生成AI

最終更新日:2026/08/12
「従業員が個人アカウントの生成AIに顧客情報を入力していないか」「AIツールの利用を全面禁止すべきか」と悩む企業は少なくありません。
シャドーAIとは、企業が把握・承認していないAIツールを、従業員が業務で利用する行為または状態です。放置すると、情報漏洩だけでなく、契約・著作権上の問題、誤情報の業務利用、外部連携を起点とする不正アクセスにつながるおそれがあります。
本記事では、シャドーAIの意味と関連事例、自社での見つけ方、可視化から継続監視までの5ステップを情シス担当者向けに解説します。

シャドーAIとは、企業のIT部門やセキュリティ部門が把握・承認していないAIツールを、従業員が業務で利用する行為または状態を指します。ChatGPTやGeminiなどの生成AIはブラウザから利用できるため、企業の承認手続きを経ずに業務へ持ち込まれる可能性があります。
具体的には、次のような行為がシャドーAIに当たります。
こうした利用は、業務効率化や作業時間の短縮を目的に始まることもあります。ただし、悪意の有無にかかわらず、企業が利用状況や情報の取り扱いを管理できない点がリスクになります。
シャドーITが未承認のクラウドサービスやアプリの利用全般を指すのに対し、シャドーAIはAIへの情報入力、生成結果の誤り、外部連携に固有のリスクを含む点が特徴です。
| 項目 | シャドーIT | シャドーAI |
| 対象 | 未承認のクラウドサービス・アプリ全般 | 未承認のAIツール・AIサービス |
| 主なリスク | データ管理の不備、アクセス制御の欠如 | 上記に加え、入力情報の外部処理、生成結果の誤り |
| 典型例 | 個人のクラウドストレージ、チャットツールの業務利用 | 個人アカウントの生成AI、AIブラウザ拡張、AIコーディングツール |
外部事業者が提供するAIサービスを利用した場合、入力情報は事業者の環境で処理され、サービスの仕様や設定によっては一定期間保存されることがあります。保存期間やモデル学習・サービス改善への利用条件は、契約プランや管理設定によって異なるため、利用規約とデータ管理方針の確認が必要です。
BYOAI(Bring Your Own AI)とは、従業員が個人で選んだAIツールを職場に持ち込んで使う行動そのものを指す言葉です。BYOAIは必ずしも違反や問題を意味するわけではなく、企業が把握・承認したうえで許容している場合も含みます。一方、そのBYOAIのうち、企業が把握・承認していないまま行われている利用がシャドーAIに該当すると整理できます。
MicrosoftとLinkedInが実施した「2024 Work Trend Index」によると、日本で仕事にAIを利用している人のうち78%が、自前のAIツールを職場に持ち込んでいると回答しました。調査は2024年実施のため、2026年現在の数値としてそのまま扱わないよう注意が必要です。それでも、この結果はBYOAIがすでに珍しい行動ではないことを示しています。シャドーAIを一部の従業員だけの問題として片づけるのではなく、企業全体で向き合うべき課題として捉える必要があるといえるでしょう。
出典:シャドーAIとは|IBM/日本でも進む “Bring Your Own AI”|日本マイクロソフト
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シャドーAIが増える主な背景は、生成AIの手軽さ、社内整備の遅れ、外部連携の増加という3点です。
生成AIは、専門的な知識がなくてもブラウザから数分で使い始められます。無料で利用を始められるサービスもあり、会社の導入手続きを経ずに従業員が個人アカウントを作成できる場合があります。
企業側が公式のAIツールやガイドラインを用意する前に、現場では「議事録を早く仕上げたい」「資料作成を効率化したい」といった実務上のニーズが先行しがちです。公式な選択肢や相談先が用意されていないと、従業員が個人で利用できるツールを業務へ持ち込む可能性があります。
AIツールの中には、SaaSや業務システムとOAuth・APIで連携できるものがあります。管理設定によっては、従業員が個人の判断で外部アプリへOAuth権限を付与できる場合もあるでしょう。企業が連携状況を確認できなければ、必要以上の権限が付与されても把握できないおそれがあります。

