生成AI

最終更新日:2026/08/25
「DXリテラシー」という言葉はよく耳にするものの、具体的に何を指すのか、社員に何を学んでもらえばよいのか迷っていませんか。DXリテラシーは、単にITツールを操作できることではありません。DXの背景を理解し、データやデジタル技術を活用する力に加えて、仕事や組織の変革に向けて行動する姿勢まで含む考え方です。
本記事では、経済産業省・IPA(独立行政法人情報処理推進機構)の「DXリテラシー標準(DSS-L)」の4要素を軸に解説していきます。あわせて、これまでの改訂経緯や2026年4月公表のデジタルスキル標準ver.2.0の変更点も紹介します。さらに、資格・研修の選び方や、組織全体で高める方法も取り上げます。

DXリテラシーとは、DXの背景を理解し、データやデジタル技術を活用する力を指します。加えて、仕事や組織の変革に向けて行動するための知識・スキル・マインドを指す言葉です。
経済産業省が定める「DXリテラシー標準(DSS-L)」では、この考え方が4つの要素で体系的に整理されています。要素の名称は、「Why」「What」「How」「マインド・スタンス」です。それぞれの詳しい内容は、後述する章で解説します。
そもそも「DX」とは、デジタルトランスフォーメーション(Digital Transformation)の略称です。単なるIT化やデジタルツールの導入にとどまらず、デジタル技術を使ってビジネスモデルや業務プロセス、働き方そのものを変えていく取り組みを指します。DXリテラシーは、DXを一部の専門部署だけの仕事ではなく、一人ひとりが「自分ごと」として捉えるための土台といえるでしょう。
なぜ今、DXリテラシーがこれほど注目されているのでしょうか。背景には、大きく3つの要因があります。
1つ目は、生成AIの急速な普及です。業務でAIツールを日常的に使う場面が増えています。AIの特性や限界を理解した上で活用する力が、専門職に限らず求められるようになりました。
2つ目は、DX・AI人材の不足です。IPA「DX動向2026」でも、DX・AI人材の育成や確保が企業の課題として挙げられています。専門人材の採用・育成に加え、社員全体のDXリテラシーの底上げも重要な選択肢の一つです。
3つ目は、企業の競争力強化ニーズです。デジタル技術やAIを事業変革につなげられるかどうかは、企業の競争力を考えるうえでも重要なテーマになっています。DXリテラシーは、変化に対応できる組織をつくるための共通言語としても機能します。
出典:「DX動向2026」広がるAI導入、DXは変われるか|IPA(2026年7月30日公開、8月4日更新)/DXリテラシー標準(DSS-L)概要|IPA

DXリテラシーと混同されやすい言葉に、「ITリテラシー」や「デジタルリテラシー」があります。ここで整理しておきましょう。
ITリテラシーは、ITに関する基礎知識を持ち、情報システムやデジタルツールを適切に利用する力を指す場合が一般的です。基本的な操作だけでなく、情報の取り扱いやセキュリティに関する理解も含まれます。
一方でDXリテラシーは、単にツールを使いこなせることだけを意味しません。DXの背景を理解する力を含みます。加えて、データやデジタル技術を活用しながら、自ら変革に参加して行動するための知識・スキル・マインドまで含む点が特徴です。
例えば、新しい業務システムを導入する場面を考えてみましょう。ITリテラシーは、その仕組みや利用上の注意点を理解し、適切に使う力と捉えられます。一方のDXリテラシーでは、そのシステムを使って業務や顧客体験をどう変えるかまで考える視点が加わります。さらに、周囲を巻き込みながら定着させていく行動力も含む点が異なります。
| 用語 | 主な意味 |
| ITリテラシー | IT機器やソフトウェアを適切に利用する基礎的な力 |
| デジタルリテラシー | デジタル情報を読み解き、活用・発信する力全般 |
| DXリテラシー | DXの背景を理解し、変革に向けて行動する知識・スキル・マインド |
DXリテラシーは、データやデジタル技術を変革につなげて行動する視点を特に重視する点が特徴です。

