PoC(Proof of Concept)とは?メリット・デメリットや成功のためのポイントを解説
最終更新日:2024/07/30
AI・人工知能を活用したビジネス(サービス)が多くの注目を集めており、私たちの日常生活にも溶け込み始めています。「何気なく利用したサービスにも、実はAIが使われていた」という経験をお持ちの方も多いのではないでしょうか。
PoC(Proof of Concept)は、新しいアイディアや技術が実際の市場で実現可能かどうか確認するための検証手法です。
本記事では、PoCの特徴・メリットとデメリット・実証実験とプロトタイプとMVPの違い・PoCを進める具体的なステップ・成功させるためのポイントについて詳しく解説します。
PoC検証について詳しく知りたい方は以下の記事もご覧ください。
PoC検証とは?メリットや進め方をわかりやすく解説
PoC(Proof of Concept)とは?
PoCは「Proof of Concept」を表し、新しい考えや技法が特定の目的を果たす可能性を検証するための手法や方法を指します。
これには、技術的な検証からビジネスの実現可能性を調査するための前段階的な取り組みまで様々なアプローチが含まれます。多くの業界で採用されており、これによって新しい取り組みの可能性やリスクを早期に評価できます。
主に、実際の効果を測定するための初期の実験やテストを指すことが多いです。狭義には技術的な検証を指すことが多いですが、広義にはビジネスモデルの検証を含むこともあります。
PoCと実証実験との違い
PoCと似た言葉に実証実験がありますが、これらは大きな違いがあります。
PoCは、新しいアイデアや技術が実際に動作するか、その基本的なアイディアが現実的かどうかを見る初期の確認手段です。これは、まだ製品やサービスとしての実用性については考慮していない段階です。
それに対して、実証実験は具体的な製品やサービスとしての機能性を試すためのものです。PoCでの知見を元に、現実の状況での動作をテストします。PoCが「できるか?」を検証するのに対し、実証実験は「実際にどう動くか?」を検証することになります。この二つのアプローチをしっかりと区別し、適切な場面で利用することが、効果的な開発に繋がります。
PoCとプロトタイプとの違い
PoCとプロトタイプは、両者とも新しいアイデアや技術の有効性を確認するための手段ですが、その目的と手法には大きな違いがあります。
PoCは、特定の理論やアイデアが技術的に可能かどうか実証するための、初期段階のプロジェクトです。一方、プロトタイプは、製品やソリューションの初期バージョンを作成し、その機能やデザインをテストすることを目的としています。
つまり、PoCは「それが可能か?」を確認するためのもので、プロトタイプは「それがどのように機能するのか?」を試すものです。この違いを理解することは、どの手法が特定の状況や要件に最適かを判断する上で重要です。
PoCで検証する内容
PoCでは以下の3つを検証する必要があります。
- 実現性
- 効果とコスト(費用)
- 具体性
実現性
理想的なシステムの開発案が浮かんだとしても、そのシステムが技術的に可能であるとは限りません。実際にシステムを作成し、作動させなければわからないこともあります。また、プロジェクトが大規模なものになるにつれて想定外のトラブルが起こる可能性も高まるため、そのような事態を防ぐためにPoCで実現性を確認する必要があります。
例えば「IoTセンサーが想定通りにデータ収集できるか」「実際の環境においても電波がしっかり届くか」などが検証の例として挙げられます。
効果とコスト(費用)
どれだけ優秀なシステムでも、膨大な費用がかかってしまうならば意味がありません。自社の規模や予算を考慮し、費用対効果を見極めることが大切です。例えば、無人店舗でのレジ自動化の費用対効果を検証することが挙げられます。この検証で期待通りの効果がなければ、導入は見送る必要もあります。
PoCの前の段階でも、「このシステムは費用対効果が得られるか」を確認することが大切です。製造業の無料の簡易検証のように、費用対効果のメリットが大きくなりやすいケースもあります。
最終目的は常に「費用対効果の達成」であることを心に留めることが重要です。
具体性
具体性の検証とは、システムを使用する際に必要となるものは何なのかを見極めていく作業のことです。たとえば、データ分析システムの導入を検討している場合、「どの位置にどのボタンが必要か」「仮データを使用した分析結果はどのようになるか」といったものが実施されます。
この検証は、基本的には「実現性」と「コスト(費用)」の検証が終わった後に行われるものです。できる限り、実際にシステムを使用する人を巻き込んで検証を行っていくことが大切になります。現場と関わりが少ない人だけでPoCを進めてしまうと、現実的ではないシステムが出来上がってしまう可能性もありますので、しっかりと現場の声を聞きながらPoCを進めていくようにしましょう。
PoCを行うメリット
PoCを行うことには以下のようなメリットがあります。
- 無駄なコストや工数を削減できる
- 意思決定を明確に伝える
- プロジェクトのリスク低減が見込める