シャドーAIの主なリスクは、情報漏洩、法令・契約違反、著作権侵害、誤情報、過剰なアクセス権限、品質・コストの統制不全の6つです。単なる情報漏洩だけでなく、複合的な影響を及ぼす点に注意が必要です。
顧客情報や未公開の企画書、ソースコードを外部のAIサービスへ入力すると、事業者の環境で処理されます。サービスの仕様や設定によっては入力内容が保存され、モデル学習やサービス改善に利用される可能性もあります。個人情報保護委員会も、生成AIサービスの利用にあたって、入力した情報が学習データとして扱われる可能性がある点への注意を呼びかけています。
個人情報を含むプロンプトを入力する場合は、あらかじめ特定した利用目的の範囲内であるかを確認する必要があります。また、本人の同意なく入力した個人データが回答生成以外の目的で取り扱われる場合、個人情報保護法に違反する可能性があります。事業者が入力データを機械学習などに利用しないことも、あわせて確認しましょう。取引先から預かった機密情報を無断でAIに入力すれば、秘密保持契約(NDA)などの契約違反となる可能性も否めません。
文化庁は、AIの生成物を公開・販売する段階では、既存の著作物との類似性や依拠性によっては著作権侵害となりうるとの考え方を示しています。AIが生成した文章や画像をそのまま業務に使う際は、この点への注意が欠かせません。
生成AIは、事実と異なる内容でも自信ありげに回答することがあります。この現象はハルシネーションと呼ばれ、出力を十分に確認しないまま業務判断に使うと、誤った意思決定につながりかねません。
AIツールと社内システムを連携させる際、必要以上に広い権限を付与すると、そのAIツール自体が攻撃を受けた場合に社内システムへの侵入経路になりえます。管理設定によっては、こうした連携設定を従業員個人の判断で完結できる場合があり、企業が把握しないまま権限が広がるおそれがあります。後述するVercelの事例が参考になるでしょう。
部署ごとに異なるAIツールを個別契約すると、料金体系や利用範囲が重複し、契約管理が複雑になりがちです。AIの使い方が担当者ごとにばらつくと、成果物の品質も属人化しやすくなります。契約状況を一元的に把握できていないと、類似機能を持つサービスの重複契約や、利用されていないアカウントの継続課金に気づきにくくなります。
AIを業務利用する企業では、こうしたリスクを自社の課題として確認しておく必要があります。IPA(情報処理推進機構)が2026年1月29日に発表した「情報セキュリティ10大脅威 2026」では、組織向けの脅威として「AIの利用をめぐるサイバーリスク」が初めて選出され、第3位にランクインしました。
出典:生成AIサービスの利用に関する注意喚起等について|個人情報保護委員会/AIと著作権について|文化庁/情報セキュリティ10大脅威 2026|IPA

2026年4月、Vercel社が公表したセキュリティインシデントは、従業員が利用していたサードパーティ製AIツールの侵害を起点とする不正アクセスの事例として、シャドーAIに関連するリスクを考えるうえで参考になります。
Vercel社の公式発表によると、今回のインシデントは、同社の従業員が業務で利用していたサードパーティ製AIツール「Context.ai」のGoogle Workspace向けOAuthアプリが侵害されたことに端を発します。攻撃者はこのアクセス権限を悪用して、当該従業員のGoogle Workspaceアカウントを乗っ取り、そこからVercelアカウントと社内システムへ侵入を広げました。
影響を受けたのは限定的な顧客で、Vercel上で「Sensitive(機密)」とマークされていなかった一部の環境変数がアクセスの対象になったと公表されています。マークされていなかっただけで、内容自体に機密性の高い認証情報が含まれていた可能性もあるため、Vercelは対象顧客に認証情報の変更などを案内しました。
なお、Context.aiがVercel社内で正式に承認されていたツールだったかどうかは、公式発表からは確認できません。そのため本事例を「シャドーAIによる事故」と断定はできませんが、従業員が業務で使うAIツールの外部連携やOAuth権限が、企業全体のセキュリティに影響しうることを示す参考事例だといえるでしょう。
出典:Vercel April 2026 security incident|Vercel