DXリテラシー標準(DSS-L)は、経済産業省とIPA(独立行政法人情報処理推進機構)が策定した指針です。専門人材に限らず、全てのビジネスパーソンを対象としています。構成は、「Why」「What」「How」「マインド・スタンス」という4つの要素です。
| 要素 | 内容 |
| Why | DXの背景や必要性を理解すること |
| What | データやデジタル技術に関する知識を持つこと |
| How | データやデジタル技術を業務で利活用する方法を知ること |
| マインド・スタンス | 変化を前向きに受け止め、新たな価値を生み出そうとする姿勢 |
IPAは、DSS-Lのねらいを次のように説明しています。「一人ひとりがDXに関するリテラシーを身につけることで、DXを自分事ととらえ、変革に向けて行動できるようになること」。つまり単なる知識の習得だけでなく、行動につなげることまでを見据えた標準といえます。
DXリテラシー標準は、これまで段階的に改訂が重ねられてきました。専門人材向けの「DX推進スキル標準(DSS-P)」と改訂のタイミングが異なるため、混同しないよう整理しておきます。
| 時期 | 内容 |
| 2022年3月29日 | DXリテラシー標準(DSS-L)を公表 |
| 2022年12月 | DX推進スキル標準(DSS-P)を新たに策定し、DSS-Lと合わせて「デジタルスキル標準(DSS)ver.1.0」として公表 |
| 2023年8月 | DSS-Lに生成AIに関する記載を追加(ver.1.1) |
| 2024年7月 | DSS-P(DX推進スキル標準)に、ビジネスアーキテクトや生成AIに関する補記を追加(ver.1.2) |
| 2026年4月 | デジタルスキル標準ver.2.0を公表 |
ここで注意したいのは、2024年の改訂(ver.1.2)が行われた対象です。この改訂は、DXリテラシー標準(DSS-L)ではなく、専門人材向けのDX推進スキル標準(DSS-P)に対して行われました。DSS-Lが生成AIに関する記載を最初に取り入れたのは、2023年8月の改訂です。
出典:全ての社会人向けのデジタルスキル標準「DXリテラシー標準」が策定されました。|NEC(2022年3月29日)
経済産業省とIPAは2026年4月16日、「デジタルスキル標準ver.2.0」を公表しました。今回の改訂では、主にDX推進スキル標準(DSS-P)側で、次のような変更が行われています。
一方でDXリテラシー標準(DSS-L)は、大きくは変わっていません。「Why」「What」「How」「マインド・スタンス」という4要素の構造は維持されています。Excel版の学習項目も、ver.1.2から内容の変更はありません。ver.2.0の本編では、「デザインマネジメント実践」に関する記載の追記・修正が行われています。
デジタルスキル標準は公表からまだ日が浅く、今後も内容が更新される可能性があります。学習や研修の計画に反映する際は、必ずIPAの公式サイトで最新版をご確認ください。
出典:デジタルスキル標準ver.2.0を公開|IPA(2026年4月16日)/DXリテラシー標準(DSS-L)概要|IPA/資料ダウンロード|デジタルスキル標準|IPA

経済産業省は2018年に公表した「DXレポート」の中で、「2025年の崖」という言葉で警鐘を鳴らしました。複雑化・老朽化した既存システムを放置した場合を想定した試算です。2025年以降、最大で年間12兆円の経済損失が生じる可能性があるとされました。
もっとも、「2025年の崖」は2025年を過ぎれば自動的に解消する問題ではありません。経済産業省は2025年5月、「レガシーシステムモダン化委員会総括レポート」を公表しました。同レポートは、レガシーシステムが最新のデジタル技術の導入やDX推進の障害になっている現状を指摘しています。2025年5月の時点でも、この課題は解消しきれていなかったことになります。少なくとも2025年をもって「崖」が自動的に消えたわけではない、という点は押さえておきたいところです。
システム刷新の難しさを示す事例として、江崎グリコの事例が挙げられます。同社は2024年4月、基幹システムの切り替えに伴う障害を公表しました。この障害により、一部商品の受発注・出荷業務に影響が生じたことが報じられています。同社は原因を「DXリテラシー不足」とは公表しておらず、本記事でもDXリテラシーとの因果関係には踏み込みません。ここでは、基幹システムの刷新が事業運営に大きな影響を及ぼし得ることを示す事例として紹介します。
経済産業省の総括レポートでは、経営層の意識変革やITガバナンスの強化が示されています。情報システム部門と事業部門の連携なども、レガシーシステム脱却に向けた重要な方向性です。こうした組織的な取り組みを支える土台の一つとして、社員のDXリテラシー向上も検討していく価値があるでしょう。
出典:DXレポート~ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開~|経済産業省(2018年9月7日)/レガシーシステム脱却に向けた「レガシーシステムモダン化委員会総括レポート」を取りまとめました|経済産業省(2025年5月28日)/当社グループにおけるシステム障害について|江崎グリコ(2024年4月22日)

