生成AI

最終更新日:2024/12/26
Appleは、2024年8月9日に、画像生成AIモデル「Matryoshka Diffusion Models(MDM)」を公開しました。高解像度の画像生成に最適化したこのAIモデルでは、名前の通り「マトリョーシカ」のような構造を採用し、異なる解像度の画像を並行的に生成し、情報共有を行います。
そして、従来の画像生成における課題を解消し、解像度の高いテキストやビデオ生成アプリケーションなどさまざまなベンチマークで性能が実証されています。将来的には、より効率的かつ高精度な画像生成によって、ビジネスから教育、医療まで幅広いシーンでの活躍が期待されます。
本記事では、Matryoshkaの概要から従来モデルとの違い、主な特徴、使い方などについて詳しく解説します。Appleが提供する最新の画像生成AIモデルについて理解し、生成AIの導入と運用にぜひお役立て下さい。
Matryoshka Diffusion Models(MDM)とは、Apple社が2024年8月9日に公開した最先端の画像生成AIモデルです。モデルを実装するためのトレーニング用PythonパッケージもGitHub上で同時公開されています。
Matryoshka(マトリョーシカ)という名前の通り、入れ子型の人形をイメージさせる仕組みを採用。複数の画像レイヤーを重ね合い、複雑な結果をよりスムーズに出力することが可能です。
また、GitHubではモデル本体に加えて、訓練・推論・可視化用のコードも含まれています。1,200万組のテキストと画像のセットで構成される大規模なデータセット「CC12M」のダウンロードとトレーニング手順といった、開発者にとって有益な情報も公開されています。
Matryoshkaでは、従来の画像生成に用いられている拡散モデル(Diffusion Models)に新しいアプローチを追加し、より解像度の高い画像の最適化に成功しています。
拡散モデルは、低解像度モデルとアップスケーリングモジュールによる段階的なモデルを使い、ランダムなノイズから完成イメージとなる画像を徐々に生成するプロセスを用います。そのため、各拡散モデルの前のステップでの出力に依存することになります。
一方、Matryoshkaでは異なる解像度のモデルを並行して生成し、情報を共有し合うことで、より高い解像度へと段階的に成長します。最終的に、高解像度の画像生成の最適化が改善され、従来に比べてよりスピーディに高品質な画像生成が可能です。
以下では、Matryoshkaで特徴的な2つの仕組みについて紹介します。
Matryoshkaでは、高い画像復元能力を持つUNetアーキテクチャを採用しています。少ない学習用画像データでも画像分割の精度が高く、学習後の高速処理が可能です。
UNetアーキテクチャにより、トレーニングと推論の両方でより効率化が進み、画像の詳細な特徴を正確に再現しています。
プログレッシブトレーニングとは、段階的に学習を進めながら計算の効率化やモデルの性能向上を目指す過程です。低解像度の画像から高解像度の画像へと徐々にトレーニングを行うことで、コストの節約や安定化を実現します。
コストを要する高解像度のトレーニングを避けつつ、出力の高速化が可能なため、Matryoshkaの効果的なトレーニングを後押ししています。
以下では、Matryoshkaの主な特長を紹介します。
Matryoshkaでは、複数の層を使用して画像を生成する多層アプローチを採用しています。そのため、細部まで的確に再現された複雑かつ高品質な画像の生成が可能です。
また、最大1,024×1,024ピクセルの高解像度画像や動画の生成にも対応しています。細かな部分まで鮮明で精度の高いコンテンツを制作できます。
Matryoshkaでは、テキストだけでなく画像やスケッチなどさまざまなプロンプトに対応できます。多彩なプロンプトの入力に基づき、柔軟なデータ生成が可能です。
Matryoshkaは、複数の解像度で画像生成ができる上、従来モデルよりも少ないデータで効率的な学習が可能です。そのため、学習に必要なコストの削減にもつながります。
Matryoshkaで生成した画像は、商用利用が認められています。Apple社の公式サイト上では、MITライセンスに基づき、個人での利用についても許可されていますが、Appleの商標や名称を使用する場合には別途許可を取得する必要があります。
また、CC12Mで学習させたモデルは高性能ですが、ライセンスの制約上公開することはできません。
Matryoshkaを使用するためには、Apple社が提供している学習済みモデルをダウンロードし、アプリケーションに組み込む必要があります。google colaboratoryなどで実装することで、高解像度の画像や動画の生成が可能です。
ただし、具体的な実装方法や使用手順については、Apple社のガイドラインを確認する必要があります。GitHubの手順通りに使用してもエラーとなるケースも指摘されており、場合によっては検証が必要です。
Matryoshkaの技術は、ビジネスから日常生活まで幅広い分野での活用が見込まれます。代表的なものとしては、以下が挙げられます。
解像度が高く、詳細まで鮮明な画像や動画を高速で生成できるMatryoshkaを活用すれば、多くの画面で役立つコンテンツを容易に生み出せるようになるでしょう。
Matryoshkaは、解像度の高い画像や動画を生成できる最先端のAIモデルです。従来の画像生成AIとは異なるアプローチにより、高解像度の画像を出力するプロセスの最適化や高速化を促しています。
また、少ない学習データで効率的なトレーニングが可能なため、負担が少ない点も特徴です。
Matryoshkaは、画像生成AIにおける計算負荷を減らし、従来よりも効率的なソリューションを提供できます。商業用のデジタルアートからゲーム開発まで幅広いジャンルでの活用が期待されるでしょう。
生成AIサービスを提供する企業一覧を、以下より無料で請求いただけます。生成AIツールの活用に向けてぜひお役立てください。
AppleのMatryoshkaは、2024年8月に公表されました。GitHub内では、エンドツーエンドのフレームワークとして公開されています。 また、モデルのトレーニング用Pythonパッケージ「ml-mdm」も発表されていますが、生成AIツールとして一般提供されるかどうかは特に言及されておらず不明です。
Matryoshkaは、Google Colaboratoryなどで実装可能です。GitHubリポジトリをクローンし、必要なライブラリをインストールした後、プログラムを実行する流れです。 ただし、GitHubで公開されているREADMEの通りにダウンロードし、実行するとエラーとなったケースが報告されているため注意が必要です。
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