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最終更新日:2026/05/26
IDaaSとは?
クラウドサービスやSaaSの利用が業務に欠かせない今、社員のID・パスワード管理やセキュリティリスクに悩む情シス担当者が増えています。こうした課題を解決する仕組みとして注目を集めているのが「IDaaS(Identity as a Service)」です。
本記事では、IDaaSの基本的な意味や機能、導入のメリット・注意点、国内市場の動向、企業規模別の利用状況、代表的な製品、選定時の確認事項まで順に紹介します。
これからIDaaSの導入や、既存環境からの見直しを検討している方に向けた内容です。

IDaaSとは「Identity as a Service」の略で、一般的に「アイダース」または「アイディーアース」と読まれます。クラウド上で社員や利用者のID・パスワードを一元管理し、認証や権限制御をサービスとして提供する仕組みです。
現場の情報システム部門が直面するID管理の課題は、以下の通りです。
IDaaSは、こうした現場の課題に対する具体的な解決手段として注目されています。
IDaaSとよく混同される概念にシングルサインオン(SSO)があります。SSOは「一度のログインで複数のシステムやサービスを利用できる仕組み」のことです。一方のIDaaSは、SSOを含むID管理機能全体をクラウドサービスとして提供するものです。
つまり、SSOはIDaaSの代表的な機能のひとつです。IDaaSはSSOに加えて、ID一元管理、多要素認証、アクセス制御、監査ログなど、企業のID管理に必要な機能をまとめて提供します。
国内企業では長らくMicrosoftのActive Directory(AD)や、ADFS(Active Directory Federation Services)を用いた認証基盤が主流でした。これらは社内サーバーに構築するオンプレミス型のID管理で、自社ネットワーク内のシステム管理には強みがあります。
一方、IDaaSはクラウド型であり、社外からのアクセスや多様なSaaSとの連携に向いています。リモートワーク環境や複数のクラウドサービスを利用する業務では、IDaaSの方が認証連携やアクセス制御を設計しやすい場合があります。
すでにAD・ADFSを運用している企業では、IDaaSとの併用や段階的な移行を検討するケースもあります。

一度のログインで、社内システムや複数のSaaSにアクセスできる機能です。利用者は毎回パスワードを入力する必要がないので、業務効率と利便性が大きく向上します。
さらに、社員がパスワードを使い回すリスクを減らせる点も、大きなメリットです。
ID・パスワードに加え、スマートフォンへの確認通知、ワンタイムパスワード、生体認証などを組み合わせて本人確認を行う機能です。単一のパスワードに依存しないため、パスワード漏洩時の不正アクセスリスクを下げやすくなります。
ただし、SMS認証やワンタイムパスワードなど、方式によって安全性や使いやすさは異なるため、自社のリスクに合った認証方式を選ぶことが重要です。
社員のアカウントを、管理者画面から一元的に作成・変更・削除できます。人事システムと連携すれば、入社・退職・異動時のアカウント発行や権限変更を自動化することも可能です。利用サービスが増えた場合でも、ID管理を集約しやすくなる点がメリットです。
利用者の所属部署・役割・端末・接続元IPアドレスなどの条件に基づき、アクセス可否を細かく制御する機能です。
さらに、誰がいつ、どのサービスにログインしたかを記録する監査ログ機能を活用することで、内部不正の抑止やインシデント発生時の追跡調査に役立ちます。

