生成AI

最終更新日:2026/06/01
生成AIのリスクとは?
生成AI(Generative AI/文章や画像などを自動生成するAI)の業務利用が国内企業でも急速に広がるなか、機密情報の漏洩や著作権侵害、ディープフェイク詐欺など、生成AIに関わる重大なインシデントが現実に発生しています。
経営層やDX推進担当者にとって、リスクを把握しないまま社内の生成AI利用を放置することは、もはや看過できない経営リスクとなっています。
本記事では、生成AI導入におけるリスクを把握するため、2026年版のAI事業者ガイドラインや2025年に施行された日本のAI法、国内外の事例を踏まえて、企業が取るべき対策を解説します。
「便利そうだが怖くて踏み出せない」という不安を、具体的で実行可能な「社内ルール」へと変えるための指針を提示します。

ChatGPTやClaude、Geminiといった対話型生成AIの登場以降、文章作成、要約、翻訳、コード生成、画像作成など、業務のあらゆる場面で生成AIが活用されるようになりました。
総務省・経済産業省が公表している「AI事業者ガイドライン(第1.2版)」(2026年3月31日付)でも、対話型の生成AIによって「AIの民主化」が起こり、多くの企業がビジネスプロセスへの組み込みにとどまらず、ビジネスモデル自体の再構築にも取り組んでいると指摘されています。
一方で、業務利用の広がりに比例して、機密情報の入力事故、AIによる誤情報の生成、著作権侵害といったリスクが顕在化してきました。経営層・DX担当者にとって、生成AI活用の推進と並行してリスク管理の枠組みを整えることが、避けて通れない課題となっています。
従来の機械学習AI(画像認識、需要予測など)は、特定のタスクに特化しており、入力と出力の範囲もある程度コントロールできました。一方、生成AIは汎用性が高く、多様な入力に応じて多様な出力を返すため、リスクの広がりも従来とは異なります。
具体的には、入力データがモデル改善のために利用される可能性、AIが事実に基づかない情報を自然な文章で生成してしまう「ハルシネーション(幻覚)」、生成物が他者の著作物に類似してしまう問題などが挙げられます。
これらは従来のAIリスク管理の枠組みでは捉えきれない、生成AI固有の論点です。
生成AIのリスクは、情報漏洩や法的問題にとどまりません。AIが誤った情報を含む業務文書を生成し、それを社外に発信してしまえば、企業の信頼やブランド価値そのものが損なわれます。
前述のAI事業者ガイドライン(第1.2版)でも、リスクをゼロにすることを目指すのではなく、危害の大きさや発生可能性を踏まえて対策の程度を調整する「リスクベースアプローチ」の考え方が示されています。完全な禁止でもなく、無制限の活用でもない、適切なバランスを取ることが企業に求められています。

生成AIには情報漏洩、ハルシネーション、著作権侵害、プロンプトインジェクション、ディープフェイク、シャドーAIなど、多様なリスクが存在します。
これらをどう分類するかは、リスク管理の出発点として重要です。
経済産業省と総務省が公表している「AI事業者ガイドライン」では、AIに関わる事業者を「開発者」「提供者」「利用者」の3つに分類し、それぞれの立場で求められるリスク対応を示しています。
AIモデルやシステムを作る側、それをサービスとして組み込んで提供する側、業務で使う側で、向き合うべきリスクが異なる、という考え方です。
開発者は学習データの管理やモデルの安全性、提供者はサービスとしての品質・透明性、利用者は業務利用上の情報漏洩や誤情報リスクといった具合に、立場ごとに優先度の高いリスクが変わります。
自社が3つのうちどの立場にあるかを意識することで、参照すべきガイドラインの該当箇所も見えてきます。
本記事では、生成AIを業務利用する企業の経営層・DX担当者などを想定し、リスクが「業務のどの場面で発生するか」という観点で見ていきます。
具体的には、情報を入力する場面(機密情報漏洩・個人情報流出)、AIが出力を生成する場面(ハルシネーション・著作権侵害)、運用全般の場面(プロンプトインジェクション・ディープフェイク・シャドーAI)の3つに分けて次章で解説します。

分類フレームワークを踏まえたうえで、企業の業務利用において実際に発生しうる主なリスクを具体的に見ていきます。
