Watson Visual Recognitionの画像認識機能とは?
最終更新日:2024/04/04
近年はさまざまな業界のさまざまな業務においてAI・人工知能が活用され始めており、私たちが何気なく使用している商品(サービス)にもAIが活用されているというケースは決して少なくありません。また、商品自体にAIが活用されているわけではなくても、商品の製造過程にAIが活用されているというケースもあるのです。
その一例として、画像認識による欠陥検出などが挙げられるでしょう。AIに画像データを学習させておくことで、製造ラインでの欠陥をいち早く検出することができるのです。
今回は、そんな画像認識機能である「Watson Visual Recognition(ワトソン・ビジュアル・レコグニション)」にフォーカスし、特徴やメリットを詳しく見ていきましょう。
IBM Watson(ワトソン)について詳しく知りたい方は以下の記事もご覧ください。
IBM Watson(ワトソン)のAI導入で何ができる?活用事例を紹介
Watson Visual Recognition(画像認識)の機能と特徴
(参照:IBMオフィシャルサイト IBM Watson Visual Recognition)
Watson Visual Recognitionは、IBMが提供しているWatson APIの一種で、ディープラーニングを使用して画像に映った人物や情景などのさまざまな分析、認識を行うことができるサービスです。すでに以下のような学習済みのモデルが用意されており、画像の認識、分析を手軽に行うことができます。
・一般認識モデル
・食べ物認識モデル
・不適切コンテンツ認識モデル
・顔認識モデル
・テキスト認識モデル
例えば「顔認識モデル」では、数多くの顔画像の中から特定の人物の顔だけを抽出することができます。そのため、顔認証システムによる「顔パスシステム」などを実現することができます。そのほかにも、以下のような用途で活用していくことができるでしょう。
・大量の画像、映像に対してタグ付けや分類を行う
・食事(食品)に関係する画像を検出して、写っている料理の分析を行う (食べ物に特化した機能)
・画像認識によって書類やエビデンスの仕分けを行う
・製造ラインでの画像検査に活用し、不良品をいち早く検出する
・ドローンで撮影した画像や映像を利用して、家や鉄塔などの故障部分を検出する
・人工衛星で撮影した画像から分析、分類を行う
・自社サイトにユーザーがアップロードした画像の中から、不適切な画像を自動で検出する
・ユーザーがSNSに投稿した画像の中から自社製品を検索し、そのコメントをマーケティングに活用する
深層学習を利用したWatson Visual Recognitionにはさまざまなメリットが
このように、さまざまな活用の余地があるWatson Visual Recognitionですが、活用の幅が広いのは「深層学習」を利用した画像認識であるからに他なりません。この「深層学習」とは一体どのようなものなのでしょうか。より詳しく理解するためにも、まずは「機械学習」について見ていきましょう。
機械学習には多様なアルゴリズムが存在し、その内のひとつに「ニューラルネットワーク」というものが挙げられます。このニューラルネットワークとは、いわば「人間の脳神経の仕組み」のような機械学習アルゴリズムです。脳の回路に似た形のユニットで構成されていて、「入力層」「中間層」「出力層」の3層で構成されています。そんな3層のうちの「中間層」を深くしたものが深層学習なのです。
この中間層を深くすることによって、ニューラルネットワークよりも表現力や精度を格段にアップさせることができます。つまり、深層学習というのは、機械学習における3層のうちのひとつである「ニューラルネットワーク」をさらに発展させたものということです。
では、具体的に深層学習を利用した画像認識にはどのようなメリットがあるのでしょうか。従来の方法では、画像データから「特徴量」という数値データの抽出を行い、その特徴量を機械学習で分類させていくのが一般的です。
しかし、深層学習の場合には、特徴量の抽出をする際に教師データとなる画像を与えておくことによって、「どういった特徴で分類していけば良いのか」を学習させることができます。そのため、さまざまな特徴を用いて分類しなければならない場合でも、特に人の手を借りる必要はありません。ただ学習データを与え続けるだけで、高い精度での分類を実現することができるのです。
Watson Visual Recognitionにおいては、すでにWatsonが大量のデータを学習しているため、導入直後から画像に映ったもの、情景の分析・認識を行うことができます。画像認識のサービスを導入した直後の段階では十分な学習データが蓄積されていないため、一定の蓄積期間が必要となるケースが一般的です。しかしWatson Visual Recognitionであればその蓄積期間が必要ないので、誰でも手軽に導入に踏み切ることができるのではないでしょうか。
(参照:i Magazine 深層学習を利用した3つのIBMソリューション ~Watson Visual Recognition、PowerAI Vision、Visual Insightsの概要)
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Watson Visual Recognition(画像認識)の活用事例
このWatson Visual Recognitionは、すでにさまざまな企業でも実際に活用され始めています。その一例として挙げられるのが、オートバックスセブンの「かんたんタイヤ画像診断」というサービスです。
これは、スマホなどのモバイル端末から誰でも無料でタイヤの磨耗具合を診断することができるサービスで、2017年9月から提供されています。オートバックスセブンではIBM Watsonを含めた複数のAIサービスを検討していたそうですが、ビジネス向けにAPIを活用した画像認識サービスを提供していたのはIBMだけだったことから、Watson Visual Recognitionの導入に踏み切ったそうです。
そして、IBMからサービス開発の提案を受け、わずか2ヶ月でサービスのリリースに至ったといいます。実証実験の段階においても診断結果の正確度は85%を超えており、現行のサービスでは「タイヤの溝の深さ」「ひび割れの有無」「傷の有無」といった情報をレベルごとに分類することが可能です。
タイヤの買い替え時期などは、自動車の知識が浅い人からすると分かりにくい部分といえるでしょう。そのような人にとって、「かんたんタイヤ画像診断」のような買い替え時期をチェックできるサービスは非常に有効なものといえるのではないでしょうか。
また、オートバックスセブンとしても「適切な買い替え時期」を知らせることができるため、これまで「まだタイヤは買い替える必要がないだろう」といった考えで買い替えを後回しにしてしまっていた人の集客効果も望めるわけです。
このように、Watson Visual RecognitionをはじめとするAIを活用した画像認識はさまざまな業界で導入され始めています。より効率的かつ高品質なサービスを提供することに大きく貢献していることがお分かりいただけたのではないでしょうか。
今後は、より多くの業界でWatson Visual Recognitionが導入される可能性が高く、活用の幅も広がっていくことが予想されます。
(参照:IBMオフィシャルサイト 株式会社オートバックスセブン)
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