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花王の担当者に聞いた棚割り業務を6割削減するAIアルゴリズム開発

最終更新日:2024/04/10

花王株式会社は、AI・人工知能による自動棚割りアルゴリズムの実証実験を2021年7月より開始しました。

今回は花王グループカスタマーマーケティング株式会社 リテールマーケティング部門 リテールテクノロジー研究部の担当者にこれまでの課題や展望を伺いました。

棚割りには莫大なコストがかかる

そもそも棚割りとは、どの商品をどの陳列棚の高さでどのくらいの量を配置するかを計画することを指します。限られた売り場スペースの無駄を減らして、消費者が買いやすい商品を手に取りやすい位置に置いて購入につなげることが棚割りの目的です。

―― これまでの花王の棚割り効率化の取り組みついて教えて下さい。

リテールテクノロジー研究部 部長 中田 敬 氏

――中田氏

弊社では40年以上前から棚割りの研究を試行錯誤しながら行ってきました。厚紙と鉛筆を使った棚割りの効率化から始まり、磁石と鉄板、シールの使用など改良を重ね、1984年には日本初のコンピューターによる定番棚割り作成システムを開発しました。

――紙と鉛筆から始まりコンピューターのシステム開発に至るのですね。棚割りにおける課題とは何ですか?

――中田氏

棚割りはリテールマーケティングにおいて非常に重要な活動であるため、業界全体で多くの時間をかけて取り組んでいます。

――中田氏

弊社が2015年に行った調査では、花王の営業担当1人あたり年間で約44日間(延べ328時間)を棚割りに費やしていました。業界全体で棚割り作業にはまだまだ多くの時間がかかっており、非常に莫大なコストが棚割りの課題です。現在は日本総合システム株式会社と協働でStoreManagerGXを開発し、さらなる作業の効率化やデータ連携の強化に注力して実務に活用しています。

 

AIで棚割り業務の時間を6割削減、96%の精度

――今回開発したAIアルゴリズムの仕組みを教えてください。

リテールテクノロジー研究部 マネージャー 金森 哲也 氏

――金森氏

棚割りに膨大な時間がかかる課題を解決するため、棚割り作業のすべてを自動化してくれるAIではなく、「AIに任せることによって人間にしかできない価値の判断に多くの時間を割きたい」という考えのもとAIアルゴリズムの開発に着手しました。

提供:花王グループカスタマーマーケティング株式会社

――金森氏

開発した棚割り業務を自動化するAIアルゴリズムは、人間が基本となる棚割りのパターンを作ると商品配置をAIが学習し各店舗の売り場面積に合わせて拡縮パターンを自動作成します。店舗数が多く棚割りのパターン数が多いチェーンでは作業総量の約60%を圧縮できると見込んでおり、実証実験等を通じて具体的削減効果の検証を進めています。

――年間44日かかっていた棚割りが最大で20日ほどまで短縮できるんですね。開発中に苦労した点はありましたか?

――金森氏

自動拡縮生成は一見すると大きいパターンを縮めたり、小さいパターンを広げれば良いと思われる領域ですが、そう単純ではありません。いかに納得感ある形で人が作成したパターンに近づけられるかどうかが重要な問題でした。

――「納得感」についてもう少し詳しく教えてください。

納得感に関する指標は三つあります。一つ目は採用される商品についてです。売り場の拡縮の際にどの商品を入れてどの商品を削るのか納得感が必要だと考えています。二つ目が商品の配置です。シリーズ商品などグループの形を維持する必要があります。三つ目は優位置と呼ばれるゴールデンゾーンの中でも人の目線に近いところに何の商品を置いていくか、といった戦略的なゾーニングです。

採用商品による納得感に関して、人が作った拡縮パターンとAIが作った拡縮パターンの正答率を測定したところ、平均で約96%人間が選んだ商品をAIが採用しました。残り4%は人間のチョイスとは異なる商品を選んでいますが、十分実用可能な精度になったと認識をしています。

商品配置に関しては、同じシリーズの商品が分離して配置されてしまったり、人の目線の高さに配置しきれていないという問題点が浮き彫りになりました。しかし、改良を重ねた結果、非常に近しい形で重要な商品をまとまって配置をできるようになりました。優位置もしっかりと使えるようになったことで、戦略意図のある配置も概ね再現することができるようになりました。

 

自動棚割りで売り場の生産性を高める

――今後の展望について教えて下さい。

リテールテクノロジー研究部 奥村 健 氏

――奥村氏

自動棚割りのゴール像は、実際に自動棚割りを採用される店舗の周辺環境やチェーン戦略といった前提条件をしっかり踏まえつつ、戦略が確実に反映されるような棚割りの自動生成が最終の着地目標になっております。

――奥村氏

ですが、一気にゴールに向かうことは非常に難しいため、3ステップのアジャイル開発によって到達していきたいと思っています。ファーストステップは現段階の研究成果になっている自動拡縮生成です。

現在、自動拡縮生成アルゴリズムを販売店様と一緒に実証実験中です。自動拡縮生成に関しては非常に良い成果が出ていて、2022年の下期頃を目標にユーザーに使ってもらえるようなシステムを作っていきたいと思っています。システムのユーザーとして想定しているのは、弊社の営業担当であり、販売店様です。システムを有意義なものにしていくために、実証実験での販売店様のご意見を反映していきます。

提供:花王グループカスタマーマーケティング株式会社

――ユーザーが使いやすいUIが求められますね。2つ目、3つ目のステップでできることは何ですか?

――奥村氏

セカンドステップの自動基本生成では初めからAIが人と同等の基本パターンを作成できます。2023年の完成を目指すサードステップの自動最適化生成は、店ごとの高品質なパターンをAIが作成します。自動最適化生成は単なる時間喪失だけではなくて、売場生産性の向上効果があると想定しています。

――2023年には「自動最適化生成」が可能になるんですね。最後に、今後取り組んでみたいことがあれば教えて下さい

――奥村氏

周辺店舗の実績を踏まえながら品揃えを提案できる機能であったり、ID-POSを使った購買履歴に基づいて実際の来店客が見やすくて買いやすいビジュアルの作り方の提案など花王として提供できる価値を付加させていきたいと思っています。さらにはお店で商品を並べ替える棚替え作業を考慮した上での棚割りの提案などユニークな機能を搭載したAI自動棚割りアルゴリズムの開発にチャレンジしていきたいです。

――貴重なお時間ありがとうございました。

 

今回は棚割り自動化AIアルゴリズムについて花王の担当者に詳しく教えていただきました。棚割り自動化AI以外にも花王では多くのシーンでAI活用が進んでいます。AIに任せる仕事と人間にしかできない仕事を上手に線引きすることが業務最適化の近道かもしれません。

 

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中村 優斗

中央大学法学部を経てAIsmileyにジョイン。国内外のAIトピックを日々ウォッチ。2級知的財産管理技能士、日本ディープラーニング協会 (JDLA) G検定2021#2取得、JDLA Generative AI TEST 2023 #1合格。経済産業省主催のデジタル推進人材育成プログラム「マナビDX Quest」2022年度第1ターム「ケーススタディ教育プログラム」Gold修了証。CDLEコアメンバー、「DX情報交換チャンネル」と「DX情報交換+グループ」を運営。

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