StableLMとは?特徴や使用感、今後の展望について解説
最終更新日:2024/03/07
Stability AIは、2023年4月19日付けでオープンソースの大規模言語モデル「StableLM」を発表しました。OpenAIの「ChatGPT」やDatabricksの「Dolly」のライバルとして登場したStableLMでは、背景やプロセスの透明性が比較的高く、ユーザーの有能なサポート役となる実用的なAIを目指している点が特徴です。
本記事では、StableLMの特徴や他の大規模言語モデル(LLM)との違い、実際の使用感、今後の展望などについて解説します。最新LLMの魅力を知りたい方はぜひご覧ください。
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StableLMとは?
「StableLM」は、Stability AIが2023年4月に発表した大規模言語モデル(LLM)です。Stability AIとは、テキストの指示によりAIが画像を生成する画像生成モデル「Stable Diffusion」を2022年に公開したことで注目を集めている企業です。
「みんなが作る、みんなのためのAI」をモットーとしたオープンソース設計で、ソースコードはGitHubで入手できます。また、ユーザー自身のデバイスでモデルを実行できるよう、小型で効率的な仕様で、実用性の高い性能に重点を置いています。
現在、30億個のパラメータと70億パラメータという2つのアルファ版モデルが公表されています。開発者は、「CC BY-SA-4.0ライセンス」の条件に従い、商用または研究目的でStableLM ベースモデルを活用できます。
StableLMと他の大規模言語モデルの違い
StableLMと他の大規模言語モデルとでは、モデルに含まれるパラメータ数が異なります。公表されている30億個のパラメータと70億パラメータという2つのStableLMモデルは、いずれも他社の大規模言語モデルと比較して大幅に小さなサイズです。
例えば、OpenAIの「GPT-3」は1,750億個のパラメータで構成されています。また、Googleの「Bard」に採用されているAIであるLaMDAは、1,370億個のパラメータを搭載しています。つまり、他のLLMに比べてStableLMは圧倒的に省サイズであることがわかります。
StableLMではEleutherAIの「The Pileデータセット」をベースに構築された新しいトレーニングデータを使って学習します。規模はThe Pileデータセットの3倍、コンテンツは1.5兆トークンと膨大なため、従来よりもコンパクトながらも、高い回答精度の実現をサポートしています。
なお、データセットには、Stanfordの「Alpacaデータセット」を含む命令フォローとチャットデータセットで微調整された「StableLMモデル」バージョンも含まれていますが、微調整したモデルは非営利に限り利用可能とされています。
StableLMの特徴
Stability AIは、「基盤AI技術をすべての人が利用できるようにする」ことを目的としてStableLMを開発しています。そのため、StableLMは従来に比べて高い透明性があり、誰しもがアクセスしやすい仕様である点が特徴です。
また、実用的なAI性能にフォーカスしており、ユーザーの生産性やクリエイティビティをサポートする点にもこだわっています。ここでは、StableLMの主な特徴について詳しく解説していきます。
透明性が高い
StableLMは、オープンソースを採用しており、背景や過程に関して高い透明性を確保しています。これには、信頼性を確立する目的も含まれています。
開発者は、デバイスにて性能の検証やリスクの特定と解消に取り組むことができます。また、機密情報の漏えいやAI機能の破壊といったリスクを回避しつつ、StableLMのモデルを独自のアプリケーションに適応させることも可能です。
アクセスしやすい
StableLMは、身近なデバイスでの使用を想定しており、アクセスしやすいというメリットもあります。専門のエンジニアだけでなく、一般のユーザーが手持ちのデバイスを使ってモデルにタスク処理を依頼できるよう設計されています。
そのため開発する側は、特定の企業のサービスに依存することなく、汎用性や互換性のあるアプリケーションの構築を行えます。独占的なモデルよりも研究開発への貢献度が高まり、結果的に幅広い効果が期待できるでしょう。
ユーザーに協力的な開発方針
StableLMは、ユーザーにサポートを提供するモデルの構築を目指して開発されています。StableLMでは「専門的・効率的・実用的」なAIの性能に重点を置いており、ユーザーに替わるようなものではなく、あくまでもユーザーに協力的な立場を維持しています。
「人間の人知を超えた神のような知性」を追求するものではなく、人々の日常生活やビジネスにおいて、さらなる創造性や生産性を引き出し、イノベーションにつながる機会を生み出すツールとして開発されています。
StableLMを使ってみた!
ここで早速StableLMを使ってみましょう。StableLMの70億パラメータ版は「Hugging Face」上で試すことが可能です。
結論から言うと、現時点ではStableLMは日本語の回答はできないため、日本語で入力した場合は英語で出力します。日本語の入力内容を理解していて、会話自体は成り立つ場合もありますが、突拍子もないやり取りが続くことも少なくありません。
ここでは「深津式プロンプト」と「ReActプロンプト」という2つのプロンプトの型を使って精度を実現してみます。
まずは、深津式プロンプトの例です。
何の脈絡もなく、フランス語の回答が返ってきてしまいました。
続いて、ReActプロンプトでも試してみましょう。
ここでも英語で回答が返ってきました。しかも、「英語教育の課題と解決策を教えてください。」という入力にもかかわらず、出力時には「日本語教育に関する回答」にすり替わってしまっています。
以上の実演から、StableLMにて高精度な日本語の回答を得ることは難しいといえます。
StableLMの展望
チャット対応やフォーマル文書作成、プログラミングコードの提示といった機能を備えたStableLMですが、現時点では出力精度や反応速度が低く、日本語にもほぼ未対応状態です。
将来的には、150億パラメータと650億パラメータの上位モデルも追加されることが決定しています。また、ファインチューニングされた研究用モデルも公開予定で、今後の進化成長に注目が集まっています。
StableLM まとめ
Stability AIがリリースした最新の言語モデル「StableLM」は、お世辞にも精度が高いとは言えない状況にありますが、パラメータ数の多いモデルや研究用のファインチューニングモデルの公開が予定されており、飛躍的な進化を遂げる日も近いでしょう。
とはいえ、現時点では大規模言語モデル(LLM)として求められている役割を担うことは難しいため、代わりにChatGPTの利用をおすすめします。公式アプリの無償公開もつい最近発表されたChatGPTでは、幅広いAPI提携も可能です。
ChatGPTの始め方や基本的な使い方については、下記記事で解説しています。
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