ポカヨケとは?AIを活用した対策事例をご紹介
最終更新日:2024/04/05
製造現場では、ヒューマンエラーによって起こる「ポカミス」が原因で、製造工程に不良品が混入する可能性があります。ポカミスを削減して不良品の少ない製造工程を実現するためには、ポカミスを防止するための「ポカヨケ」を適切に導入する対策が有効です。
人の手による作業ミスを防止・回避するためのポカヨケは、作業前、作業時、作業後など、さまざまなタイミングで導入するタイプのものがあります。近年ではAI活用も進んでおり、画像認識システムを活用した不良品検知の活用も広まっています。
現場には多くの課題が生じるため、新たにポカヨケの導入を検討している方も多いのではないでしょうか。そこで今回は、ポカヨケに関する基礎知識や、AIを活用した品質維持に関する各社の取り組みについて解説します。
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想定外の失敗“ポカミス”とは
ポカヨケを知る前に、まずは「ポカミス」について知っておくと理解が深まりやすいでしょう。ポカミスとは、「ヒューマンエラーが原因で発生する想定外の失敗」のことを指しています。オペレーションミスによる製造手順の間違いや、機械トラブルなどもポカミスの一種に数えられます。
製造業においてもポカミスはよく起こる現象であり、ポカミスによって業務効率が低下したり、不良品を製造してしまったりする上に、機械トラブルを引き起こす原因にもなります。
日々の作業工程においてヒューマンエラーをどれだけ減らすことができるかは、ポカミスの削減に直結します。このような文脈から、製造業では人の手による作業ミスを防止・回避するための装置である「ポカヨケ」の導入が求められます。
ポカミスの発生原因
ポカミスが発生する原因は、主に下記の4つに分類できるといわれています。
- 認識の欠如
- 標準の欠如
- 標準の不備
- 教育・訓練、適正の不足
認識の欠如とは、ポカミスを起こした作業者本人が、それをポカミスであると認識できていない状況を指しています。また、ポカミスを起こしたものの、作業者本人がリカバリーしてしまうために、周囲がポカミスの事実を認識していない状態も「認識の欠如」に含まれます。
標準の欠如は、従業員がスポット作業やトラブル処理、イレギュラー対応などが頻繁に発生する環境下で作業を強いられており、「標準」が設定されていない状況を表します。標準が存在しないということは、ポカミスが定義されず、放置されやすいということです。
標準の不備は、標準が整備されているものの、指示の内容がはっきりしていなかったり、何をするとNGなのかが曖昧な状態を指します。作業を行う人の解釈に左右されやすく、ポカミスの種類が多様化する原因になります。
教育・訓練、適正の不足は、現場における教育や訓練が不足しており、従業員が適正な判断ができない状態を指します。判断が困難なので、ヒューマンエラーが頻発しやすくなります。
発生状況から考えるポカミスの性質
ヒューマンエラーが原因で起こるポカミスは、現場で話し合いを行い一旦は改善できたと感じても、また発生するようになって、現場の停滞を招く原因になりやすいのが難点です。
前述のように、ポカミスの4つの原因を特定して解消することは重要ですが、「ポカミスの性質」を理解することも大切です。
例えば「発生頻度は高くないものの、偶発的に発生する」ポカミスは、要因が現場に潜在化していると考えられます。また、「対策を講じると一旦発生しなくなるが、またすぐに再発する」ポカミスについては、根本的な原因を解明しにくい特徴があります。
他にも、ポカミスが発生する手順が細分化されており、同じ対策が効果を発揮しないポカミスや、対策しても繰り返し発生してしまう場合はミスの性質が明らかになっていないポカミスなどが存在します。
このように、ポカミスがどのような頻度、状況で発生しているのかを正しく理解し、「根本原因は何か」を導き出すことも重要です。
ポカヨケとは?