生成AIサービスに機密情報や個人情報を入力すると、サービスの設定や契約条件によっては、入力データが保存・学習利用・分析の対象となる可能性があります。外部サービスに送信した情報の取り扱いを自社で十分に管理できない場合、情報漏洩や意図しない利用につながるリスクがあります。
2023年3月には、韓国サムスン電子の社員が半導体関連のソースコードや会議内容をChatGPTに入力し、機密情報が流出したと、韓国メディアEconomist Koreaが報じました。
主要な生成AIサービスでは、デフォルトで入力内容が学習に使われない設定が増えていますが、無償サービスや個人プランでは学習に利用されることもあり、設定や利用規約の確認が欠かせません。社員が悪意なく入力した情報が外部に漏れるリスクは無視できないため、利用するAIサービスの利用規約と、機密情報の入力禁止ルールを社内で明確にしておく必要があります。
ハルシネーションとは、生成AIが事実に基づかない内容を、もっともらしい文章で生成してしまう現象を指します。人間で言えば事実でないことを真実のように語ってしまう現象に近く、生成AIの代表的な特性のひとつとして知られています。
業務利用の場面では「AIが架空の判例や存在しない統計データを引用してしまう」「誤った医療情報を生成してしまう」といった事例が報告されています。
2023年には、米国の弁護士がChatGPTで作成した法廷文書に存在しない判例が引用されていたことが5月に明らかになり、6月に裁判所から5,000ドルの制裁金が科された事案も発生しました(Mata v. Avianca事件)。AIの出力をそのまま信じず、必ず人間が確認するプロセスを業務に組み込む必要があります。
生成AIが生成した文章・画像・コードが、他者の著作物に類似してしまい、著作権侵害となるリスクがあります。特に画像生成AIをめぐっては、海外で複数の訴訟が提起されており、2023年1月には米国のアーティスト3名が画像生成AIサービスを提供する企業を相手取った集団訴訟を起こしました。
日本では、文化庁が2024年3月に「AIと著作権に関する考え方について」を公表し、AI開発・学習段階と生成・利用段階のそれぞれにおける著作権の取り扱いを示しています。生成AIで業務文書や広告クリエイティブを作成する企業は、出力物が既存の著作物と類似していないかを確認する仕組みが求められます。
そのほか、生成AIの業務利用で注意したいリスクとして以下の3つも押さえておく必要があります。

生成AIのリスクは抽象論ではなく、既に国内外で具体的な被害として表面化しています。代表的な事例を業種・リスク種別ごとに見ていきます。
2023年3月、韓国のサムスン電子で、社員がChatGPTに半導体設備に関するソースコードや社内会議の内容を入力したとされる情報漏洩事案が、韓国メディアEconomist Koreaにより複数件報じられました。サムスン電子はこの事案を受けて、社内での外部生成AIサービスの利用を一時禁止するとともに、独自AIの開発に着手したと報じられています。
このインシデントは、社員が悪意なく業務効率化のためにAIを利用しただけで企業の重要な技術情報が外部のAIサービスに渡ってしまうリスクを世界に印象づけた事例として知られています。
参考:Samsung、ChatGPTの社内利用で3件の機密漏洩(PC Watch)
2024年2月、香港警察は、多国籍企業の財務担当者がディープフェイクで作られたCFO(最高財務責任者)の偽映像によるビデオ会議に騙され、約2億香港ドル(約38億円)を詐欺グループに送金していた事件を公表しました。
その後、被害企業は英エンジニアリング企業のArupであると報じられ、同社も被害を認めています。
被害者の財務担当者は、当初は不審なメールを受け取った時点で詐欺を疑っていたものの、実在するCFOや同僚の姿が映ったビデオ会議に参加したことで信用してしまったと報じられています。映像・音声だけでは本人確認ができない時代が到来したことを示す事案です。
参考:会計担当が38億円を詐欺グループに送金、ビデオ会議のCFOは偽物 香港(CNN.co.jp)
画像生成AIをめぐっては、海外で複数の訴訟が提起されています。2023年1月、米国のアーティスト3名が画像生成AIサービスを提供する企業3社を相手取り、自分たちの作品が許可なく学習データに使われたとして集団訴訟を起こしました。
