AIに代替される経理業務とは?AI活用時代の経理担当者の役割
最終更新日:2023/12/10
企業経営にシステムが積極的に取り入れられるようになり、デジタルシフトが進んでAIを活用する現場も増えてきています。電子帳簿保存法の改正やインボイス制度の導入を背景に、経理業務においてもAI活用が求められる時代になってきているといえるでしょう。
それでは、AIを活用すると具体的にどのような業務を大体できるのでしょうか。今回は、AIに代替される経理業務やAI活用時代の経理担当者の役割について詳しく解説します。
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経理業務におけるAI活用
経理業務におけるAI活用は「会計ソフト」だけに限りません。「AI-OCR」など、会計ソフトと連携して活用するシステムも近年では数多く登場しています。経理業務におけるAI活用には主に「会計ソフト」と「AI-OCR」の2種類があり、それぞれの特徴をうまく活かして業務に取り入れていくことが大切です。
ここでは、経理業務の種類や経理業務にAI活用が求められるようになった背景など、経理業務におけるAI活用について詳しく解説します。
経理業務の種類
経理業務を大きく分類すると、「日々の仕事」「月ごとの仕事」「年単位の仕事」の3種類に分けられます。日々の仕事としては自社の現金管理や売上・仕入等の取引記録、帳簿の記入などが挙げられます。
月ごとの仕事には、請求書の発行や管理、従業員の給与・税金計算、損益計算書の作成などがあります。また、年単位の仕事としては決算業務や企業としての法人税・消費税の支払い、従業員の年末調整、保険料の申告などがあるでしょう。
経理業務にAI活用が求められる背景
経理業務にAI活用が求められるようになった背景として、2023年10月1日から「インボイス制度」が導入されることや、2022年1月1日から電子取引データの「電子保存」が義務化されるようになることなどが挙げられます。
これらの制度が新規導入されるようになるため、企業は従来のようなアナログな経理業務からデジタルシフトを達成し、AI活用を推し進めていく必要があります。それぞれの制度について詳しく見ていきましょう。
2022年1月1日から電子取引データの「電子保存」が義務化される
国に支払う税金に関する帳簿は、国税庁の定めた「電子帳簿保存法」によってデータ保存が可能になっています。この電子帳簿保存法は2022年1月1日に改正され、これまでは紙に印刷して保存が認められていた書類を、原則としてデータ保存するように義務付けられることになりました。
書類を電子保存することによって企業のデジタルシフトを推進し、経理業務を電子化して業務効率化や生産性の向上をはかる目的で法律改正が行われています。
今回の電子帳簿保存法の改正によって、これまでは3か月前までに税務署長に事前申告しなければならなかった電子帳簿のデータ保存が申請不要になり、手続きの簡略化が期待できます。また、データ保存を行うためのシステム要件も大幅に緩和され、「システムマニュアルの整備」「保存場所にディスプレイ、電子計算機、プリンター、プログラム、マニュアルの備え付け」「2つ以上の任意の条件によるデータ検索」の3つの条件が揃っていれば帳簿データの電子保存が認められるようになりました。
2023年10月1日から「インボイス制度」が導入される
前述の電子帳簿保存法の改正に加えて、2023年10月1日からはインボイス制度の導入が予定されています。インボイス制度とは「適格請求書保存方式」と呼ばれる制度で、請求書等の書類を発行するにあたって国が定めた記載用件を満たした「インボイス」を発行することで、事業者が消費税の仕入税額控除を受けられるようになる仕組みです。