前述のように、ポカミスとはヒューマンエラーによって引き起こされる想定外の失敗のことを指しています。製造業においては、オペレーションミスによる製造ステップ上のミスや、機械トラブルなどに代表されます。
ポカミスを防ぐためには、人の手による作業ミスを防止・回避するための「ポカヨケ」の導入が有効です。
ポカヨケは主に工場の製造ラインなどの現場に設置される工具などの物理的な装置であり、ヒューマンエラーの防止や回避のために活用されます。例えば、規格外の製品を自動的に判別して除外し、次の工程へ移さないための検知システムや、ピッキングミスを防止するためのバーコードリーダー、異品を検知するとアラートが鳴る装置などが代表的です。
他にも、製品に位置ずれが見られる場合は、スイッチを押しても物理的に起動しないように制御するなどのポカヨケもあります。
ポカヨケの目的は2つ
- 製造工程から不良品を取り除く
- 労災を防止する
ポカヨケの主な目的のひとつは、「製造工程から不良品を取り除く」ことにあります。製造工程に不良品が残ったままになってしまうと、最終工程まで不良品の存在に気がつかず、消費者の手元に渡ってしまう原因につながります。そこでポカヨケを導入し、製造工程の比較的早い段階で検知が可能な環境に整備して、不良品を取り除くことが求められます。
また、ポカヨケには不良品を取り除く以外にも、「労災を防止する」という側面もあります。仮に現場で稼働しているプレス機の作動スイッチが1つだけだったとしたら、誤って作動スイッチを操作していない方の手をプレス部分に置いてしまうと、重大な事故の原因になります。そこでポカヨケにより作動スイッチを2つに増やし、怪我を事前に回避するための仕組みを作るのです。
製造業の事故原因の多くは、「確認をせずに次の作業を行う」ことや、「操作ミス」などが多いといわれています。不良品を少なくするだけでなく、従業員の安全を維持し、労災を防止することもポカヨケの重要な導入目的のひとつです。
スマートファクトリーとの違い
ポカヨケと似た考え方のひとつに「スマートファクトリー」が挙げられます。スマートファクトリーとは、現場にAIやIoTなどの最先端技術を導入してデータ活用や分析を実施し、製造プロセスの改善をはかったり、作業の効率化を実現したりする工場を指しています。
スマートファクトリーとポカヨケは、現場に作業を効率化するための仕組みを導入するという点では共通していますが、主な目的が異なっています。スマートファクトリーの目的は工場や製造ライン全体の省力化や効率化を目的としており、一方のポカヨケは不良品除去や労災防止が主目的です。
スマートファクトリーの取り組みの中には、不良品除去のためのポカヨケも含まれます。そのため、「ポカヨケはスマートファクトリーの中の一項目である」という考え方もできるでしょう。
スマートファクトリーについてさらに詳しく知りたい方は、こちらもご参照ください。
ポカヨケの種類は製造ラインの工程別に分類される
ポカヨケの種類は、製造ラインの工程によって「発生前対策」「発生時対策」「発生後対策」の3つに分類されます。ここでは、それぞれの工程別に、どのようなポカヨケがあるのかについて詳しく解説します。
タイプ①:発生前対策
発生前対策に分類されるポカヨケは、不良品が発生する可能性について事前に評価や検討を実施したり、事前に不良品の発生を防いだりするタイプです。例えば、従業員のヒューマンエラーによって位置ずれが生じると次の工程の作業ができなくなるなどの、「フールプルーフ設計」は発生前対策に含まれます。
フールプルーフ設計とは、従業員が間違った操作を行っても安全性を維持できるように、事前に対策を行っておく設計のことです。
「不良品が発生する前の対策」を徹底することで、製品を製造する前の段階で不良品の産出を防止できます。また、フールプルーフ設計の構築によって作業における従業員の安全確保が可能になり、労働上の事故を削減できます。
タイプ②:発生時対策
発生時対策とは、「不良品が発生した時点」や「作業工程において、不良品の検知を行う」タイプの対策です。発生時対策では、製造現場においてAIによる画像認識システムや、光学センサーなどを導入し、不良品の検知・防止を実現する仕組みなどが該当します。
画像認識システムや光学センサーで不良品の存在を検知すると、アラートなどが通知されて、すぐに不良品を取り除けるような仕組みです。また、現場で異常を検知したときに、自動的に機械の稼働をストップさせたり、操作盤のロックを行ったりする発生時対策もあります。
発生時対策を行うことで、現場で不良品が製造されたとしても、最終工程に進ませずにその場で取り除くことが可能になります。
