ニューラルネットワークとは?仕組みや歴史からAIとの関連性も解説
最終更新日:2024/02/16
ニューラルネットワークは、AI(人工知能)技術に欠かせない重要な技術です。今後さらなる発展と活用が予測されるAI技術を導入する上で、ニューラルネットワークの仕組みや役割について理解しておく必要があるでしょう。
この記事では、ニューラルネットワークの基礎知識から代表的な種類、変遷の歴史まで解説します。AI技術やディープラーニングとの関係についてもわかりやすく説明しますので、AIサービスの研究や開発を検討する際にぜひ参考にしてください。
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ニューラルネットワークとは
ニューラルネットワーク(Neural Network)とは、脳の神経細胞(ニューロン)が持つ回路網を模した数理モデルです。脳内神経のネットワークで行われている情報処理の仕組みを、計算式に落とし込み、人工ニューロン(パーセプトロン)を使って数学的にモデル化したものを指します。
ニューラルネットワークはデータから学習できるため、音声や映像、制御システムにおけるデータ識別・分類やパターン認識に向いている点が特徴です。また、時系列予測やモデリングにも活用できるので、未来の予測といった場面でも採用されています。
ニューラルネットワークの仕組み
ニューラルネットワークがどのように働くのか、大まかな仕組みを解説します。5層のニューラルネットワークをモデルとして用いましょう。
ニューラルネットワークのプロセスは、大きく分けて「入力」「伝播」「出力」の3工程です。まず「入力」の段階では、入力層に画像、ビデオ、音声、テキストなどのデータを入力します。次の「伝播」のステップでは、次の層に伝達されますが、伝播での処理は主に2つです。
1つ目は前の層のノードの出力値と、それに対応する重みの値を掛け合わせて計算値を算出し「重みづけ和」として和を計算します。2つ目は、計算された重みづけ和を活性化関数に通し、出てきた値を最終的な出力値として、次の層に伝達する処理です。ネットワーク内の出力層に到達するまで伝播処理が続きます。最後の「出力」で、出力層によって出力されるというプロセスです。
出力層の結果は、ニューラルネットワークの学習に用いられる場合もあります。
ニューラルネットワークとAI
ニューラルネットワークは、AIや機械学習において重要な要素です。AIにはタスク特化型や対話型など多数の種類がありますが、すべてにニューラルネットワークが備わっています。ニューラルネットワークはAIや機械学習における頭脳であり、ニューラルネットワークなしにAI技術は機能しないと言っても過言ではないでしょう。
近年AIが急速に進化を遂げた要因として、ニューラルネットワークの進歩が挙げられます。機械に、人間の脳と同じ仕組みを持つニューラルネットワークを与えることで、進化を促しているのです。
ニューラルネットワークの2種類の学習
ニューラルネットワークにおける学習パターンには、2つの種類があります。ここでは、「教師あり学習」と「教師なし学習」それぞれの特徴について見ていきましょう。
教師あり学習
「教師あり学習」とは、人間が事前に用意した正解データを基にAIに学習させる方法です。トレーニングデータや教師データなどと呼ばれる正解データの学習と、認識・予測という2段階のプロセスで構成されています。システムの不正行為の検出や製品のパーソナライズといった、正解・不正解が明確な問題の解決に使われる学習方法です。
教師あり学習の代表的なアルゴリズムとしては「分類」と「回帰」があります。「分類」は、正解データの例から、新しい対象を分類するアルゴリズムを学習する方法で、「回帰」は、出力変数と1つ以上の予測(入力)変数との間の関係を記述する方法です。
教師あり学習の方が学習精度は高くなるため、基本的には多くの用途で教師あり学習が用いられています。なお、ディープラーニング(深層学習)は、基本的に教師あり学習を発展させた代表例です。
教師なし学習
教師あり学習の対である「教師なし学習」は、正解データがない状態でAIに学習させる方法です。ニューラルネットワークに新しい入力データを継続的に学習させ、自然な分布やカテゴリ関係の発見など入力データから推論を導き出す目的で用いられます。
教師なし学習の代表的なアルゴリズムは、「クラスタリング」と「次元削減」の2つです。クラスタリングは、探索的データ分析からパターンやグループ構造を発見する方法で、遺伝子配列解析、市場調査、物体認識などに利用されています。
