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【インタビュー】 人間の目を拡張する「イメージングAI」で、世界をもっと豊かに。

最終更新日:2024/04/05

AIsmileyは、NTTPCのAIパートナープログラム「Innovation LAB」のメディアパートナーとして、特設サイトを開設しました。最新の活動やパートナー企業様へのインタビューをお届けしておりますので是非ご覧ください。

今回は、東大発ベンチャーとして2004年に創業し、高度なデジタル画像処理技術と最先端の人工知能を強みに事業を展開する株式会社モルフォ 代表取締役社長の平賀 督基氏に、モルフォの強みの源泉であるイメージングAI技術や事業展開、今後の展望についてアイスマイリーの伊藤が伺いました。

スマートフォンカメラを一眼レフの品質に

――モルフォの事業について教えてください。

――平賀社長

弊社はコンピュータービジョン(CV)やコンピューターグラフィックス組み込みの画像処理技術を中心に、国内外メーカーのフィーチャーフォン・スマートフォン向けにカメラ画質向上技術の提供を行ってきました。今ではスマートフォン世界シェアトップ10のメーカーの中で、モトローラ、シャオミ、LG、シャープなど、過半を占める7社に技術提供を行っています。

私たちが身近に使っているスマートフォンカメラの手ぶれ補正やパノラマ撮影、HDR撮影といった、小さなレンズで撮影した写真や動画を一眼レフカメラで撮影したような品質に補正するテクノロジーです。


――身近なところでモルフォの技術が使われているんですね。AI研究はいつ頃から始められたのですか?

――平賀社長

2012年にトロント大学の Hinton氏が発表したAlexNetがILSVRCで優勝した時期に、弊社でもディープラーニングの研究を開始しました。ディープラーニングの発展とともにCPUやGPU、NPUといったディープラーニング処理を高速化するプロセッサの進歩もあり、従来実現できなかった画像処理が実現できるようになりつつあります。

弊社では、画像処理技術とディープラーニングを組み合わせた「イメージングAI」をテーマに技術開発を進めています。これまで培ってきた非常に高いレベルの画像処理技術と高度なディープラーニングを両方持ち合わせている点は弊社の強みであり、お客さまからも高い評価を頂戴しております。

4つの事業領域で社会・産業課題の解決へ

――スマートフォン以外の事業領域についてもお聞かせくださいますか?

――平賀社長

先ほどお話した「スマートデバイス」事業の他に、「車載・モビリティ」事業も展開しています。今後は「ファクトリーオートメーション」「スマートシティ」を加えた4つの事業領域で、実用的な技術の創出を目指して取り組んでいきます。

「車載・モビリティ」事業は、オートモーティブなシステムの開発に取り組んでいます。2015年12月からデンソーさんと自動運転や先進運転支援システム(ADAS) 向けの画像認識技術の共同研究・開発を開始しました。デンソーの予防安全システム向け製品「Global Safety Package 3」に、成果物である画像認識技術が採用されています。

今後も自動運転のレベル4(特定条件下での自動化)やレベル5(完全な自動化)に向かって、自動パーキングのための周辺監視やドライバーモニタリングシステム(DMS)の商用化など、継続して開発を続けていきます。


――デンソーさんの動画を拝見しましたが、モルフォの経営理念に掲げている通り「実用的かつ革新的な技術」ですね。「ファクトリーオートメーション」や「スマートシティ」についても教えてください。

――平賀社長

「ファクトリーオートメーション」と「スマートシティ」事業は今後注力していく二本柱です。

「ファクトリーオートメーション」では電子部品の良否判定の自動化のほか、フィンランドの子会社「Top Data Science」で、パルプ製造ラインの温度や湿度をAIで管理して製造効率の向上を目指した取り組みを進めています。

一方、街中や建物に目を向けると、至るところにセキュリティカメラが設置されるようになりました。弊社としてはセキュリティカメラの活用を推進して安心安全な「スマートシティ」を実現したいと考えております。


――ありがとうございます。「スマートシティ」の取り組み事例がございましたら是非お聞かせください。

――平賀社長

もう既に実用化している例でいうと、防犯カメラの映像から混雑状況を判定する映像解析ソフトウェア「SECURE群衆カウントソリューション」をセキュアさんと開発し新宿住友ビル・三角広場での実証実験を実施しました。

最近では、奈良県の三郷町スマートシティ実証コンソーシアムの実証事業にも参画しています。2022年1~3月の期間、奈良学園大学三郷キャンパスにカメラを設置し、車椅子を検出してすぐにサポートできる環境の創出にも取り組んでいます。


――やさしいまちづくりはSDGsの一環でもありますね。

――平賀社長

他にも国立国会図書館様からの「OCR処理プログラムの研究開発」事業委託を受けました。明治時代以降に出版された、あらゆる出版物というか国会図書館様が持っている全ての出版物をテキスト化してテキスト検索できるようにする壮大なプロジェクトです。

スキャナーで資料をスキャニングしているとはいえ、状態によって出力した資料が傾いていたりとスキャン状態が一定ではありません。また、仮名文字や漢字が旧字体や現存しない文字で表示されていたり、文章の方向が右から左だったりと通常のOCRソフトでは対応できない資料がたくさんありました。


――資料には縦書きのものから横書きのものまでありますし、印字が薄れているなど資料の状態もさまざまだと思います。聞いているだけで骨が折れそうなプロジェクトですが、どのように解決したのですか?

