需要予測とは?種類や手法・課題・精度を上げるAIの導入メリット・事例を紹介
最終更新日:2024/12/24
近年、消費者のニーズが多様化する中で、従来の大量生産モデルではなく、多品種少ロットによる柔軟な生産体制が重要視されています。しかし、このような生産方式を成功させるためには、精密な需要予測が不可欠です。
予測を誤ると、過剰在庫や廃棄ロスによって企業の利益が圧迫される問題が発生します。この課題を解決するために、AI(人工知能)を活用したデータ分析と需要予測が注目されています。AI技術を用いた需要予測は、データの収集と分析を通じて、より正確な生産計画や在庫管理を可能にし、効率的なサプライチェーンの最適化を支援します。
具体的には、どのような方法で需要予測が行われているのでしょうか。また、AIを活用した需要予測ソリューションは、どのような業界で活用されているのでしょうか。
この分野における最新のAIソリューションや導入事例については、多くの企業や研究機関が情報を発信しており、関連する技術や手法、実際のビジネスへの応用例を学ぶことが可能です。
今回は、需要予測の意味や活用事例について詳しくご紹介していきますので、ぜひ参考にしてみてください。
AIソリューションについて詳しく知りたい方は以下の記事もご覧ください。
AIソリューションの種類と事例を一覧に比較・紹介!
需要予測とは?
需要予測とは、ある商品の売上量を短期的もしくは長期的に予想することをいいます。需要予測によって製造する量や発注量を決めていきます。
ただし、モノが売れるにはさまざまな要因が絡み合うため、予想するのは簡単ではありませんでした。昨今はこうした課題を解決すべく、これまで担当者が積み重ねた経験や勘に頼りがちだった需要予測をAI・人工知能で自動化するシステムが登場し、精度を高めています。
需要予測の目的
需要予測の主な目的は、市場競争において優位に立つことです。さまざまな商品・サービスが存在する市場においては、競合との差別化は容易ではありません。そこで近年重要視されているのが、需要予測です。
また、需要予測の他に「販売計画」も注目されています。双方の違いは以下のとおりです。
定義 | 目的 | 工程 | |
需要予測 | 自社の提供する商品やサービスの売上量を短期的・もしくは長期的に予想すること | 事業の成長をサポートし、コストを抑制して利益率を高める | 需要予測のみ |
販売計画 | 「いつ」・「何を」・「どれだけの量を」・「いくらで」・「どのように」売るのか計画を立てること | 需要予測を基に具体的な販売戦略を立案し、実際の販売活動を計画する | 需要予測や需要予測の結果から、企業の戦略や目標などを考慮した上での調整および長期の受注予測を組み合わせる |
このように、需要予測が商品やサービスの将来的な需要を予測するのに対し、販売計画は需要予測を基にして、より具体的な販売戦略の立案や実際の販売計画をすることに違いがあります。つまり、需要予測が適切に行われなければ、販売計画も成り立ちません。
需要予測によって在庫過多や在庫切れを避けることで、利益の最大化が見込めます。そして得た利益を新たなマーケティング施策に投じることで、事業規模の拡大を狙うケースが増えているのです。
需要予測の種類
需要予測には、主に以下の4つの方法があります。
- データを用いた統計的予測
- 経験や勘に基づく予測
- 市場調査に基づく予測
- 機械学習に基づく予測
上記の中で現在多く用いられているのは、「データを用いた統計的予測」です。ただし、AIのビジネス活用が増えている現状を踏まえると、今後は「機械学習に基づく予測」が重視されると考えられます。
データを用いた統計的予測
データを用いた統計的予測とは、需要の変遷や過去の売り上げ実績などのデータをもとに将来の売り上げの予測を立てる方法です。現在多く利用されている方法であり、担当者による予測精度の違いが発生しない点は優れているといえます。しかし、過去の状況と現在の状況に大きな違いがある場合、過去のデータからは正確な予測を立てられない点には注意が必要です。予測精度の確認や予測モデルの定期的な見直しなどは、データによる予測に欠かせないといえます。
