OpenAIのAIエージェント「Operator」とは?特徴や使い方を解説
最終更新日:2025/01/30
2025年1月23日(米国現地時間)OpenAIはAIエージェント「Operator」を公開しました。以前より公式リリースが近いと話題になっていたこのツールは、ChatGPTの画面上でAIがWeb上のタスクを自動で実行できる機能です。現時点では、アメリカのProユーザー向けのプレビュー版ですが、フィードバックを基に改良し、将来的には全ユーザー向けに展開する予定とされています。
本記事では、OpenAIのOperatorの概要や機能、使い方、利用時のリスクなどについて解説します。Operatorのデモンストレーション動画での操作も紹介しますので、日本での公開前にAIエージェントの画期的な性能を押さえておきましょう。
OpenAIのAIエージェント「Operator」とは
OpenAIの「Operator」は、Webブラウザを使用してタスクを自動的に実行できるAIエージェントです。ユーザー専用のリモートブラウザ上で、文字の入力やスクロール、クリック選択といった作業をAIが独立的に実行します。
ユーザーはタスクを指定するだけで、Webサイトの閲覧や検索、選択などの操作をAIに任せられるため、テキスト入力やWeb検索は不要です。使い方次第で、さまざまなタスクを自動化できます。
現在、アメリカのChatGPT Proユーザーを対象に、研究プレビュー版として公開されています。OpenAIは、ユーザーからのフィードバックを得ながら、改良に取り組み、将来的にはChatGPT PlusやTeam、Enterpriseなど他のユーザーにも展開されることが見込まれています。
AIエージェントとは
AIエージェントは、AI技術やデバイスを組み合わせて、ユーザーから指示されたタスクを自動化するためのシステムです。特定のタスクをこなすだけでなく、業務プロセスや求められる結果を自律的に考え、行動する役割を果たします。
データ分析や意思決定のサポート、問題解決など幅広い作業が可能で、既存の情報をもとに適切な行動を選択します。代表例としては、チャットボットやスマートスピーカーなどです。
現時点では、AIエージェントという言葉には複数の定義が付いていますが、機械学習や自然言語処理(NLP)などの技術を基に、ユーザーの要求に対応します。
AIエージェントについて、詳しくは下記記事をご覧ください。
関連記事:AIエージェントとは?特徴や生成AIとの違い、種類や活用シーンを紹介
OpenAI Operatorの主な特徴・機能
OpenAIのOperatorが持つ主な特徴や機能について詳しく解説します。
モデル「Computer-Using Agent(CUA)」の仕組み
Operatorの主要機能である独自のリモートブラウザは、OpenAIが開発した「Computer-Using Agent(CUA)」モデルに基づくものです。
CUAは、GPT-4oの視覚的能力と強化学習による高度な推論力を組み合わせており、見る能力(スクリーンショット)と、操作する能力(マウスやキーボードのアクション)を持っています。Webページ上のボタンやフォームなどのGUI(グラフィカルユーザーインターフェイス)要素を解析し、マウスやキーボードによる操作を再現するよう訓練されています。
独自のAPI連携を必要とせず、人間が使っているブラウザ上で、多くのサイトやサービスを横断しながら自動的にタスクを実行することが可能です。
CUAはまだ開発の初期段階で、ある程度の制約はありますが、主要なベンチマーク(WebArenaやWebVoyager、OSWorldなど)において高い性能を示しています。
ユーザーによる介入も可能
Operatorの作業をユーザーが引き継ぐことも可能です。AIの自動作業中にエラーなどで途中で行き詰まった場合は、Operatorは推論能力による自己修正を試みます。それでも解決されない場合は、ユーザーに操作を引き継ぐようAIから依頼が入ります。完全な自動任せではなく人間との共同作業が可能です。
また、ログインパスワードの入力やCAPTCHAの認証といったユーザーの判断が求められる場面では、ユーザーが操作するよう自動で制御されます。AIが勝手に決済やログインを実行することのないよう作られている点は安心できるでしょう。
提携サイトの利用
Operatorは、現時点ではOpenTable、eBay、UberといったWebサービスと提携しています。また、Operator自体は提携サイト以外でも利用できるため、多岐にわたるタスクに対応可能です。
なお、特定のWebサイトやサービスに関する指示を事前に設定しておけば、効率的にタスクを実行できます。さらに、Operatorは複数タスクの実行にも対応しているため、1つの提携サイトで自動作業を行なっている間に、Operator上で別のタスクを依頼する、といった使い方も可能です。
Operatorの使い方
Operatorは、ChatGPTの画面上で簡単に開始できます。Operatorを選択した後は、実行してほしいタスクをプロンプトで入力するだけで、自動的に処理してくれます。
また、自動操作を引き継ぎたい場合には、右側のリモートブラウザ上に表示されている「Take Control」ボタンをクリックすることでユーザーの操作が可能です。ログインや支払い情報の入力、CAPTCHA認証などが必要な場合には、Operatorが自動的にユーザーに依頼するため、画面表示に従って操作を完了しましょう。
実際のOpenAI Operatorの動作デモを紹介
実際にOpemAI Operatorがどのように動作するのか、公式デモ動画の活用例を紹介します。
Operatorのトップ画面は、ChatGPTと同様のチャット画面です。テキストで「ベレッタ(レストラン)に、今夜7時、2名で予約して」と指示を入力します。
Enterを押すと、画面右側にリモート画面が表示され、ChatGPTが画面を操作し、レストランの検索から予約の空きを探している様子を確認できます。
