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失敗しないローコード開発とは?ノーコードとの違い・費用・ツールの選び方

最終更新日:2026/09/08

「システムの内製化を任されたが、ローコード開発とノーコード開発の線引きがわからない」「いくらかかり、どこまで作れるのかがわからないと社内で説明できない」。情報システム部門・DX推進担当・業務部門で内製化を命じられた担当者が、導入検討時に抱きやすい疑問です。

ローコード開発とは、プログラムコードの記述を最小限に抑えてシステムを開発する手法です。IT人材の不足や業務システム内製化のニーズを背景に、企業のDXを支える選択肢として広がっています。

本記事を読めば、ツールの選び方から費用の考え方、社内に定着させるためのステップまで、導入に向けた社内説得の材料が網羅的に揃います。

ローコード開発とは?


ローコード開発とは、複雑なプログラミングの記述をできる限り減らし、画面上のボタン操作などを中心にアプリを作る手法です。多くのツールでは、入力画面やデータベースの機能が「再利用できるブロック」のように用意されています。開発者はそれらをドラッグ&ドロップでパズルのように配置していくため、専門知識が少なくてもアプリを構築しやすいのが特徴です。

承認・通知の流れを定義するワークフロー(業務手続きを電子化する仕組み)や、他システムとのAPI連携(システム同士がデータをやり取りする接続方式)も、画面上で設定できるツールがあります。標準機能で実現できない部分を、必要に応じてコードで補うのが一般的です。

日本国内では、同種の開発手法や製品が「超高速開発」と呼ばれてきた経緯もあります。ローコード開発に近い意味で使われる場合がありますが、対象範囲は調査会社・業界団体・ツール(製品)によって異なります。

ローコード開発が注目される背景

システム開発の需要が増える一方で、エンジニアの確保は難しくなっています。IPA(情報処理推進機構)の「DX動向2025」によると、DXを推進する人材が「大幅に不足している」「やや不足している」と回答した日本企業の割合は、合計85.1%でした。米国・ドイツと比べても高い水準です。

長期の見通しでは、経済産業省が2019年に公表した「IT人材需給に関する調査」が、2030年のIT人材不足数を中位シナリオで約45万人、高位シナリオで約79万人と試算しています。限られた人員で開発を進める手段が求められることも、専門のプログラマー以外も参加しやすいローコード開発が注目される理由のひとつです。

市場も拡大しています。アイ・ティ・アール(ITR)が2026年2月5日に発表した調査によると、国内のローコード・ノーコード開発市場における2024年度の売上金額は994億円で、前年度比15.1%増でした。2024~2029年度の年平均成長率は12.9%と予測されています。

業務部門でアプリ開発を担う人は「シチズンデベロッパー(市民開発者:専門の開発者ではないものの、業務部門でアプリを作成する人)」とも呼ばれます。老朽化した既存システムの刷新を、限られた予算・人員で進めたい企業にとっても選択肢のひとつです。

ローコード開発が適しているケース

ローコード開発が適しているのは、標準化しやすい業務システムの領域です。具体的には、申請・承認などのワークフロー、案件管理・在庫管理といった社内業務アプリ、データベースと連動した帳票・レポート、既存システムの周辺を補う小規模なツールなどが挙げられます。

要件が定型的で、画面や処理のパターンを標準機能でまかなえる開発ほど、開発期間や工数を抑えやすくなります。

ノーコード開発・スクラッチ開発との違いは?

3つの手法の比較

ローコードとノーコードの間に、明確な定義上の線引きはありません。一般的には「コードによる拡張ができるかどうか」で区別されますが、両者に厳密な違いはなく、ノーコード開発ツールの中にもコードで拡張できるものがあります。

一般的な傾向として、3つの手法を比較すると次のようになります。

比較項目 ノーコード開発 ローコード開発 スクラッチ開発
コードの記述 原則不要 必要な部分のみ記述 原則として個別に記述
求められるスキル 比較的低い 基礎的なIT知識に加え、用途によってコードの知識が必要 専門的な設計・開発スキルが必要
開発スピード 比較的速い 比較的速い 要件に応じた期間が必要
柔軟性・拡張性 標準機能の範囲が中心 コードや外部連携で補える場合がある 個別の要件に合わせやすい
開発コスト 比較的抑えやすい 標準機能への適合度によって変わる 開発範囲が広いほど増えやすい
向いている用途 定型的な小規模アプリ 業務システム・部門~全社アプリ 大規模・独自性の高いシステム

