生成AI
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最終更新日:2025/02/21
労働力不足が深刻化する中で、業務効率化やリソースの最適化を達成するためにAI技術を導入する企業が増えています。また、ChatGPTを開発したOpenAI社をはじめ、大手企業を中心に人間の補助となる「AIエージェント」の研究開発に注力する中で、自律的に業務を最適化する「自律型AI」への注目度も高まっています。
本記事では、自律型AIの仕組みや技術、生成AIとの違い、導入メリットなどについて解説します。自律型AIの活用事例も紹介しますので、自社におけるAI活用を検討する際にぜひご覧ください。
自律型AIとは、生成AIのような指示や対話(プロンプト)を必要とせず、高度で複雑なタスクを自己判断によって実行するAIのことです。自ら学習し、最適化を行えるため、外部からの入力不要で状況に応じた最適なアクションを選択できます。
人間は目標やゴールを設定するだけで、AIが自律的に行動し、評価や修正を繰り返しながら達成を目指します。また、新しい戦略を生み出すこともできるため、未知の状況でも適応可能です。人間の介入は最小限に抑えつつ、従来のAIでは困難だった高度なタスクも自律的に処理できます。
自律型AIと似た概念に「AIエージェント」があります。AIエージェントとは、複数のAIモデルやデバイスを組み合わせて、単一モデルでは難しい高度で複雑なタスクを自律的に実行するAIシステムです。
特定の目標達成のために自ら手順を計画し、複数のタスクを連続的に実行します。AIエージェントは、環境との相互作用がベースにあり、事前の設計やルールに基づいて意思決定を行うことが可能です。アシスタントのような補助的な立ち位置で、作業の自動化や意思決定の支援を担うケースも多く見られます。
AIエージェントについて、詳しくは下記記事で解説していますのであわせてご覧ください。
関連記事:AIエージェントとは?特徴や生成AIとの違い、種類や活用シーンを紹介
AIエージェントは、主に以下6つの種類に分けられます。
自律型AIは、環境からのフィードバックを元に経験を繰り返し、行動を最適化する「学習エージェント」と、状況に応じて最適な行動を数値化し、意思決定につなげる「効用ベースエージェント」の特徴を持ちます。
AIエージェントは、自律的に目標を達成するために、以下の流れで動作します。
上記手順を繰り返すことで、自律型AIは継続的に学習を行い、目標を達成するために行動します。PDCAサイクルと呼ばれるフレームワークのように、タスクを繰り返しながら分析や検証、修正も行われます。
自律型AIでは、物理的な現実世界や仮想的なデジタル空間などから、必要な情報を取得するために、さまざまな手段が用いられます。例えば、カメラや赤外線センサー、マイクといった設備が挙げられます。オンラインでは、外部のデータベースやサービスからAPI経由でデータを取得できます。
収集した情報をもとに、目標達成に向けて最適なアクションを決定します。通常、意思決定には、シンプルな機械学習アルゴリズムから強化学習、ディープラーニングまで多様な手法が用いられます。
自律型AIと生成AIは、目的や特徴に違いがあるため、用途に応じた使い分けが重要です。主な違いは以下の通りです。
自律型AI | 生成AI | |
目的 | 特定の目標を達成するために、環境と相互作用し、自律的に意思決定と行動を行うこと | テキストや画像、音声、映像など新しいコンテンツの生成 |
汎用性 | 汎用性が高い | 特定の分野やタスク実行が中心 |
技術・動作原理 | アルゴリズムや機械学習により、環境に応じた意思決定と行動を選択 | 大量のデータからパターンを学習し、新たなコンテンツを生成 |
活用例 | ・患者データの分析を通した治療計画の最適化 ・ユーザー行動の分析に基づく広告配信の最適化 |
・医療診断レポートや医療論文の生成 ・キャッチコピーや画像の自動生成 |
