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第4回 AIを自治体間で共同調達する【澤田光の行政×AI最前線】

最終更新日:2024/01/04

人工知能(AI)により、必要な情報が必要な時に提供されるようになるSociety5.0を目指して、行政の情報化が進められています。しかし、自治体の現場では、「実際何に取り組んだら良いのか?」、「やれと言われてもどうしたらよいか分からない」、「そもそも何から手を付ければよいのか?」など、戸惑う声も多く聞かれます。どうしたら自治体でAIの活用が進むのでしょうか。

【澤田光の行政×AI最前線】では、実際にAIを活用した取り組みを行っている自治体の事例をご紹介し、そうした疑問に答えていきます。

前回に引き続き、AIを手軽に導入するための方法として、今回は、「共同調達」についてお話しします。

熊本県、八代市、宇土市、小国町、西原村の1県4市町村は、2022年4月から、住民の質問に対応するAIチャットボットを「共同調達」し、共同利用を始めました。この共同調達を御担当されていたのは、2022年3月まで、熊本県美里町役場から熊本県に出向していた渡邊裕一郎さんです。美里町は、熊本県のほぼ中央、熊本市から南東へ約30kmに位置しており、車で約40分程度の距離にある、人口1万人ほどの自然豊かな地域です。美里町にお伺いし、「共同調達」について渡邊さんにお話を伺いました。

熊本県美里町
渡邊裕一郎さん

――「共同調達」をどのようにされたのですか?プロセスを教えてださい。

――渡邊さん

熊本県には平成15年に設置された熊本県・市町村電子自治体共同運営協議会があります。協議会では、県と県内の45市町村で、行政運営や共同運用している、熊本県・市町村共同システム「電子申請サービス」、セキュリティクラウドなどについて話し合っています。そこにAI等検討部会を立ちあげ、35市町村が参加しました。

AI(チャットボット)の導入についてご説明し、検討していただいた結果、導入のための実証実験を実施することになり、3か月間の無料トライアル(「AI総合案内サービス」の実証実験)を実施し、県下の10市町村が参加しました。実験後にアンケートをとりましたが、割と良い印象を持っている人が多く、サービスを継続したいという人が多かったですね。


――協議会で導入を検討され、実証実験を経て導入に至ったわけですね。具体的な手続きはどうされたのですか?

――渡邊さん

実証実験に取り組んだ10市町村のうち、県と4市町村が導入することになりました。チャットボット導入の理由で最も大きかったことは、閉庁時の問合せに対応できるということです。

一方、導入しない理由として挙げられたのは、費用対効果があるかどうかが分からないということだったですね。業者の選定は、プロポーザルで行い、県と導入自治体で、審査会を立ち上げました。審査にあたっては、ランニングコストや、カスタマイズができるかどうか、導入後のサポートの充実度などを重視しました。

ランニングコストは、自治体の規模に関わらず一律です。2021年12月に、県がサイネックス株式会社と「熊本県・市町村共同利用型AIチャットボット構築業務」の契約を行い、構築にあたっては、県と4市町村(熊本県、八代市、宇土市、小国町、西原村)で共同調達しました。運用や保守の契約は、それぞれの自治体毎に業者と契約をしています。その後、美里町と荒尾市も導入することになり、今年度で導入団体は7団体になります。


――契約から導入までの期間が短いですが、導入にあたってはどのような準備をされましたか?

――渡邊さん

全国標準の準備されたQuestion(以下「Q」)がありましたので、各市町村の担当者に、それらのQに対する回答(以下「A」)を作成してもらいました。各市町独自の事柄については、新しいQAを作ってAIに学習させました。Keywordの作成もしましたね。QAのデータはクラウド上にあって、自治体間で共同利用しています。月1回レポートが来るので、利用者の質問に回答できていないものなどをチェックしています。


――2022年4月に美里町に戻られてからは、どのような仕事をしておられるのですか?

――渡邊さん

総務課の中に行革DX推進係が設置され、係長をしています。まず、県で導入されていたLoGoチャットを、美里町にも導入しようと思い、総務課内でトライアルを始めました。最初はとまどいもありましたが、便利なことを実感してもらい、6月からは全庁で始めることになりました。

さらに、ペーパーレス会議システムを導入するため、システム用端末の調達を行い、現在は、プロポーザルでの業者選定を行っています。12月議会では、ペーパーレス会議システムを活用できればと思っています。また、AIチャットボットの導入は、町公式LINEとの連携も検討しているところです。美里町が大好きなので、今後も美里町がより暮らしやすい町になるよう、DXの推進に取り組んでいきたいですね。

 

AI検討部会では熱弁を振るわれて、市町村の説得にあたられたという渡邊さん。市町村の御担当者の理解や納得感があってはじめて、共同調達が実現するのだということを感じました。美里町のDXを精力的に推進している渡邊さんの今後の御活躍が楽しみです。


本連載で取り上げて欲しいテーマや事例がございましたら、お問い合わせフォームにご意見をお寄せください。読者の皆様に寄り添った連載を目指して参ります。

編集:AIsmiley 編集部 中村優斗


【澤田光の行政×AI最前線】バックナンバー

澤田光

安田女子大学 公共経営学科 准教授。奈良女子大学大学院人間文化研究科社会生活環境学専攻。博士(社会科学)。社会福祉士。福祉社会学の視点から少子化を研究。 熊本県庁で、児童相談所や福祉事務所、市町村の児童福祉主管課など現場での実践をはじめ、エンゼルプランの策定や少子化対策の企画立案実践、介護保険事業計画等を担当。

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