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イラストを自動生成するAI「mimic」は違法なのか。画像生成AIモデルと著作権

最終更新日:2024/03/13

RADIUS5は自分のイラストの個性が反映されたイラストを無限に作り出せるAIイラストメーカー「mimic(ミミック)」のベータ版を8月29日に公開しましたが、わずか1日後の8月30日にサービスを一時停止しました。

今回はmimicの概要からサービス停止に至った論点をまとめて紹介します。

AIイラストメーカー「mimic(ミミック)」とは

出典:プレスリリース

AIイラストメーカー「mimic(ミミック)」とは、自分のイラストの個性が反映されたイラストを無限に作り出せる画像生成サービスです。

クリエイターがアップロードした15枚~100枚のイラストから、その人の画風を学習して、そのクリエイター風の独自の新しいイラストを生成します。

イラストアップロードから約2時間程度でAIイラストメーカーが出来上がります。ベータ版では、2つのイラストメーカーを無料で提供しており、イラストメーカー1つあたり30枚のイラストを生成可能です。

mimicを巡る議論

著作権は誰が有する?著作権は発生するのか

株式会社ラディウス・ファイブ(RADIUS5)はAIは創作活動をする人のためにあるべきという考えの元、mimicで生成されたイラストの著作権はイラストをアップロードしたクリエイターの権利となるとプレスリリースで発表しました。

AIによって生成されるため著作者人格権についてはRADIUS5から移転できませんが、利用規約に定めるようにRADIUS5は著作者人格権を行使いたしませんので、イラストをアップロードするクリエイターに権利がある状態になるとしています。

※著作者人格権:著作者の人格的利益を保護する権利。人格権には公表権、氏名表示権、同一性保持権がある。

第12条(知的財産権等)

  1. 本サービスにおいて、当社提供コンテンツ等(AI出力物を除く。)に関する⼀切の知的財産権は当社、又は当社にライセンスを許諾している者に帰属し、本規約に基づく本サービスの使用許諾は、本サービスの使用に必要な範囲を越えて、当社又は当社にライセンスを許諾している者の知的財産権について、使用許諾をすることを意味するものではありません。
  2. 前項の規定にかかわらず、AI出力物については、本条第8項に基づき当該送信データに関する権利を有する者がその知的財産権を有するものとします。ただし、第6条第5項に違反する行為を行うことはできません。

(中略)

  1. 送信データに関する知的財産権は登録ユーザー又は登録ユーザーに権利を許諾する第三者に帰属するものとし、本サービスを利用することにより、当社に権利が移転することはありません。

mimic利用規約(2022年8月23日制定)

利用規約を確認すると、当社提供コンテンツ等の著作権は運営(RADIUS5)に帰属し、「送信データ」と「AI出力物」はクリエイターやクリエイターがアップロードを許可したユーザーが著作権を有すると記載があります。

「当社提供コンテンツ」や「AI出力物」の定義を確認すると次のように記載があります。

第2条(定義)

  1. 送信データ 登録ユーザーが、本サービスを通じて入力し又は送信する情報(画像データ、画像AI生成用入力データその他のデータを含みますがこれに限られません。)をいいます。
  2. 当社提供コンテンツ 登録ユーザーが本サービスを通じて取得した情報の一切(画像データその他のデータを含みますがこれに限られません。)をいいます。
  3. AI出力物 当社提供コンテンツのうち、AIが自動的に出力した画像データその他当社が別途定める情報をいいます。

mimic利用規約(2022年8月23日制定)

そもそも、著作権は著作物を保護する権利です。著作物とは、「思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」をいいます。思想や感情を持たないAIによる創作物は著作権は発生するのでしょうか。