自律型AIは、人間が設定した目標に向かって、AIが自ら意思決定と行動を実行するのに対し、生成AIは学習データに基づいて新しいコンテンツを生成します。両者を組み合わせて、自律型AIが状況判断を行い、必要に応じて生成AIを活用する、といった高度なシステムも構築できます。
自律型AIは、状況や環境との相互作業により、自ら意思決定や行動を行います。また、継続的に学習と適応を繰り返すことで、パーソナライズされたやり取りや複数のチャネルにおける迅速な対応も可能です。ここでは、自律型AIができることについて詳しく紹介します。
自律型AIは、ゴール達成に向けて連続的にタスクを実行できます。従来のAIでは、質問や指示などの入力を一度の回答で処理していたため、段階的なタスクの実行が必要な場合、人間がその都度指示を出す必要がありました。
一方で、自律型AIは人間の判断なしに自ら状況を認識し、意思決定を行うことが可能です。特定のゴールに至るまでに必要なステップを自ら導き出し、行動を起こせるため、多段階のワークフローが必要なときにも人間を介すことなく完了できます。
例えば、新規の見込み客から問い合わせが入った場合、商談日程の調整を依頼するメールを自動で返信し、日程確定後にカレンダーに予定を入力する、さらに営業担当者をアサインするところまで、AIが自動的に完了するようになります。
近年の生成AIでも、実現され始めているパーソナライズされた出力も、自律型AIならより高精度に実現できる可能性があります。
例えば、顧客データの分析から個人に合った提案やソリューションの提示、それに基づくメールの文面やキャンペーン画像の制作、メールの送信まで一貫して設定できます。パーソナライズの精度と効率が向上することで、顧客体験の改善につながります。
また、先を見越したサービスの提供にも自律型AIが有用です。具体的には、顧客の利用履歴から、今後の予約のリマインダーを送信する、潜在的なリスクを早期に発見して通知する、などです。高精度な予測によって、顧客の信頼性の維持や問題回避といった効果が期待できます。
自律型AIは、複数のチャネルやAIエージェントと連携し、マルチな対応が可能になっています。例えば、メールやチャット、SNS、電話などマルチチャネルや言語でのやり取りを一括で管理することが可能です。
特定の分野やタスクに特化したAIを組み合わせ、ゴール達成を最適化できるため、幅広いシーンにおける作業の効率化が期待できます。
自律型AIを活用することで、さまざまなメリットが期待できます。ここでは、自律型AIの主な3つの導入メリットを紹介しますので、自社にとって必要性が高いメリットがあるか確認するためにお役立てください。
自律型AIが浸透することで、AI技術による業務効率化やコスト削減といった効果が大きくなり、リソースの最適化が促されます。AIは、そもそも人間のように疲れることがないため、連続的に正確かつ高速にタスク処理を行うことが可能です。
自律型AIの導入により、社員の業務負担が軽減されるため、浮いた時間をコア業務やクリエイティブな分野に割けるようになります。加えて、自律型AIが業務を高精度で遂行できる状況を構築でき、人手不足の解消にもつながります。
自律型AIは、高い拡張性を発揮して、状況の変化に応じた柔軟な行動が可能です。人間が指示しなくても、市場やサービス需要の変化を敏感に把握し、適切な処理を行います。また、大量のデータを迅速に分析し、精度の高い意思決定ができ、トレンドの移り変わりが早い市場でも対応することが可能です。
さらに、24時間365日稼働できるため、日本の深夜や突発的なタイミングのイベント発生においても自動的に処理します。人間の介入が少ない分、人為的なミスや判断が遅れて機会損失を生むような事態も避けられます。
自律型AIを使う際には、基本的に人間はゴール設定のみを行うだけでよく、プロンプト入力や出力内容に応じた質問なども不要です。詳細な指示なしで、AIが自ら考え行動するため、業務負担が大幅に軽減されます。