無駄なコストや工数を削減できる
PoCにより、無駄なコストや工数を削減できるケースがあります。
初期段階で検証を行うことで、機能しないアイデアや技術に対する投資を未然に防ぐことできるからです。また、具体的な製品やサービスを開発する前に問題点を特定できるため、後の開発フェーズでの修正や変更によるコスト増加を抑えられます。
さらに、PoCの結果を元に効率的なプロジェクト計画を立てることが可能となり、全体の工数の削減にも寄与します。したがって、PoCは無駄なコストや工数を削減する重要な手段と言えます。
意思決定を明確に行える
PoCは意思決定を明確に行うための有効なツールとなります。具体的なデータと結果を得ることで、主観的な意見や予測に依存することなく、客観的な視点から判断を下すことが可能となります。
PoCは新しい技術の可能性を探るだけでなく、その技術がビジネスにどのように適用できるか、どの程度の効果が期待できるかを具体的に示すこともできます。
これにより、プロジェクトの方向性を明確にし、リソースの最適な配分を決定するための具体的な根拠が提供されます。したがって、PoCは意思決定の明確化に寄与すると考えられます。
プロジェクトのリスク低減が見込める
PoCは、プロジェクトのリスクを大幅に低減させる可能性があります。
これは、PoCが「新たなアイデアや技術が実際のビジネス環境で機能するか」を検証するための手段であるためです。PoCは概念の実現可能性を確認するための初期段階の実験であり、問題点や欠陥を早期に発見できます。
また、PoCの結果を基に正確な予算や期間の見積もりが行え、ステークホルダーへの説明や納得を得やすくなります。
これらの要素が組み合わさることで、プロジェクトのリスクを低減し、成功に向けた道筋を確立できるのです。
PoCを行うデメリット
PoCを行うことにはデメリットも存在します。
- 検証回数に伴い、コストが膨らんでいく
- 情報漏洩のおそれがある
これらの問題は、PoCの過程を進める上で注意が必要なポイントとなります。ここからは上記のデメリットについて詳しく解説します。
検証回数に伴い、コストが膨らんでいく
PoCの実施には、製品やサービスの概念を実際に動作させて確認するための時間とリソースが必要となります。これらの検証を繰り返すほど、そのコストは増大します。
特に、複雑なシステムや高度な技術を扱う場合、検証のたびに専門知識を持つ人材や特殊な設備が必要となり、それらがコスト増の大きな要因となります。
しかし、検証回数の増加がコスト増の唯一の要因ではありません。検証の過程で見つかった問題点の修正や改善にもコストが発生します。
これらのデメリットを回避するためには、PoCの計画段階で検証の範囲や回数を明確に設定し、必要なリソースを適切に配分することが重要です。また、検証の結果を丁寧に分析し、次の検証に生かすことで、無駄な検証を減らすことも可能です。
情報漏洩のおそれがある
PoCを行う過程では、新技術や未公開のアイデア、企業の戦略など、重要な情報が関係者間で共有されます。これらの情報が適切な管理下になく、外部に漏洩してしまうと、競争優位性の損失や法的な問題を引き起こす可能性があります。
情報漏洩を防ぐための対策として、初めに非開示契約(NDA)を締結し、関係者に対する情報管理の重要性を認識させることが必要です。
また、PoCの過程で取り扱う情報の範囲を明確にし、必要最低限の情報のみを共有することも重要です。情報管理の体制を整え、適切な情報共有を行うことで、PoCの成果を最大限に引き出すことが可能となります。
PoCの進め方を4つのステップで紹介
PoCは以下の実施手順で実施されます。
- 目的・ゴール・検証方法を設定
- 試作
- 検証
- 結果の評価
1.目的・ゴールと方法を設定
PoCを進めていく場合、はじめに「何を達成したいのか」「PoCで得たいデータは何か」「何を目的に実施するのか」といったゴールのイメージを明確化しておく必要があります。あらかじめ目的とゴール、そして目的を達成する方法を明確化しておくことで、組織としてブレることなくPoCを進められます。
次に、そのゴールに到達するための具体的な検証方法を設計します。検証方法は、目標達成のための手段であり、その有効性を確認するための試験的な手法です。検証方法の設定についても重要なポイントがあります。検証方法は、事前に設定したゴールに対して達成可能であること、そして、可能な限り客観的かつ再現性があることが求められます。これらが欠けると、PoCの結果が信頼性を欠く可能性があるからです。
2.試作
PoCの目的や方法が明確になったら、次はPoC用のシステムを試作していきます。試作において重要なのは、最小限の内容で構築するという点です。大規模な試作を行ってしまうと、失敗したときの損失が大きくなってしまうため注意しなければなりません。
なお、試作するシステムは「プロトタイプ」と呼ばれるケースもありますが、プロトタイプは「改良を重ねて完成を目指す」というプロセスにおいて作られます。PoCにおける試作は「検証を目的としたシステム」であるため、厳密にはプロトタイプではありません。
3.検証