――平賀社長

まず、画像処理技術を活用して OCRで識字しやすい状態にしました。旧字体や文章の方向などの課題に対しては、凸版印刷さんに協力いただき、約1,300万文字のOCR学習用データセットを構築しました。

さまざまな資料のパターンに対応できるように、エンジニアが地道に1年以上頑張った結果、既存の OCRソフトを凌駕するレベルに到達しました。特に明治期~昭和初期の近代書籍・雑誌においては、市販OCRの約2倍の読み取り精度となりました。データセットを含む成果物はGitHub で公開し、150スターの評価を頂戴しております。

「実用化あってこその技術」-イメージングAIで世界を変える

――さて、先日NTTPCコミュニケーションズが運営するAIパートナープログラム「Innovation LAB」の主催で開かれた産学共創イベント「AIイノベーションアワード2022」に協賛されましたが、参加の理由を教えてくださいますか?

――平賀社長

私自身、学生時代に産学連携の取り組みを見て面白いと思いまして、今回のイベントに参加いたしました。若い方々が新しいものにチャレンジしていけるような世の中を作っていきたいです。ですから、周りの方々とも協力してAIの面白さを学生の方にも体験してもらい、日本の AI 人材育成の橋渡しになれたら嬉しく思います。


――モルフォさんはInnovation Labのパートナーでもありますが、ビジネスを展開する上で共創したいパートナー像があれば教えてください。

――平賀社長

当たり前のことではあるんですけれども、我々のようなスタートアップであるとかベンチャー企業が、ちゃんと継続的にビジネスをしていくためには、自社だけで何とかなるものではありません。

ビジネスにおいて課題を持っていらっしゃる企業や、オープンイノベーションを推進してより良いソリューションをお客さまに提供できるような企業と一緒に組んでいきたいと考えております。

弊社が出資している PUX株式会社との取り組みを紹介すると、PUXさんはパナソニックのメンバーが独立してできたパナソニック発ベンチャー企業です。PUXさんが実用化した自動車の車室内でドライバーを監視する技術に、我々のイメージング・テクノロジーを付加してより良いサービスをお客さまに提供する取り組みを進めています。


――ありがとうございます。最後に平賀社長が考える社会・産業の将来や、モルフォが目指すビジョンについてお聞かせください。

――平賀社長

モルフォとしてはあらゆるカメラにAIが搭載されて、人間の目あるいはそれを超えるような社会を実現していきたいと考えております。

日本のAI市場はアメリカや中国に比べると、なかなか盛り上がっていないのが現状です。非効率な作業を現在に至るまで皆さん当たり前だと思ってやっているところを長年変えられずにきています。さらに少子高齢化やGDPの低下、為替問題といった国力も衰えています。この状況を変えていくのはAIだと思います。


――ありがとうございます。平賀社長のお話を通して、知れば知るほどモルフォの技術が普段生活している私達の身近なところで活用されている印象が残りました。

――平賀社長

ありがとうございます。私たちが実際に作ったものが、スマートフォンや自動車など身近なところで実用化されるとテンションが上がりますね。研究開発の成果を実用化できた時の喜びは私たちの一番の原動力です。今でも、“自分で作ったものが世界を変える”と信じ続けてコーディングしています。

「イメージングAI」で、全世界の人々の想定を上回るような、面白い体験を提供していけるよう今後も開発を続けていきます。


――本日は貴重なお時間を割いて頂き、ありがとうございました。

私たちが普段使っているスマートフォンカメラをはじめ、車載カメラ、街中や施設内の防犯カメラにはモルフォの「イメージングAI」技術が活用されていました。インタビューを通して、「実用化があってこその技術」という平賀氏の力強いポリシーと情熱を感じました。ビジネス上で課題を持っている方や自社の技術をさらに良いものにして世に送り出したい方は、ぜひモルフォに相談してみてはいかがでしょうか。

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インタビュアー
株式会社アイスマイリー メディア運営部
伊藤 大樹
大手介護企業に新卒入社。ホールディングスの管理部門で子会社の人事・労務管理業務に従事。
2018年8月に株式会社アイスマイリーに入社、インサイドセールスとAIニュースのコンテンツディレクターを担当。インサイドセールス、コンサルティングチームの構築から、サイト設計コンテンツ企画を行う。

中村 優斗

中央大学法学部を経てAIsmileyにジョイン。国内外のAIトピックを日々ウォッチ。2級知的財産管理技能士、日本ディープラーニング協会 (JDLA) G検定2021#2取得、JDLA Generative AI TEST 2023 #1合格。経済産業省主催のデジタル推進人材育成プログラム「マナビDX Quest」2022年度第1ターム「ケーススタディ教育プログラム」Gold修了証。CDLEコアメンバー、「DX情報交換チャンネル」と「DX情報交換+グループ」を運営。

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