※表は一般的な傾向です。必要なスキル・費用・拡張性は、製品・開発対象・外部連携の有無によって異なります。

ノーコード開発との違い

一般的にノーコードは、コードを記述せずにツールの標準機能を使って開発する手法です。ローコードは、標準機能に加えてコードで機能を拡張できる手法とされています。そのため、ノーコードは取り組みやすい一方、作成できるアプリがツールの機能に左右されやすくなります。ローコードは一定の技術知識が求められるものの、より複雑な業務システムに対応できる傾向があります。

ただし、同じ製品群の中にノーコードに近い作り方と、コードを使った拡張機能の両方を用意しているツールもあります。名称だけで分類せずに自社の要件を標準機能でどこまで実現できるか、足りない部分をどのような方法で補えるかを確認しましょう。

スクラッチ開発との違い

スクラッチ開発は、プログラミング言語を使ってシステムを個別に構築する手法です。設計の自由度が高く、独自性の強いシステムや大規模・複雑な要件にも対応できます。一方、専門エンジニア・長い開発期間・相応の費用が必要になりやすい点には注意が必要です。

ローコード開発は、要件が標準機能に合う場合に、スクラッチ開発よりも開発期間や工数を抑えやすい手法です。基幹システムの中核のような独自性の高い領域はスクラッチで構築し、周辺の業務アプリはローコードで作るなど、両者を使い分ける企業もあります。

ローコード開発のメリット

ローコード開発の主なメリットは次の4点です。

開発スピードの向上

あらかじめ用意された部品を組み合わせてシステムを構築するため、ゼロからコードを書くスクラッチ開発に比べて、開発期間を大幅に短縮できます。また、仕様変更に柔軟に対応できる点も大きな強みです。現場で試作品(モックアップ)を動かしながら改善を繰り返す、アジャイル的な進め方に適しています。

標準機能を活用できる業務アプリでは、スクラッチ開発よりも短期間で試作品を用意し、利用者の意見を確認できます。

開発・保守コストの削減

開発費用のうち、人件費・外部委託費は工数の影響を受けます。標準機能を活用して開発工数を減らせれば、費用を抑えられる可能性があります。

高度なスキルを持つ人材への依存度が下がることで、外部ベンダーへの委託範囲を減らせる場合もあります。ただし、プラットフォームのライセンス・教育・追加開発・運用支援には別途費用が発生するため、総額で比較することが大切です。

非エンジニアの参画による内製化

業務部門の担当者が開発に参加できれば、現場の要望をアプリに反映しやすくなり、IT部門への依頼待ちも減らせます。現場が自分たちの業務に合わせてアプリを変更できるため、IT人材不足への対応にもつながります。

社内で変更・改善できる範囲が増え、外部ベンダーへの依存を減らせることも内製化の利点です。

開発時の品質のばらつきを抑えられる

検証済みの部品を組み合わせて開発することで、実装方法のばらつきや初歩的な不具合を抑えやすくなります。プラットフォームが共通の枠組みを提供するため、担当者ごとに開発方法が大きく異なる状態も避けやすくなります。

ただし、設計・権限設定・データ管理・保守の品質まで自動的に保証されるわけではありません。IPAの「DX白書2021」では、ローコード・ノーコードツールについて、妥当な設計や保守品質の確保、組織をまたぐデータ管理などに課題があると指摘しています。アプリを公開した後の保守方法や管理責任も決めておく必要があります。

ローコード開発のデメリット

ローコード開発にも、制約や注意点があります。導入前に把握しておきましょう。

開発の自由度に限界がある

ローコード開発で作れるものは、プラットフォームが提供する機能・部品の範囲に左右されます。コードによる拡張で補える製品もありますが、標準機能で対応できない部分が多いと追加開発や外部連携の費用が増え、スクラッチ開発より高額になる場合があります。