経験や勘に基づく予測
需要予測の方法としては、経験や勘に基づく予測も挙げられます。これは、担当者が培ってきた経験と勘を頼りにニーズを予測する方法です。経験豊富な担当者であれば、適切な予測ができる可能性が高いです。しかし、このままでは、特定の担当者でなければ予測ができません。担当者が異動や休職などによって不在になれば、これまでと同様には需要予測ができなくなってしまいます。そのため近年では、データやその他の方法を利用して需要予測を行うことが一般的です。
市場調査に基づく予測
市場調査に基づく予測も、需要予測方法の1つです。現在の市場を調査し、収集したデータを予測に役立てます。具体的な手法としては、類似商品・サービスの売上やその他の状況を調査したり、ターゲットユーザーにアンケートを取ったりすることが挙げられます。一定の精度は期待できますが、データを収集するためにコストがかかることを考慮しなければなりません。そのため事前計画をしっかりと立てて、コストについて把握したうえで実施することが求められます。
機械学習に基づく予測
機械学習とは、コンピューターにデータ予測のルールを学習させることを指します。AIによって企業が持つ膨大な量のデータを活かすことで、高精度の予測を実現可能です。ただし機械学習をするには、まず人が「教師データ」と呼ばれる学習用のデータを用意しなくてはいけません。また、学習をするほど良いわけではなく、学習をしすぎると「過学習」と呼ばれる精度が低くなる状態になる点も理解しておきましょう。
【関連記事】売上予測AIとは?売上を加速する需要予測システムの重要性
需要予測の手法
需要予測には、さまざまな手法が存在します。代表的なものとしては、「移動平均法」「指数平滑法(しすうへいかつほう)」「回帰分析法」「加重移動平均法」などが挙げられるでしょう。それぞれの特徴をご紹介していきます。
移動平均法
移動平均法は、過去の売上の移動平均を算出して将来を予測していく手法です。移動平均法によって平均単価を算出する場合は、以下のような計算式になります。
(受入棚卸資産の評価額+在庫棚卸資産の金額)÷(受入棚卸資産数量+在庫棚卸資産数量)=移動平均単価
以下の取引を例にして、移動平均法の使用方法を解説します。
4月10日に35円で150個仕入れた
移動平均法は、棚卸資産の入庫のたびに平均原価を計算する手法です。まず、4月10日時点で仕入れを行った時点の各項目の数値は、以下の通りです。
在庫棚卸資産の金額:5,250円(35円×150個)
受入棚卸資産数量:100個
在庫棚卸資産数量:200個
そして計算式に上記の数字を当てはめて平均原価を計算すると、以下の通りです。
=33円(平均原価)
上記のように、仕入れを行うたびに平均原価を算出します。
指数平滑法
指数平滑法は、前期の実績と前期の予測をもとに、今月の予測を求めていく手法です。計算方法としては、以下のようになります。
(今期の予測)=a×(前期の実績)+(1-a)×(前期の予測)
なお、aは「前期の実績が前期の予測からどの程度離れていたか」を調整する「平滑化係数」です。
平滑化係数は「0<a<1」の範囲で設定し、設定によって予測が以下のように変化します。
- 0に近い:過去の経過を重視
- 1に近い:直前の実績を重視
指数平滑法では、以下のように予測を行います。
年月 | 販売実績 | 予測値(a=0.2) | 予測値(a-0.4) | 予測値(a=0.6) |
2023/1 | 5,000 | 5,250 | 5,250 | 5,250 |
2023/2 | 4,800 | 5,200 | 5,150 | 5,100 |
2023/3 | 5,500 | 5,120 | 5,010 | 4,920 |
例えば、「2023/1」時点で「2023/2」の予測を立てる際に、予測値を「a=0.2」として行う計算は、以下の通りです。
=0.2(a)×5,000(前期の実績)+(1-0.2)×5,250(前期の予測)