また、米Getty ImagesもStability AIを相手取り、英国と米国で著作権侵害などをめぐる訴訟を提起しています。AI学習や生成物と著作権の関係は各国で判断が分かれる可能性があるため、企業が生成AIで画像や広告クリエイティブを利用する際は、最新の法的動向を確認する必要があります。
また、米国では2023年5月に、弁護士がChatGPTで作成した法廷文書に存在しない判例が引用されていたことが明らかになり、6月22日に裁判所から制裁金5,000ドルが科される事案も発生しました(Mata v. Avianca事件)。生成AIが業務上の信頼性に直結する場面でハルシネーションを起こすリスクを示した事例として、世界的に話題となりました。
参考:ストックフォトのGetty ImagesもStability AIを提訴(ITmedia NEWS)
参考:画像生成AIは著作権侵害かフェアユースか。アーティストたちが大手3社を相手に集団訴訟(ARTnews JAPAN)
参考:ChatGPT生成の”存在しない判例”を使った米弁護士、約72万円の支払いを命じられる(ITmedia NEWS)
業種別に見ると、それぞれ異なる傾向のインシデントが発生しています。
自社の業種で生じやすいリスクを把握し、優先順位をつけて対策していくことが求められます。

インシデント事例を踏まえ、各国・国際機関では生成AIに関するガイドラインや規制の整備が急速に進んでいます。日本企業が押さえておくべき主要な枠組みを紹介します。
生成AIに関する情報を確認するときは、まず「ガイドライン」と「法律」を分けて考えることが重要です。
AI事業者ガイドラインやデジタル庁のガイドラインは、企業や行政機関がAIを安全に活用するための指針です。社内ルール作りの参考になりますが、ガイドラインに沿っていないことだけで、直ちに罰則が科されるものではありません。
一方で、法律は遵守が求められるルールです。
2025年に日本で施行されたAI法は、AIの研究開発・活用を促進しつつ、AIによって生じるリスクに対応するための法律です。ただし、企業の個別のAI利用に対して、細かな禁止事項や罰則を直接定めるEU AI Act型の規制とは性格が異なります。
企業が特に注意すべきなのは、生成AIの利用が既存の法律や契約上の義務に関わるケースです。以下のような使い方は、法令や契約上の問題につながる可能性があります。
参考:生成AIサービスの利用に関する注意喚起等について(個人情報保護委員会)
経済産業省と総務省が共同で策定した、日本国内のAIガバナンスの統一的指針です。2024年4月に第1.0版が公表され、2025年3月に第1.1版、2026年3月31日には第1.2版へと改訂されています(Living Documentとして継続更新)。
AI開発者・AI提供者・AI利用者の3つの主体に分けて、それぞれが取り組むべき事項が示されています。第1.2版では、「AIエージェント」や「フィジカルAI」に関する定義・説明が追加され、自律的に判断・実行するAIや、物理空間に作用するAIのリスクも意識した内容になっています。
AI事業者ガイドラインは、法的拘束力のないソフトロー(自主的な対応を促す指針)です。そのため、ガイドラインに沿っていないことだけを理由に、直ちに罰則が科されるわけではありません。
ただし、取引先や顧客からAIの利用方針を確認される場面では、同ガイドラインを参考にした社内ルールの有無が、企業の信頼性を判断する材料になる可能性があります。
参考:AI事業者ガイドライン(第1.2版/経済産業省・総務省)
日本では、2025年6月に「人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進に関する法律」が公布・一部施行され、同年9月に全面施行されました。
生成AIをはじめとするAI技術の発展が国民生活や経済に大きく関わる一方、AIにより発生するリスクへの不安が高まっていることを受けてAI活用を促進しつつリスクに対応するために整備された法律です。
AI法では、国・地方公共団体・研究開発機関・事業者・国民の責務が示されています。事業者には国や地方公共団体が行う施策への協力などが求められ、国はAIに関する情報収集、権利利益を侵害する事案の分析、必要に応じた調査、事業者等への指導・助言・情報提供などを行うことが定められています。
