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最終更新日:2024/04/04
需要予測とは、ある商品の売上量を短期的もしくは長期的に予想することをいいます。製造する量や発注量は、この需要予測に従って決めていきます。ただし、モノが売れるにはさまざまな要因が絡み合うため、予想するのは簡単ではありませんでした。昨今はこうした課題を解決すべく、これまで担当者が積み重ねた経験や勘に頼りがちだった需要予測をAI・人工知能で自動化するシステムが登場し、精度を高めています。今回は需要予測やダイナミックプライシングの事例をまとめました。

群馬県前橋市に本部を置くスーパーのベイシアは、このほど商品の発注量を自動で決める需要予測システムを刷新しました。
同社では、8年前から需要予測システムを導入しています。ただ、従来のシステムだとセール期間など商品が通常より多く売れる期間に、システムの指示通りに発注すると在庫が過剰になるという問題があり、発注担当者が手動で設定しなおす必要がありました。
このほど導入された新需要予測システムでは、この通常より多く売れる期間でも発注量をコントロールできるよう、システムをアップグレード。商品の売れた数量だけでなく、価格も注目することで、セール中の過剰な発注を防げるようになったといいます。
先行導入した2店舗ではすでに、在庫量を数パーセント削減する効果があったといい、同社では全店舗への導入を推進しています。

また、需要予測システムは在庫や発注量だけでなく、価格のコントロールにも活用されるようになっています。
昨今、需要によって商品の価格を変動する「ダイナミックプライシング(価格変動制)」と呼ばれる販売手法が、スポーツやイベント業界などで普及しつつあります。
航空券やホテルなどでは、年末年始やGW、夏休みなどのピークシーズンと、その他の時期で価格が異なるというのは良くあることです。この仕組みを入園チケットにも応用しているのが、大阪のユニバーサル・スタジオ・ジャパンです。
従来、USJの1日券「スタジオ・パス」は時期に関わらず一律7,900円でしたが、1月10日の入園分より、入場者の多い時期はチケット価格が上昇し、閑散期は安くなるというダイナミックプライシングを取り入れました。価格は7,400~8,900円と、最大で1,500円の開きがあります。
ダイナミックプライシングを取り入れることで入場者を分散させ、混雑や待ち時間を緩和し、来場者の満足度を高める狙いがあります。

北海道でビュッフェレストランを展開する株式会社クレスガーデンは、需要予測システムを活用することで、現場の効率化を実現しています。
クレスガーデンでは、従来から前年の売上予測を参考にして1ヶ月分の売上予測を行うという取り組みを行っていました。しかし、この予測には人手を要するため、より効率的かつ高精度に予測を行っていくことが大きな課題となっていたそうです。
そこで、クレスガーデンでは「AI-Hawk-」という需要予測システムを導入。これまでスタッフが手作業で行っていた売上予測作業をシステムに代行させることで、豪雪などの気象データを加味した上での高精度な需要予測が可能になったといいます。
これにより、忙しくなると予想される日はもちろんのこと、比較的暇になると予測される日も明確化することができ、仕入れや仕込み、シフト作成などをより効率的に行えるようになったそうです。
効率的な仕入れと仕込みが可能になれば、無駄な支出を減らすことにもつなげられるため、合理的に売上を伸ばしていく上でも大きなメリットがあるといえるでしょう。