また、自律型AIは自ら行動を評価し、学習を繰り返すことで、継続的に性能を向上させていく能力を持ち合わせています。過去のタスク記録を分析し、問題点を洗い出して新しい方法を模索できるため、パフォーマンスを向上させていきます。
つまり、自律型AIを使えば使うほど改善が進み、インターフェースの操作性や効率性の向上も期待できます。
自律型AIは、すでにさまざまな業界で活用されており、多くの事業や業務をサポートしています。以下では、自律型AIが具体的にどのような分野やシーンで使われるのか4つの活用事例を挙げて紹介します。
金融分野では、市場のデータ解析や調査レポートの作成などの場面で自律型AIが活躍します。過去から現在に至るまで、膨大な量のデータが存在する金融業界において、迅速なデータ収集と分析に長けている自律型AIを用いることで、さまざまな業務の効率化が可能です。
また、市場の動向やリスク調査などを高精度かつ迅速にAIが行うことで、意思決定がしやすくなります。株式市場や仮想通貨市場でも、自律型AIを組み込んで損失の抑制や利益の最大化を目標として設定すれば、取引にも役立ちます。
バーチャルアシスタントなどの顧客対応にも自律型AIが活用されています。生成AIを搭載したチャットボットなどによって、顧客からの問い合わせ内容を分析し、自動で適切な対応を実現しています。
また、24時間365日案内が可能で、従来のように電話先で顧客を待たせずに済むため、満足度の向上が期待できます。自律型AIでは、さらに一歩進んだ対応が可能となり、より複雑な課題解決や状況に応じた顧客案内なども実現します。
自律型AIを活用して、パーソナライズされた商品・サービスの提案が、より高い精度で実現する可能性があります。ECサイトやオンデマンドサービスなどにおけるレコメンド機能は、ユーザーの購入履歴や利用履歴を分析し、おすすめの商品やコンテンツを表示する機能です。
AIが提案を最適化できることで、購入意欲の向上や企業ブランドへの信頼性の獲得といった効果が期待できます。また、ユーザーの利用頻度や行動などが変わっても、自律型AIが状況を自ら把握し、行動を調整できるため、顧客との長期的な関係構築にもつながります。
近年、製造業や物流業界で、工場や倉庫における作業プロセスをデジタル化し、自律的に制御する考え方が浸透してきています。この考え方を現場に取り入れ、適切に機能させるためには、自律的にデータの分析や意思決定を行う自律型AIが必要です。
自律型AIを作業ロボットや基幹システムなどと接続し、現場の多様なデータを収集・分析させることで、効率的な管理と工程の最適化を促します。
ここからは、自律型AIの代表的なサービスとして「AgentGPT」「BabyAGI」「AutoGen」の3つを紹介します。サービスごとに特徴や機能が異なるため、自社のニーズを満たすサービスを選ぶために確認してみましょう。
AgentGPTは、独自の自律型AIをブラウザ上で作成できるサービスです。直感的な操作で、自律的に動作するAIエージェントを立ち上げることができます。ユーザーが目的や名前、機能を設定するだけで、自律型AIがゴール達成に向けてタスクを生成、実行します。
OpenAIのGPT-3.5モデルをベースとしており、高い自然言語処理能力によって入力内容を理解できます。また、カスタマイズ性や拡張性が高く、多くの外部プラグインと連携して、複雑で高度なタスクを効率的に処理することが可能です。
BabyAGIは、日本人が開発した自律型AIプログラムです。AIの特徴を生かして大幅な効率化が期待できます。タスクの自動化と管理に強みを持ち、特定の目標を達成するためにタスクを自動で生成、優先順位付けして実行します。
また、OpenAIのGPT-4とベクトル特化型データベースのPineconeの組み合わせにより、高い性能を発揮している点もポイントです。導入時には、APIキーやソフトウェアのインストールが必要です。
AutoGPTは、オープンソースの自律型AIエージェントです。GPT-4などのLLMを活用し、ユーザーが設定した目標を達成するために、複数のAIエージェントを組み合わせてタスクを自動生成、実行します。