=1,000+4,200
=5,200
回帰分析法
回帰分析法は、因果関係があると考えられる変数間の関係を、Y = a + bX といった直線の形で記述していく統計手法です。販売実績を折れ線グラフにしたものから数値同士の関係性を算出し、直線の式「Y = a + bX」を導き出します。
たとえば下記表から、回帰分析で「2023/7」の販売数を予想してみましょう。
年月 | 販売数(Y) | 期(X) |
2023/1 | 500 | 1 |
2023/2 | 480 | 2 |
2023/3 | 530 | 3 |
2023/4 | 540 | 4 |
2023/5 | 520 | 5 |
2023/6 | 550 | 6 |
回帰分析を行うために、表から下記のようにグラフを作成します。
そして販売実績の折れ線から導き出された直線の式「Y = a + bX」を示すのが、以下の点線で書きこんでいる直線です。
上記例の場合、販売実績から「Y=482+10.857x」(a=482,b=10.587)の直線が導き出されました。そして上記式から「2023/7」の販売数を予想する計算式は、以下の通りです。
=482(a)+7(X)×10.857(b)
=557.999
つまり回帰分析法によると、上記ケースにおける「2023/7」の販売予測はおよそ558程度だといえます。
加重移動平均法
加重移動平均法は、移動平均法で算出された値に、期間ごとの情報をプラスした手法です。各月の販売数量に、加重係数をかけ合わせて算出します。
具体的な算出式は、以下の通りです。
「加重係数」は直近のデータに関してより大きく設定することで、直近データを重視した数値になります。以下の販売データから、加重移動平均を計算してみましょう。
月 | 1月 | 2月 | 3月 | 4月 | 5月 | 6月 | 7月 |
販売数 | 2 | 4 | 7 | 3 | 5 | 10 | 8 |
ここでは、直近の数値の加重係数を10、その1か月前の加重係数を9……と減らしていきます。
たとえば、7月までの販売数を元に加重移動平均を導き出す計算方法は、以下の通りです。
=(10×8+9×10+8×5+7×3+6×7+5×4+4×2)÷(10+9+8+7+6+5+4)
=301÷49
=6.142857…
つまり、加重移動平均法によって7月時点で次月の販売予測をするのであれば、6本程度と考えられるでしょう。
エクセルを使った需要予測の方法
エクセルはデータ分析や予測に非常に便利なツールであり、需要予測にもよく活用されています。なぜなら、エクセルには次のような機能が標準で備わっているからです。
【需要予測に活用できるエクセルの標準機能(一例)】
- データ管理:エクセルは大量のデータの管理や整理するのに適している
- 統計機能:エクセルに搭載されているさまざまな統計関数によリ、データの傾向の分析や将来の需要予測を可能にする
- グラフ作成:エクセルはグラフ作成も得意としており、情報の可視化に優れている。これにより需要の傾向やパターンの可視化ができるようになる
このことから、エクセルは需要予測に適したツールと言えます。
また、エクセルを使った需要予測の方法には、「関数を使った予測」と「予測シートを活用した予測」の2種類があります。それぞれの方法について、詳しく見ていきましょう。
関数を使った予測
エクセルの関数を使って需要予測をする方法は主に3つあります。それぞれの方法を一覧にまとめました。
関数 | 内容 | 活用事例 |
FORECAST関数 | 1つのデータを1つの要素で説明する「単回帰分析」を使った予測 | 自社で蓄積した過去のデータを活用して翌年の売上金額を予測し、売上目標を設定する |
TREND関数 | 統計学を活用して複数の要素を処理する「重回帰分析」を使った予測 | DMの郵送数と売上金額の関連性など費用対効果を計算する |
SLOPE関数 | すでに判明している2つの要素の範囲から導き出す「回帰直線」を使った予測 | 過去の売上金額の伸長率を調べて翌年度の伸長率を予測し、需要を算出する |