業務システムのクラウド移行と、SaaSの利用拡大が進んでいます。Microsoft 365、Google Workspace、Salesforceなど、複数のクラウドサービスを業務で同時利用する企業も増えています。
サービスごとに個別のIDを管理していると、社員数とサービス数に応じて管理対象が増え、情シス担当者の負担も大きくなります。クラウドサービスを多く利用する業務環境では、IDを一元管理できる仕組みの重要性が高まっています。
リモートワーク、ハイブリッドワーク、フリーアドレスといった働き方の変化により、社員は社内外のさまざまな場所・端末から業務システムにアクセスするようになりました。社内ネットワークの内側にいることを前提とした境界型のセキュリティでは、十分な管理が難しくなる場面もあります。
どこからアクセスしても、強固で一貫した認証を提供できるIDaaSは、新しい働き方に対応するための認証基盤として注目されています。
「ゼロトラスト」とは、「社内ネットワークだから安全」といった前提に頼らず、利用者や端末、アクセス先などを確認しながら、必要な範囲でアクセスを許可するセキュリティの考え方です。NIST SP 800-207でも、ゼロトラストはネットワーク境界中心の防御から、ユーザー、資産、リソースに焦点を移す考え方として説明されています。
クラウド利用やリモートワークの広がりを背景に、日本でもゼロトラストを意識した認証・アクセス管理の見直しが進んでいます。
ゼロトラストへの移行には、ネットワーク・端末・データなど多面的な対策が必要ですが、その出発点となるのが「誰がアクセスしているか」を毎回確実に確認できる強固な認証基盤です。クラウド前提の認証を担えるIDaaSへのニーズが、こうした流れの中で高まっています。

社員はSSOにより、複数サービスへ毎回ログインする手間から解放されます。「サービスごとにパスワードを入力する」「思い出せずに再設定する」といった日常的な小さなストレスがなくなり、本来の業務に集中できるようになります。
多要素認証やアクセス制御を全社で統一的に適用しやすくなります。サービスごとに認証強度がバラバラだった状態を見直すことで、認証設定が弱いサービスを放置しにくくなります。さらに監査ログにより、不正アクセスの早期発見や原因調査にも役立ちます。
入社・退職・異動に伴うアカウント発行や削除を、人事システムと連携して自動化できます。情シス担当者の手作業が大幅に減り、退職者アカウントの放置といった重大リスクも未然に防げます。
IDaaSを導入すると、社員がどこから・どの端末でアクセスしても、条件に応じた認証ポリシーを適用しやすくなります。
たとえば「会社支給端末からのアクセスは通常認証、私物端末からは多要素認証を必須にする」といった制御も可能です。リモートワークや複数拠点での業務でも、場所や端末に応じたアクセス管理を行いやすくなります。

IDaaSはクラウドサービスのため、月額または年額の利用料が継続的に発生します。利用ユーザー数や機能プランによってコスト感が変わるため、導入前に必要な機能と費用のバランスを慎重に見極めることが大切です。
IDaaSは認証基盤の中核を担うため、障害が発生すると複数の業務システムへ同時にアクセスできなくなるリスクがあります。サービス稼働率を保証するSLA(Service Level Agreement/サービス品質保証)の内容に加え、ステータスページや障害情報の公開状況、障害発生時の通知方法、サポート窓口の対応範囲を確認しておきましょう。
また、万が一IDaaSが停止した場合に備えて、緊急時の管理者アクセス手順や代替の認証方法を検討しておくことも大切です。
IDaaSは多くのSaaSと標準で連携可能ですが、すべての社内システムや特殊なクラウドサービスがそのまま連携できるわけではありません。
自社で利用しているシステムが対応しているか、選定時に必ず確認してください。社内にクラウド対応していない既存システムを抱えている場合は、連携範囲をあらかじめ確認しておく必要があります。

