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最終更新日:2025/02/27
SLM(小規模言語モデル)とは?
AI技術の進化に伴い、多くの生成AI言語モデルが登場しています。ChatGPTを筆頭とする生成AIツールはLLM(大規模言語モデル)に分類されますが、自然言語処理が可能なAIモデルには「SLM(小規模言語モデル)」もあります。LLMとSLMとでは特性が異なり、ビジネスにおける活用では最適なモデルの選定が重要です。
本記事では、SLMの概要からLLMの違い、SLMのメリット・デメリットなどについてわかりやすく解説します。SLMの活用シーンや大手企業の開発事例も紹介しますので、SLMについて理解を深め、自社におけるAI活用を促すためにお役立てください。

SLM(Specialized Language Model)とは、日本語で「小規模言語モデル」と訳される言葉です。医療や法律、金融など特定の分野に特化した言語モデルで、特定のトピックに関する大量のテキストデータで学習されています。
パラメータ数はLLMより少ないものの、SLMは対象分野に関する専門的な概念や用語、事例などの深い知識を持ち合わせています。また、LLMよりも短時間かつ低コストで開発、運用ができ、トレーニング時間も短くて済む点が特徴です。ローカルのPCでも無理なく起動できるSLMも多数あります。

SLM(小規模言語モデル)とLLMには、いくつかの異なる特徴があります。ここでは、主な5つの違いについて詳しく解説します。
SLMは、LLMよりも少ないパラメータ数を扱います。LLMは、一般的に数百億〜数兆の膨大なパラメータを持つのに対し、SLMは数億〜数十億のパラメータで構成されています。例えば、OpenAI社の「GPT-4」は、約1.76兆のパラメータを持つとされていますが、SLMであるMicrosoft社の「Phi(ファイ)-3-mini」は38億パラメータです。
SLMは、特定のタスクや分野に特化した軽量な言語モデルで、パラメータ数が少ない分、計算リソースの限られた環境でもスムーズに利用しやすい傾向があります。
SLMとLLMとでは、AIが学習するデータの範囲や量にも差があります。LLMは、インターネット上の膨大なテキストデータを学習しており、幅広いタスクに対応できる仕様です。
一方、SLMでは、特定の目的や分野に特化した情報が学習データとして用いられるため、特定の領域に関する専門知識が豊富です。例えば、医療分野に特化したSLMは医学論文や診療記録、治療の事例などを学習対象としています。
SLMは、LLMよりもモデルサイズが小さい分、開発にかかるコストや運用中の消費リソースがLLMに比べて少なくて済みます。AIでは、パラメータ数が多くなるほど、必要な計算リソースが増える傾向にあります。
LLMでは膨大なメモリやエネルギーを消費しますが、一方でSLMはGPUの性能やエネルギー消費は低めです。また、開発にかかるコストも、SLMではLLMに比べて抑えられています。
SLMはLLMよりも少ないパラメータ数のため、トレーニングは数日前後で終わる場合があります。LLMは学習するパラメータ数が膨大な分、トレーニングにもある程度の時間を要します。一般的には、LLMのトレーニングには数十日から数ヶ月ほどかかると言われていますが、SLMは短期間で済みます。
また、LLMはインターネット上の膨大なデータを幅広く学ぶ必要がありますが、SLMの場合は各ジャンルに特化して学習するため、高い学習効率性が期待できます。
LLMは、膨大なデータを使って幅広いタスクに対応できるようトレーニングされているのに対し、SLMは特定の領域やジャンルに特化しており、その分野に関して高い性能を発揮します。汎用性を求めるならLLM、専門分野で活用するならSLMを選ぶという使い分けが必要です。
LLMの基本情報については、下記記事で詳しく解説していますのであわせてご覧ください。
関連記事:大規模言語モデル(LLM)とは?仕組み・種類・活用サービス・課題をわかりやすく解説

さまざまな企業や業界でSLMの開発や導入が増加している背景には、AI開発にかけるコストの節約や各ジャンルにおける需要の高まりなどが挙げられます。
汎用性の高いLLMは急速な進化を遂げ、多くのサービスが次々と一般公開されています。しかし、LLMを導入する際に膨大なコストがかかる点が、企業におけるAI活用のネックとなっていることも事実です。
AIの開発や導入に必要なコストを用意できる企業は限られる上、AIの費用対効果を重視すると、コストを抑えられるSLMが有力な選択肢になりつつあるのです。実際に、巨大テック企業からスタートアップまでSLMを手掛ける企業は増加しています。
また、専門分野に特化したデータの取り扱いに最適なSLMは、医療や金融といったデリケートな情報を多く扱う領域に向いています。

