【インタビュー】 印字検査の新しい基準に!KDDIテクノロジーが生んだ「AI印字不良検査アプリ」で製造現場が抱えている課題を解決
最終更新日:2024/04/04
製造現場では、製品の「外観検査」が行われており、パターンマッチングなどを活用した外観検査の自動化が増えています。しかし、製品パッケージや取扱説明書などの「印字」に関する検査において、パターンマッチングの外観検査では、不良品の過検出が起きている現状があり目視検査を減らすことができないなど、製造現場が抱えている課題を完全に解決できていません。
今回株式会社KDDIテクノロジーは、「AIで可変部分の学習が可能」という他にはない技術で過検出を防ぐ印字不良検査を開発しました。本日は、KDDIテクノロジーのAI印字不良検査アプリの特徴と開発背景について担当者に伺いました。
「外観検査技術」「お客様の声」をきっかけにAI印字不良検査技術を開発
KDDIグループの研究・技術をグループ外にも届ける
――まずは、KDDIテクノロジーの成り立ち、事業概要についてお聞かせください。
事業推進部 主任 泉川氏
――泉川氏
KDDIテクノロジーは、最新技術開発の研究を行っていたKDDI総合研究所(KDD研究所:当時)で得た知見と技術を、KDDIグループ内だけでなく、グループ外にも届けようという考えからスタートしました。その後、合併をきっかけにKDDIの携帯電話開発に関わるようになり、最近ではau PAYなどのアプリ開発や、ドローン、5G、XRなど新しい技術開発を行っています。
――携帯アプリなど、さまざまな開発を行っているのですね。AIでの「印字不良検査」の開発にはどういうきっかけがあったのでしょうか。
――泉川氏
はじめは屋外設備の外観検査AIから取り組んできました。KDDIは携帯電話の基地局を全国各地に設置しており、各基地局から設備に付着する大量のサビやヒビの画像データが集まります。その蓄積した画像データを活用し、サビの検出技術等の研究開発をしてきました。
――全国各地にある基地局の画像データが大量に集まる点は、研究開発において大きなアドバンテージですね。
――泉川氏
そうですね。多くの画像データを持っていたので検出技術の精度を出すことができたのだと思います。弊社の外観検査技術を展示会に出展してみたところ、化粧品メーカーの方から製造現場の不良品検知の目的で、商品パッケージについた傷や混入した異物、印字の不良を、外観検査技術で判定できないかと相談を受けました。そこからAIでの印字不良検査事業がスタートしました。
――泉川氏
私たちは、単にAIで業務の効率化を図るということではなく、人が本当にやらなければいけない仕事に、貴重な「人財」を当てられることが重要だと考えています。繰り返しで機械的な作業をAIで効率化を図り、本当に人の頭・目・耳・感触でないと不可能なことを人が行えることで、少子高齢化が進み労働人口が減少している日本でも、ほかの国と戦っていける競争力がついていくのではないでしょうか。
――AIを活用した社会での「人財」の在り方、働き方への思いも教えていただきありがとうございます。KDDIテクノロジーの外観検査技術とお客様の声が、AI印字不良検査アプリの開発につながったのですね。
製造現場が抱えていた「不良品の過検出」と「学習データが集まらない」課題
――さて、製造現場が抱える従来の印字検査の課題についてお伺いしたいと思います。
事業推進部 エバンジェリスト 課長 中山氏
――中山氏
従来の印字検査のパターンマッチングは、完全一致のものに対しては素晴らしい成果を発揮します。しかし、印字する素材やインクの違いで生じる、わずかなにじみなどもすべて不良品と判断され、過検出が起きていました。
過検出を防ぐために再度目視検査を実施したりするなど、製造現場の負担増加の原因になっていました。
また教師ありの機械学習で不良検出する場合では、不良パターンごとのデータが必要になります。そもそも製造業では不良がないように製造するため、不良の発生頻度が低く、学習用データを準備するのに時間と手間がかかるという点も課題として挙げられます。
過検出:目視レベルでは合格品なのに、検査装置が「不良」と判定する事象。
――そういった現状があることを初めて知りました。SDGsの取り組み、サステナビリティな企業形成という観点においても、問題のひとつに感じます。
KDDIテクノロジーのAIを活用した「印字不良検査」の大きな特徴に迫る
――KDDIテクノロジーの「AI印字不良検査アプリ」の特徴とはどういった点でしょうか?
