生成AI

最終更新日:2026/06/15
精鋭6社が集結!AIデモ選手権レポート
日本オラクル株式会社が主催する「Partner AI Demo選手権」の決勝戦が2026年4月に開催されました。本企画は、「Oracle Cloud Infrastructure(OCI)、 Oracle AI Databaseを使ったデータ活用」をテーマに2025年を通じて「寺子屋WinStory研究会」にて研鑽を積んできた集大成です。パートナー企業がOCIを基盤とした先進的なソリューションを持ち寄り、その実力と可能性を競い合いました。
本選手権は単なるアイデアの紹介ではなく、研究会での学びを活かし「現場の課題をAIでどう解決するか」というリアルな視点から開発されたソリューションを、実際に動くデモとして披露する場です。実際のビジネス現場で即座に提案・活用できる「資産」としての完成度、そして顧客の心に響く「販売ストーリー」をいかに構築できるか。AIの社会実装とビジネスインパクトの創出に真っ向からフォーカスした、極めて実践的な試みとなっています。
決勝戦に先立ち行われた予選会では、21パートナー・計22チーム(長編7チーム、短編15チーム)が参加。わずか3ヶ月という短期間の開発にもかかわらず、各社から趣向を凝らしたデモが次々と披露され、会場は一瞬たりとも目が離せない熱気に包まれました。
予選の段階から実際の顧客提案に即応するソリューションが数多く提案され、審査員による選考もハイレベルな議論となりました。本大会は、この予選を勝ち抜き、技術力・アイデア・表現力の総合力が評価された精鋭6社による最終決戦となります。
決勝戦には、短編部門でKDDIアイレット株式会社、NSW株式会社、伊藤忠テクノソリューションズ株式会社の3社、長編部門では株式会社第一コンピュータリソース、株式会社パソナデータ&デザイン、株式会社AI Shiftの計6社が選ばれました。

KDDIアイレット株式会社 今井 勇貴氏、高橋 美沙輝氏
KDDIアイレットの開発チームが重視したのは、OCIの魅力を「いかに手軽に、幅広く使えるか」という点に焦点を当てて伝えることでした。
特定の顧客向けではなく、あらゆる現場のユーザーに刺さるソリューションを目指し、開発チームで議論を重ねてデモを構築。初めて扱うサービス構成に試行錯誤しながらも、着手から短期間で「7割程度はすぐに動くものができた」と、OCIが持つ開発効率の高さを肌で感じたといいます。
披露されたのは、現場の「目」と「データ」を繋ぐ「マルチモーダルAIによる次世代店舗意思決定アシスタント」です。デモでは、コンビニ店長が自社商品の売上不振を解決するシナリオが実演されました。

まず、改善をしたい対象の商品と比較対象となる商品、それぞれの陳列棚の写真をAIアシスタントにアップロードし、分析したい内容を質問として入力します。すると、OCI Visionが画像から陳列状態を特定。システムの中核であるOracle Autonomous AI Database(ADB)が、視覚情報と売上データを瞬時に紐付け、数値だけでは見えてこなかった売上不振の原因を可視化します。
さらに、「AI Vector Search」を用いて顧客の口コミ等の非構造データからも本音を抽出することで、人間が数日かけて行っていた深いインサイトの導出と、具体的な「次の一手」となる戦略提案までを一気通貫で完了させています。
また、全ての処理がOCI内で完結するため、データを外に出さないセキュリティ的にも非常に安全な運用が実現する点も特徴です。

このマルチモーダルAIの仕組みは、小売業に限らず工場や飲食チェーンなど、様々な現場業務に応用可能です。「データを動かさずにAIを動かす」というOCIのポテンシャルを最大限に引き出し、現場の意思決定を異次元のスピードへと進化させる具体的な解決策を提示しました。

NSW株式会社 寺島 寛之氏、黒畑 貴賀氏
NSWがテーマに選んだのは、飲食・小売業界の現場で長年の課題となっていたチラシやメニュー等の「販促物の校閲業務」の自動化です。
開発にあたっては、営業担当が実際に飲食業界の現場からヒアリングした「目視確認による多大な負荷」という生の声が起点となっています。最新のOCIサービスを組み合わせ、現場の困りごとをどう解決できるか試行錯誤を重ねる中で、今回の校閲DXソリューション「Smart Promo Check AI」が開発されました。
デモでは、ドラッグストアの実際のチラシ画像を用いた価格チェックのプロセスを披露。このシステムは、チラシ画像をアップロードするだけで、商品マスターとの一括照合を数分で完了させます。