処理性能に限界がある

処理を最適化できる範囲は製品によって異なります。大量データの一括処理・複雑な計算・多数の同時アクセスに対応できるかは、製品・契約プラン・システム構成によって変わります。

性能要件が厳しい場合は、想定するデータ量・同時利用者数・応答時間を定め、試作段階で確認しましょう。

内部がブラックボックス化しやすい

ローコード開発ツールには、設定内容からコードを生成する製品と、専用の実行基盤上で設定情報を動かす製品があります。開発者が処理の全体像を把握しにくい場合は不具合の原因特定が難しくなり、ベンダーのサポートが必要になることがあります。

複雑な外部連携・性能設計・障害対応が必要な場合は、IT部門や開発経験者が支援できる体制を用意しておくと安心です。

ベンダーロックインのリスクがある

ベンダーロックインとは、特定のベンダーやツールに依存し、他の環境へ移行しにくくなる状態です。ローコードで構築したアプリは、プラットフォーム固有の仕様・部品・データ形式を利用する場合があるため、別環境への移行に費用や時間がかかることがあります。

料金改定・機能変更・サービス終了の可能性も含めて検討しましょう。契約前には、データを一般的な形式で書き出せるか、契約終了後のデータ保持期間はどの程度か、APIやソースコードを利用できるかを確認しておくことが大切です。

管理されないアプリが乱立しやすい

現場が手軽にアプリを作れることが、IT部門が把握していないアプリが増える原因にもなります。重複アプリ・特定の担当者しか仕様を把握していないアプリ・不適切なアクセス権限は、保守負担やセキュリティ上の問題につながります。

誰がどのようなアプリを作成できるか、公開前に誰が確認するか、利用を終了したアプリをどのように廃止するかなど、開発・運用ルールを用意しましょう。

学習コストを見誤ると逆効果になる

コードの記述量が少ない製品でも、操作方法・データ設計・権限設定・外部連携などの学習は必要です。プラットフォームごとにカスタマイズの方法も異なります。

「コードの記述が少ないため、誰でもすぐに使える」という前提で導入すると、設計のやり直しや追加教育が発生する可能性があります。導入時にはトレーニングやベンダーの支援も見込んでおきましょう。

ローコード開発が向いていないケース

次のような要件では、ローコード開発の利点よりも制約が大きくなる可能性があります。

  • デザイン・操作性を細部まで独自に設計する必要がある消費者向けサービス
  • 大量のトランザクションを短時間で処理する必要があるシステム
  • 独自アルゴリズムなど、自社固有のロジックが競争力の源泉となるシステム
  • 長期利用を前提とし、製品の継続性・移行性・性能に厳しい要件があるシステム
  • 標準機能で対応できない要件が多く、追加開発が中心になるシステム

該当する場合はスクラッチ開発を選ぶか、中核部分はスクラッチで構築し、周辺の業務アプリだけをローコードで作る方法を検討しましょう。

ローコード/ノーコード開発プラットフォームの機能と代表的ツール

主な機能

ローコード・ノーコード開発プラットフォームは、アプリの開発から実行・運用までを支える基盤です。クラウドサービスとして提供される製品が多い一方、オンプレミス型・クラウド型・両者を組み合わせた構成に対応する製品もあります。

主な機能は次のとおりです。

機能 内容
ビジュアル開発環境 画面・データベース・処理の流れをGUIで設計する
テンプレート・部品ライブラリ 業務アプリのひな形や再利用可能なコンポーネントを提供する
ワークフロー機能 申請・承認・通知などの業務フローを定義する
API連携・外部接続 既存システムやクラウドサービスとデータを連携する
アクセス権限・セキュリティ管理 利用者ごとの権限設定やログ管理を行う
実行環境・運用機能 作成したアプリの公開・バージョン管理・稼働監視を行う

