建設業のDXとは?現状の課題や導入メリット、活用事例を解説
最終更新日:2024/03/07
建築業界は、DXに対する関心が高い領域です。「デジタル」と聞いて何となくは理解しているものの、具体的にどのように進めればいいのか、どこから始めるべきかで迷っている人も多いかもしれません。この記事では、建設DXについて詳しく解説し、使用されている技術についても紹介していきます。
建設業におけるDXとは
DXは、デジタル技術を活用してビジネスモデルや業務プロセス、企業文化を変革し、新たな価値を創造する取り組みです。
建設業におけるDXは、設計から施工、運用、保守に至るまでの全工程にわたって、デジタル技術を導入し、生産性の向上、コスト削減、品質の確保、安全の確保などを実現することを目指しています。
具体的には、BIM(ビルディングインフォメーションモデリング)の導入、ドローンを用いた現場の3D測量、AI(人工知能)を活用した設計支援や施工管理、IoT(モノのインターネット)による機材や資材の追跡管理などが挙げられます。
現在の建設業が抱える課題
建設業界は、人手不足、働き方改革の必要性、生産性の低さ、対面主義など、多くの課題に直面しています。これらの課題は、業界全体の持続可能性と競争力に影響を及ぼし、将来的な成長の妨げとなっています。
人手不足
建設業界は、高齢化社会の進展と若年層の業界離れにより、深刻な人手不足に直面しています。この状況は、プロジェクトの遅延やコスト増加の原因となり、さらには建設品質にも悪影響を及ぼす可能性があります。
働き方改革が必要
長時間労働と休日・夜間出勤は、建設業界における根深い問題です。これらは労働者のワークライフバランスの維持を難しくしています。働き方改革を通じて、これらの問題に対処することが必要です。
低い生産性
建設業界は、他産業に比べて生産性が低いという課題を抱えています。これは、古い技術や方法の使用、情報共有の不足、プロセスの非効率性などが原因であり、結果としてプロジェクトのコストと時間が増加しています。
対面主義
建設業界では、情報の共有や意思決定の過程で対面コミュニケーションを重視する文化があります。しかし、この対面主義は、時間と場所に制約され、情報の伝達遅延や誤解を引き起こす可能性があります。特に現在のようにリモートワークが普及している環境下では、対面主義のデメリットがより顕著になります。
課題解決にはDX推進が必要
建設業界におけるデジタルトランスフォーメーション(DX)は、業界が直面する数々の課題への解決策として注目されています。人手不足、生産性の低さ、働き方の改革必要性、対面主義の弊害など、長年にわたり業界を苦しめてきた問題をDXを通じて克服する道が開かれています。具体的には、先進技術の導入により、作業の自動化やリモートワークの推進、プロセスの最適化が可能となります。
これらの取り組みは、既存の労働集約型のモデルを効率的なデジタル中心のモデルへと転換させることで、業界全体の生産性向上に貢献します。DXは単に新しい技術の導入に留まらず、業務プロセス、組織文化、さらには業界のビジネスモデルそのものを変革することを目指しています。このようにして、建設業界は現代の課題に対応し、持続可能な成長を実現することが可能になります。
建設業におけるDXのメリット
建設業におけるDXのメリットには、以下のようなものがあります。各項目について、詳しく見ていきます。
- 業務の効率化
- 人手不足・エネルギー不足の改善
- 技術継承の促進
- 危険な作業リスク軽減
業務の効率化
建設業界におけるDXの最大のメリットの一つは、業務の効率化です。デジタル技術を活用することで、設計から施工、メンテナンスに至るまでの各プロセスが最適化され、時間とコストの大幅な削減が実現可能になります。例えば、BIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)技術の導入により、3Dでの設計や施工のシミュレーションが可能となり、計画段階での誤りの発見や修正が容易になります。
これにより、工期の短縮やコストオーバーランのリスク低減に繋がります。また、ドローンを利用した現場の監視や、AIを用いた資材の管理なども効率化に貢献します。
人手不足・エネルギー不足の改善