国内最大級の回転寿司チェーンであるスシローは、ビッグデータの活用によって客の食べる量を予測する「回転すし総合管理システム」を導入しています。このシステムを利用し、客の食べるデータを分析することで、客の食べる量を予測するというものです。
スシローでは、このシステムを活用することで、廃棄ロスと機会損失の両方を下げることに成功したといいます。これまで、廃棄ロスを減らすための方法としては、供給量を減らすのが一般的でした。しかし、供給量を減らしてしまうと販売機会の損失につながってしまいます。そのため、廃棄ロスと機会損失の2つを同時に下げるのは非常に難しいこととされていました。
しかし、スシローの回転すし総合管理システムであれば、客の食べる量を的確に予測することが可能になるため、客の満足度を高めながら廃棄量を減らすことが可能になったのです。
そんな回転すし総合管理システムの仕組みは、寿司皿に付けられたICチップから「どの寿司が」「いつ」「どれくらい食べられたのか」といった情報を収集するというもの。このデータを収集することによって、売れ筋の商品を明確に把握することができるわけです。
さらに、日付データや気象データなどを組み合わせることで、季節や天候によって売上が変化するネタを把握することも可能になります。こういったデータを活用し、より的確に「どの店にどのネタを運ぶか」を決定することで、廃棄ロスと機会損失の両方を下げることができるのです。
スシローの回転すし総合管理システムでは、年間約10億件のデータを収集しており、そのデータをもとに顧客の食欲を予測しているのですが、そのデータ分析だけでは正確な食欲予測ができないといいます。なぜなら、種類が異なるデータの関連性を見つけなければならないからです。
そのためスシローでは、回転すし総合管理システムの活用に加えて、店長の経験も最大限活かすことで、より正確な食欲予測を行っています。システムが導入される前までは、店長自身が「顧客の体型」「来店客数」「待っている客の数」といった情報から、レーンに流す寿司を決めていました。そういった優秀な店長のノウハウをドッキングさせることで、はじめてスシローの高精度な予測が実現されているのです。
なお、スシローは、回転すし総合管理システムを2002年から導入しており、10年後の2012年には年間売上高1,113億円を達成しています。早い段階で需要予測システムの導入を決断したことが、この結果につながっているといえるのではないでしょうか。
また、2017年の年間売上高も1,564億円と順調に成果を伸ばしており、廃棄量に関しては4分の1にまで減らすことに成功しています。ただ顧客満足度を高めるだけでなく、環境に配慮した取り組みにも力を注いでいることが、スシローが多くの人々から高く評価されている理由なのかもしれません。

東京都内のタクシー6社もAIを使った需要予測システムを活用しています。需要予測は、タクシー6社とソニーの共同会社「みんなのタクシー」が手掛けている配車アプリにおいて活用されており、待ち時間の短縮などにつなげられているそうです。
その具体的な仕組みとしては、走行データや気象情報などの情報を分析した上で、10分後から半日後までのタクシー需要を予測するというもの。タクシーの運転手に支給されているタブレットに「需要が見込まれる地域」「具体的なルート候補」などを表示させることで、より効率的な運転が可能になるわけです。
また、「長距離利用を見込めるエリア」などといった条件の絞り込みを行うこともできます。タクシーは天候によって乗客が集まりやすいエリアが大きく変化する傾向にあるため、天候を踏まえた上で「乗客が集まりやすいスポット」を提示してもらうことができるのです。
これまで、乗客が集まりやすいスポットの予測などは、経験が豊富な運転手でなければできないものでした。そのため、新人の運転手は効率的にタクシーを走らせることができないというケースも多かったわけです。
その点、需要予測システムを活用すれば、経験の浅い運転手も乗客の集まりやすいスポットを的確に把握できるようになるため、無駄な運転を減らすことができます。無駄な運転を減らして効率的に利益を得られるという点は、大きなメリットといえるでしょう。