選び方のポイント

選定では、次の観点を総合的に比較します。

  • 作りたいアプリの種類・規模に対応しているか
  • 開発を業務部門・IT部門のどちらが主に担当するか
  • 開発担当者に見合った難易度か
  • 既存システムとの連携手段が用意されているか
  • セキュリティ・権限管理が自社の基準を満たすか
  • データの保管場所・暗号化・監査ログが社内規程に適合するか
  • 料金体系が利用規模に合っているか
  • 日本語サポート・導入支援を利用できるか

無料トライアル・デモ環境・PoC向けプランが用意されている場合は、候補を2~3製品に絞り、実際の業務を題材に試作して比べましょう。想定データ量・同時利用者数・外部連携・権限設定なども、試作段階で確認しておくと導入後の問題を減らせます。

代表的ツールの例

国内で提供・利用されている主なツールには、次のようなものがあります(順不同)。

ツール名 提供元 公式サイトでの位置づけ・特徴
kintone サイボウズ ノーコード・ローコードツール。業務アプリを画面操作で作成でき、プラグインや外部連携による拡張にも対応
Power Apps Microsoft ローコードアプリ開発基盤。Microsoft 365・Teams・Dataverseなどとの連携に対応
OutSystems OutSystems エンタープライズ向けのアプリ・AIエージェント開発基盤。外部向けアプリや基幹領域にも対応
intra-mart NTTデータ イントラマート エンタープライズ向けローコードプラットフォーム。ワークフロー・業務プロセスのデジタル化に対応
楽々Framework3 住友電工情報システム 部品組み立て型の国産ローコード開発基盤。基幹業務・周辺システムの開発に対応
SmartDB ドリーム・アーツ 大企業向けノーコード開発基盤。複雑な承認フローを含む業務のデジタル化に対応
Oracle APEX Oracle Oracle Databaseと統合されたローコード開発基盤。アプリ数・開発者数・利用者数による個別のAPEXライセンス課金はない

上記以外にも国内外に多数の製品があり、対象とする開発規模や得意分野が異なります。特定の製品だけであらゆる要件に対応できるとは限らないため、自社の用途に合うかを確認して選びましょう。

ローコード開発にかかる費用の目安

採用判断では、継続的に発生するランニングコストと、導入時に発生する初期費用を分けて考える必要があります。

料金体系

代表的な料金体系には、次の4つがあります。複数の課金方式を組み合わせている製品も少なくありません。

料金体系 特徴
ユーザー数課金型 利用者数に応じて課金。最低契約ユーザー数や社外ユーザー向け料金が設定されている場合がある
定額制(サブスクリプション型) 一定の料金に決められた数のユーザー・アプリ・容量などが含まれる
アプリ単位の課金型 利用するアプリ数やアプリの規模に応じて課金。ユーザー数と組み合わせる製品もある
従量課金型 コンピュートリソース・ストレージ・API呼び出し数など、利用量に応じて課金

製品別の価格例は次のとおりです。いずれも2026年7月時点の公式情報で、消費税は含みません。

製品名 価格例
kintone 初期費用無料。1ユーザーあたり月額で、ライトコース1,000円・スタンダードコース1,800円・ワイドコース3,000円。ライト・スタンダードは最低10ユーザー、ワイドは最低1,000ユーザー
Power Apps Power Apps Premiumは1ユーザーあたり月額2,998円相当(年払い)。2,000シート以上は月額1,799円相当。開発者向けプランは無料だが、開発・テスト用途に限られ、本番環境でアプリを利用するには有料ライセンスなどが必要
OutSystems OutSystems Developer Cloudは、アプリの規模・利用者数・追加機能などに応じた個別見積もり。無料のPersonal Editionはテスト用で、本番利用には対応しない
Oracle APEX Oracle APEX自体は、対応するOracle Databaseに追加費用なしで含まれる。アプリ数・開発者数・利用者数によるAPEXの個別課金はない。ただし、Oracle Databaseやクラウドのコンピュート・ストレージなどには費用が発生する場合がある

このほか、契約・環境構築・教育・導入支援などに初期費用が発生する場合があります。クラウドサービスでも、データ移行や外部システム連携を依頼すれば追加費用が必要です。オンプレミス型では、サーバー・ネットワーク・ミドルウェア・保守体制も含めて確認しましょう。