DXは、人手不足とエネルギー不足という建設業界が抱える大きな課題に対する解決策となります。AIやロボット技術の進展により、人の手を借りずとも行える作業が増え、限られた労働力をより効果的に活用することが可能になります。さらに、デジタルツールを駆使したプロジェクト管理により、エネルギーの使用効率を高め、環境への負荷を低減することができます。
これらの技術は、建設現場の安全性向上にも寄与し、作業環境の改善を実現します。
技術継承の促進
DXは、貴重な技術やノウハウの継承を促進します。デジタル化されたデータベースやクラウドサービスを活用することで、経験豊富な技術者が持つ知識や技術を効果的に記録し、共有することが可能になります。これにより、若手技術者の教育や育成がより効率的に行えるようになり、技術力の維持・向上が図れます。
また、VR(仮想現実)を活用したトレーニングプログラムなども、実践的なスキル習得に役立ちます。
危険な作業リスク軽減
DXを活用することで、建設現場における危険な作業のリスクを大幅に軽減することができます。ロボット技術や遠隔操作が可能な機械の導入により、高所での作業や重機操作といったリスクの高い作業を人間が直接行う必要が減少します。
これにより、作業中の事故や怪我のリスクが低減されるだけでなく、作業効率も向上します。
ただし、すべての作業を機械が代替するわけではありませんが、人間と機械が協働することで、より安全で効率的な建設現場の環境づくりをすることができます。
代表的な建設DX
ここでは、建設業における代表的なDX技術について解説します。これらはあくまで代表例であり、他にも様々な技術が存在します。
AI(人工知能)
AIは、膨大なデータからパターンを学習し、予測や最適化提案を行うことができます。建設業界では、プロジェクトの計画段階から施工、メンテナンスに至るまで、さまざまな場面で利用されています。
効率的な資源配分、コスト削減、リスク予測などにより、プロジェクト管理の精度を高めることが可能です。
BIM/CIM
BIMは、建築物やインフラの物理的および機能的特性をデジタルモデルで表現する技術です。これにより、設計から施工、さらには運用・維持管理に至るライフサイクル全体を通じて、情報の共有とコラボレーションが強化されます。コスト削減、工期短縮、品質向上が期待できます。
ドローン
ドローンは、高い場所や広範囲の土地を短時間で撮影し、現場の状況把握や測量を行う際に有効です。安全性の向上、コスト削減、時間短縮に貢献し、特に広大な建設現場や危険な場所の調査に有効です。
ICT建機
情報通信技術(ICT)を搭載した建設機械は、自動化や高精度な作業が可能です。GPSやセンサーを活用して正確な位置情報に基づき作業を行うことで、人手による作業と比較して高い精度と効率を実現します。
SaaS(クラウド)
ソフトウェアをクラウド上で提供するサービスは、建設プロジェクト管理においてリアルタイムでの情報共有や、場所を問わずアクセスできる柔軟性を提供します。コスト削減、効率的なコラボレーション、データの中央管理が可能になります。
建設業におけるDX活用のプロセス
- 現場への理解と課題設定
- 改善策立案
- DX導入
- データ検証・改善
1.現場への理解と課題設定
DX導入の第一歩は、現場の具体的な作業内容とそれに付随する課題の理解から始まります。この段階では、現場作業員の日常業務を観察し、彼らの作業プロセスや使用するツール、遭遇する問題点を詳細に把握します。
このプロセスをおろそかにすると、現場の実情に合わないDX施策を立案してしまうリスクがあり、結果として時間と資源の無駄遣いにつながりかねません。建設業は特に「現場主義」の風潮が強いため、現場の声を正確に反映させることが重要です。
2.改善策立案
現場の課題が明確になった後は、それらを解決するための改善策を立案します。この段階では、デジタル技術を活用して課題をいかに効率的に解決できるかを模索します。例えば、作業の自動化、情報のデジタル管理、リアルタイムでのデータ共有などが考えられます。
改善策を十分に検討しないと、投資対効果が低い施策を実行してしまい、期待した成果を得られない可能性があります。
3.DX導入
改善策が決定したら、具体的なDX技術の選定と導入を行います。建設業界では、プロジェクトごとに求められるDXの種類が異なるため、選定プロセスが特に重要になります。不用意に技術を導入すると、事故や重大なトラブルに繋がる危険性があるため、安全性と実用性を考慮した上で、慎重に技術を選びます。