PoCに用いるシステムが完成したら、検証を行います。小規模なシステム導入であっても、利用対象者に実際に試してもらいながら検証していったほうが良いでしょう。実際の利用対象者に利用してもらうことで、より客観的で価値のある意見を得られます。
4.結果の評価
検証を終えたら、その検証で得られた結果を評価していきます。検証において重要なのは、できる限り客観的な視点で厳しく評価していくことです。
結果が良好だった場合、具体的なプロジェクトへのスケールアップや新たなビジネスモデルの開発に移行することが考えられます。一方、結果が期待ほど良くなかった場合でも、その結果から得られた知見を元に、問題点を改善した上で再度PoCを行うか、または新たなアイデアに切り替える等の選択肢があります。
どちらの結果であっても、PoCは学びの場であり、その結果を活かすことが重要です。結果の評価は、PoCの成功を左右する重要なステップであり、冷静かつ謙虚な姿勢で取り組むべきです。
PoCを成功させるための3つのポイント
PoCを成功させるためには以下の3つのポイントが重要です。
- スモールスタートではじめてリスクを管理する
- 結果からPDCAを回す
- 「PoC疲れ」で終わらせないようにする
ここからは上記3つのポイントについて詳しく解説します。
スモールスタートで始めてリスク管理する
何事においても言えることですが、PoCにおいてもまずは小規模でスタートさせていくことが大切になります。いきなり大規模でスタートしてしまうと、仮にシステムの有効性が確認できなかった場合の損失が大きくなるからです。
たとえば、IoTとの連携機能を持つデータ収集システムを開発していく場合、まずは「センサー」「LPWA」といった環境だけ準備し、事務所内で小規模なPoCを行っていく形でも問題ありません。初めから実装してPoCを行うとなると、失敗した場合に再度挑戦する日を調整していくことが困難になります。
そこに大きな労力を割くことは合理的とはいえませんので、小さな目標をひとつずつ達成していくようにしましょう。
結果からPDCAを回す
PoCによって得られる結果は、必ずしもポジティブなものとは限りません。課題や問題点が多く見つかることもあります。ただ、ネガティブな結果は、本格的な開発を行う前の段階で課題を洗い出すための要素として非常に有益です。
そのため、PoCで得られた結果からPDCAを回していくことを意識すれば、より有効性が高まっていくと考えられます。
「PoC疲れ」で終わらせないようにする
「PoC疲れ」または「PoC貧乏」は、一連のPoCが連続して行われ、その結果として得られる知見や結論がプロジェクト全体の進行を阻害する状況を指します。
これは、PoCが適切な目的設定なしに行われ、結果的には大量の時間とリソースが浪費されるという事態を招く可能性があります。また、PoCの結果が十分に評価・活用されず、同じ問題に対する新たなPoCが繰り返し行われることも「PoC疲れ」の原因となります。
この状況を避けるためには、PoCの目的とゴールを明確に設定し、適切な範囲で検証を行うことが重要です。また、得られた結果を適切に評価・整理し、それを次のステップに活かすことで、PoCの効果を最大限に引き出すことが可能です。
PoCを活用している業界
ここでは、Pocを活用している業界について解説します。
各業界でどのように使用されているのかを知り、自社で有効に活用することができるか検討しましょう。
(1)IT業界
IT業界では、PoC(Proof of Concept)はシステム開発やセキュリティ構築の際に特に重要な役割を果たしています。IT業界におけるPoCの主な目的は、新しいシステムやソリューションが実際の環境でどのように機能するかを検証することです。
なかでも、セキュリティ構築の分野では、PoCは非常に重要です。
セキュリティ構築においては、「セキュリティ能力を実証できるか」という点と、「それによってコンピュータのセキュリティシステムが正常に作動するか」という点が重要な検証項目となります。
これにより、セキュリティシステムの安定性や耐障害性を確認することができます。
(2)医療業界
例えば、分子標的薬剤を創薬する際、PoCは想定通り作用しているか否かを証明する根拠になります。
分子標的薬剤が人間に投与された後、生体試料(腫瘍組織、血液、尿など)を採取し解析することにより、標的分子の状況を投与前と投与後で比較することにより検証することができます。
PoCでDXを加速させよう
PoCはできる限り現場に近い環境で実施していくことが大切です。それは「PoCに関わる人」にも言えることで、実際にシステムを使用していく人がプロジェクトに関わらなければ、現場の課題を解決していくことも難しくなります。企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)を加速するためにも、適切な戦略でPoCを進めていくことが重要になるでしょう。
なお、AIsmileyではPoCの見積もりやベンダー比較をお手伝いしております。PoCの実施をご検討の際は、ぜひお気軽にお問い合わせください。
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