画像引用:IDaaS市場における規模の推移と予測(2023~2029年度予測)
国内のIDaaS市場は、年々拡大しています。国内IT市場の動向を専門に調査するアイ・ティ・アール(ITR)が2026年4月に発表した調査によれば、直近の確定値である2024年度の国内IDaaS市場の売上金額は303億5,000万円に達し、前年度比23.9%増となりました。クラウドサービスの利用拡大とゼロトラストへの移行が、市場成長の追い風になっています。
国内市場では、Microsoft Entra ID、Okta、HENNGE One、GMOトラスト・ログイン、IIJ IDサービスなど、国内外の複数サービスが選択肢になっています。
HENNGE株式会社は、「HENNGE One」がITRの調査におけるIDaaS市場のベンダー別売上金額シェアで、2021年度から2023年度、2024年度予測まで4年連続1位を獲得したと発表しています。国内企業向けに展開する国産IDaaSと、グローバルに提供される海外製IDaaSが並ぶ構図です。
またITRは同調査で、2025年度のIDaaS市場規模も2桁増を維持し、2024〜2029年度の年平均成長率(CAGR)は9.5%になると予測しています。企業で利用するSaaSやIaaSが増え、ハイブリッド環境でのID管理が複雑化していることも、市場拡大の背景にあります。
今後は、APIキーやサービスアカウントなど、人以外のIDをどのように管理するかも重要なテーマになっていくと考えられます。
ID管理製品を提供するエクスジェン・ネットワークスは、2023年9月から11月にかけて「日本企業のID・アカウント運用実態調査」を実施しました。同社の関連コラムによると、国内603企業を対象にした調査において、ID管理専用ツールを「導入済み」と回答した割合は以下の通りです。
大企業ほどID管理専用ツールの導入率が高い一方で、中小企業では「導入予定はない」と回答した割合が61.9%にのぼっています。企業規模によって、ID・アカウント管理への対応状況に差があることがわかります。
同調査からは、現場のID管理に何を使っているかも見えてきます。中小企業では「Active Directory」が51.1%、「ExcelやCSVなど」が45.1%と、専用ツール以外で管理しているケースが多く見られます。情報システム担当者が手作業で管理してきた背景が、データにも表れています。
一方で、社員数の増加・SaaS数の増加・リモートワークの普及により、手作業ベースの管理は限界を迎えつつあります。社員数の多い大手・中堅企業がIDaaSを含む専用ツールに移行している傾向は、こうした管理負荷の増大を反映しているといえるでしょう。
認証強化の取り組みも、企業の現状によって優先順位が異なります。同調査では、今後の認証強化として次のような傾向が示されました。
自社が現在どの段階にあるかを確認し、無理のない順序で取り組みを進めることが、IDaaSを活用するうえで重要です。

画像引用:Okta
グローバルで広く利用されているIDaaS製品です。Okta Integration Networkでは、8,000以上の事前構築済み連携が提供されています。多くのクラウドサービスと連携しやすく、複雑な認証・アクセス管理にも対応しやすい点が特徴です。

画像引用:Microsoft Entra ID
Microsoft 365を利用している企業にとって、有力な選択肢のひとつです。Azure Active Directoryから名称変更されたサービスで、Microsoft製品との統合に強みがあります。条件付きアクセスなど、企業向けの認証・アクセス管理機能も提供されています。