このように、それぞれの関数が導き出す予測が異なるため、関数を使って需要予測を実施する際には目的や状況に合わせて関数を使い分けることが重要です。
予測シートを活用した予測
Microsoft Excel2016以降のバージョンには「予測シート」が標準機能として搭載されています。この機能を使うと、関数の知識がなくても需要予測が可能です。このことにより、過去のデータに基づいて未来の予測を自動的に行い、結果を可視化できるようになります。ただし、予測の精度を高めるためには適切なデータの使用が重要です。
エクセルを使用した需要予測の方法については、下記の記事で詳しく紹介しています。エクセルで需要予測を検討している方は、ぜひあわせてご覧ください。
関連記事:エクセルを使った需要予測方法と問題点 需要予測AIの活用メリットも解説
需要予測に必要なデータ
需要予測には、データの収集が欠かせません。これまで紹介した在庫数や販売実績などの内部要因の他に、天気や曜日、競合の動向などの外部要因もデータとして必要です。以下の表で、需要予測に必要とされる主なデータの項目を整理します。
項目 | 需要予測への影響 |
季節・天候 | 寒い時期には暖かい飲み物が売れる、毎年のイベント時には関連商品が売れるなど、 商品・サービスに応じた売れ時がある |
曜日・時間 | 商品・サービスごとに、売れやすい・売れにくい曜日や時間帯がある |
競合の動向 | 競合の商品・サービスの詳細情報や市場規模に合わせた需要予測ができる |
社会・経済情勢 | トレンドや市場規模などを踏まえることで需要予測の正確性が増す |
商品・サービスの売れ行きは、自社だけではコントロールできない外部要因にも大きく影響を受けます。上記のような要素を加味することで、より正確な予測が可能です。
需要予測の課題
需要予測を行う上で発生しがちな課題としては、「売上予測の精度が上がらない(悪い)」「需要予測業務が属人化してしまう」「生産品目が多すぎる」といったものが挙げられます。
売上予測の精度が上がらない(悪い)
営業職にありがちな課題として挙げられるのが、売上予測の精度が上がらない(悪い)というものです。たとえば営業は、ビジネスチャンスのロスを避けたがる傾向にあり、生産や在庫確保にゆとりを求めたがるケースが多くなります。また、目標達成の数値が設定されているため、どうしても目標に即した過剰な数値となってしまいがちなのです。しかし、このような背景がある以上は適切な需要予測とはいえず、あくまでも営業目標となってしまいます。
より高い精度の売上予測を実現するためにも、需要予測や需要予測システムの重要性について、社内でしっかりと共有することが大切です。
需要予測業務の属人化
需要予測には専門的な知識・ノウハウが求められるため、どうしても属人化してしまいがちです。既存の担当者がベテランの場合、退職によって需要予測業務が完全にストップしてしまう可能性もあります。
新人に需要予測業務を継承するのが難しい点は、需要予測における大きな課題のひとつといえるでしょう。
生産品目が多すぎる
企業によっては、需給調整部門が営業の売上予測を受け取り、需要予測を立案しているというケースもあります。この場合、営業の売上予測は参考データとなるわけです。営業の売上予測を生産側で精査していくわけですが、その予測はおおまかなものであるケースも珍しくありません。先ほどもご紹介したように、営業はビジネスチャンスのロスを防ぐため目標に即した数値を算出することがあるためです。
こういった曖昧な売上予測の場合、ここの製品に落とし込むのに時間がかかってしまいます。扱う生産品目が少なければ問題ありませんが、生産品目が多くなると同じ精度で生産計画を立てることが困難になってしまうのです。
そのため、膨大な生産品目の正確な需要予測は、担当者にとって非常に大きな負担となってしまいます。
需要予測の精度向上の方法
需要予測には精度の問題がありますが、それは以下の方法をとることで改善可能です。