本記事では、企業が把握・承認していないまま社内システムと接続され、処理を自律的に実行するAIエージェントを、便宜上「シャドーAIエージェント」と呼びます。法令や公的ガイドラインで統一された正式名称ではない点にご留意ください。
チャット型生成AIは、人の入力を起点に文章や画像を返す利用が中心です。一方、AIエージェントは目標に沿って計画を立て、複数のツールやシステムを使いながら処理を連続実行する場合があります。社内システムを自ら操作する権限を持つケースもあるでしょう。加えて、長期間有効なアクセストークンを保持し、外部データを受け取って複数の処理を連続実行することもあります。こうした自律性と権限の広さが、チャット型生成AIとの主な違いです。
OWASPは、AIエージェント固有の主要リスクとして、外部コンテンツによる目標の乗っ取り、接続ツールの悪用、ID・権限の悪用、処理の連鎖的な失敗などを挙げています。未承認のAIエージェントが社内システムへ接続されると、企業がこうしたリスクを評価できないまま権限だけが付与されるおそれがあります。
先述したVercelの事例は、AIエージェントが自律的に誤動作した事故ではなく、第三者AIツールとOAuth連携が侵害されたケースです。ただし、AIエージェントの利用が広がるほど、こうした外部連携や権限管理の論点は重要性を増していくと考えられます。管理にあたっては、誰が所有しているか、どこまでの権限を持つか、どこに接続しているか、実行ログを追跡できるかという4点を確認することが出発点になります。
出典:OWASP Top 10 for Agentic Applications for 2026|OWASP GenAI Security Project

シャドーAIを把握するには、通信ログだけでなく、OAuth同意履歴、端末、経費、API連携、従業員へのヒアリングを組み合わせることが重要です。
対策を検討する前に、まず自社でどの程度シャドーAIが使われているかを把握することが出発点になります。以下の6つの方法を組み合わせると、ネットワークのログだけでは見えない利用実態まで確認しやすくなります。
| 確認方法 | 確認する場所 | 発見できる利用例 |
| Webアクセス・DNSログ | プロキシ、ファイアウォール、DNS管理画面 | 生成AI・議事録AIサービスへのアクセス |
| SSO・OAuth同意履歴 | IdP(ID管理基盤)、Google Workspace等の管理コンソール | 未承認AIサービスへのアカウント連携 |
| ブラウザ・端末の棚卸し | MDM、ブラウザ拡張機能管理 | AIブラウザ拡張機能、デスクトップアプリ |
| 経費・契約の確認 | 法人カード明細、経費精算システム | 従業員個人契約のAIサービス |
| API・外部連携の確認 | API管理画面、クラウド監査ログ、シークレット管理基盤 | 未承認のAI API、APIキー、AIエージェント連携 |
| 匿名アンケート | 社内フォーム | ログに表れない個人端末・私物での利用 |
アクセスログや端末情報を確認する際は、社内規程やプライバシーポリシーに沿って、確認目的・対象範囲・閲覧権限を明確にしてください。従業員への周知なしに監視範囲を広げると、現場の不信や利用実態の隠蔽を招くおそれがあります。
これらを組み合わせて確認したうえで、簡易チェックリストで自社の現状を整理しておくと、後述する対策の5ステップに進みやすくなります。
これらの項目に一つでも当てはまらないものがある場合は、次章のステップ1から着手することをおすすめします。

