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第6回 AIで結婚相手をマッチングする【澤田光の行政×AI最前線】

最終更新日:2023/12/20

人工知能(AI)により、必要な情報が必要な時に提供されるようになるSociety5.0を目指して、行政の情報化が進められています。しかし、自治体の現場では、「実際何に取り組んだら良いのか?」、「やれと言われてもどうしたらよいか分からない」、「そもそも何から手を付ければよいのか?」など、戸惑う声も多く聞かれます。どうしたら自治体でAIの活用が進むのでしょうか。

【澤田光の行政×AI最前線】では、実際にAIを活用した取り組みを行っている自治体の事例をご紹介し、そうした疑問に答えていきます。

今回は、ビッグデータを活用したAIによる婚活マッチングシステム(以下、「システム」という)をご紹介します。愛媛県と株式会社愛媛電算が開発したこのシステムは全国22県で採用され、圧倒的なシェアを誇っています。システム開発者の一人である一般社団法人愛媛県法人会連合会(以下「法人会」という)の岩丸裕建参事にお話を伺いました。

――婚活にAI(ビッグデータ)の活用を考えられた経緯について教えてください。

――岩丸裕建参事

平成20年に「えひめ結婚支援センター」が開設され、法人会が運営を受託しました。そこから、システムを活用してイベントの開催、1対1のお見合い「愛結び」に取組んできました。また、ボランティア推進員が会員を継続的にフォローする仕組みを取り入れているのも愛媛県の特徴です。事業を続けていく中で、システムには、誰が誰に交際を申し込んだとか、ボランティアさんが会員さんにどんなメッセージを送っているとか、ビッグデータがものすごく集まったんですね。そこで、これだけデータがあるんだから、何かできないかと思ったんです。一番は、ボランティアさんが背中を押して、成婚に至るパターン、これを知りたかったんですよ。カリスマ的なボランティアさんの頭の中を見てみたいと思ったんです。

そこで、ビックデータの専門家である国立情報学研究所の宇野毅明教授や、愛媛大学の河村泰之准教授と、ボランティアさんと会員さんのやり取りを分析して上手くいくパターンをつかみ、好事例として発信することを試みたんです。しかし、ボランティアさんとのメッセージから、上手くいくパターンはつかめなかったんです。

 

――岩丸裕建参事

例えば、ボランティアさんと会員さんがやり取りしたメッセージから、個人情報は伏せた上で、「楽しい」というキーワードを拾ってみても、7割は上手くいっていない。これは上手くいくパターンかなと思うといきなり別れていたり、これは上手くいかないだろうと思っていても、パッと結婚したりするわけですよ。そもそも膨大なデータのなかで、上手くいく事例はちょっとしかないんです。ところが、上手くいかず、繰り返し活動する人のデータはたくさん蓄積される。ネガティブデータをポジティブデータに変えようとデータの分析をやるけれども、結局、傾向はつかめなかったんです。

宇野先生は、コンピューターは画一的なものは得意だけれども、こういう例外的な人間の心理の動きは不得意だと言われていました。

一方、会員がどういうイベントに申し込んだか、会員の行動を分析をすると、必ずツアー型とか、パーティー型とか、参加するイベントの形態に偏りがあるというのが分かったんです。やっぱり興味・好みが違うからなんでしょうかね。

そこで、宇野先生が、同じような好み・行動パターン、または考え方を持つ人のグループを導き出すアルゴリズムを公表しておられるので、それを応用し、会員さんが好み好まれるお相手のグループを導き出して、そのグループに属するお相手を会員さんに提案する仕組みを、1対1のお見合い事業「愛結び」のシステムに、「ビッグデータからのおすすめ機能」として導入しました。

 

出典:ひめring えひめ結婚支援センターHP 「愛結び」

――岩丸裕建参事

好みは偏るだろう、特定のグループに集中するだろうと思っていたら違っていたんです。実はそんなに集中しないんですよ。どんな人でも、どこかのグループに入るんです。ならば、そのグループを使って、おすすめのお相手をリコメンドすれば、カップルになる確率も上がるのではないかなと。例えば、親しい友達に、あの人いいよと言ったら、自分と好みのタイプが似ているから友達も気に入る可能性が高い。それをくっつけたらいいんじゃないかと思ったわけです。このアイデアで、私はこのシステムの発明者になったんですよ。

 

――特許をとられたわけですね。でも、婚活といえば、年収とか、学歴とか、まず条件から入るのではないですか?

――岩丸裕建参事

一対一のお見合いだと、年収とか学歴とか、条件をまずみてアプローチする傾向が強いんです。年代別にアプローチする条件を拾うと、25歳まではあまり条件はないが、30代、40代と年齢が上がるにつれて要求が増えていく。要求が増えると相手が狭まります。若い人は価値観だけで、フィーリングが合えばいけるが、年齢を重ねるとフィーリングだけではだめなんです。しかし、条件に関わらず、結婚の希望を叶えてもらいたいため、そういう条件を無視しようということになりました。

最初は不安でしたよ。しかし、導入前に、試験版で20人ぐらいにビッグデータからのおすすめ機能を使ってみてもらったんですよ。今まで何十回も年収とか会社とか身長を条件をかけて探していたのに、ビッグデータ(AI)が勧めてくるのは、条件には合っていない人だったりするわけです。それなのに、その人に会いたいと言ってきたんです。


――何故でしょう? ビッグデータ(AI)から勧められたからでしょうか?