- 需要予測AIやIoTを活用する:IoTデバイスから収集されたリアルアイムデータをAIが分析することにより、現在の需要状況を即座に把握し、適切な予測ができるようになります。
- 需要予測機能付きの在庫管理システムを導入する:需要予測機能付きの在庫管理システムにより、過去の売上や顧客属性、天候などの膨大なデータから適切な在庫量を算出できるようになります。このことにより、需要予測や適切な在庫量が管理できるようになります。
どちらの方法も需要予測の業務効率化は可能ですが、その中でも、特に需要予測AIの導入がおすすめです。なぜなら、需要予測AIは蓄積されたデータを基にして、より高度な分析が可能だからです。しかし、どちらのシステムを利用する場合でも、最終的には人による判断が必要になります。ツールはあくまで需要予測のサポート役のようなものであることを忘れないようにしましょう。
需要予測AIとは
需要予測AIとは、売上情報や顧客の購買履歴など、自社が蓄積したさまざまな情報をAIが自動的に分析し、将来的な需要を予測するシステムのことです。
一般的には、投入できるデータ数が多いほど予測精度の高いデータが得られるため、需要予測AIを活用する場合は、日頃からデータを収集・保管しておくことが大切です。ただし、やみくもに全てのデータを投入すれば良いというものではなく、投入前のデータを十分に精査し、需要予測にとって有用なデータのみを絞り込むことも大切です。
需要予測AIのメリット
需要予測AIを導入した場合、さまざまなメリットを得ることができます。ここからは、需要予測AIによって得られるメリットについて詳しくみていきましょう。
- 高精度かつ多目的変数にも対応できる
- 業務効率化を実現できる
- 在庫量を最適化できる
- データドリブンに基づいた経営を実現できる
AIを活用することで、高精度かつ多目的変数にも対応した予測が可能です。膨大なデータをもとに判断するため、従業員の経験や勘に頼らず幅広い場面で正確な予測を行えます。需要予測の作業をAIが担えば、従業員が別の業務に集中できることから業務効率化にもつながるでしょう。
また、正確な予測は在庫の最適化につながります。不要な在庫を抱えないことで、倉庫や冷蔵庫などの保管場所の面積の削減にもつながるはずです。さらにAIの活用によって、データを基にした意思決定をできるようになります。データに裏付けされた選択を行えることから、成果につながる可能性も高まっていくと考えられます。
【関連記事】在庫管理とは?在庫管理システムやAIを導入するメリットや活用事例を紹介
需要予測AIのデメリット
需要予測AIのデメリットとしては、主に以下が挙げられます。
- 一定以上のデータが必要
- 想定外の事態には対応できない
AIに需要予測を任せるためには、一定以上のデータが必要です。AIによる予測の精度は、相関性の高いデータを学習することで上がっていきます。データ自体の精度や入手タイミングも精度に影響するため、AIを導入すれば即精度の高い予測ができるわけではありません。また、AIはあくまでも過去のデータを基にして判断するため、データにない想定外の事態が発生した場合、対応できないこともあります。AIが実態とかけ離れた判断をした場合、現状とAIの判断の関係性を理解できる人材が判断に介入する必要があるでしょう。
【関連記事】需要予測に必要なデータとは?精度を高めるポイントもわかりやすく解説
需要予測AIの導入事例
需要予測AIは、すでにさまざまな業界で導入され始めています。実際にどのような業界で需要予測AIが導入されているのか、その事例をいくつかみていきましょう。
食品業界の予測精度向上で食品ロスを削減
食品業界でも需要予測AIは積極的に活用されています。その一例として東京都が行っているのは、食品ロスを削減するための取り組みとして、食品メーカー、小売りなどの各業種が情報共有をし、需要の予測情報をまとめて製造過多を防ぐというものです。
具体的には小売り店や卸、食品メーカーから売り上げや在庫の情報提供を受けて、需要予測を手掛ける企業に情報を一元化。予測会社は天候やイベントといった要素も加味して、食品の需要予測を提供します。