シャドーAI対策は、全面禁止ではなく、利用実態の可視化、ルール策定、承認済みAIの提供、教育、継続監視という順序で進めます。
前章の方法で見つかったAIサービスは、名称・用途・利用部署・入力データの種類・責任者・承認状況を一覧化し、リスクの高さを仮評価しておきましょう。台帳化しておくことが、次のルール策定や監視の土台になります。一度きりの棚卸しで終わらせず、新しいAIサービスが見つかるたびに追記していく運用を前提にすると、台帳が形骸化しにくくなります。
まず、業務を「利用してよい」「条件付きで利用してよい」「利用を禁止する」の3区分に分類します。そのうえで、顧客情報・営業秘密・個人情報・APIキーやパスワードなど、AIへの入力を禁止する情報を具体例つきで示すと、現場が判断に迷いません。
ルールを検討する際は、経済産業省が公開している「AI事業者ガイドライン(第1.2版)」(AI事業者ガイドライン検討会が取りまとめ)も参考になります。同ガイドラインでは、AIに関わる事業者がリスクを把握し、ライフサイクル全体を通じて必要な対策を実施するための考え方が示されています。
禁止だけで現場の業務ニーズを解消できなければ、従業員が別の未承認AIを利用する可能性があります。ルールの策定とあわせて、業務上の目的を満たせる承認済みAIを用意することが重要です。「有名なサービスだから安全」と判断せず、自社の情報区分と利用目的に照らして承認基準を定めましょう。
| 確認項目 | 主な確認内容 |
| 入力データの利用 | モデル学習やサービス改善に使われるか |
| データ保持 | 保存期間と削除方法を指定できるか |
| 管理機能 | SSO、権限管理、利用停止、監査ログに対応するか |
| 外部連携 | OAuth・APIに付与する権限を制限できるか |
| 契約・規約 | 業務データの取り扱いと責任分界が明確か |
| セキュリティ | 暗号化、第三者認証、インシデント通知体制があるか |
| 出力管理 | 引用元の確認や人によるレビューを行えるか |
AIサービスごとに、入力データの利用目的や保存期間、管理者向けログ、SSO、外部連携の権限範囲などは異なります。契約前にこれらの項目を確認し、承認基準を満たすサービスだけを利用可能な選択肢として提示しましょう。
あわせて読みたい:SaaSの選び方で失敗しない5つのポイント
利用実態を把握しても、自社だけでAIサービスの安全性や管理機能を比較するのが難しい場合があります。AIsmileyでは、法人向け生成AIやAIガバナンス関連サービスの資料をまとめて確認できます。
研修は一度実施して終わりにせず、事故事例の共有や新入社員研修、定期研修などを通じて継続的に行うことが大切です。あわせて、AIの使い方に迷ったときや、誤って機密情報を入力してしまったときの相談窓口を明確にしておきましょう。
あわせて読みたい:生成AIガイドラインとは?作り方や事例を詳しく解説
利用ログを定期的に分析し、どの部署でどのようなAIツールが使われているかを把握し続けます。加えて、未承認AIを発見した際の初動対応をあらかじめ手順化しておくと、いざというときに落ち着いて対応できます。未承認AIを発見した際は、セキュリティ担当者へ連絡し、可能な範囲でログや権限情報などの証跡を保全します。同時に被害拡大の緊急性を評価し、必要に応じてアカウントやOAuth連携を速やかに停止してください。証跡保全と封じ込めの順序は固定的なものではなく、事案の重大性や被害が継続しているかどうかに応じて判断します。
専任のセキュリティ担当者がいない中小企業でも、新たな製品の導入費用を抑えながら着手できる対策があります。
| 実施時期 | 最小限の対応 |
| 今日 | 入力禁止情報と相談先を周知する |
| 1週間以内 | 利用中のAIを匿名アンケートで確認する |
| 1か月以内 | 承認済みAIを決め、簡易ルールを公開する |
| 毎月 | 新しいAI利用と外部連携を確認する |
| 四半期ごと | ルールと承認済みAIを見直す |
出典:AI事業者ガイドライン|AI事業者ガイドライン検討会(経済産業省)

シャドーAIとは、企業が把握・承認していないAIツールを従業員が業務で利用する行為または状態です。BYOAIという広がりの中で、承認・可視化されていない利用がシャドーAIに当たると整理できます。AIを業務利用する企業では、情報漏洩、法令・契約違反、著作権侵害、誤情報、外部連携のリスクを自社の課題として確認する必要があります。
まずは本記事で紹介した6つの方法で自社の利用実態を確認し、台帳化・ルール策定・承認済みAIの提供・教育・継続監視という5つのステップで、禁止ではなく管理によるシャドーAI対策を進めていきましょう。
あわせて読みたい:AIガバナンスとは?ガイドラインの概要や企業の取り組み方を解説
アイスマイリーでは、生成AI のサービス比較と企業一覧を無料配布しています。課題や目的に応じたサービスを比較検討できますので、ぜひこの機会にお問い合わせください。
全面禁止だけでは解決しません。禁止しても現場の効率化ニーズは残るため、個人判断での利用に置き換わるだけになりがちです。安全に使える選択肢を用意したうえでルール化することが現実的です。
同じではありません。BYOAIは従業員が個人のAIを職場に持ち込む行動そのものを指し、企業が把握・承認している場合も含みます。企業が把握・承認していないBYOAIが、シャドーAIに該当します。
会社支給端末か私物端末かにかかわらず、企業が把握・承認していないAIへ業務情報を入力している場合は、本記事で扱うシャドーAIに該当します。
一律にそうとは限りません。学習やサービス改善への利用条件は、サービスや契約プラン、管理設定によって異なります。利用規約やデータ管理方針を個別に確認する必要があります。
入力データの利用目的、保存期間、SSOや権限管理などの管理機能、外部連携の権限範囲、契約上の責任分界を確認しましょう。詳しくは本記事「対策の5ステップ」のステップ3をご覧ください。
基本のルールは応用できますが、AIエージェントは社内システムを操作できる場合があるため、権限範囲や接続先、実行ログの確認など、より踏み込んだ管理が必要です。
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