――中山氏
KDDIテクノロジーのAI印字不良検査アプリの3つの特徴を簡単にお伝えします。
- 印字のにじみなどの揺らぎ、光や影の環境変化を許容できる「人の目に近いAI」
- 10枚程度の良品画像で学習が可能
- 製造番号などの可変部分も自動で学習
特に3つめの可変部分の自動学習は、少量の学習データで自動学習が可能なKDDIテクノロジーの優れた独自AIアルゴリズム技術です。
「人の目に近い」柔軟な検査が可能
――「人の目に近いAI」とはどのような特徴なのでしょうか?詳しくお聞かせください。
――中山氏
実は「人の目に近いAI」というワードは、実際に使用しているお客様からいただいた言葉なんです。
先程も申し上げましたが、パターンマッチングなどを活用した従来の印字検査は、完全一致を判断する場合には素晴らしい精度を発揮します。しかし印字物だと素材などの違いによって発生するインクのにじみや、擦れ、文字の大小、位置ずれなど、わずかな「揺らぎ」も不良品と判断されるため、不良品の過検出が生じていました。そこで人の目で読むには全く問題がない「揺らぎ」を許容し、不良品の過検出を防ぐことができるAI印字不良検査アプリを開発しました。
また人の目での判断にも、新人とベテランでは許容範囲に個人差が出ると思います。ですが当社のAI印字不良検査アプリは、AIの学習パラメータを調節すれば印字検査の精度調節が行えるため、ベテランのいわば一級の検査基準で検査が可能です。
――不良品はちゃんと検知し、読むのに問題のないものは見逃せるという点は確かに「人の目」のようです。今後KDDIテクノロジーのAIが印字検査のスタンダードになる可能性も見えてきますね。
わずか10枚程度の良品画像データでOK
――先程、製造業では不良品の数が少ないとお聞きしました。不良データが少ないとAIの精度が出ないと思うのですが、その点はいかがでしょうか。
――中山氏
従来の不良品検査は、不良パターンごとの学習用データを用意したり良品データを学習させる際も、学習のためにわざわざ撮影した少しの傷もない完璧な良品画像を使用していたと思います。
対して当社のAI印字不良検査アプリは、少量の良品画像データで学習ができるので、画像も学習のために撮影をする必要がなく、すでにお持ちの写真で学習が可能です。許容範囲のにじみ、擦れ、ずれ、また時間帯による光の加減や賞味期限のような可変部分の写真も含めて10枚程度学習させれば高い精度で検査ができます。
不良品画像のデータが集まらず事前検討で導入をあきらめてしまう製造現場も多くあったと思います。AI印字不良検査アプリは、すでにある写真を画像データとして使える上に導入前にお客様の検査対象に対し2週間程度の実現性検証を当社で実施するため、お客様が導入する前に導入時の精度イメージを明示することが可能です。
賞味期限などの可変部分もAIが自動で学習
――これまでの印字検査にない強みをほかにも教えてください。
――髙橋氏
賞味期限や製造番号など、製品の一部の数値が変動する場合でも、AIが変動箇所であると自動で学習できる点は、当社のAI印字不良検査アプリの大きな強みです。
開発4部 エキスパート 高橋氏
――髙橋氏
従来のパターンマッチング技術では、可変部分はその他のデザインや内容が同じでも検査範囲から外したり、個別の検査方法を検討する必要があります。当社でも事前検討では可変部分にマスク機能をつけて検査から外すように考えていたのですが、可変部分も学習させてみたところ、AIが理解して、マスクをかけなくても検査できるようになりました。この点は特に他にはない私たちだけの技術です。
――中山氏