インボイス制度は買い手・売り手のどちらにも適用される制度であり、請求書等の書類を発行する売り手は、買い手からの請求に応じてインボイスを適宜交付する必要があります。また、買い手は売り手から交付されたインボイスを保存しておくことが求められます。
2022年1月1日からの電子帳簿保存法の改正と、2023年10月1日からのインボイス制度開始に向けて、企業はこれらの制度に適応するための準備を整えていかなければなりません。そのためには、AI活用によって経理業務を効率化していく必要があるといえるでしょう。
AIが「代替する経理業務」と「代替できない経理業務」について
経理業務にはAI活用が効果的ですが、「代替できる経理業務」と「代替できない経理業務」の大きく2つに分けられます。
代替可能な経理業務はAIに任せて自動処理に切り替えられますが、代替できない経理業務については引き続き人の手で処理し続けなければなりません。AI活用時代だからといって全ての経理業務を自動化することはできないため、自社の経理業務の中でAIに任せられる範囲とそうでない範囲を明確に切り分け、代替付加な業務については経理担当者に割り当てる必要があります。
AIは処理の手順が決まっている「定型業務」やボリュームの大きな「大量のデータ処理」を得意としており、臨機応変な判断を求められる業務を苦手としています。したがって、日単位で決められた手順によって処理される業務や、大量のデータチェックなどはAI活用に適しているといえるでしょう。一方で、例外的な条件判断が必要な従業員の税金計算など、定型外の動きを必要とする業務はAIによる大体が難しいと考えられます。
経理業務を効率化する代表的なAIツール
前述のように、AIによって代替できる経理業務は定型的な手順が決まった業務や大量のデータ処理などが主になります。以上を踏まえて、経理業務を効率化するための代表的なAIツールとして「会計ソフト」や「AI-OCR」が挙げられます。
会計ソフトとは、企業の会計業務を効率化するためのソフトウェアのことで、日々の売上管理や請求書発行業務、損益計算書や決算書の作成など、経理業務に必要不可欠なツールが搭載されています。会計ソフトを活用することによって従来は簿記の知識が必要だった帳簿作成が簡単にできたり、ワンクリックで帳票発行が可能になったりと業務の効率化が期待できます。
また、AI-OCRとは、書類上の文字を読み取るOCR技術にAIを組み合わせたもので、識別しにくい手書き文字や斜線が引かれた文字などをAIによって読み取り可能にし、読み取り精度を高めたもののことです。
経理業務にAIを活用することで実現すること
経理業務にAIを活用することで、主に下記の3つのメリットがもたらされます。
- AI-OCRを活用することで、領収書や請求書のデータ保存を自動化できる
- 仕分け業務を自動化し、帳簿作成にかかる手間と時間を省力化できる
- 社内向けチャットボット活用で、社内問い合わせ対応の手間を省ける
前述のように、AI-OCRはOCR技術にAIを組み合わせて読み取り精度を高めたものです。そのため、これまでは読み取りが難しかった手書きの請求書の内容などもスキャンするだけで正確にデータ化できるようになり、経理担当者が手入力していた時間や手間を削減できます。
また、アナログで帳簿を作成すると作成の手間だけでなく紙の保管にもコストがかかりますが、会計ソフトを活用することによって仕分け業務を自動化し、簡単に帳簿を作成してデータ保存によるコスト削減が可能です。
さらに、社内向けチャットボットを設置し従業員の問い合わせをAIに任せられれば、問い合わせ対応に取られていたリソースを他の業務に活用できます。
AI活用時代の経理担当者の在り方とは?
