生成AI

最終更新日:2026/10/30
プレスリリースアワード2026発表
株式会社PR TIMESが主催する「プレスリリースアワード2026」の授賞式が、2026年10月28日に開催されました。
本アワードは、企業や団体の規模・地域を問わず、1年間で発信されたすべてのプレスリリースを対象に、社会性や公共性、共感性などの視点から優れた発信を審査・表彰するイベントです。本年は総数4,236件のエントリーから、その取り組みや思いが高く評価された101件の「Best101」が選出されました。
本記事では、特にAIやテクノロジーを活用して社会課題に挑む事例をピックアップしてご紹介します。さらに、株式会社ミライ菜園への独自取材を通じて「病害虫発生予測AI」の開発秘話や、農業現場への普及に向けたリアルな裏側に迫ります。

本アワードの各賞では、自社の利益や業績アピールにとどまらず、テクノロジーやデータを社会課題の解決にどう生かしたかという姿勢が高く評価されています。
社会とのつながりを深めた発表に贈られる「ソーシャル賞」を受賞した株式会社イルは、高齢者向けGPSインソールを開発し、公的サービスと連携して普及に取り組んだプロセスが評価されました。
情報の平等と信頼を実現した発表に贈られる「パブリック賞」を受賞した株式会社SODAは、リユース市場の拡大に伴う偽造品問題に対し、自社の鑑定データを公開して社会的な啓発に繋げました。
あらゆる業界でAI活用が進む中、本アワードでも、AIを用いて現場の業務改善や社会的な課題解決に挑んだ具体的な事例が「Best101」に選出されました。テクノロジーを現場の課題解決に結びつけた、4つの選出記事の事例をご紹介します。
東大発AIスタートアップの同社が、大阪の特殊印刷加工メーカー・進栄化工株式会社におけるAI導入を支援しました。69歳のプログラミング未経験社員が生成AIを活用し、独学でFAX発注の自動化システムを開発。エラー0件および月80時間の業務削減という成果を実現しています。
審査では、3度の挫折や試行錯誤を経た開発ストーリーが詳細に記されている点が注目されました。69歳・未経験という主語と具体的な業務削減の実績を明示することで、AI活用が一部の先進企業だけのものではないことを示し、シニアDXやリスキリングに挑むすべての人へ勇気を与える発信となっています。
地域の防災活動を担う人材の高齢化や固定化という構造的な課題に対し、亀岡市の職員が独学でプログラミングと生成AIを習得しました。地域の地理的特性を反映し、子どもたちが主体的に防災を学べるRPG風ゲーム「防災クエスト」を開発し、行政DXの新しい形を示しています。
審査では、職員の自発的な挑戦を後押しする組織風土や、AI活用やDX推進に取り組む自治体としてのブランディング手法が評価されました。社会課題をゲームの切り口で子どもにも受け入れやすくした、行政DXと次世代の防災教育を結びつける先進的な取り組みとして注目されています。
食品業界で人手不足が進む中、長年愛されてきた「ボンカレー」の味をいかに次世代へ継承するかが課題となっていました。そこで同社は、味やレシピを定量的に可視化する独自の予測AIシステム「おいしさLENS」を開発。熟練者の感覚的なノウハウをAIで言語化・定量化する取り組みです。
審査では、専門的になりがちな研究内容を、一般の読者にも分かりやすく「企画書」のような構成で紐解いた点が高く評価されました。技術的な詳細や開発背景を公開し、「何をしてどうなり、今後どうするか」を明確に伝えることで、読み手の関心を引き出す優れた発信となっています。
収穫前に農作物の4分の1が失われる「畑のフードロス」を防ぐため、病害虫の発生予測AIアプリを開発しました。JA豊橋において害虫調査の関連作業を約9割削減した実績を示し、気候変動で複雑化するリスクへの「予防的防除」という新しいアプローチを提示しています。
審査では、読者の認識を問い直す構成や、代表自身の経歴から事業化に至るまでの背景が論理的にまとめられている点が評価されました。見過ごされがちな社会課題に着目し、農業の省力化と持続可能性を両立する次世代農業のモデルとして、具体的な解決策を提示した発信です。
「Best101」に選出された発信の一つが、農業分野でAI活用を推進する株式会社ミライ菜園のプレスリリースです。同社の営業・広報部マネージャーである荒川玲央氏へ独自インタビューを実施し、AI開発のきっかけや、農業現場へテクノロジーを届けるための取り組みを伺いました。