私たち営業は、お客様が本当に必要としているものを提案したい思いがあります。お客様に寄り添い信頼関係を築いていく中で、真の悩みを聞くことができ、今回の開発につながったと思っています。営業と開発が毎日ディスカッションするくらい距離が近く、経営層も研究開発に期待いただいています。たとえ失敗しても応援してくれる会社の雰囲気などが積み重なった結果、今回の「AI印字不良検査アプリ」が生まれました。
――お客様の本当の悩みを解決したいという会社全体の思いが、KDDIテクノロジーの AI印字不良検査アプリの開発の成功につながったのですね。
中小企業にも使ってほしい、トライアルとスピード導入で「人財」の最適化へ
――「AI印字不良検査アプリ」の導入を予定している企業についてお聞かせください。また、どんな企業様に活用をしていただきたいとお考えですか。
――中山氏
現在大手家電メーカーや大手食品メーカー、大手自動車メーカーなど多数お引き合いをいただいています。1㎜の部品に管理番号が印字されているものも検査が可能で、電子機器銘板、取扱説明書、パッケージ、ラベルなどさまざまな印字物の検査が可能です。中小企業でも導入がしやすいようにトライアルも用意をしています。トライアル期間は2週間で、お客様のパソコンに期限付きでインストール、もしくはソフトが搭載されたGPU付きのパソコンをお貸出ししています。撮像環境がない場合でもお気軽にご相談ください。
――トライアルで試せる点は導入の参考になりますね。実際の導入や実装までの流れに関しても教えてください。
――中山氏
既にお持ちの良品画像を5枚程度、不良画像を1~2枚いただけましたら、KDDIテクノロジーで検証後、レポートを作成し、約2週間でお客様に導入時の精度イメージをご確認いただけます。その後、お見積り、導入という流れになり、別途個別カスタマイズ検討のご相談もお受けしています。目視検査業務を削減したいと考えている方、新たに印字検査を導入したい方にぜひご活用いただきたいと考えています。
――導入までがとてもスピーディですね。迅速に対応してもらえるのは、導入の検討を考える企業様にとって、大きなメリットに感じます。最後に、KDDIテクノロジーのAI印字不良検査アプリの展望をお聞かせください。
――中山氏
KDDI基地局のサビ検出研究からスタートし、外観検査について多くのお客様にお引き合いいただいたこと、失敗しても応援してくれる社風などのおかげで、AI印字不良検査アプリの開発に至りました。KDDIテクノロジーのAI印字不良検査アプリを通して「人財」の最適配置を促進し、現場が抱えている本当の悩みや課題の解決に役立てていただきたいです。
今回ご紹介した3つの特徴はKDDIテクノロジーの先進的な独自AIアルゴリズム技術になっています。少しでも印字検査に課題をお持ちであれば、きっと私たちで解決へ導くことができると思います。
トライアルもやっていますので、一度お試しいただき、ぜひKDDIテクノロジーのAI印字不良検査アプリを体感していただきたいです。トライアルも含め、お気軽にご相談ください。
――本日は貴重なお話をたくさんお聞かせいただきありがとうございました。
KDDIテクノロジーの印字不良検査アプリは、従来の印字検査にはない特徴があり、これからの印字検査の常識が変わってくると感じました。まるで人の目のように、微妙な差の許容を高い精度で判断でき、可変部分の検査も可能なところも、今までの技術にはない優れた点です。
導入に関しても、事前準備の手間がかからない点、検証までのスピードが速く、判断がしやすいという点が「導入しやすいソフト」というニーズに合っていると思います。
今すでに印字不良検査において悩みを抱えている方、新たに検査を導入したいと検討している方、まずはトライアルでKDDIテクノロジーのAI印字不良検査アプリの機能を実感してみてはいかがでしょうか。
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