なのかを知ることができます。もちろん、オペレーター側のストレスチェックなどにも活用することが可能です。
また、ロボットやバーチャルアシスタントが「声の感情認識AI」を搭載すれば、人間同士のコミュニケーションのように円滑なやり取りを行えるようになるでしょう。
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テキストデータの感情分析
AIを活用し、Twitterなどのテキストデータから企業や商品に対する反響を「感情」の観点で分析・可視化
テキストデータから感情を分析するAIは、人間が入力した文章(テキスト)を、AIが自然言語処理によって読み取り、分析することで感情を判断するという仕組みです。同じ物事を伝える場合でも、一人ひとり文章には少しずつ違いが生まれます。
そのため、文章に含まれている単語を分析したり、言葉遣いや表現を分析したりすることによって、その文章を入力した人間の怒りや悲しみ、喜びといった感情を判定することができるのです。
また、基本的なデータと判定基準さえ事前に学習させておけば、AIが日々データを蓄積させて学習していくように設定できるため、継続的に分析の精度を向上させられるという魅力もあります。
特にチャットボットなどは、日常的にユーザーとのコミュニケーションが発生するため、よりフレンドリーなコミュニケーションを実現したい場合などに感情認識AIは重宝されるでしょう。
顔の表情から感情を分析
深層学習(ディープラーニング)を用いて、人の自然な表情や振る舞いから潜在的な感情を推定する
顔の表情から感情を分析するAIは、人間が普段のコミュニケーションで行っているものと同じように、顔の表情から相手の感情を読み取ることができるというものです。その仕組みとしては、細かな動きの変化を捉えられるカメラを用いて、視線や瞳孔の大きさなどを読み取り、人の感情を推測するというもの。
この表情による感情分析は、単純な喜怒哀楽だけを読み取るわけではありません。例えば、ある商品を見せられたときに本心から興味を示しているのか、それともあまり興味を示していないのか、といった微妙な違いを判定することができるのです。
ディープラーニングによって判定の精度が向上されれば、本人さえも気付かないような小さな心の動きも認識できるようになるでしょう。
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コールセンターに感情分析AIを導入するメリット・デメリット
では、コールセンターに感情分析AIを導入した場合、どのようなメリットが得られるのでしょうか。また、デメリットとして把握しておくべきポイントもあるのでしょうか。ここからは、コールセンターに感情分析AIを導入するメリット・デメリットについて詳しく見ていきましょう。
コールセンターに感情分析AIを導入するメリット
- 顧客満足度の向上
- オペレーターの定着率改善
- スーパーバイザー(SV)の業務負荷軽減
・顧客満足度の向上
コールセンターに感情分析AIを導入すると、顧客満足度の向上が期待できます。リアルタイムでの感情分析が可能になれば、いち早く顧客の不満を察知できるようになるからです。
また、蓄積されたデータを活用することで、「顧客満足度の向上に繋げられる対応マニュアル」を作成することもできます。オペレーターの対応は、知識や経験によって品質の差が生まれやすい部分ではありますが、より多くのデータを活用することで、より質の高いマニュアルを構築できるのです。
・オペレーターの定着率改善
昨今は人手不足が深刻化していることもあり、オペレーターの離職率増加が問題視されています。それは、オペレーターの負担が増加していることが原因の一つとして挙げられるでしょう。
しかし、感情分析AIは顧客だけでなくオペレーターにも活用できるため、オペレーター自身のストレスを把握する目的でも有効活用することが可能です。ストレスが蓄積しているオペレーターのフォローを行ったり、対応内容を振り返ったりすることで、オペレーターが働きやすい環境構築に繋げられるでしょう。
・スーパーバイザー(SV)の業務負荷軽減
オペレーターへのコーチングを行うスーパーバイザーも、業務負担が増加してしまうケースがあります。しかし、感情分析AIを活用すれば、効率的にデータを収集することができるようになるため、分析作業をスムーズに行えるのです。
蓄積されたデータを活用し、オペレーターごとに最適なコーチングを行えば、コールセンター全体の業務環境改善にも繋がっていくでしょう。
コールセンターに感情分析AIを導入するデメリット
- 導入コストがかかる
- 保守、メンテナンスが必要
- ルールやマニュアルの変更が必要
・導入コストがかかる
感情分析AIを導入するデメリットの一つとして、導入コストがかかってしまう点が挙げられます。AIを導入・運用するためには、教師データの収集作業や定期的なメンテナンス作業が欠かせません。これらの作業に時間とコストがかかってしまう点は、あらかじめ把握しておく必要があるでしょう。
とはいえ、課題を解決に導く最適なAIを導入できれば、そのコスト以上の成果を得られる可能性も十分にあるため、一概にデメリットとして捉える必要もありません。
保守、メンテナンスが必要