費用を試算する手順

製品横断で使える一律の相場はありません。次の項目を洗い出し、候補製品ごとに総額を比較します。

試算項目 確認する内容
利用者 社内利用者・社外利用者・開発者の人数、最低契約数
アプリ 作成・運用するアプリ数、アプリの規模、利用部門
基本機能 必要なワークフロー・権限・監査ログ・データ容量が標準プランに含まれるか
外部連携 API・コネクタ・プラグイン・アドオンの料金
利用量 ストレージ・API呼び出し・処理能力などの追加料金
導入作業 環境設定・データ移行・カスタマイズ・教育にかかる費用
運用 保守・問い合わせ対応・監視・バージョン更新の費用
将来の拡大 利用者やアプリが増えた場合の料金、上位プランへの移行条件

ユーザー数課金型では、利用者が増えるほど費用も増加します。導入時の人数だけでなく、他部門へ展開した場合の総額も試算しておきましょう。アプリ数やAPI利用量によって料金が変わる製品では、現在の利用量と将来の増加分を分けて見積もることが重要です。

ライセンス費用以外に発生するコスト

見落としやすいのが、プラットフォーム利用料以外の費用です。次の項目は見積もりの段階で確認しましょう。

  • 導入支援・伴走コンサルティングの費用
  • 開発担当者向けのトレーニング費用
  • 標準機能で足りない部分のカスタマイズ開発費
  • 外部サービス連携用のプラグイン・アドオン費用
  • データ容量やAPI呼び出し数を追加する際のオプション費用
  • 既存システムからのデータ移行費用
  • 運用開始後の保守・問い合わせ対応費用

製品別の料金は2026年7月時点の公式情報です。実際の支払額は、契約期間・利用者数・追加機能・導入支援の有無によって異なります。正式な見積もりは各ベンダーに確認してください。

導入ステップと定着させるためのポイント

ローコード開発は、ツールを契約するだけでは利用が広がりません。開発・運用ルールの整備や利用者への教育も必要です。

導入の基本ステップ

ローコード開発は、影響範囲の小さい業務から始め、検証結果を踏まえて対象を広げる方法が適しています。導入の流れは次の4段階です。

1. 目的と対象業務を決める

ローコードツールの導入目的を明確にします。コスト削減・開発期間の短縮・業務部門による内製化のゴールをどこに置くかによって、選ぶべきツールや体制が変わります。

最初の対象業務は、効果を確認しやすく、問題が起きた場合の影響が小さいものを選びましょう。紙やExcelで運用している定型業務は、変更前後を比較しやすいため、最初の対象に適しています。

2. ツールを選定し試作する

候補を2~3製品に絞り、トライアル・デモ環境・PoC向けプランを利用して、実際の業務を題材にPoC(概念実証:本格導入前の小規模な検証)を行います。機能一覧だけでは、自社の要件を標準機能で実現できるか判断できません。

開発を担当する予定の人にも操作してもらい、習得の難しさを確認しましょう。あわせて、想定データ量・同時利用者数・権限設定・監査ログ・外部連携・データ出力の可否も確かめます。

3. 小規模に運用を開始する

最初からすべての要望を盛り込まず、必要な機能に絞って運用を始めます。社内で利用する予定のメンバーから不便な点を聞き取り、優先度の高いものから改修しましょう。

初期運用で確認できた課題や改修内容は、次の対象業務や導入部門を選ぶ際の判断材料になります。

4. 対象を広げ体制を整える

運用が安定したら、他部門への展開を検討します。あわせて、誰がアプリを作成できるか、どのように申請・登録するか、公開前に誰が確認するかといったルールを整備しましょう。

利用者が増えてからルールを作ると、すでに増えたアプリの棚卸し・統廃合から始める必要があります。展開と並行してルールを用意しておくほうが、後の負担を抑えられます。

社内で定着させるためのポイント

定着には、ガバナンスと人材育成の両方が必要です。誰がアプリを作成できるか、作成したアプリをどのように登録・管理するか、データやアクセス権限をどう扱うかといったルールをIT部門が用意し、現場の自由度と統制のバランスを取ります。