画像引用:GMOトラスト・ログイン
GMOグローバルサインが提供する国産IDaaSです。導入企業数9,000社以上の実績を持ち、SSO、ID管理、多要素認証、SaaS利用の可視化などを提供しています。中堅・中小企業でも検討しやすい料金設計が特徴です。
HENNGE Oneは前述の通り、ITR調査でIDaaS市場のベンダー別売上金額シェアにおいて、2021年度から2023年度、2024年度予測まで4年連続1位を獲得したと発表されている国産IDaaSです。IIJ IDサービスは、IIJが提供するクラウド型のID管理・認証管理サービスで、Microsoft 365をはじめとしたクラウドサービスやリモートアクセス用途で利用できます。
各社それぞれに特徴があるため、自社の業務環境に合わせて比較することが重要です。
IDaaSは製品によって機能や特徴が大きく異なります。ここでは4つの視点から、自社に合ったサービスを選定する際の確認事項を説明します。
選定前には、現在利用しているSaaSや社内システム、利用者数、管理者の運用体制を洗い出しておくことが大切です。どのサービスをSSOの対象にするのか、どの部門から導入するのか、既存のActive Directoryと連携する必要があるのかを確認しておくと、製品比較がしやすくなります。
最初に確認したいのは、自社で利用しているSaaSや社内システム、これから導入予定のサービスに、選定中のIDaaSが対応しているかという点です。標準で連携可能なサービス一覧は各ベンダーが公開していますので、自社にとって優先度の高いサービスから順にチェックしていくとよいでしょう。
セキュリティ強度を高めれば高めるほど、利用者の負担も増す傾向があります。多要素認証の方式(SMS、認証アプリ、生体認証、ハードウェアトークンなど)、条件付きアクセスの細かさ、リスクベース認証の有無などを比較し、自社の業務スタイルに合った認証強度と利便性のバランスを見極めましょう。
既存のActive Directoryやオンプレミスシステムとの連携可否、ハイブリッド構成のサポート状況も重要な検討項目です。クラウド完全移行はまだ難しいけれど、段階的にIDaaSを取り入れたい、というニーズに応えられるかをチェックしてください。
IDaaSはユーザー数ベースの課金が一般的ですが、機能プランや年間契約の有無によって料金は大きく変わります。初期費用や追加機能の追加料金も含めて、トータルコストで比較しましょう。導入後のサポート体制(国内サポートの有無、対応時間、ドキュメントの充実度)も、長く使うサービスとして見落とせない確認事項です。
まずは「なぜIDaaSを導入するのか」「導入によって何を改善したいのか」を明確にしておきましょう。SSOによる利便性向上を重視するのか、認証強化を優先するのか、人事システムとの連携による運用自動化を進めたいのかによって、必要な機能や選定基準は変わります。
いきなり全社一斉導入を目指すと、想定外の課題や業務影響が大きくなりがちです。まずは特定の部門や利用頻度の高いSaaSから始め、運用手順や問い合わせ対応の流れを確認したうえで、段階的に範囲を広げる方法がおすすめです。
IDaaSは導入して終わりではなく、継続的な運用が前提のサービスです。アカウント管理、権限変更、利用者からの問い合わせ対応など、運用業務を誰がどう担うのかを事前に設計しておきましょう。人事システムとの連携設計や、定期的なアカウント棚卸しのルール化も重要です。
IDaaSは、クラウドサービスやSaaSの利用拡大、リモートワークの定着、ゼロトラストを意識したセキュリティ対策の中で、企業の認証基盤として重要性を増している仕組みです。SSOや多要素認証、ID一元管理、アクセス制御といった機能をまとめて提供し、現場のID管理課題を減らすための基盤になります。
製品選定時には、連携範囲・認証強度・自社環境との適合性・コストとサポートの4つの軸で比較してください。導入目的を明確にし、スモールスタートで運用手順を確認しながら進めることで、社員の利便性・情シスの運用負担・全社のセキュリティ管理を見直しやすくなります。
アイスマイリーでは、生成AIのサービス比較と企業一覧を無料配布しています。課題や目的に応じたサービスを比較検討できますので、ぜひこの機会にお問い合わせください。
規模や連携対象のサービス数にもよりますが、小規模な導入であれば1〜2ヶ月、複数システムとの連携や全社展開を伴う場合は3〜6ヶ月程度を見込むケースがあります。ただし、既存システムとの連携、人事データの整備、社内周知の範囲によって期間は変わります。まずは対象サービスや部門を絞り、段階的に進める方法が現実的です。
はい。多くのIDaaS製品はAD連携機能を備えており、ハイブリッド構成での運用が可能です。既存資産を活かしながら、徐々にクラウド側へ移行していく現実的な進め方が選べます。Microsoftも、オンプレミスのWindows Server Active Directoryのサポートと強化を継続すると説明しています。
エクスジェン・ネットワークスの調査では、中小企業でID管理専用ツールを導入済みと回答した割合は16.8%にとどまっています。一方で、SaaS利用が増える中で、ID管理の煩雑さは企業規模を問わず課題になりやすい部分です。中小企業でも検討しやすい料金プランを用意するベンダーがあるため、まずはSSO中心の最小構成から始める方法が現実的です。
一概には言えません。社内サーバーや既存システムがADに依存している場合、すぐに完全廃止できないケースもあります。IDaaSとADを連携させ、既存環境を活かしながら段階的にクラウド側へ移行する方法が現実的な選択肢になります。
選定段階でSLA、障害情報の公開状況、障害発生時の通知方法、サポート体制を確認することが基本です。重要システムについては、緊急時の管理者アクセス手順や代替の認証方法をあらかじめ定めておくと安心です。IDaaSに依存する範囲が広いほど、障害時の対応手順を事前に決めておくことが重要です。
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