AI活用時代を迎えるにあたって企業はAI活用を積極的に推し進めて、ツールの導入によって経理業務を積極的に自動化・省力化していくことが求められます。AI活用が可能な業務はできるだけツールに任せて人の手を介さない体制を構築し、AI活用が難しい業務については引き続き経理担当者が力を発揮していかなければなりません。
そのため、経理部門ではAI活用できる業務とできない業務を早い段階で明確にしておき、AI活用ができる業務についてはツールへの移行を進めていく必要があります。また、AI導入後の業務フローや運用ルールについてもあらかじめ定めておくことが大切です。
「AI活用時代になったから経理担当者は不要」ということは決してなく、AI活用時代だからこそ、適切な場所で経理担当者の活躍が求められるのです。
経理業務のAI活用シーン
経理業務におけるAI活用についてお伝えしてきましたが、具体的に経理業務におけるAI活用シーンには「領収書・請求書の読み取り」「仕分け作業・帳簿作成」「監査・決算書等の確認」「経理全般の問い合わせ対応」などが挙げられます。
ここではそれぞれの経理業務のAI活用について、業務内容やどのように経理業務が効率化されるのかを詳しく解説します。これから経理業務のAI活用を推進していきたいとお考えの方は、ぜひ参考にしてください。
領収書・請求書の読み取り
領収書・請求書の読み取り業務とは、営業部門などの担当者をはじめとした自社の従業員が持ち帰ってきた領収書や、取引先から送られてきた請求書をAI-OCRによって読み取り、会計ソフトにデータ保存する業務のことを指しています。領収書や請求書の入力は、1枚ごとのデータ量は決して多くありませんが、全て処理すると手間も時間もかかる業務です。
これまでは経理担当者が領収書や請求書の内容を目視で確認して会計ソフトやExcelシートなどに転記しなければなりませんでしたが、RPAを活用することでOCRで処理したデータを正確かつ自動的に会計ソフトに登録が可能になります。データ入力の省力化をはかれるだけでなく、システム化することで転記ミスを削減し、データの正確性が向上する効果もあります。
仕分け作業・帳簿作成
銀行やICカード、クレジットカードなどの明細データの勘定科目を自動的に判別・提案し、自動的に仕分け作業を行って会計ソフトに登録するのも経理業務におけるAI活用の一例です。伝票入力や消し込み作業を自動化できるため、帳簿作成業務にかかる時間を大幅に短縮できます。例えば「〇〇駅」という文字をAIが認識すると、自動的に「旅費交通費」の勘定科目を提案してくれるといったイメージです。
AIが明細の内容から勘定科目を提案してくれるため、経理担当者がどの勘定科目に相当するのかを1から考える必要がなく、明細データを次から次へとスムーズに処理できます。また、AIが自動判別するため経理業務に慣れていない人でも比較的簡単に扱えるというメリットもあります。
監査・決算書等の確認
経理業務のAI活用には、監査・決算書等の確認にも有効です。AIによって決算や月次監査などのチェックを機械化することで、監査にかかる時間を短縮するとともに、チェックの正確性向上も期待できます。人の手を介さない監査を実現できれば、経理担当者による意図的な不正の防止にもつながります。
監査・決算書等の確認におけるAI活用は、「入力されているデータが正しいかどうかを判断する」という点で活用されています。AIによるリアルタイム性の高い監査が行われれば、現在の経営状況を可視化しやすくなり、経営層が迅速な経営判断を下すことにも役立ちます。
また、月次監査では歴代の監査結果と比較して特に変動率が高い項目などを自動チェックし、エラーの可能性がある項目を指摘するなどの機能も利用できます。
経理全般の問い合わせ対応
チャットボットや検索システムを活用して経理業務全般の問い合わせ対応を自動化し、経理担当者が問い合わせ対応に追われることなく、本来の経理業務に集中できる環境を構築できるのもAI活用の強みのひとつです。
AIを活用したチャットボットは利用者からの過去の問い合わせを学習しながら最適な回答を導き出せるようにデータを蓄積していくため、利用されればされるほど精度が高まります。業務時間中にいつ従業員から問い合わせが来るか分からない状況を改善できるだけでなく、休業日に出社している従業員の問い合わせなどにも対応できます。
まとめ
AI活用時代に突入しつつある現代では、経理業務にもAIが積極的に取り入れられてデジタルシフトが推進されています。とはいえ全ての経理業務を自動化できるわけではないため、自社の業務の中でAIを活用できる業務とできない業務を明確にした上で、AIで自動化する業務と経理担当者が引き続き処理する業務を切り分けて新たな運用体制を確立することが大切です。
経理業務におけるAI活用には、会計ソフトやAI-OCRなどがよく活用されています。AI-OCRやAI搭載型の会計ソフト、チャットボットなどの情報はAIsmileyで効率的にお求めいただけます。これから経理業務にAIを活用していきたいとお考えの方は、下記からお気軽にお問い合わせください。
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