次元削減は、データの次元数を減らすことで、データの特徴を示す情報を抽出する方法です。各科目のテストの点数から生徒が文系か理系かを判断するなど、本質的な情報を導き出す用途に向いています。
ニューラルネットワークの歴史と変遷
ここで、ニューラルネットワークの歴史と変遷について紹介します。ニューラルネットワークを理解する上で必須である「パーセプトロン」や、今日のAI技術につながる「ディープラーニング」まで解説しますので、ぜひ参考にしてください。
パーセプトロン
パーセプトロンは、1958年に ローゼンブラットにより提案された最も一般的なモデルです。0か1かを出力する「形式ニューロン」を複数並列に組み合わせた後、出力ニューロンで束ねる、という2層構造により、正しい応答方式として示しています。
画期的な技術としてAIブームを起こしたパーセプトロンですが、線形分離可能とされる簡単な問題しか解けず、実用性に欠けるという課題がありました。世の中の問題の大部分は複雑であり、パーセプトロンだけでは解けないため、徐々に廃れていきます。
マルチレイヤーパーセプトロン
次に提案されたのは、多層パーセプトロンとも呼ばれる「マルチレイヤーパーセプトロン(MLP)」です。パーセプトロンが多層構造化したモデルで、1986年に、出力と正解データの誤差を用いて重みを修正する「誤差逆伝播法」が開発されたことにより、「中間層(隠れ層)」を入れたマルチレイヤーパーセプトロンが登場しました。
パーセプトロンでは難しかった複雑な問題の処理が可能ですが、レイヤーを増やした分、当時の技術だけではデータ不足で学習が向上しない点という課題があったのです。また、精度が不十分であることや、学習データに適合しすぎる「過学習」現象も解消が必要でした。
ディープラーニング
2006年にオートエンコーダと呼ばれる技術が開発されると、「ディープニューラルネットワーク(DNN)」が登場します。今日のAI技術において最も重要とされる技術であるディープラーニング(深層学習)は、レイヤーを深くしてより複雑な問題に対処するアイデアを実現し、ニューラルネットワーク自身が特徴を捉えることに成功しました。
マルチレイヤーパーセプトロンの課題であった学習データ不足が、WebやSNSの浸透により解消され、層を増やしても十分に学習できる膨大なデータを高速で収集することが可能です。ディープラーニングは、AIブームのブレイクスルーのきっかけとして注目を集め、今日に至っています。
機械学習とディープラーニングの違い
ここで、機械学習とディープラーニングの違いを解説します。機械学習とは、ニューラルネットワークの学習モデルを活用する分野のことです。先述した教師あり学習や教師なし学習も、機械学習の種類に含まれます。
一方、ディープラーニング(深層学習)とは、層を深くしたニューラルネットワーク(ディープニューラルネットワーク)を使った機械学習の手法です。ディープラーニングではニューラルネットワークの層が多い分、学習コストが上がりますが、従来では対応できなかった複雑な問題が解ける可能性を秘めています。
なお、ディープラーニングは、入力データから直接特徴を抽出し学習できる機械学習技術です。自動翻訳や音声認識といった複雑な識別が必要とされる分野に適しています。また、ADAS(先進運転支援システム)や交通標識認識など、自動運転技術に関するタスクでも重要な技術です。
ニューラルネットワークの代表な種類
ニューラルネットワークにはさまざまな種類が存在しています。ここでは、特に有名な5つのニューラルネットワークの特徴や仕組みについて見ていきましょう。
CNN
CNN(Convolutional Neural Network)は、いくつもの深い層を持ったニューラルネットワークのことで、日本語で「畳み込みニューラルネットワーク」と呼ばれます。画像認識でよく用いられており、画像データを多層フィルターに通し、圧縮してニューラルネットワークに入力する仕組みです。
CNNは「畳み込み層」や「プーリング層」などの特殊な層で構成されています。画像認識処理の他、自然言語処理にも採用され、Facebookの写真の自動タグ付けやGoogle翻訳におけるニューラル機械翻訳を使ったアップデートでも話題を集めました。
RNN
RNN(Recurrent Neural Network)は、時系列データを扱えるニューラルネットワークです。日本語では「再帰型(回帰型)ニューラルネットワーク」といい、「リカレントニューラルネット」や「フィードバックニューラルネット」などとも呼ばれます。
RNNには、以前計算された情報を覚える記憶力が備わっているため、直前の言葉やデータに左右されず、一定の要件下で特定の言葉を覚えながら作業可能です。文章内の文字列や株価など連続的な情報やデータを扱うのに適しており、機械翻訳や音声認識、動画分析などさまざまな分野で活用されています。