平成29年の内閣府 知的財産戦略推進事務局の資料にも記載がありますが、AI創作物が著作物として認められるか否かは人間の「創作的寄与」の有無だと言われています。

MidjourneyStable Diffusionといった文章(呪文)から生成される画像に関しては、単語の選択や呪文の唱え方での工夫が著作権法が定める「創作的寄与」として認められる可能性はあります。

mimicではAI出力物は送信データの著作権者に帰属すると記載がありますが、人間の「創作的寄与」は認められるのでしょうか。

悪意ある無断利用のリスク

サービス発表後、他人の画像から生成したイラストを悪用するケースが発生する可能性についてTwitterで問題視されました。

mimicのガイドラインを確認すると他人のイラストを無断でアップロードすることを禁止しています。

禁止事項

  • 他人のイラストを勝手にアップロードしないでください。必ずあなたが描いたイラスト、もしくは権利を保有しているイラストをアップロードしてください。権利侵害を発見した場合はアカウントの停止・捜査機関への情報提供など、然るべき措置を講じます。

mimicガイドライン

ガイドラインには悪用されるリスクに対策を講じているものの具体的な策は記載されていません。

これを受けて多くのイラストレーターや漫画家は自身のSNSでAI画像生成サービスでの画像の無断利用禁止(AI学習禁止)を表明する流れが発生しました。

学習データの著作権

AI創作物の著作権のあり方について法整備が進んでいない印象を持つ方は多いかもしれませんが、AIモデルを構築する際に利用する学習用データセットに関する法整備は進んでいます。

AIの学習に欠かせない学習データを収集する際には、まずはデータを収集し、そのデータをもとにデータセットが生成されます。そしてデータ処理が行われ、学習用データセットが生成されるという仕組みです。

このような場合には、収集したデータが「複製権侵害」に該当する恐れがあるのですが、日本では世界的に見ても珍しく、平成30年改正著作権法30条の4第2号に「情報解析」を目的としている場合であれば、複製・解析を行うことができるとしています。

著作物は、次に掲げる場合その他の当該著作物に表現された思想又は感情を自ら享受し又は他人に享受させることを目的としない場合には、その必要と認められる限度において、いずれの方法によるかを問わず、利用することができる。ただし、当該著作物の種類及び用途並びに当該利用の態様に照らし著作権者の利益を不当に害することとなる場合は、この限りでない。

一 著作物の録音、録画その他の利用に係る技術の開発又は実用化のための試験の用に供する場合
二 情報解析(多数の著作物その他の大量の情報から、当該情報を構成する言語、音、影像その他の要素に係る情報を抽出し、比較、分類その他の解析を行うことをいう。第四十七条の五第一項第二号において同じ。)の用に供する場合
三 前二号に掲げる場合のほか、著作物の表現についての人の知覚による認識を伴うことなく当該著作物を電子計算機による情報処理の過程における利用その他の利用(プログラムの著作物にあつては、当該著作物の電子計算機における実行を除く。)に供する場合

引用:著作権法三十条の四

今回、「データの利用は著作権法第30条の4で認められているからクリエイターは禁止できない」といったAI学習禁止を表明したクリエイターへの批判や「データの利用を認める著作権法第30条の4には限度がある」といったクリエイターを擁護する声が飛び交っています。

不正利用に関わる課題を改善できるまでサービスを停止

mimicをきっかけに様々な議論が飛び交った結果、RADIUS5は8月30日にmimicのサービス停止を発表しました。

mimicベータ版では利用者が著作権を保持していないイラストを、著作権者の許諾なくアップロードすることを防ぐ仕組みが不十分であると考えたため、一度作成中を含む全てのイラストメーカーを削除し、全機能の停止。不正対策を改善できた場合に正式版をリリースするそうです。

画像生成AIモデルは技術発展のスピードが凄まじいですが、リーガルや我々のリテラシーも進展させていく必要がありそうです。

よくある質問

著作権とは?

著作権は著作物を保護する権利です。著作物とは、「思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」をいいます。

AIの学習データの収集方法は?

AIの学習に欠かせない学習データを収集する際には、まずはデータを収集し、そのデータをもとにデータセットが生成されます。そしてデータ処理が行われ、学習用データセットが生成されるという仕組みです。

AIによる創作物に著作権は発生する?

AI創作物が著作物として認められるか否かは人間の「創作的寄与」の有無だと言われています。

AIsmiley編集部

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