DXリテラシーを高めたいと思っても、いきなり研修や資格の情報を集め始めるのは遠回りになりがちです。まずは、DSS-Lの4要素に沿って、自分や社員にどの領域が不足しているのかを確認するところから始めましょう。
以下の4つの問いかけを、自己点検の目安として活用してください。厳密な診断基準ではありませんが、学習の優先順位をつける手がかりになります。
「できていない」と感じた要素があれば、そこから優先的に学習を進めるとよいでしょう。
学習方法は、大きく3つに分けられます。
| 方法 | 特徴 | 向いている人 |
| 独学(書籍・eラーニング) | 自分のペースで基礎から学べる | まず概要をつかみたい人 |
| 講座・研修の受講 | 専門家から体系的に学べ、疑問をその場で解消しやすい | 実践的な知識を効率よく得たい人 |
| 実践プロジェクトへの参加 | 実務に近い経験を通じて学べる | ある程度の基礎知識がある人 |
個人で学ぶ場合は独学やeラーニングから、組織として底上げを図る場合は講座・研修の活用から始めるケースが多いでしょう。実際には、いずれか一つだけで完結させるとは限りません。基礎知識を独学で身につけたうえで研修に参加し、その後の実践プロジェクトで定着させるという流れです。このように、複数の方法を組み合わせるケースも少なくありません。
DXリテラシーに関連する資格には、主に次の3つがあります。
| 資格 | 主催 | 主に学べる分野 |
| ITパスポート試験 | IPA | IT・経営全般に関する基礎知識 |
| DS検定(データサイエンティスト検定)リテラシーレベル | データサイエンティスト協会 | データサイエンス・データエンジニアリング・ビジネスの基礎 |
| G検定 | JDLA(日本ディープラーニング協会) | ディープラーニングをはじめとするAIの基礎知識と活用 |
いずれの資格も、DSS-Lの特定の要素に公式に一対一で対応しているわけではありません。以下は各試験の出題範囲を踏まえた本記事上の整理であり、目安としてご覧ください。ITパスポートは「Why・What」の理解を深める材料として活用しやすいでしょう。DS検定は「What・How」、G検定は主に「What」の理解を深める材料として、それぞれ活用しやすい傾向があります。
これら3試験を対象とした制度として、「DX推進パスポート」があります。IPA・データサイエンティスト協会・JDLAの3団体が、合格した試験数に応じて3段階のデジタルバッジを発行する仕組みです。取得したバッジは、社員のスキル可視化や、デジタル人材育成・人材戦略を検討する際の材料として活用できます。
出典:DXリテラシー標準(DSS-L)概要|IPA/「DX推進パスポート」デジタルバッジの発行を開始します|IPA・データサイエンティスト協会・JDLA(2024年1月31日)

社員個人の学習に任せきりにすると、DXリテラシーの向上は組織全体には広がりにくいものです。次の4つのステップで、組織的に取り組むことをおすすめします。
IPAの「DX動向2026」では、国内企業1,799社の有効回答をもとに調査結果が示されています。DXに取り組んでいる企業の割合は75.7%でした。そのうえで、DXに取り組んでいる企業を対象に成果を尋ねた設問では、「成果が出ている」と回答した企業が60.8%でした。つまり60.8%は全企業ではなく、DXに取り組んでいる企業のうちの割合です。
同調査では、「成果が出ている」企業を対象に、経営面の成果内容も尋ねています。「コスト削減」を挙げた企業が70.9%と最も高く、「利益増加」は19.6%、「売上高増加」は17.9%にとどまりました。業務効率化などの「内向き」の成果に比べると、新規ビジネスや顧客価値向上などの「外向き」の成果は限定的だといえます。
同調査によれば、経営者・IT部門・業務部門の協調が取れている企業ほど、成果が出やすい傾向があります。全社レベルでの業務プロセス最適化に取り組んでいることも、成果と関連していました。成果を業務効率化の範囲にとどめず広げていくには、全社横断でDXを進める体制づくりが重要です。加えて、人材を継続的に育成する仕組みも、重要な要素の一つといえるでしょう。
自社に合った研修サービスを比較検討したい場合は、複数のサービスを一覧で比較できるページも参考にしてください。
出典:「DX動向2026」広がるAI導入、DXは変われるか|IPA(2026年7月30日公開)/DX動向2026(報告書本文)|IPA