一方で、AI法は、企業の個別のAI利用に関する細かな禁止事項や罰則を直接定める法律ではありません。
生成AIを業務で使う企業は、AI法の趣旨を踏まえて社内ルールを整えるとともに、個人情報保護法・著作権法・不正競争防止法・各業界の法・契約上の義務など、AI利用の場面で関係しうるルールにも注意する必要があります。
参考:人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進に関する法律(AI法/内閣府)
参考:人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進に関する法律の概要(内閣府・PDF)
デジタル庁は、行政機関での生成AI利活用に関する指針を2024年から段階的に公表してきました。
「行政の進化と革新のための生成AIの調達・利活用に係るガイドライン」(2025年5月策定)は、主に行政機関が生成AIを調達・利用する際の考え方を示したものです。民間企業に直接適用される法律ではありませんが、社内AI利用ガイドラインを作る際の参考になります。
同ガイドラインでは、AI利活用がリスクレベルを判定する4つの軸(利用者の範囲・種別/生成AI利活用業務の性格/要機密情報や個人情報の学習等の有無/出力結果を政府職員が判断して利活用するか)を示しています。
また、新サービス企画から運用まで段階別のリスク管理を求める「高リスク判定シート」や、各府省庁における「AI統括責任者(CAIO/Chief AI Officer)」の設置といった組織的な統制の仕組みも示されています。
行政向けのガイドラインであるため民間企業に直接適用されるものではありませんが、社内ルール策定の参考にできます。
EU(欧州連合)が2024年8月に発効させた、世界初の包括的なAI規制法です。AIシステムを「許容できないリスク」「高リスク」「透明性リスク」「最小またはリスクなし」の4つのカテゴリに分類し、リスクのレベルに応じた規制を課しています。
「許容できないリスク」に該当するAI(人の行動や属性を点数化して評価する「社会的信用スコアリングAI」など)は禁止され、「高リスク」のAI(採用、医療診断、司法判断などに使われるAI)には厳格な要件が課されます。規制は段階的に適用されており、禁止対象AIに関する規制は2025年2月、汎用目的AIモデルに関する規制は2025年8月からすでに施行が始まっています。高リスクAIに関する規則は、対象によって2026年8月または2027年8月から適用される予定です。EU域内で事業を展開する日本企業は、自社の利用するAIが規制対象に該当するかを確認し、対応を進める必要があります。
広島AIプロセスは、2023年5月のG7広島サミットを契機に立ち上がった、AIガバナンスに関する国際的な枠組みです。2023年12月にG7首脳が承認した「広島AIプロセス包括的政策枠組み」と「高度AIシステムの開発組織向け国際指針・国際行動規範」が中核を成します。
2025年2月からは国際行動規範の遵守状況を自主的に報告する「報告枠組み」の運用が開始され、グローバル企業のAIガバナンス水準の透明化が進んでいます。
NIST AI Risk Management Framework(AI RMF)は、米国国立標準技術研究所NISTが2023年1月に発表したAIリスクマネジメント・フレームワークです(公式ページは英語)。
AIのリスクを「統治(Govern)」「マッピング(Map)」「測定(Measure)」「管理(Manage)」する4機能で体系化しています。2024年には生成AI向けのプロファイルも公表されており、生成AIのリスク管理を考える際にも参照しやすい枠組みです。

ガイドラインの動向を踏まえ、企業が実際にどのような対策を講じるべきかを整理します。生成AIリスク対策は、ルール・人・技術・組織の4つの柱を組み合わせるアプローチが基本です。
最初に取り組むべきは、社内の生成AI利用ルールの策定です。どのAIサービスを利用してよいか、どのような情報を入力してはいけないか、出力をどう扱うかといった基本ルールを文書化し、全社に周知する必要があります。
経済産業省・総務省のAI事業者ガイドラインでは、AIガバナンス体制(AIの活用と管理を統合的に推進する組織体制)の構築が推奨されています。経営層自らがリーダーシップを取り、リスクと便益のバランスを継続的に見直していく姿勢が求められます。