食品メーカーは、小売店からの発注情報をもとに食品の製造量を調節します。しかし、自前のシステム化が遅れている中小企業などは自社製品の売れ行きを地域、期間ごとに細かく把握していない場合が多く、廃棄が生まれやすい環境にあります。
そのため、こういった取り組みを積極的に行うことで、さらなる食品ロス削減が期待できるでしょう。
サプライチェーンにおける需要予測で発注量を調節
商品の製造から販売に至るまでの一連の流れを最適化させる経営管理手法の「SCM(サプライチェーンマネジメント)」においても需要予測は重要視されています。このサプライチェーンとは、原材料の調達から商品が消費者に渡るまでの生産・流通プロセスを表わします。
イメージとしては、プロセスと「情報の流れ」を結びつけ、サプライチェーン全体で情報を共有することで全体最適化を図っていきます。そのようなSCMにおいても、需要予測は非常に重要とされています。需要予測が適切に行われていなければ、在庫管理が適正化されずに経営を圧迫してしまうからです。しかし、需要予測を適切な方法で行っていれば、過剰在庫を防ぐことができます。
これは、必要なものを必要なときに必要なだけ供給する「ジャスト・イン・タイム」と呼ばれるもので、SCMにおける基本といっても過言ではないほど重要視されているものなのです。
工場内の省エネルギー化を実現
三井化学株式会社では、バッチプラントにおける蒸気量の需要予測によって、工場の省エネルギー化や燃料・電力削減を目指していました。これまではプラント内の必要蒸気量や電力の自家発電量、そして燃料コストなどをリアルタイムで監視するシステムを運用していましたが、新たに「近未来に起こる蒸気・電力量の変動予測」をベースとした工場内のさらなる省エネルギー化に着手し始めたそうです。そして、その際に導入したのが「AI需要予測」でした。
AIを導入し、蒸気の需要量を予測するモデルを構築することによって、工場内で発生する蒸気ロスを削減したり、過剰な電力消費を抑制したりといった省エネルギーを狙っています。
電力需要予測システムで精度向上・コスト削減
需要予測AIは、電力の需要予測にも活用されています。このシステムを活用しているのは、世界最大の民間気象情報会社の株式会社ウェザーニューズです。
同社では、独自のAIを用いた電力需要予測システムを開発し、そのシステムを活用した「電力需要予測サービス」を提供しています。このシステムは、電力会社が保有している消費電力などの最新のデータと、ウェザーニューズの気象データを活用し、AIが30分ごとに学習を繰り返して電力需要を予測していくというものです。
2020年4月1日から、サミットエナジー株式会社で同サービスの運用を開始したところ、導入からわずか1週間で、電力需要予測計画の効率化によるコスト削減効果、需要予測の精度向上が実現されたといいます。そして、精度検証によって同システムの有効性を確認できたことから、サミットエナジーでの採用が正式に決定したのです。今後こういったサービスの活用はさらに広がっていくかもしれません。
製造工場におけるポンプの故障予知に活用
予測AIは、工場にある機械や設備の故障を予知し、その機械や設備を最適な状態で管理するための予兆検知(予知保全)でも活用されています。たとえば、産業用液晶ディスプレイや車載用液晶ディスプレイの開発、製造、販売を行っているメルコ・ディスプレイ・テクノロジー株式会社では、ドライポンプモータの予知保全を行うために、三菱電機株式会社が提供している汎用シーケンサ「MELSEC-Qシリーズ」用電力計測ユニットを導入しています。
このユニットを導入したことによって、電流の変化からモータの故障を事前察知することができるようになりました。これまで、モータが故障した場合には修理に膨大な費用がかかってしまっていましたが、この予知保全によって故障する前にメンテナンスを行えるようになったそうです。また、コスト面だけでなく生産管理や予算管理といった部分においても効果を発揮し始めているといいます。
プラント運転監視の自動化や異常予兆を検知