開発・運用ルールを設けることで、管理されていないアプリの増加や不適切な権限設定を抑えられます。アプリの管理台帳を作り、管理者・利用部門・扱うデータ・最終更新日などを記録しておく方法も有効です。

あわせて、社内勉強会やテンプレートの共有によって開発できる人を増やし、特定の担当者だけに依存しない体制を作りましょう。ベンダーが提供する認定資格制度を活用し、社内の開発者を把握している企業もあります。

生成AI時代におけるローコード開発の位置づけ

ローコード製品を比較する際は、生成AIを利用した開発支援機能も確認項目になります。生成AIとローコード開発には、補完し合う面と競合する面があります。

プラットフォーム側で進むAIの組み込み

Power Apps・OutSystems・Oracle APEXなどでは、自然言語の指示からアプリやデータ構造の案を作成する機能が提供されています。従来はGUI上で部品を配置していた工程の一部を、文章による指示で補助できるようになっています。

たとえば、作成したい業務アプリの内容を文章で伝え、画面・データ構造・処理の案を生成させたうえで、開発者が修正する使い方です。生成された内容はそのまま採用せず、データ型・権限・処理条件・外部連携などを確認する必要があります。

AI機能の内容や利用条件は製品によって異なります。通常のライセンスに含まれる場合もあれば、クレジット・追加プラン・外部AIサービスの契約が必要になる場合もあるため、料金とデータの取り扱いを確認しましょう。

生成AIはローコード開発を置き換えるのか

「生成AIがコードを書けるなら、ローコードは不要になるのでは」という見方があります。ただし、生成AIがローコード/ノーコード製品に与える影響は、現時点では確定していません。

企業の業務システムには、アプリの作成だけでなく、権限管理・監査・既存システムとの連携・継続的な保守が求められます。ローコード開発プラットフォームは、開発後の実行環境や管理機能も提供するため、コードを生成するAIとは役割が異なります。

一方、ITRは2026年2月の市場分析で、AI技術の高度化と活用範囲の拡大に伴い、主にノーコード製品を利用した比較的軽微な開発では、今後その必要性が失われる可能性があると指摘しています。同社は、ローコード/ノーコードツールが今後も重要な役割を果たすとしたうえで、AI系開発ツールとの差別化や融合が必要になるとの見方を示しました。

業務システムの運用基盤としてローコード製品が利用される一方、簡易なアプリや一時的なツールの作成では、生成AIによる開発支援との使い分けが進む可能性があります。

出典:ITRがローコード/ノーコード開発市場規模推移および予測を発表

手法ごとの使い分けの考え方

導入を検討する企業では、次のように使い分けると判断しやすくなります。

  • 全社で利用し、権限管理・監査証跡・既存システム連携が求められる業務システム → ローコード開発プラットフォーム
  • 特定の部署・個人が利用する簡易なツールや、一時的な集計・変換 → 生成AIによる開発支援やノーコードツール
  • 独自性が競争力に直結する領域・性能要件が厳しい領域 → スクラッチ開発(AIによるコーディング支援を併用)

ツールを選ぶ際は、現在提供されているAI機能だけでなく、料金・利用上限・入力データの扱い・今後の提供方針も確認項目に加えましょう。

ローコード・ノーコード開発の導入事例

現場部門が1万人超の稟議書システムを内製(KDDI)

KDDIは、全社員1万人超が利用する稟議書システムを、ドリーム・アーツのノーコード開発基盤「SmartDB」で刷新し、2025年5月に運用を開始しました。開発を担ったのは情報システム部門ではなく、コーポレートシェアード本部・総務本部などの現場部門です。

従来のシステムは10年以上オンプレミスで運用され、業務分断による転記作業、他システムとのリアルタイム連携、データの構造化などに課題がありました。同社の年間決裁数は3万件を超え、承認ルートも役職・稟議内容に応じて複雑に分岐します。

刷新後は、画面や細かな機能を現場部門で修正できるようになりました。同社では、SmartDBの認定資格を取得した社員132名が、2025年5月時点で業務のデジタル化を進めています。今後は契約管理・押印申請などへ対象を広げる予定です。

