働き方改革で注目される「RPA」、成功導入事例とは?
最終更新日:2024/04/03
働き方改革により事務系業務の3分の1がRPAに置き換わる
少子高齢化による人手不足の中、ホワイトカラーの生産性向上の切り札として期待されるRPA。2025年までには、事務系業務の3分の1がRPAに置き換わるともいわれています。日本国内の企業でも、次々とRPAを導入する動きが出始めている状況です。ここでは、そんなRPAの成功事例についてまとめました。
(参照:総務省「RPA(働き方改革:業務自動化による生産性向上)」)
金融機関での働き方改革、RPA本格導入が始まっている
〇RPAで2500時間もの作業時間削減が可能
RPAの導入が進んでいるのは、事務作業が多い金融業界です。三菱UFJ銀行は、2年以上のパイロット期間を経て、RPAを本格導入。同行全体で2000件超の手動業務をRPAに置き換えたと明らかにしています。
現在のRPAツールでは主に「クラス1」と呼ばれる情報取得や入力業務、検証作業などの定型業務の置き換えが進んでいます。同行のパイロット業務として選ばれたのは、融資事務センターでの住宅ローン向け団体信用保険申告書の点検業務。担当者が用紙を1枚ずつ点検していた保険会社への提出書類と住宅ローンの明細を照合する作業です。
パイロット事業では、紙の申請書をスキャンし、OCRで電子データ化してロボットが点検する形式に変更。何か問題点があるもののみを担当者が目視チェックするという形になりました。その結果、2500時間もの作業時間削減が可能となったそうです。
〇RPAで300 万時間の削減を目指して
一方、同業の三井住友フィナンシャルグループでは昨年11月、生産性向上の実現に向けた RPAの活用を宣言。同社のリリースによると、グループ全体で業務の可視化やムダの廃止に取り組み、さらにRPA で代替可能な業務は、業務プロセスを RPA に適合するように見直したといいます。RPA による自動化によって約 200 業務、40 万時間(開発着手分を含むと約 65 万時間)の業務量削減に成功したと述べています。
そして、3年以内には約 1,500 人分の業務量にあたる300 万時間の削減を目指しているそうです。同社でのRPAの導入例としては、以下の業務が挙げられます。
・コンプライアンス・リスク関連業務(「疑わしい取引の届け出」のチェック、「内部損失検証・計測」業務など)
・営業・企画力の強化に向けた情報収集業務(休日、夜間に銀行取引を利用した業界や顧客の情報収集など)
・顧客向け運用報告書や住宅ローンのチラシ作成など
・事務センターにおける大量の定型業務
同社では、削減された業務時間を働き方の見直しに充てるほか、営業力や企画力の強化、人員配置の適正化につなげると述べています。
(参照:ZDNet Japan「三菱東京UFJ銀行、RPAツール導入で2000件超の手作業を自動化」)
(参照:総務省「RPA(働き方改革:業務自動化による生産性向上)」)
(参照:ZDNet Japan「MUFGのRPA導入–2年以上のパイロットから本格利用に移行」)
(参照:株式会社三井住友銀行「生産性向上の実現に向けた RPA(Robotic Process Automation)の活用について」)
〇みずほFGはRPAで帳票処理を自動化
画像参照:みずほファイナンシャルグループ
また、同業のみずほフィナンシャルグループでも、AIやRPAの導入が進んでいます。2018年5月24日には、AI、OCR、RPAを活用した帳票のデータ入力を自動化する業務効率化ソリューションの開発、そして実証実験の成功を発表しました。これは、手書きの帳票や否定形帳票などの処理業務を効率化する「AORソリューション」と呼ばれるもので、AI、OCR、PRAを活用したシステムとなっています。このシステムの活用により、帳票の文字情報をデータ化し、口座データを照会して成否確認を行えるようになるそうです。
なお、同グループ内において数ヶ月にわたり実施された実証実験では、これまで行っていた手作業による処理業務を8割削減することに成功したといいます。そして2019年に入り実用化の目処が立ったこともあり、地方金融機関に対しても業務効率化ソリューションの紹介を開始しているそうです。ちなみに2019年1月時点では、群馬銀行、千葉興業銀行、七十七銀行、第四銀行、肥後銀行、鹿児島銀行の6行で実証実験が実施されており、有効性の確認が行われています。
(参照:みずほファイナンシャルグループ 人工知能等を活用した業務効率化ソリューションの提供について )
RPAの精度は信頼できるレベルか?
業務のIT化となると、懸念されるのが精度の問題です。せっかく業務を自動化しても、システムの精度が低く、人間による目視や訂正が必要になってしまうようでは自動化とは言えません。
現段階ではまだ「そのシステムが信頼できるものなのか分からない」といった不安を覚える方もいるかと思います。しかしRPAは、金融機関が長期間にわたり実証実験を行った上で実用化に踏み出しています。
金融機関は、大量の定型業務やペーパーワークが想定される業界の代表例ですが、一方で多くの規制が敷かれ信用力が問われる業界でもあります。そうした業界が慎重に実証実験を行った上で、まず一番手となってRPAによる自動化を推進しているのですから、システムの精度も信頼できるレベルにまで向上していると言ってよいでしょう。
また、人の手による作業ではミスが起こる可能性が0ではありせん。さらに、作業をする人間一人ひとりの体調の変化によって、生産性にバラつきが発生してしまうケースもあります。このような人の手による作業の精度とRPAの精度を比較してみても、やはりRPAの精度の方が安定した生産性を作り出せるといえるでしょう。
不動産業界でもRPA導入進む
では、金融機関以外の業界でのRPA導入事例として、不動産会社での活用例を紹介します。不動産業界も金融機関同様、監督省庁からの規制が厳しく、大量の事務作業やペーパーワークが要求され、なかなか効率化やシステム化が進んでいなかった業界です。昨今では、こうした業界の慣習を変えようと、不動産業界をIT化する「不動産テック」の進展がみられます。
賃貸住宅仲介業のAPAMAN(アパマン)では、18年3月から直営の「アパマンショップ」の 55 店舗においてRPA導入を開始しました。同社では、不動産業向けにテキストデータで提供している空室情報は全て、スタッフが手入力したものでした。この作業に1 店舗あたり平均で 1 日 8 時間の時間が割かれていたため、業務の効率化と自動化が摸索されていたといいます。そこで、11 ステップの作業のうち、6ステップにRPAを導入したところ、業務時間が3.2時間まで短縮されたそうです。また、自動化によって入力ミスも防げ、作業品質の向上にもつながりました。
働き方改革はRPAで、ホワイトカラー業務の生産性向上を
日本の製造業の現場では、長年をかけて自動化や効率化が推進されてきました。しかし、非製造業やホワイトカラー業務についてはこうした取り組みが遅れ、世界的に見ても他の先進国に遅れをとっていると言われています。RPAは今後も普及拡大するとみられ、企業はますますの業務効率化を求められるでしょう。
働き方改革が進められる昨今、生産性の向上に貢献するRPAには大きな期待が寄せられています。
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