花王株式会社の和歌山工場では、プラント運転監視の自動化や異常予兆検知システムにAIを導入し、日本化学工業協会運営のレスポンシブル・ケア賞において「第16回レスポンシブル・ケア大賞」を受賞しています。
花王では、製品製造拠点における高齢化や設備の高経年化、設備修繕費増加などの課題を抱えていました。そこでAIの活用に注目し、異常検知システムの導入を進めたのです。異常検知システムは過去の運転データからパターンを学習し、2つのアルゴリズムによって現場の異常を検知し、オペレーターへ通知します。
花王の生産設備においては、膨大な品種と運転パターンがあり監視負荷が高い設備を対象として、AIの活用を進めました。その結果として信頼性の高い異常予兆検知や大幅な業務負荷削減、さらには生産性向上や製造技術の伝承と現場力の向上、監視業務の標準化による属人化の解消などさまざまな効果が見られています。
Jリーグのダイナミックプライシングに活用
Jリーグをはじめとするスポーツ業界では、AI需要予測システムを活用した「ダイナミックプライシング」の導入が進んでいます。ダイナミックプライシングとは、サービスの需要に応じて価格を上下させる仕組みのことです。ダイナミックプライシングにより、観客は座種と価格のどちらを優先するか合理的に選択できます。また、適正価格を主催者側が決めることで、チケットの買い占め・転売の対策も可能です。
実際にJリーグの横浜F・マリノスでは、2018年7月28日のホームゲームから、需要予測システムを活用したダイナミックプライシングを導入開始しました。スポーツチケットの需要は、チーム順位や天候、季節やなどさまざまな要因によって変動します。そのため、需要予測システムによって柔軟に価格を変動させることで、チケットの売り上げが1割増しになったといわれています。
【関連記事】売上の増減に直結?需要予測やダイナミックプライシングの最新システムを知ろう
需要予測AIの最新製品を比較
需要予測AIは、すでに様々な製品が登場しています。需要予測AIの製品をいくつかみていきましょう。
需要予測+生産計画最適化AI
株式会社Archaicが提供する「需要予測+生産計画最適化AI」は、需要予測/消費予測に基づき、発注計画/生産計画を立案するAIシステムです。過去データから商品の需要や消費量を予測し、発注・生産計画を生成します。
需要予測+生産計画最適化AIで実現できることは、以下の3つです。
- 過去データから商品の需要や消費量を予測
- 需要予測/消費予測に基づき、発注計画/生産計画を立案
- 特許出願済の技術でロバストな計画を立案
上記のように、最適な発注・生産計画を生成いたします。
詳しく知りたい方は、以下の記事もご覧ください。
Liaro需要予測AI
Liaroが提供する「Liaro需要予測AI」は、大手小売企業にも導入されており欠品によるチャンスロスの最小化と同時にフードロスや衣服ロス等の削減を実現し、SDGs/ESGへの取組みやサスティナブルなビジネスの実現をサポートします。
Liano需要予測AIで実現できることは、以下の3つです。
- 生産量/仕入れ量最適化
- ディストリビューション最適化
- 棚割最適化
上記の4ステップでサービスを提供しています。
詳しく知りたい方は、以下の記事もご覧ください。
需要予測AIの最新製品を比較
また、AIsmileyでは、上記のように予測AIカオスマップを公開しています。現在はさまざまな種類の予測AIが存在し、そのツールごとに機能や実現できる内容に違いがあるため、目的に合う最適なAIを導入することが大切です。
自社の課題は何か、どんな結果を実現したいのかという観点から、それぞれのツールの違いを充分に比較検討することが重要になるため、ぜひ活用してみてはいかがでしょうか。
また、AI資格を持ったコンサルタントによる無料相談も承っております。需要予測やデータの分析でお困りの際は、お気軽にお問い合わせください。
AIについて詳しく知りたい方は以下の記事もご覧ください。
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