出典:KDDIが全社10,000名超の稟議書システムをSmartDBで刷新|ドリーム・アーツ

社内サポーター制度で利用者を約350名まで拡大(村田機械)

産業機械メーカーの村田機械は、現場からのボトムアップでDXを進める一環としてkintoneを導入しました。事業部の選抜メンバーで構成する社内サポーター制度を設け、利用者を事例公開時点で約350名まで増やしています。

各部門の担当者を支援する社内体制を設けたことが、kintoneの活用範囲を広げた事例です。ツールの操作方法だけでなく、利用者が相談できる仕組みを用意する重要性がわかります。

出典:村田機械株式会社のkintone導入事例|JBCC株式会社

まとめ

ローコード開発は、コードの記述を最小限に抑え、標準機能を活用してアプリを構築する手法です。要件が製品の機能に合う業務システムでは、開発期間や工数を抑えられる可能性があります。

導入時は、ローコードとノーコードの名称だけで分類せず、自社の要件を標準機能で実現できるか確認する必要があります。また、自由度・処理性能・移行性・アプリ管理の課題を踏まえ、開発・運用ルールも用意しましょう。

生成AIとの関係には、開発を補助する面と簡易な開発で競合する面があります。ツールを選ぶ際は、現在の機能だけでなく、AI機能の料金・データの扱い・今後の提供方針も確認することが大切です。

最初は影響範囲の小さい業務を選び、トライアル・デモ・PoCを通じて、標準機能への適合度や運用負担を確認するとよいでしょう。

アイスマイリーでは、生成AIのサービス比較と企業一覧を無料配布しています。課題や目的に応じたサービスを比較検討できますので、ぜひこの機会にお問い合わせください。

よくある質問

ローコード開発にプログラミング知識は必要ですか?

製品や作成するアプリによっては、コードを書かずに構築できる場合があります。ただし、データ設計・権限設定・外部連携などには基礎的なIT知識が必要です。 コードによる拡張や複雑なAPI連携を行う場合は、プログラミングの知識も求められます。業務部門とIT部門が協力し、難しい部分をIT部門や開発経験者が支援する体制が適しています。

ローコード開発では何が作れますか?

申請・承認のワークフロー、案件管理・在庫管理などの業務アプリ、日報・点検記録の入力フォーム、データベースと連動した帳票・レポート、既存の基幹システムと連携する画面などが代表例です。 消費者向けの大規模Webサービスや独自アルゴリズムを含むシステムでは、画面の自由度・処理性能・外部連携・移行性が要件を満たすか、製品ごとの検証が必要です。

ローコード開発でエンジニアは不要になりますか?

エンジニアが不要になるわけではありません。簡易な業務アプリは業務部門で作成できる場合がありますが、システム全体の設計・性能調整・外部連携・障害対応には専門知識が必要です。 ローコードによる内製開発でも、IT部門や開発経験者が支援できる体制を用意しましょう。エンジニアには、個別のコーディングだけでなく、要件定義・全体設計・セキュリティ確認・業務部門への支援といった役割が求められます。

ローコード開発のセキュリティは大丈夫ですか?

認証・権限管理・ログ・暗号化などを標準機能として利用できる製品があります。ただし、対応する認証方式・データの保管場所・暗号化方式・監査ログの範囲は製品ごとに異なります。 標準機能が充実していても、設定ミスや権限の過剰付与による問題は防げません。選定時に製品の機能を確認するとともに、IT部門による定期的な棚卸しや権限確認のルールも用意しましょう。

小規模から試すことはできますか?

無料の開発環境や期間限定トライアルを提供している製品があります。トライアルの期間・機能制限・本番利用の可否・最低契約ユーザー数は製品によって異なるため、公式サイトで確認しましょう。 最初は紙やExcelで運用している定型業務をひとつ選び、標準機能でどこまで作れるか、利用者が操作しやすいか、運用にどの程度の手間がかかるかを検証する方法が適しています。 なお、本記事の情報は2026年7月時点です。料金・機能・ライセンス条件は変更される可能性があるため、導入前に各ベンダーの公式料金ページ・製品ドキュメント・契約条件をご確認ください。

AIsmiley編集部

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