技術面では、OCI Document Understandingでテキスト化したチラシ情報を生成AIがJSON形式へ構造化。さらに「Oracle AI Database 26ai」の「AI Vector Search」を活用することで、表記ゆれや略称にも強い「あいまい検索」を実現しました。
画面上では価格ミスが疑われる項目を「黄色」で強調し、スコア付きの根拠に基づいて「要確認」と判定します。単なる不一致の指摘にとどまらず、AIの読み取りミスなのか、チラシ側のミスなのかという分析まで行える点も大きな特徴です。

また、分析結果をCSVとして抽出し、修正箇所を特定して印刷会社へそのまま依頼を出すことも可能です。そのため、これまでは数時間を要していた目視確認を数分に短縮でき、景品表示法違反のリスクの低減にも寄与します。スタッフを単純作業から解放し、より創造的な「売れる企画」に集中できるデータドリブンな現場の未来を提示しました。
さらにこのシステムは飲食チェーンのメニューブックやセルフオーダーアプリ、ネットや紙媒体の広告など、幅広い業種、媒体に横展開が可能です。今後はフィードバック学習による精度向上を図り、AIが最適な価格や販促を能動的に提案するサービスへと進化させていく展望です。

伊藤忠テクノソリューションズ株式会社 鳥飼 竜汰氏
伊藤忠テクノソリューションズが今回のテーマに選んだのは、製造やIT現場のトラブル解決に欠かせない「なぜなぜ分析」の自動化です。入社3年目の若手エンジニアが現場で感じた「分析に多大な時間がかかり、個人の経験値によって結果に偏りが出る」という切実な課題が開発の動機となりました。
デモでは、ネットワーク機器の設定ミスによる通信障害を例に、分析プロセスが実演されました。今回のソリューションの技術的な特徴として、役割の異なる5つのエージェントによる協調動作が挙げられます。

「ファシリテーターAI」が進行役として人が入力したテーマに対し質問を生成しながら全体の進行を進めます。その質問に対し、「論理AI(Logic)」「現場AI(Field)」「組織AI(Org)」の各エージェントが、それぞれ手順書や過去事例、マニュアルを参照しながら多角的に分析します。
特筆すべきは、あえて厳しい指摘を行う「指摘AI(Devil)」を組み込んでいる点です。分析が浅い場合に「指摘AI」が鋭い指摘を投げかけ、再考を促すことで、AI特有の表面的な回答を防ぎ、人間以上の深い洞察を引き出す構成となっています。この裏側では、ADBが問い合わせ履歴の蓄積やナレッジの参照基盤として機能しています。
今回開発されたシステムは、人間の感情や立場に左右されず、常に一定の品質で論理的な分析を行える点が大きな特徴です。また、今後は過去のトラブル履歴や社内のあらゆるマニュアル、ナレッジデータなどの学習量をさらに増やすことで、より現場の状況に即した、高精度な回答を目指します。

なぜなぜ分析のリードタイムの短縮だけでなく、導き出された対策を組織知として蓄積していくことで、トラブル再発を防ぐだけでなく、組織全体の課題解決能力を底上げしていくナレッジの継承という面でも大きな可能性を示しました。

株式会社第一コンピュータリソース 西尾 孝之氏
第一コンピュータリソースが着目したのは、AI活用において見落とされがちな「データの収集と蓄積」の重要性です。多くの企業が「溜まったデータの活用」に注力する中、あえて「高品質なデータをいかに効率よく取り込むか」という入り口の課題解決をテーマに据えました。
牛丼チェーン店のような身近な店舗に置かれている「お客様アンケート」の分析をテーマに、手書きのアンケートや現場の音声といったアナログな情報を、AIの力でいかに精度高くデジタル化し、意思決定に役立つデータとして蓄積できるか。この「データの取り込み」を最大化することこそが、今回のソリューションの核心です。
開発においては、外部サーバーを一切使わず、ADBだけで構築しており、ADBのポテンシャルを最大限に引き出す構成を追求しています。

デモでは、牛丼チェーンのコンセプトである「早い・安い」にAIを掛け合わせた「お客様アンケート分析システム」が披露されました。インターフェースには、誰でも使い慣れているLINEを採用しています。

カメラで撮影された手書きアンケートをAI OCRが即座にテキスト化。多少のスペルミスもAIが文脈から予測・補完してDBへ取り込みます。蓄積されたデータは即座にセンチメント分析(感情分析)にかけられ、ポジティブ・ネガティブの度合いが数値化されます。