ルールを定めるだけでは不十分で、従業員一人ひとりが生成AIのリスクを理解し、適切に判断できるリテラシーを身につけることが欠かせません。「機密情報を入力してはいけない」と頭で分かっていても、業務効率化の魅力が勝ってしまうことは少なくないからです。
基礎的なAIリテラシー教育に加えて、ハルシネーションを見抜くための情報リテラシー、著作権の基礎知識、ディープフェイクなど新しい脅威の最新動向など、継続的な教育の仕組みを設計しておきましょう。
ルールと教育に加えて、技術的な統制も重要となります。具体的には、業務利用が承認されたAIサービスへのアクセスを制限する、機密情報を含むデータが外部AIに送信されないよう監視する、AIの利用ログを記録して定期的に監査するといった対策が挙げられます。
社内専用の生成AI環境(プライベートな利用環境)を構築し、機密情報を扱う業務では外部のパブリックなAIサービスを使わせないという統制方法も、有効な選択肢になります。
AI活用の規模が大きくなれば、組織としての統制責任を明確にする必要があります。デジタル庁のガイドラインでは、各府省庁にAI統括責任者(CAIO/Chief AI Officer)を設置することが定められています。民間企業でも、AI活用の責任者やAIガバナンスを統括する部門を定めることが、社内ルールを機能させるうえで有効です。
AI活用の責任者や統括部門には、自社のAI活用方針の策定、ガイドライン遵守状況の確認、リスク発生時の対応方針の整理など、AIガバナンス全体を見渡す役割が求められます。経営層と連携しながら、AI活用の推進とリスク管理を一体で進められる体制を整えることが重要です。

リスク対策を実装するうえで起点となるのが、社内AI利用ガイドラインの策定です。ここでは、各公的ガイドラインの要件を踏まえた、企業が社内ルールを作るときに盛り込むべき項目を整理します。
社内AI利用ガイドラインには、最低限以下の項目を含めることが推奨されます。
ガイドラインでもっとも重要となるのが、「何を入力してはいけないか」と「どのAIを使ってよいか」の明確化です。
入力時に注意すべき情報の例として、顧客個人情報、人事情報、財務未公開情報、契約情報、ソースコード、内部資料などが挙げられます。一方で、「すべての業務情報を禁止」とすると業務が回らなくなるため、リスクレベルと利用環境に応じた段階的な制限を設計するとよいでしょう。
たとえば、未承認のAIサービスでは社内情報や機密情報の入力を禁止し、承認済みのAI環境では入力できる情報の範囲、匿名化の要否、承認フローなどを定める方法が考えられます。
承認AIサービスについては、利用規約で入力データを学習に使わない設定があるか、データの保存期間が短いか、「法人・企業向けプラン」があるかなどを確認し、企業として認める基準を定めておきましょう。
入力時に注意すべき情報を社内で周知する際は、「機密情報を入力しない」と抽象的に伝えるだけでは不十分です。社員が判断しやすいように、未承認のAIサービスでは避けるべき入力例と、承認済みのAI環境でも確認が必要な入力例を分けて示しておくとよいでしょう。
未承認のAIサービスとは、会社が利用を許可していない個人向けAIサービスや、入力データの保存・学習利用・共有範囲を会社が確認できていないサービスのことです。
業務上で使用すると危険なプロンプトの具体例と、そのリスク要因を紹介します。
| プロンプト例 | リスク要因 | |
|---|---|---|
| 「未発表の自社製品仕様書を要約してください」 | 未公開の製品情報や技術情報が外部サービスに送信される可能性あり | |
| 「この顧客リストをもとに、契約更新の優先順位を付けてください」 | 顧客名・メールアドレス・契約内容などが含まれる可能性がある | |
| 「採用候補者3名の履歴書を比較して、誰を採用すべきか教えてください」 | 応募者の個人情報や評価情報が含まれ、採用判断の公平性にも影響する可能性あり | |
| 「他社の有料レポート全文を要約してください」 | 著作権や利用規約に抵触する恐れあり | |
| 「公開前の決算資料をもとに、投資家向け説明文を作ってください」 | 未公開の財務情報やインサイダー情報に関わる可能性がある |