また、インターネットアクセスによる最新情報の取得や、過去の行動履歴の記録などにも対応しています。用途や利用環境に合わせたカスタマイズも可能です。ユーザーフレンドリーなインタフェースで、プログラミングやAI技術の知識がなくても簡単に操作できます。
自律型AIの導入には多くのメリットが期待できますが、利用時には注意点もあるため事前に押さえておくことが大切です。ここでは、自律型AIの活用における注意点について解説します。
自律型AIシステムを導入するにあたって、対応した設備やシステムの整備、社内の業務フローの見直しといった準備が必要です。AIに学習させるデータを用意し、利用できる状態に整えるために、日常業務とは別に作業の手間が発生するため、負担とならないよう注意が必要です。
また、導入時の初期費用やランニングコストも発生します。導入コストを抑えるためには、複数のベンダーから見積もりを取り、比較検討することが重要です。
自律型AIは、人間の指示や判断がなくてもタスクを自動遂行できますが、100%完全に自律して機能するわけではありません。最初に人間がゴールを設定する必要がありますし、AIが適切にタスクを遂行したか、状況をチェックし必要な修正を行うことも重要です。
また、AIだけでは対処しきれないトラブルや不具合が発生した際に、対応できる専門技術が求められます。AIに関する専門的な知識や経験を持つ担当者が不在の場合は、自社で育成するか外注するなどの対策が必要になるため、時間やコストがかかります。
自律型AIを導入することで、幅広い業務における最適化が可能になります。人間が最初にゴールを設定することで、自律的にAIがタスクを生成し、自動でゴール達成へと進んでいきます。人間の介入は最小限に抑えられるため、労働力不足の解消や無駄なコストの削減にもつながります。
導入にあたって、学習データや受け入れ体制の準備から、運用後のプロセス改善までさまざまな要素を考慮する必要があります。外部サービスの利用も考慮しつつ、自社にとって最適な自律型AIの導入を検討してみてください。
アイスマイリーでは、AIエージェントサービスと提供企業の一覧を無料配布しています。課題や目的に応じた計51のサービスを比較検討できますので、ぜひこの機会にお問い合わせください。
自律思考型AIとは、外部からの指示がなくても、環境や状況をAIが自ら分析、思考して最適な行動を選択するAIのことです。自律型AIとほぼ同じものを指して使われる言葉で、従来のルールベース型AIと異なり、学習により意思決定のプロセスを最適化し続けます。
自律型AIを搭載した「自律型AIロボット」は、状況を認識して、自己判断で行動を最適化することが可能です。すでにさまざまな業界や用途で活用されており、代表的な活用例を以下に挙げます。
製造業(スマートファクトリー):ロボットが部品の組み立てや検査の際に故障や異常を自ら判断して修正する。
物流・倉庫管理(スマートロジスティクス):自動搬送ロボットが倉庫内の最短ルートで商品を運搬する。
医療・介護:医師の操作を補助する手術支援ロボットにより、精密な施術が可能になる。
自動運転:AIが交通渋滞のデータを分析し、信号制御を最適化する。
自律型AIロボットにより、作業や工程の単なる自動化を超え、環境に応じた最適な行動を柔軟に実行することが可能になります。今後ますます多くの分野で活用されることが期待されています。
自律型AIの中核的な概念である「自律化(Autonomy)」は、「自動化(Automation)」とよく似ていますが、AIの活用において明確な違いがあります。
自律化は、AIが独自に最適な選択を行うことです。環境や状況を分析し、適応しながら自らの判断で行動を最適化します。
一方で、自動化は、あくまでも作業の繰り返しやルールに沿ったタスクの実行といった手法です。自動化のプロセスでは、自ら意思決定や選択、発見などを行うわけではないため、人間の判断が介入しています。
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