さらに、LINE上で「ネガティブな意見は?」といった質問を投げかけると、RAGを活用して関連するアンケート内容を瞬時に要約して回答する機能も実演されました。また、店舗登録機能により「どの店舗にポジティブな声が多いか」といったランキングも確認可能です。
今回のデモのシステムは、ADBの「Always Free」枠を活用することで、構築費用・ランニングコスト共に0円から運用を開始しており、さらに構築自体もわずか1時間程度で可能という圧倒的なスピードを誇ります。
今後はGPS連動マップによる店舗分析や、顧客評価に基づく運営改善など、戦略的経営基盤への進化を目指しています。LINEに加えSlackやTeams等へも容易に展開可能であり、アナログな「現場の生の声」を最小限の構成で資産化できる実用性に優れたソリューションを提示しました。

株式会社パソナデータ&デザイン 神田 智大氏、成田 優隆氏
パソナデータ&デザインは、メンタルヘルスケアの支援をテーマにしたソリューション「やさしく発散」を構築しました。開発チームはデモテーマの策定において、グループ内の専門企業や現場のカウンセラーへ直接インタビューを実施。そこで浮き彫りになった「カウンセラーごとのスキルのばらつき」や「深刻な予兆の見落としリスク」という課題を、AIで解決できないかという挑戦から本プロジェクトがスタートしました。
デモでは、業務負荷により眠れない悩みを抱えるエンジニアとカウンセラーの対話を題材に、AIがカウンセラーをアシストする様子が披露されました。

機能の特徴として、相談内容をリアルタイムで文字起こしし、独自のアルゴリズムで相談者の感情を4つの数値でグラフ化する機能が挙げられます。1分ごとのサマリと「AIアドバイス」が提示されることで、カウンセラーはメモ取りから解放され、最も重要な「傾聴」に専念することが可能になります。
また、相談者自身が「何に悩んでいるのか」を自覚することが改善への第一歩となるため、AIが悩みの中核を自動ピックアップし、最適な声掛けを提案。対応品質の平準化と高度化を同時に実現しました。

基盤には、相談者の感情という極めてセンシティブなデータを取り扱うため、データが外部に露出しないOCIのフルスタックAIサービスを採用。ガバナンスとセキュリティの優位性を最大限に活かしています。

また、今回のソリューションはメンタル相談に留まらず、広範なビジネスシーンへの横展開が見込まれています。
例えば、会議議事録ツールと組み合わせてハラスメントの予兆を早期検知したり、形骸化しがちな1 on 1ミーティングをAIが支援することで、組織全体の対話の質を向上させることが可能です。
深刻な不調の予兆を見落とすリスクを低減し、誰もが安心して働き、支え合える「ウェルビーイングな社会」の実現に向けた、AIによる温かいDXの形を提示しました。

株式会社AI Shift 青野 健利氏、村田 栄樹氏
AI Shiftが着目したのは、メディア企業が抱える「膨大な動画資産の活用」という課題です。検索性の低さから眠ったままになりがちな過去の映像データを、AIの力で「本当に現場で使える」ものへと変える挑戦です。
デモでは、事前処理によってベクトル化された動画から、ユーザーの意図に沿ったシーンを瞬時に抽出するプロセスが披露されました。
例えば「車(Car)」というキーワードで検索すると、映像そのものの特徴と音声から書き起こされたテキストの両面からハイブリッド検索を実行し、関連性の高いシーンをタイムライン上にハイライトで表示します。映像とテキストのどちらが検索の決め手になったのかを視覚的に提示する工夫も凝らされています。

また、単に内容を追うだけでなく、映像内の人物を特定する機能も備えており、あらかじめDBに格納された芸能人の顔ベクトルと照合することで、特定のタレントが出演しているシーンを即座に判定できます。
動画処理における技術として、動画を「時間ベース」と「シーンベース」の2つの手法で分割し、映像そのものをベクトル化してADBに格納しています。
さらに、音声から「笑い」や「ツッコミ」といった劇的な変化をスコアリングして検出する「イベント検出マトリクス」を実装。これにより、単なるキーワード検索ではなく、「盛り上がっているシーン」や「特定のタレントが怒っているシーン」といった文脈による高度な検索を実現しました。

今後は、動画検索エージェントの機能をさらに拡張し、特定の芸能人が「何を言ったか」だけでなく「どのようなアクションをしたか」といった、より詳細なイベントベースでの検索・抽出を可能にすることで、メディア制作現場のさらなる効率化を目指します。