重要なのは、プロンプトの内容だけでなく、どのAI環境に入力するかです。同じ情報でも、個人向けの未承認サービスに入力する場合と、会社が契約・管理している社内専用環境に入力する場合では、リスクの大きさが異なります。
そのため、社内ガイドラインでは「何を入力してはいけないか」だけでなく、「どの環境なら、どの情報まで扱えるか」を併せて定めておきましょう。
ルールを定めても、違反が発生する可能性はゼロではありません。違反時の対応プロセスと、責任の所在をあらかじめ明確にしておく必要があります。
具体的には、誰が違反を検知するのか(情報システム部門・上長・本人申告など)、検知後の確認手順、被害が出た場合の経営層への報告ライン、再発防止策の検討など、一連の流れを決めておきます。
AI統括責任者(CAIO)やAI活用の責任者を設置している企業であれば、その担当者が関係部門と連携して対応方針を決めることが考えられます。
生成AI技術と関連するリスク・規制は、極めて速いスピードで変化しています。AI事業者ガイドラインも年1回のペースで改訂されており、社内ガイドラインも同様の頻度での見直しが推奨されます。
見直しのタイミングとしては、年次の定期レビューに加えて、重大なインシデントが社内外で発生した時、新たなAIサービスを業務利用する時、ガイドライン・規制の改訂があった時などが考えられます。Living Document(生きた文書)として継続的に更新していく前提で運用設計を行いましょう。
生成AIの業務利用が広がるなか、情報漏洩やハルシネーション、著作権侵害、そしてシャドーAIといったリスクは、もはや見過ごせない重大な経営リスクとなっています。
国内外のガイドラインや法令(個人情報保護法や著作権法など)の最新動向を押さえつつ、企業は以下の**「リスク対策の4つの柱」**を早期に構築することが求められます。
利用ルール・AIガバナンスの整備(社内ガイドラインの策定)
従業員教育とAIリテラシーの向上(リスクの周知徹底)
技術的対策の導入(アクセス制御やログ監視、安全なツールの選定)
組織体制の確立(AI統括責任者「CAIO」の設置など)
生成AIの技術や法規制は極めて速いスピードで変化しているため、社内ルールは一度作って終わりではなく、常にアップデートしていく**「Living Document(生きた文書)」**として運用することが成功の鍵です。
リスク対策の第一歩は、「セキュリティが担保された適切なAIサービスを選ぶこと」です。 アイスマイリーでは、企業のセキュリティ要件や課題・目的に応じて比較検討できる「生成AIサービス比較・企業一覧」を無料で配布しています。「自社に最適な安全なツールがわからない」「導入実績のある企業を知りたい」という担当者様は、ぜひこの機会にお気軽にお問い合わせください。
必要な期間は、企業規模、利用するAIサービスの範囲、関係部門の数によって変わります。小規模な利用ルールであれば短期間で作成できる場合もありますが、全社展開を前提にする場合は、情報システム、法務、人事、現場部門との確認や従業員教育の準備も含めて進める必要があります。すでに情報セキュリティポリシーがある企業は、その付帯文書として生成AI利用規程を整備する方が進めやすいでしょう。
企業規模に関わらず、業務で生成AIを利用している以上は対策が必要となります。中小企業では情報セキュリティの専任部門が置かれていないケースも多く、シャドーAIが広がりやすい傾向があります。最初は社内ルール策定と従業員教育から着手し、技術的対策は外部サービスや既存のIT資産管理ツールを活用しながら段階的に整える方法も有効です。
現時点の生成AI技術では、ハルシネーションを完全になくすことは困難です。重要な情報については必ず人間がファクトチェックする運用、信頼性の高いデータベースと連携した生成AI(RAGシステム)の活用、回答の根拠を提示するモデルの利用など、複数の対策を組み合わせて影響を最小化していくアプローチが主流となっています。
EU域内で事業を展開している、もしくはEUの市場に向けてAIサービス・製品を提供している日本企業には、EU AI Actが適用されます。EU域外の企業であっても、EU内のユーザーに影響を及ぼすAIシステムを提供する場合は対象となるため、自社の事業範囲を確認しておく必要があります。
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