左側のチャットで、Operatorから「最も近い枠は、今夜19時45分です。この時間で予約しますか?」と返答が返ってきました。ユーザーは「それでお願いします。」と入力します。続いて、Operatorが「予約の準備ができました。予約完了まで進めて良いですか?」と最終確認を促しています。
別の例として、食料品のオンラインショッピングでの使い方を紹介します。手書きの買い物リストの画像をアップロードし、「これを購入してもらえますか?ガス(スーパーマーケット)が好きです。」と入力します。
Operatorは、「Instacart(オンラインショッピングサイト)」でリストにある商品を探します。卵、ほうれん草、マッシュルーム、鶏もも肉、そして調味料を中心に探し始めます。可能であれば、Gus’s Marketの製品を優先します。適切な商品をカートに追加します。このプランで良いでしょうか?」と確認を促します。
そのまま依頼すると、Operatorが自動でリストにある商品をカートに追加していく様子が右側の画面に映し出されます。しばらくすると、Operatorが「リストにあった商品をすべてGus’s Community Marketのカートに追加しました。合計金額は42.14ドルで、10:30〜10:46に配達可能です。チェックアウトに進みますか?」と返してくれます。
このとき、右側の「Take Control」ボタンをクリックすると、ユーザーが商品の追加や数量の変更などを手動で行えます。ユーザーの介入があった場合、以下のようにOperatorから変更箇所の確認が入ります。
ユーザーとOperatorのスムーズな協働作業が、デモ動画にて証明されています。
OpenAI Operatorの活用例
Operatorは、さまざまなシーンで使用できます。例えば、以下のようなタスクです。
- パソコン操作に不慣れな人がメールを送信する
- カレンダーで空き時間をチェックし、ミーティングの日時を設定する
- 夕食のメニューのレシピと写真をOperatorに提示して、必要な材料をオンライン注文する
- 行きたい観光名所や予算、日程を指定して、航空券やホテルの予約を取る
ただし、現時点では、複雑な条件の検索や視覚的な要素の強いタスク、コード編集などの作業は、Operatorには難しい可能性があります。
OpenAI Operatorが抱えるリスクと課題
革新的なツールであるOpenAI Operatorですが、AIエージェントの潜在的な課題が残されており、利用時には注意点もあります。ここでは、Operatorのリスクについて解説します。
ミスの防止やセキュリティ性への配慮
ブラウザをAIが自動操作することで、フォーム入力やオンライン購入時にミスが発生する可能性があります。対策としては、注文の確定やメール送信といった最終判断をユーザーに求める仕組みが有用です。また、銀行取引やパスワード入力などを限定するなどの方法も必要です。
加えて、有害性や違法性のあるタスクをAIが自動で実行しないよう、安全性の確保が強く求められています。違法検出やリアルタイムモデレーションなどの仕様により、AIによる悪用を回避できます。
フロンティアリスクへのアプローチ
優れた性能を持つAIモデル(フロンティアモデル)の進化は、人類全体に恩恵をもたらす一方で、深刻なリスクをもたらす可能性もあります。フロンティアモデルのリスクには、GPT-4に関するバイオ技術の悪用や、大規模な不正使用の可能性が含まれます。
こうしたリスクを管理するために、監視体制の強化とともに、AIが過度な自律性を持たないよう制御、調整する必要があります。
OpenAI Operatorこれからの展望
OpenAIは、Operator利用対象ユーザーの拡大に向けて、改良を続けています。また、アメリカ以外の地域への展開も順次進める予定で、日本のユーザーも近い将来Operatorを利用できる可能性が高いでしょう。
また、CUAのAPI提供も推定されており、企業や個人がオリジナルの自動化ツールを効率的に作成できるようになると言います。さらには、Operator以外のAIエージェントの開発も示唆されており、特定のタスクや分野に特化したエージェントが登場する可能性もあります。
まとめ
OpenAI Operatorは、ChatGPTの画面上でタスクを自動化できるAIエージェント機能です。Web検索や繰り返しの作業などタスクをAIが自動で実行し、推論能力を活用して自己修正する機能を搭載しています。任意のタイミングでユーザーの介入が可能なため、AIとの協働が実現します。
現在はプレビュー版のみの提供ですが、改良の後、日本などアメリカ以外のProユーザーや、他プランへ段階的にも開放されると見られます。Googleや「Claude」を開発したAnthropicなどをはじめ、多くのAI開発企業がAIエージェントの開発に注力しており、日常生活やビジネスでAIエージェントが活躍する日は近いでしょう。
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よくある質問
OpenAI Operatorの利用開始時期は?
日本におけるOpenAI Operatorの利用開始時期については、まだ言及されていません。現在は、アメリカのProユーザー向けに研究プレビュー版が公開されており、継続的な改良の後に、他地域のユーザーへと拡大されることが推測されます。
OpenAIのOperatorは他社AIエージェントとどう違う?
Claudeの開発企業であるAnthropicやGoogleでも、AIエージェントに取り組んでいることが明らかになっています。OpenAIが今回公開したOperatorは総合的な性能において優れており、試験運用とはいっても他社に比べて高いタスク実行能力を示しています。
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