また、同社はツールの提供に留まらず、LLMだけでなくコストと精度のバランスを最適化した「AI Ready」な全体設計を提案・伴走することで、企業のDXを真の成功へと導くパートナーを目指していくとコメントしました。
全6社によるプレゼンテーションが終了し、審査結果の発表を迎えました。本選手権では、技術力はもちろん、実務課題に対してどれほど具体的かつ汎用的な解決策であるかが審査の鍵となりました。
厳正なる審査の結果、ソリューション部門では伊藤忠テクノソリューションズ株式会社が、テクノロジー部門では株式会社AI Shiftが、それぞれ優秀賞に輝きました。

―― 受賞おめでとうございます。どのような点が評価されての受賞だと感じていらっしゃいますか。
――伊藤忠テクノソリューションズ 鳥飼氏
ありがとうございます。今回、エンジニアの方々に多くお集まりいただいていたので、「なぜなぜ分析」の大変さという部分で「気持ちがわかる」という共感をいただけたのではないかと思っています。
発表後、皆さんとお話しさせていただく中でも、そういった声をいただくことがあり、その結果がこの受賞に繋がったと感じています。
―― 今後の「なぜなぜ分析」エージェントのブラッシュアップや展開について教えてください。
――伊藤忠テクノソリューションズ 鳥飼氏
デモでは少ないデータ量でここまでできるという点をお見せしましたが、今後は実際の職場環境や仕事の環境に合わせたデータをより多く投入し、回答の精度をさらに高めていきたいです。
―― 今回はIT分野にフォーカスした内容でしたが、他業界への展開も考えられていますか。
――伊藤忠テクノソリューションズ 鳥飼氏
「なぜなぜ分析」はITに限らず行う機会はあると思っており。例えば、病院関係など様々な業界に横展開できると考えています。
それぞれの業界やクライアント様の課題に合わせ、エージェントを使って最適なソリューションを作っていければと思います。

―― 受賞おめでとうございます。ご自身では、どのような技術的ポイントが評価されたとお考えですか。
――AI Shift 青野氏
ありがとうございます。LLM(大規模言語モデル)だけを使うのではなく、マシンラーニングなど様々な技術を組み合わせた点、そしてマルチメディアという、他ではあまり見かけない特殊な領域に挑んだ点を評価いただけたのかなと思っています。
―― 今後の製品化に向けた展望や、営業シーンでのデモ活用についてお聞かせください。
――AI Shift 青野氏
すでにお客様への提案予定があり、今後は本番環境の運用に耐えうる構成へとアップデートし、真の価値を感じていただける製品として提供していくつもりです。
また、AIや機械学習の機能は言葉だけでは伝わりにくいからこそ、私は「実際に動くもの」が見せる「手触り感」を大切にしています。今回の動画検索のように視覚的に分かりやすいデモを武器に、営業活動をさらに加速させていきたいと考えています。
―― 最後に、発表のキーワードでもあった「AI Ready」について教えてください。
――AI Shift 青野氏
AIを導入しようとしても、データの整理ができていないと「AI以前の問題」になってしまいます。私たちはLLMだけを提供して終わりではなく、ソフトウェアエンジニアリングの観点からデータを整理・正規化し、実運用に乗る「AI Ready」な状態にすることから包括的にサポートしていきたいと考えています。
なお、審査員特別賞には株式会社パソナデータ&デザインが選ばれました。
今回開催された「Partner AI Demo選手権」は、単なる技術の披露に留まらず、AIの現場実装と、実用的なソリューションへの昇華をリアルに提示する、熱気あふれる場となりました。
登壇した各社に共通していたのは、OCIの堅牢な基盤とADBを使いこなしつつ、その視線は常に「現場の課題」に向けられていたことです。OCIの可能性を最大限に引き出したこれらのデモを「実際に動くソリューション」として提示する試みは、顧客が抱える課題解決のイメージを具体化させ、提案の質を劇的に変える力を持っています。
「AIで何ができるか」を模索する段階から、今は「AIをどう使いこなし、業務の課題を解くか」を具体的に示すフェーズへと移っています。今回披露された数々のデモは、まさにその先駆的な回答であり、技術が人々の働き方や意思決定を劇的に進化させる可能性を確信させるものでした。
今回の選手権で示された「一歩先」の景色が、近い将来、私たちの日常のあらゆるビジネスシーンで当たり前のものとして実装されていく。そんな確かな予感を残し、本イベントは盛況のうちに幕を閉じました。
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