また、Jリーグなどプロスポーツの世界でも、AIを用いた需要予測システムに基づき、ダイナミックプライシングを取り入れる動きが出ています。
席にこだわりがある観客は早々にお気に入りのポジションを購入する、そうでない場合は価格が下がるぎりぎりまで待つ、というように、観客は席種を優先するか価格を優先するかを選ぶことができます。一方、興行側は座席価格が下がっても販売数量を拡大することで、損失をカバーすることができるわけです。また、「適正価格」を主催者側が決定することで、人気のチケットを大量に買い占める転売サイト対策につながるというメリットもあります。
実際にJリーグの横浜F・マリノスでは、このダイナミックプライシングを導入したことで、チケットの売上が1割増となったといいます。横浜F・マリノスでは、2018年7月28日に行われたホームゲームの清水エスパルス戦から、需要予測システムに基づいたダイナミックプライシングを導入し始めました。
このシステム導入により、2018年8月1日にニッパツ三ツ沢球技場で行われたサンフレッチェ広島戦では、メインスタンド中央の座席である「メインSSS席(定価5,900円)」が前日までに約17%、試合当日には約29%値上がりしたそうです。その一方で、バックスタンド中央の座席である「バックSBホーム(定価4,600円)」に関しては、前日までに約4%、当日までに約11%値下がりしました。
これまで、すべての試合のチケット料金はシーズン開幕前に決定されていましたが、スポーツのチケット需要はさまざまな要因によって変化するのが実情です。「人気選手が出場するかどうか」「チームの順位はどれくらいか」「対戦相手の順位はどれくらいか」「試合当日の天気はどうか」といった点などは、まさに需要が変化する要因といえるでしょう。しかし、こういった点はシーズン開幕前の時点で予測することはできません。
その点、ダイナミックプライシングであれば、日々の販売実績などを踏まえた上で、試合当日まで需要予測を行いながらチケット価格を変動させていくことができるのです。
ただ、このダイナミックプライシングに関しては、誤った捉え方をしている人も少なくありません。その代表的な誤解のひとつに「チケット価格の吊り上げ」が目的だと捉えてしまっていることが挙げられるでしょう。しかし、ダイナミックプライシングの目的はあくまでも「興行主の収益を最大化させること」に他なりません。
需要が少ない座席に関しては価格を下げることで集客力を高め、需要が高い座席は価格を引き上げることで、需要のバランスを保ちやすくなるということです。
一般的なチケット販売方法の場合、需要が多い座席のチケットは発売直後に売り切れてしまい、転売サイトなどに高額で流通してしまうケースが多々あります。これは、興行主にとって機会損失に他なりません。その点、ダイナミックプライシングであれば人気のある座席の価格を上げることで転売サイトへの高額転売も防ぎやすくなるのです。
また、横浜F・マリノスに関しては、上限の価格を1万円に設定していたため、特に多くの入場者が見込める試合においても、価格が異常な高騰を見せることはありませんでした。

ここまでご紹介してきた業界以外でも、ダイナミックプライシングを導入(導入予定)している企業が数多く存在します。たとえば、家電量販店のビックカメラでは、2020年8月頃までに全店舗で電子棚札とダイナミックプライシングを導入することを発表しています。その導入に先駆け、町田店では2019年2月のオープン時から効果検証として電子棚札を導入したところ、一定の成果が得られたそうです。
家電量販店には価格変更が頻繁に起きるという特徴があり、価格が変更されるたびに値札を交換しなくてはならないため、従業員の負担が大きくなっていたといいます。価格変更が多い日には、接客以外の作業時間の3割近くも値札交換作業に時間を費やさなければならないことがあり、効率的に業務を進められていない状況が続いていたそうです。
その点、電子棚札を導入すればビックカメラの本部から一括で価格変更を行えるようになるため、従業員の負担も大幅に軽減させることができるようになります。そのため、全店舗で電子棚札とダイナミックプライシングが導入されれば、企業全体のさらなる生産性向上が期待できるでしょう。
コンビニエンスストアのローソンでも、食品ロスを削減させるための取り組みとしてダイナミックプライシングが試験的に導入されています。試験的にダイナミックプライシングが導入されたのは東京都の「ローソンゲートシティ大崎アトリウム店」であり、電子タグを活用した実験が実施されました。
その仕組みとしては、商品に付けられている電子タグを用いて賞味期限間近の商品を特定し、その賞味期限に合わせた価格をデジタルのプライスカードに表示させるというものです。この商品情報は、実験として用いられているLINEアカウントでも表示されるようになっており、対象の商品を購入した場合にはLINEポイントが還元されるようになっています。
駐車場の予約を行えるアプリ「akippa」でも、2018年10月からダイナミックプライシングの実証実験が行われました。イベント開催時の利用状況や過去の利用頻度などを踏まえた上で需要を予測し、適切な値段でサービスを提供するという仕組みです。このダイナミックプライシングを導入したことで、売上と稼働率が10%増加したといいます。
このように需要予測やダイナミックプライシングは、製造量や発注量のコントロールから「適正価格」の決定まで、幅広く活用されるようになっています。業界によっては、適正価格の決定によって「チケットの高額転売」などの機会損失を回避することにもつなげられるのです。
また、駐車場のように、季節やイベント開催などで需給のバランスに変化が生まれるものであっても、その都度最適な価格を決定することができるのは大きな魅力といえます。過剰在庫や値決めに課題を感じている場合は、売上に直結する需要予測システムの導入を検討してみてはいかがでしょうか。
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