株式会社ミライ菜園 荒川玲央氏
――まずは、今回選出された記事の「病害虫発生予測AIアプリ」の事業を始められたきっかけや背景についてお聞かせください。
――荒川氏
我々ミライ菜園は、創業時から農業分野に携わっており、当初は病害虫の画像診断を主力事業として展開していました。
その中で、もちろん病害虫の特定も重要なのですが、プロの農家さんにヒアリングを続けると「病気や傷が出てしまうとその時点でもう廃棄するしかない」という切実な困りごとが挙がりました。
現場の真のニーズは、病害虫が発生する前にいかに対処するかという「予防」にあることがわかり、我々のこれまでの知見を活かして、独自AIの開発に至りました。
――「予防」という視点に着目し、事後の診断から事前の予測へとシフトされたのですね。では、そのAIによって現場にはどのようなメリットが生まれるのでしょうか。また、どのような技術が使われていますか。
――荒川氏
病害虫発生のタイミングを予測することで、発生前の最適なタイミングで農薬散布のアラートを届けます。人間の風邪も引き始めに薬を飲めばひどくならないのと同じで、被害が広がる前に撒いておくと防除回数を最小限に減らせます。これにより、収穫量を増やして廃棄を減らす「畑のフードロス」を削減できます。
さらに、防除回数が減ることで環境負荷や農薬代を抑えられますし、人手不足が深刻な農業現場の省人化にもつながります。
予測の裏側では、約5万ダウンロードされている自社の病害虫診断アプリ「SCIBAI(サイバイ)」で蓄積した記録のほか、自治体の発生情報やJAさんからの連携データなど、70万点以上のデータを学習させています。それを現在の気象条件と掛け合わせることで、タイミングの予測を可能にしています。
――70万点以上という膨大なデータ基盤が、精度の高い発生予測を支えているのですね。一方で、長年の勘を軸にされる熟練の農家さんからすると、AIの予測に対して最初はハードルのようなものもあったのではないでしょうか。
――荒川氏
そうですね、農業現場は年齢層が高いため、最初は壁がありました。いくら我々がAIの技術を説明しても、やはり「誰が言うか」という点が大事で、そもそも信頼関係がないと情報が伝わらないんですよね。
そこで、日頃から対面で地元農家さんと接している地域のJAさんと連携するアプローチをとりました。我々の予測データをまずJAさんにお渡しし、そこから地域の農家さんへ発信していただいています。JAさんとの信頼関係をベースにして情報を届ける形で、事業を進めています。
――「人から人への信頼」が普及の鍵になったのですね。現在すでに愛知県や愛媛県、北海道など、各地域のJAさんで導入が進んでいるとのことですが、今後の展望についてお聞かせください。
――荒川氏
例年の実績を重ね、予測精度も非常に高くなり、高原産地や内陸、沿岸部といった標高や気候などの地域差にも対応できるようになりました。
技術や実績の部分でも「安心して使っていただける」と自信を持って言える段階になり、ようやく普及のステージに立ったと感じています。
2025年頃からスタートした段階でまだサービスの認知度は低いので、今回の受賞をきっかけに、より多くの方に知っていただく機会をどんどん増やしていきたいと考えています。
技術の精度だけでなく、現場の心理的ハードルに寄り添って普及の仕組みまでデザインしているミライ菜園のアプローチは、最新テクノロジーが第一次産業に根付くための大きなヒントと言えます。今回の「Best101」選出を足がかりとして、同社の病害虫予測AIが全国の産地へとさらに広がり、日本の農業が抱える課題を解決していく未来に期待が高まります。

今回の「プレスリリースアワード2026」では、テクノロジーの先進性だけでなく、それを社会に届けるための「見えない行動」や熱量が高く評価されていました。
ミライ菜園の事例が示すように、どんなに高精度なAIであっても、現場の真の課題に寄り添い、人と人との「信頼」を介さなければ、社会実装は進みません。
AIによる業務効率化やDXが叫ばれる今だからこそ、自社の技術を「誰の、どんな課題のために、どう届けるか」。本アワードに集まった数々のストーリーは、AIビジネスに関わるすべての皆様にとっても、大切な原点を問い直す大きなヒントになるのではないでしょうか。
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