企業がSLMを開発・導入する主なメリットを紹介します。
SLMはパラメータ数が少なく、計算リソースを節約できるため、開発や運用にかかるコストを削減できます。LLMに比べてモデルの規模が小さいSLMは、計算の処理能力やエネルギー消費量、学習トレーニングにかかる時間などが抑えられています。
また、自社でAIツールを開発したい場合にも、設備や人員のコストを低減できる点もメリットです。
SLMは小規模である上、特定分野のデータでトレーニングするため、学習時間を短縮できます。特定の目的や領域に関する情報のみを使って学習することで、効率的なトレーニングが実現します。
また、LLMよりもファインチューニングを迅速に行える上、データ収集コストの削減にもつながります。動的なビジネス環境における実験や反復訓練なども、スムーズに実施できます。
SLMは、特定の分野やタスクに関して優れたパフォーマンスを発揮できます。汎用性の高いLLMに比べて、特定のジャンルについて深く理解しているSLMは、該当分野の専門的なタスクを自動化することが可能です。
例えば、医療分野で治療の事例をデータベース化する、法律分野で契約書のレビューを自動化する、といった方法で作業効率を向上できます。
SLMは、スマホやオフラインのローカルLLMなどでも快適に使用しやすく、モバイルデバイスでの展開にも向いています。AIをネットワーク端末機器に直接搭載するエッジAIやローカルLLMなど、従来のLLMでは難しかった方法でAIを活用できる可能性が高まります。
例えば、ネットワーク接続がなくてもスマホを使って外出先で画像認識ができる、といった使い方です。デジタルサイネージなどに搭載し、インターネット不要で通話ができる環境を構築するような方法も検討されています。
生成AIの重大な課題となっているハルシネーション(幻覚)の発生や、セキュリティ面のリスクにおいても、SLMが有利となる場合があります。LLMは、膨大な学習データから必要な部分をつなぎ合わせて回答するため、事実ではない情報をあたかも正しいかのように出力する場合があります。この現象は、ハルシネーションと呼ばれます。
一方、学習データの範囲やトピックが限定的なSLMでは、回答を生成するためのファインチューニングがしやすいため、ハルシネーションの発生も抑制される可能性があると考えられます。
SLMには多くのメリットが期待できる反面、デメリットもあります。ここでは、主に3つのデメリットについて説明します。
SLMは専門分野に特化している分、汎用性に乏しい傾向があります。LLMは、幅広いタスクに対応でき、多用途で活用できますが、SLMはトレーニングされた特定の領域以外に関して、回答することが難しい場合があります。
異なるジャンルに対応させたい場合には、別のSLMを用意する必要があります。AIの使い方や用途をよく検討して、SLMとLLMどちらを選ぶか判断することが重要です。
SLMの学習に用いる特化分野のデータを集めるのに苦労する可能性もあります。AIは、高品質なトレーニングデータを十分に利用することで、性能が高まりますが、SLMの対象分野のデータを入手することが難しい場合もあり、トレーニングが思うように進まないことが考えられます。
特に、医療や金融といった機密性の高い情報を扱う場合、収集できるデータには限りがあるため、トレーニングに時間を要することも考えられます。
SLMを開発、運用するには、高度な専門知識やスキルを要します。学習データの選定や事前の処理、トレーニング、モデルの評価など、SLMを正式にリリースするまでには専門家の協力が不可欠です。
専門家レベルの担当者がいない場合は、外部に委託するなどの対応が必要となります。また、法律など意思決定の根拠を明確に示す必要がある分野については、SLMによる予測結果の解釈が難しく、説明可能性が課題となる場合もあります。