より精度の高いAIを活用し続けるためには、日々のメンテナンスが必要不可欠です。AIは蓄積されたデータをもとに、分析・予測を行っていくため、間違った方向性で学習が進んでしまうケースもあります。そのようなときに軌道修正するためにも、定期的なメンテナンスが欠かせません。
そういった保守、メンテナンスが必要となることも、あらかじめ把握しておく必要があるでしょう。
ルールやマニュアルの変更が必要
コールセンターに感情分析AIを導入する際は、AIに関わる従業員一人ひとりがAIの正しい知識を持っておく必要があります。AIを活用する中でトラブルが発生する可能性もあるため、あらかじめルールやマニュアルをしっかりと設けておくことが大切になるでしょう。
感情分析の3つの活用例
感情分析AIは、さまざまな形で活用されています。ここからは、具体的な活用例について詳しくみていきましょう。
感情解析AI
感情解析AIを活用した代表的なサービスとして挙げられるのは、株式会社アドバンスト・メディアが提供するAmiVoice Communication Suiteです。AmiVoice Communication Suiteは、20年以上開発してきた独自の音声認識エンジン「AmiVoice」を組み込んだコールセンター向けAI音声認識ソリューションです。オンプレミス利用とクラウド利用の2つが用意されているため、自社の目的に合わせて柔軟に導入していくことができます。
AmiVoice Communication Suiteのメリットとしては、全通話のテキスト化(文字起こし)によって後処理時間の大幅な削減を実現できる点が挙げられるでしょう。全通話をテキスト化してくれるため、これまで多くの時間を要していた応対履歴作成業務の大幅な削減が実現できるのです。
また、モニタリング業務の応対品質を高められる「通話品質評価機能」が設けられているのも魅力のひとつといえます。感情解析技術によってオペレーターの感情の動きを「見える化」することが可能です。コールセンター業務に悩みを抱える企業にとって、魅力的な機能が詰まったソリューションといえるのではないでしょうか。
ボイスボット
ヤマト運輸、AI集荷依頼を個人にも対象拡大。電話の待ち時間短縮でストレス軽減狙う
ヤマト運輸では2021年4月より、法人が対象となっていた「AIオペレータ」による集荷依頼の電話対応サービスを、個人の顧客向けとして開始しました。電話の待ち時間の短縮によって、顧客のストレス軽減を目指していくといいます。
ヤマト運輸が導入しているAIオペレータ(LINE AiCall)は、LINE CLOVAのAI技術である「CLOVA Speech(音声認識)」と「CLOVA Voice(音声合成)」、および会話制御の仕組みを組み合わせることで、AIによる自然な対話応答を実現しています。所定の電話番号に電話し、自動音声ガイダンスに従って、集荷依頼の番号を選択するとAIオペレータに繋がるという仕組みです。
今後は、様々な利用シーンに合わせてより快適なサービスの提供を目指し、集荷の依頼以外の用件にも「AIオペレータ」が対応できるよう、システムの機能向上を目指していくそうです。
直接的にボイスボットで感情分析をしている事例は少ないですが、ボイスボットの導入でVoC分析の効率化や顧客満足度、オペレーターの負担改善が期待できるのではないでしょうか。
ちなみに、同社ではメッセージアプリ「LINE」の活用も積極的に行っています。それが、クロネコヤマトメンバーズ向けのサービスとして提供されている、LINEでの「お届け予定メッセージ」や「ご不在連絡メッセージ」です。
チャットボットを活用し、LINEのトーク画面で再配達の依頼や受け取り場所の変更ができるため、顧客の利便性も向上しました。これにより、顧客の荷物の受け取りがスムーズになり、結果的にドライバーの業務負担も軽減されているといいます。
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感情認識AI
感情認識AIを活用した代表的なサービスとしては、affectiva社が開発・提供している「Affdex SDK」が挙げられるでしょう。Affdex SDKとは、自社の製品(サービス)に感情認識AIの「Affdex」をソフトウェアに実装するための開発キットのことです。
WindowsやAndroid、iOS、Linuxに対応している点や、セットアップ作業も通常数時間程度で終了する点など、誰でも比較的容易に導入できる環境が用意されていることは大きな魅力といえるでしょう。
感情分析AIのこれから
AIの実用的な活用が進む中、ロボットやAIに求められる役割は、単なる問い合わせや検索への回答に正しい結果を返すというシンプルなものから、より人の感情に寄り添ってアシストする形に変わりつつあります。人間の感情をリアルタイムで読み取る感情認識技術が果たす役割は、ますます重要になるでしょう。
特に昨今は、少子高齢化に伴う人手不足問題が深刻化しており、多くの企業にとって「業務効率化」は大きな課題となっています。従業員一人ひとりの負担を軽減しながらサービスの品質を向上していく上でも、感情分析AIは重要な役割を担っていくでしょう。今後、感情分析AIがどのような形で活躍の幅を広げていくのか、ますます目が離せません。
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