タイプ③:発生後対策
発生後対策とは、製造ラインにおいて不良品は既に発生してしまっている状態において、後工程の検査によって不良品の誤出荷を回避するタイプです。
発生後対策では、製品の出荷前に標準的な形状とのずれを検知すると、自動的に不良品とみなして出荷ラインから除外するなどの仕組みが代表的です。製造工程で検知できなかった不良品であっても、発生後のタイミングで検知できれば、消費者の手元に不良品が渡ってしまうことを避けられます。
ここまで紹介した3つのタイプのポカヨケは、物理的な仕組みの場合もあれば、電子装置による回避システムを利用する場合もあります。近年ではAIを活用したポカヨケの導入が広がっており、具体事例は後述します。
AIを活用したポカヨケの対策事例
ここからは、AIを活用したポカヨケの対策事例を紹介します。精密機械部品の欠陥分類や組立工場の検査・検品工程の自動化など、ポカヨケに関連する最新の事例を紹介しますので、AI導入をお考えの方は参考にしてください。
精密機器部品の欠陥分類
ある精密機器部品の製造工場では、画像認識AIによる精密機器部品の欠陥分類システムを導入しています。システム導入前の同社では、下記の2つの課題を抱えていました。
- 欠陥分類に時間がかかる
- 欠陥分類の目視が困難
精密機器部品に生じる欠陥は微細な大きさのものも多く、欠陥の種類も多種多様であることから発見が困難で、分類に非常に時間がかかるという問題がありました。そこで同社は画像認識AIシステムを導入し、多岐にわたる欠陥をAIに判断させることを決めています。
システム導入後は、従来に比べて欠陥分類の精度を大幅に引き上げることに成功しました。欠陥分類に要する時間が短縮されて検査効率が向上するとともに、欠陥分類の精度が高まったことから、製造工程も大きく改善しています。
撮影された画像の欠陥分類の正解率は96.47%と非常に高く、これまでは難しかった製造工程改善への適切なフィードバックも行えるようになりました。
組み立て工程の検査・検品工程の自動化
業界最大手の機械系組み立て製造業では、組み立て工程の検査・検品工程を、「AIを活用したサプライチェーンの計画業務最適化サービス」の導入で自動化しています。
同社では1製品あたりの検査項目が数十項目にも及ぶことから、従業員による目視検査のためには高いスキルと集中力が求められる環境にありました。そのため、製品の検品工程の効率化と自動化が課題でした。これまでにもAIを導入していましたが、AIモデルの構築に数ヶ月単位の時間がかかっており、人件費などのコスト削減も実施する必要がありました。
そこでIMGが検品用のAIモデルを構築したところ、従来は自社のデータサイエンティストが数ヶ月間かけていたAIモデル構築がわずか数日で完了し、現場へのAIの反映を高速化させることに成功しています。
現在はAIモデルを実際に現場へ投入して自動化と効率化を実現しており、現場作業員が蓄積したAIノウハウを利用して、検品に留まらないさらなるAI導入を検討しています。
東洋鋼鈑、生産ラインの検査工程にAI導入
東洋鋼鈑株式会社では、生産ラインの検査工程にAIを導入しています。従来、同社ではハードディスク基板生産ラインにおいて、検査機では判別不可能な微細なキズの目視を、熟練した検査員の経験によって判別していました。しかし、一部の検査員しか対応できないため属人性が高く、検査スキルの伝承が難しいという課題を抱えていました。
同社は検査に対応できる人材が乏しいことから検査員の数を十分に確保できず、大量出荷に対応できないという悩みに対応するために、AI導入による検査へ方針を転換しています。
東洋鋼鈑はAI予測モデル「匠のAI」の開発に成功し、従来と比較して検査に必要な作業量を半減させることに成功しました。また、従来は暗黙知だった検査員の検査スキルを可視化して、技術継承を可能にしています。
現在は業務の現場でAI予測モデルを成長させられる土壌を養成しており、作業員によってAIの精度を高められる現場を実現しています。
ポカヨケ まとめ
ヒューマンエラーを防止・回避するための仕組みである「ポカヨケ」は、製造工程において発生した不良品の検出を可能にするだけでなく、現場の従業員の労災回避にもつながる重要な技術です。
ポカミスはさまざまな原因で発生するため、自社ではどのような性質のポカミスが発生しているのかを十分に理解した上で、適切なポカヨケを設置することが大切です。発生前対策、発生時対策、発生後対策の3つのタイプのポカヨケを使いわけて、効率的かつ安全性の高い製造工程を実現しましょう。
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