DXリテラシー標準(DSS-L)が示す基本的な知識・スキルは、業界や職種を問わず共通です。IPAも、DXに関するリテラシーが求められる幅広いビジネスパーソン層を対象として、この標準を設計しています。
一方で、実務の中でどのテーマを重点的に学ぶべきかは、業界や事業内容によって変わってきます。ここでは、製造業・金融業・小売/流通業の3つを例に、実践のポイントを紹介します。
| 業界 | 特に重視したい実務テーマ |
| 製造業 | 現場のセンサーデータやIoT機器から得られるデータの活用、生産性向上への応用 |
| 金融業 | セキュリティやコンプライアンスとのバランスを取りながらのデータ活用 |
| 小売・流通業 | 顧客データの活用によるマーケティング施策の高度化、EC分野でのデジタル技術の活用 |
例えば製造業では、現場のセンサーデータやIoTなど、業務に関係するデータの活用が重点テーマの一例です。「How」の理解が特に重要になるでしょう。金融業では、データ活用とあわせてセキュリティやコンプライアンスへの配慮が欠かせません。そうしたマインド・スタンスが重要になりやすいでしょう。
小売・流通業では、顧客・購買データをもとにした需要予測や在庫最適化などが、学習テーマの一例として挙げられます。ここで紹介した内容はあくまで一例です。実際に何を重点領域とするかは、自社の事業内容やDX戦略に応じて検討してください。
自社の業界特性を踏まえながら、DSS-Lの4要素をどの順序で、どこまで深く学ぶかを検討することが大切です。それが、実践的なDXリテラシー向上につながります。

DXリテラシーとは、DXの背景を理解する知識を指します。加えて、データやデジタル技術を活用しながら変革に向けて行動するための、スキル・マインドまで含む言葉です。ここで、本記事の要点を振り返ります。
まずは自分自身やチームの現状を、DSS-Lの4要素に沿って確認するところから始めてみてはいかがでしょうか。自社に合った研修・リスキリングサービスを検討したい方は、以下のページもあわせてご覧ください。
アイスマイリーでは、生成AI のサービス比較と企業一覧を無料配布しています。課題や目的に応じたサービスを比較検討できますので、ぜひこの機会にお問い合わせください。
ITリテラシーは、パソコンやソフトウェアなどを適切に利用する基礎的な力を指す場合が一般的です。DXリテラシーは、それに加えて、DXの背景を理解する力を含みます。さらに、変革に向けて自ら行動するための知識・スキル・マインドまで含む点が異なります。
DXリテラシー標準(DSS-L)自体は、資格試験のように合否を判定する仕組みではありません。企業や個人が学習・育成の指針として活用する標準です。関連する資格(ITパスポート試験、DS検定、G検定など)には、それぞれ合否判定があります。
習得にかかる期間について、一律の公的な基準はありません。現在の知識レベルや学習範囲、実務で求められる内容によって差があります。まずはDSS-Lの4要素を参考に不足領域を確認し、必要な学習内容と目標を見極めることが近道です。
企業規模にかかわらず、DXリテラシーの重要性は変わりません。IPA「DX動向2026」では、従業員1,001人以上の企業でDXに取り組んでいる割合が98.7%でした。一方、100人以下の企業では41.6%にとどまり、企業規模による差が見られます。中小企業でも、一人ひとりがDXを自分事として理解し、自社の業務にどう生かすかを考えられる状態をつくることが重要です。
資格取得は必須ではありません。資格は学習の目安や成果の可視化に役立ちますが、DSS-Lが示す知識・スキル・マインドを実務で発揮できることが本来の目的です。研修や実践を通じて身につける方法もあわせて検討してください。
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