LSTM
LSTM(Long Short Term Memory)は、前述のRNNをさらに進化させたモデルで、時系列データの解析にも用いられています。「Long Short Term Memory」という言葉の通り、従来のRNNセルでは難しかった、長期依存が必要なタスクの学習が可能です。RNN同様に、時系列を考慮できる特徴を活かして、自然言語処理や時系列データの予測といったシーンを中心に採用されています。
LSTMでは、「ゲート」と呼ばれる情報の取捨選択機構を用います。各ゲートでは、出力が0であればゲートを通さず、1であればすべて通すといったように、シグモイド関数を用いて情報の取捨選択を決定します。忘却ゲートを1、入力ゲートを0にすることで、状態は永久に保持され続けるという仕組みです。
忘却ゲートにより、文章の中で主語が変わったタイミングで的確に判断することが可能です。また、季節の変わり目や日付の変更への対応も実現しています。
オートエンコーダ
オートエンコーダ(Autoencoder)とは、日本語で「自己符号化器」とも呼ばれ、ニューラルネットワークを使った学習手法の1つです。
オートエンコーダは入力層・隠れ層・出力層それぞれのノードと、ノードをつなぐエッジで構成されています。まず、入力層のノードでデータを受け取り、隠れ層に圧縮される段階でデータの重み付けが行われ、点数が低いデータは除外(エンコード)される仕組みです。
隠れ層からデータが出力層に移る時にも同様に重み付けされ、複数のエッジから受け取ったデータの合計が最終的な値として出力(デコード)されます。
エンコードとデコードという2つのプロセスは、データ学習後にそれぞれ独立させて使用可能です。オートエンコーダにおける学習過程では、入出力が一致するようにエッジの重みを調整し、データの中から復元に必要な情報だけを抽出し、効率的にネットワークを形成することが可能です。
DNN
DNN(Deep Neural Network)は、多層のニューラルネットワークのことです。最も一般的な深層学習モデルで、AI技術に欠かせない機械学習に用いられています。
近年コンピュータの計算処理能力が劇的に向上し、大規模なDNNを構築可能になったことで真価を発揮できるようになりました。多層構造によって、より多くのデータを高速で学習でき、先述のディープラーニングにおける大幅な進化を実現しています。近年のAI技術の発展と浸透をもたらした主要なモデルといえるでしょう。
ニューラルネットワークで実現可能な技術
ニューラルネットワークによって実現可能な技術は多岐に渡り、技術の進化とともに種類も増えています。私たちの生活にも馴染みの深い技術として、「画像認識」や「音声認識」などがあるでしょう。
「画像認識」は、スマホの顔認証や自動運転技術など幅広いシーンで使われている画像データを認識・分析する技術です。最近では、手書き数字の認識や動物の分類といったより複雑なタスクも実行でき、医療現場や製造現場などでのビジネスユースにも注目が集まっています。
「音声処理」は、AmazonエコーやGoogleホームといったスマートスピーカーで活用される音声を認識して文字に変換する技術です。会議中の発言を録音し、自動で議事録を作成するといった使い方もできます。
短期間で大幅に発展、進化を遂げたニューラルネットワークは今後さらなる進歩によって、多彩な技術の実現につながると予測できるでしょう。
ニューラルネットワークを応用した事例
ニューラルネットワークはAIをはじめ、すでに多くのシーンで導入、活用されています。代表的な活用事例は以下の通りです。
パターン認識による意思決定をサポートできるニューラルネットワークの技術は、上記以外にもさまざまな用途が考えられます。
ニューラルネットワークはさまざまな分野に活用が期待される
ニューラルネットワークは、世界的に注目を集めているAI(人工知能)を理解するために重要な基本要素です。人間の脳を模範として作られたニューラルネットワークは、約70年に渡る歴史の中で大きく進化、変遷を遂げてきました。
ニューラルネットワークの適切な学習方法と活用技術を用いることで、AIのさらなる発展が期待できます。すでに画像認識や音声認識といった技術が日常的に使われており、今後より身近な存在へと変わっていくでしょう。AIシステムの開発や導入を検討する上で必須の知識といえるニューラルネットワークについて、正しく理解を深める必要があります。
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