この段階での失敗は、プロジェクト全体の遅延や追加コストの発生に繋がります。
4.データ検証・改善
DX導入後は、実際に収集されたデータを基に、導入した技術や施策の効果を検証します。そして、施策を実行した結果明らかになった問題点や反省点に対して、さらなる改善策を講じます。この「改善」は、最初に設定したゴールに対するものではなく、施策実行の過程で出てきた新たな課題に対処するためのものです。
このプロセスを怠ると、DX導入の効果を最大化する機会を逃し、長期的な競争力の低下を招くことになります。建設業におけるDX活用は、現場の深い理解から始まり、慎重な計画と実行、そして継続的な改善のプロセスを経ることで、その真価を発揮します。
建設業におけるDX活用のポイント
DXを成功させるためには、いくつかの重要なポイントがあります。ここでは、特に重要な3つのポイントに焦点を当てて解説します。
- 現場への理解をおろそかにしない
- 問題点を把握する
- 問題改善に適したDXを導入する
現場への理解をおろそかにしない
最初のポイントは、現場への深い理解です。現場作業員の日常の業務、使用しているツール、遭遇している問題点などを詳細に把握することが不可欠です。この過程で、現場でのインタビューや観察を行い、実際の作業プロセスを理解します。
現場への理解をおろそかにすると、実際の作業プロセスや現場のニーズと乖離したDX施策を立案してしまうリスクがあります。
問題点を把握する
次のステップは、現場から得られた情報を基に、具体的な問題点を明確に把握することです。これには、現場の作業効率を低下させている要因や、安全性を脅かしているリスク、コスト増加の原因となっている要素など、多岐にわたる問題点が含まれます。
問題点を正確に把握することを怠ると、表面的な改善にとどまり、根本的な問題解決には至らなくなります。
問題改善に適したDXを導入する
把握した問題点に対して最も効果的なDX技術を選定し、導入することが次のポイントです。これには、クラウドサービス、ビッグデータ分析、AI技術、ドローンやウェアラブルデバイスの活用など、様々な技術が考えられます。ただし、すべての技術がすべての問題に適しているわけではないため、選定プロセスには慎重な検討が必要です。
適切な技術を導入しないと、投資対効果が低い結果となり、さらには新たな問題を引き起こす可能性があります。
これらのポイントを適切に実行することで、建設業界におけるDXの取り組みは、現場の作業効率を向上させ、コストを削減し、安全性を高めるといった、利益をもたらします。
建設業におけるDX活用の事例
建設業におけるDX活用について、以下の事例を解説していきます。
- コミュニケーションツールのデジタル化、データのクラウド共有
- 総合建設業へRPAを導入
コミュニケーションツールのデジタル化、データのクラウド共有
携帯メーリングリストやFacebookのグループでの日報報告の義務化、テレワークに全員で挑戦した事例があります。
zoomを利用した昼礼を実施するなど、無料ツールを全員で利用することから取り組みはじめ、徐々に全員のITリテラシーを高めていき、月1回は代表から直接ビジョンを共有する場を設けるなど、建設業DXの必要性について社員全員で理解を深めました。
総合建設業へRPAを導入
知見がまったくないところからRPAを導入し、eラーニングやWEBセミナーを積極的に受講して知識をつけた会社があります。管理部門の定型業務から着手し、特に請求書の入力作業の自動化は削減効果の高いロボットとなったのです。
RPAプロジェクトを立ち上げ、「RPAで何ができるかを学び、業務効率化を自発的に考える人材を育成する」ことを目的にし、社外講師を招き、知見を浸透させていきました。現場担当者へヒアリングするもなかなかRPAに向く定型業務が見つからず、また人材育成についても専任ではないため日常業務に追われなかなか自発的に学習できる人材を育てることができなかった。
まとめ
建設DXへのとりくみは、人手不足や生産性の低さという建設業界の課題を解決する可能性があるため、まずは小さなことからDXにとりくんでいくことが大切です。
小さな取り組みから、会社全体にDXの意識を浸透させることで、組織全体がDXの恩恵を受け、成長を促すことになります。
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