――岩丸裕建参事

分からないですが、同じ好みを持つ同性グループが選んだ異性なので、条件は違っていてもやはりタイプなんでしょう。または、相手もあなたのグループを好むグループの一人だということで、気になってくるのでしょうか。実際、ビッグデータからのおすすめ機能を活用してお見合いを申し込むと、お見合い成立率が高いんです。条件検索からの申込と比べると、「はい、会います」と回答してもらえる可能性が高い。お見合いに至れば半分ぐらいは交際に結びつくので、成婚にすごく近づく。ところが条件検索では、お見合いを申し込んで断られるケースが8~9割、さらに成婚率はそのうち1割。男性から女性の場合は1割を切っています。まずはお見合いに至ることがヤマなんです。

――岩丸裕建参事

ビッグデータからのおすすめ機能は、女性が多く利用されています。私自身、この機能を使うのは男性だというバイアスがかかっていました。女性が申し込んだ方が、お見合いが成立する確率が高いんですが、女性は断られたらいやだという心理が働く傾向があります。でも、考えようによっては、この人は私が選んだわけではなくて、ビッグデータ(AI)が選んだのだからだと、断られても逃げ道がある。中央大学の山田昌弘先生はこれを「言い訳効果」と言われました。実は、上手くいかないパターンは相手に求める条件を無意識に変えないんです。条件が変わらないから、何度検索しても同じ相手しか出てこない。何十回も失敗した人のデータを分析したら、そのうちの90パーセントは条件を変えていなかったんですよ。

 

――結婚できない原因は、相手のせいではなく、条件で選んでしまうあなた自身にあるという訳ですね。だからカリスマボランティアさんのように、AI(ビッグデータ)が視野を広げて、気づきを与えるのですね。

私は女子大で教えていますが、県がやっている婚活事業を説明すると学生は知らないです。でも、民間のマッチングアプリは怖いと、行政がやっているなら使いたいと言います。また、面倒くさいのは嫌で、自分で相手を選ぶのはしんどいとから紹介してほしいとも言いますね。でも、親とか上司に紹介してもらうのは絶対に嫌だと。じゃあ誰に教えてもらうのがいいのかと尋ねると「よく当たる占い師」か「AI」と答えます。

――岩丸裕建参事

ぜひ若い学生に向けて、授業で紹介してもらいたいです。

どういう風に若い人に、えひめ結婚支援センターの取組みを普及させるか、ここが問題なんですよ。ただ、私もビッグデータのおすすめ機能を正確に説明しろと言われても、短い言葉で皆さんに理解させるのは至難の業なんです。若い人が興味を持つようなもので誘導していくか、ゲーム感覚でやるとか、若い人に、どういう風にこのシステムの良さを理解してもらうかが課題です。

自由恋愛で相手を決めかねる人がいっぱいいるんですよ。決めかねる人に、はっきりと、こういう人がいいんだと、ビッグデータ(AI)がいいという人なんだと提案するのも一つの手だと思っています。最後に決めるのは本人ですがビッグデータ(AI)から勧められたんだからとりあえず会ってみようとなるといいですね。せっかく良いシステムがあるので、今後もさらに進化させたいです。

 

愛媛県のビックデータを活用したAI婚活は、視野を広げて自ら行動する仕組みを作ったことで、総務省の2015年の「地域情報化大賞特別賞」を受賞されました。また、企業の方が、人事のマッチングシステムとして使えませんかと言われるなど、今後はもっといろいろな使い方に広がっていく可能性を秘めています。最先端の技術を持った方や、有識者からの注目も集めており、愛媛県はホットスポットになっています。

最後に岩丸さんが、「男性に年収を求めるのも、女性がそう言わざるを得ない環境にあるからです。女性が非正規でなくて、ちゃんと年収をもらっていたら、相手にそこまで年収を求める必要がなくなるはずで、女性の正規職員の増加であったり、男性の家事参加であったり、そういうことをしっかりとしないと。受け皿の社会が何も変わっていないと、そこに何を持ってきても無理ですよ。」と言われたのが印象的でした。結婚したくてもなかなか出来ない人のためのAIの開発と同時に、人々が結婚しやすい社会環境の整備にも早急に取り組んでいく必要があります。


本連載で取り上げて欲しいテーマや事例がございましたら、お問い合わせフォームにご意見をお寄せください。読者の皆様に寄り添った連載を目指して参ります。

編集:AIsmiley 編集部


【澤田光の行政×AI最前線】バックナンバー

澤田光

安田女子大学 公共経営学科 准教授。奈良女子大学大学院人間文化研究科社会生活環境学専攻。博士(社会科学)。社会福祉士。福祉社会学の視点から少子化を研究。 熊本県庁で、児童相談所や福祉事務所、市町村の児童福祉主管課など現場での実践をはじめ、エンゼルプランの策定や少子化対策の企画立案実践、介護保険事業計画等を担当。

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