SLMは、すでにさまざまな分野で実用化が進んでいます。ここでは、代表的な活用分野や事例を紹介します。
医療業界では、医療記録の分析や症状の確認・判別、個別化された治療の提案などにSLMが活用されています。実際に、医療分野のSLM「BioBERT」をベースに、医学論文を学習したSLMを用いて、医薬品の貼付文書の自動要約システムが開発されています。
金融機関では、融資申請書や財務諸表などの分析や融資の可否判断にSLMが用いられています。金融の専門用語や定型表現をSLMに学習させることで、システムが文書の内容を読み取り、自動分析して融資の可否を判断することが可能になります。
また、SLMを使えば審査基準も統一されるため、透明性の高い融資判断が実現すると考えられます。代表的な金融SLMには「FinBERT」があります。
法律分野では、法律特有の専門用語や複雑な文章が多い書類のレビューなどにSLMが用いられています。契約書のように専門用語や特有の言い回しを含む文書を、正しくレビューするためには高度な知識が必要です。
SMLを活用すれば、契約書のレビューを半自動化できるため、業務効率化やレビューの質の向上につながります。アメリカの法律事務所において、法律に特化したSLM「LegalBERT」をベースに、50万件以上もの契約書を学習したSLMを使用することで、レビュー作業の効率化やヒューマンエラーの削減を実現した事例が発表されています。
SLMはハルシネーションのリスクが少ないため、学習者に対してより正確な情報を提供し、学習の質を向上させるために活用できます。また、SLMではリアルタイムの言語翻訳が可能なため、言語学習にも役立ちます。
実際に、学習者の理解度の予測や最適な学習教材の選定にSLMを用いたケースでは、学習効率が15%アップしたという結果が出ています。
LLMよりも低コストで開発でき、トレーニング期間も短くて済むSLMは、多くの企業が開発を行っています。ここでは、独自のLLMも手掛けるようなAI大手企業のSLMを紹介します。
Microsoft社は、積極的にSLMを開発している大手企業の1つです。24年4月には、高性能で低コストなオープンSLM群「Phi(ファイ)-3」を発表しました。言語・コーディング・数学など、さまざまな評価ベンチマークにおいて目覚ましいスコアを打ち出しています。
特に、常識的な推論、言語理解、数学、コーディングなどの分野では、一部のLLMさえも上回っています。
Phi-3モデルとして、「Phi-3-mini」「Phi-3-small」「Phi-3-medium」の3種類が発表されています。いずれのモデルもコスト効率に優れており、効率的に設計されているため、リソースが限定的な環境やエッジデバイスでの展開に向いています。
関連記事:Microsoft、小規模言語モデル「Phi-3」ファミリーにマルチモーダルなSLM「Phi-3-vision」を追加
Google社の「Gemma2」は、オープンソースの独自SLMです。2024年2月にリリースされた「Gemma」の次世代バージョンとして発表され、270億パラメーターの軽量モデルを搭載しています。
効率性と使いやすさを重視したGemmaに続き、Gemma2では、LLMを引き継ぐ「知識蒸留」の仕組みを採用することで、第1世代よりも高度な推論が可能とされています。また、クラウドからローカルPCまで幅広いハードウェアに対応することが可能です。
より信頼性の高い学習データの選定や人間のフィードバックなど、安全性の高い回答を生成するための工夫も取り入れられています。
関連記事:DataGemmaとは?ハルシネーション対策モデルの特徴や機能を紹介
Apple社は2024年7月、約300億のパラメータのSLM「Apple Intelligence」を発表しました。GPT-4をはじめとするLLMよりもコンパクトな小型モデルで、生成AIの幅広い機能が利用できる他、個人情報を扱うために高い安全性を確保している点が特徴です。
また、Apple Intelligenceの機能として、GPT-4oベースのChatGPTが利用でき、ChatGPTとSiriの連携などにより、アプリで高度な検索や操作が実現します。2024年9月には「iOS 18.1」「iPadOS 18.1」「macOS Sequoia 15.1」からApple Intelligenceを提供することも公表されました。
関連記事:Apple Intelligenceとは?特徴やできること、今後の動きについて解説
SLMは、LLMに比べてコスト効率や学習効率が良く、トレーニング時間の短縮が見込めます。特定の分野に特化した専門タスクに適しており、医療や法律、金融といった機密性の高い情報を多く扱う領域ではすでにSLMの開発と活用が進んでいます。
ただし、汎用性や対応能力の範囲には制限があるため、用途や目的に応じて適切なモデルを選び、費用対効果を最大化することが重要です。
アイスマイリーでは「生成AIサービスの提供企業一覧」を無料でご請求いただけます。自社の生成AI活用により、業務効率化や生産性の向上を目指すために、ぜひお役立てください。
SLMとLLMとでは、パラメータ数や開発コスト、トレーニング時間などが異なります。SLMはLLMよりもモデルのサイズが小さく、その分開発コストが抑えられています。
また、SLMは特定の分野やタスクに特化しており、計算に必要なリソースやエネルギー消費も少なくて済む点も特徴です。SLMは、専門知識を学習することで特定のジャンルに関して優れた性能を発揮します。
SLM開発のおおまかな流れは、次の通りです。
1.対象分野を選定する
2.学習データの収集・事前処理を行う
3.モデルアーキテクチャを選定、設計する
4.モデルのトレーニングを実施する
5.ファインチューニングで調整する
6.評価と改善を行う
SLMの開発にかかる費用は、対象分野や求められる性能、トレーニングデータの規模などで異なります。中には、専門家の人件費を含めて合計で数千万円かかるケースもあります。
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