デザインワン・ジャパンが生み出す新たな価値 ChatGPTのAPIを活用した新規事業とサービスの未来
最終更新日:2024/01/29
AI(人工知能)の技術が急速に発展し、世界中のさまざまな業界やビジネスシーンでもAIが浸透しつつある。しかし、日本ではイメージと実際にできることの間に溝があり、AI導入は道半ばにあるのが現状だ。ChatGPTのAPI連携で新規事業やサービス開発を行うデザインワン・ジャパン(以下、DOJ)代表取締役社長の高畠靖雄氏とAI技術とビッグデータを活用し、企業との共同研究プロジェクトを複数進行している明治大学理工学部情報科学科教授の高木友博氏に、生成系AIがビジネスの未来をどのように変化させるのか語ってもらった。
※本記事は株式会社デザインワン・ジャパンの寄稿記事です。
生成系AIを業務で上手く活用することで仕事の質が向上する
――画像や音声、テキストなどコンテンツを簡単に生成できる生成系AIが登場し、ビジネスでの活用が期待されています。企業がAIを活用するにあたって、現状の生成系AIでできること、できないことを教えて下さい。
――高木氏
AIは言語理解や判断、予測といった人間的な活動をコンピュータ上で再現する技術です。訓練用のデータを学習して得た法則で予測や判断をする「機械学習」と、世界中のデータを学習した結果、テキストや写真、画像、音楽などのコンテンツを生成できるようになった「生成系」にAIは強みを持っています。
OpenAI社が開発した対話型言語生成ツール「ChatGPT」は入力した内容を理解して人間のような対話が可能です。GoogleやMicrosoftのような世界トップクラスの企業や日本のサイバーエージェントやベンチャー企業も独自の「生成系AI」を開発しており、ものすごい速度で進化しています。生成系AIの知識量は一人の人間をはるかに超えています。企画のアイデア出しや議事録作成のような新入社員レベルの仕事はAIに任せても問題ないでしょう。
――高畠氏
ChatGPTを使えばユーザーの心をつかむキャッチコピーやデータを活用した分析・調査もお手軽です。営業ツールや採用のアシスタント業務など、企業が蓄積しているノウハウとデータを活用すれば業務をかなり効率化することができます。セキュリティ面に十分配慮した上で、新しいテクノロジーを使って成果を出しているスタッフがいたら賞賛されるべきですね。
株式会社デザインワン・ジャパン 代表取締役社長
高畠 靖雄氏
――高木氏
反対に生成系AIは学習したデータに基づいて一方通行で出力するため、試行錯誤や論理的思考をすることができません。その点は人間がAIよりも優れている点と言えるでしょう。また、AIは専門的な知識を事前学習していないので特定のタスクに適応するには「ファインチューニング」と呼ばれる追加の学習をさせる必要があります。AIは人間よりもある部分は優秀ですが、計算機やそろばんと同じ1つの「アイテム」であることを忘れてはいけません。人間がきちんと使いこなせるかどうかが重要なんです。
――高畠氏
ChatGPTは偏った情報や誤った知識を身につけていると、事実に基づかない回答を生成することもあります。「ハルシネーション」と呼ばれ、最新モデルの「GPT-4」ではかなり改善されたと聞きましたが、”生成系AIの癖”をしっかり理解した上で活用した方が安全でしょう。
需要が急増している生成系AIを連携した企業のサービス開発
――DOJではChatGPTを連携させた開発や問い合わせが急増していると伺っています。具体的にどのようなお問い合わせや依頼が多いのでしょうか。
――高畠氏
ChatGPTのAPI連携で高度なやりとりができるチャットボットを作りたいというニーズは多いですね。お客様とのコミュニケーションはとても繊細ですし、時間や労力もかかります。人手不足や人件費も高騰している昨今、費用対効果の面をみても導入を検討する企業は多いと想定されます。新規事業として、弊社が所有している企業情報を元に販売促進を自動化するサービスや企業と企業のマッチング、マーケティングのサポート支援の準備を進めています。営業、マーケティング活動を誰でもある一定レベルまでAIが肩代わりできるようにしたいですね。
――高木氏
面白いですね。企業のセールスやプロモーションが自動化されれば、売る商品をブラッシュアップしたりスタッフの働き方改革にもつながりますね。
――DOJでChatGPTのAPI連携で新規事業創出の事例はどのようなものがありますか。
――高畠氏
弊社ではto B(企業向け)、to C(消費者向け)の新規サービス開発から、既存システムの連携まで幅広く対応しています。コールセンターやカスタマーサポートといった受付業務の自動応答システム、会議の議事録文書やプロジェクトの進行状況管理、社内ナレッジを共有化する仕組みなども開発実績があります。
――高木氏
私たちはプログラミングの作業を効率化したり、調査ツール代わりにChatGPTを活用しています。研究室では現在5つのプロジェクトに関わっており、新しい依頼はほとんど断っている状況ですが、ChatGPTに期待を抱き、ビジネスチャンスと捉えている企業から「こんなことできますか?」と相談を頂く機会も圧倒的に増えており、いろいろなところに新規事業創出の可能性があります。私たちも試行錯誤の連続ですが、充実した日々を送っています。
DOJが考える「生成系AI」の活用法
――システム開発に携わるDOJとして、生成系AIを今後どのように活用していきたいですか。
――高畠氏
日本は少子高齢化で労働人口が減少するため、社会全体として生産性を高めていかねばなりません。そのためにも生成系AIを活用して、商品の魅力を消費者に上手く伝えて売上をのばしたり、適材適所に人員を配置してコストを下げるツールやシステムを開発していきたいですね。
――高木氏
高畠社長の言う通り、業務を効率化し生産性を高めて人間はさらにクリエイティブな仕事ができるようにしていく必要があるでしょう。多くのクライアントさんのサービス価値を大きく向上できるように、生成系AIを部品として使いこなすシステムの開発が必要です。
株式会社デザインワン・ジャパン 取締役 明治大学 理工学部 情報科学科 教授
高木 友博氏
――ChatGPTが特にビジネスで活用しやすい理由はどういうところにありますか。
――高木氏
生成系AIが業務に必要なテキストや画像、音声の生成に対応していることだと思います。しばらくすれば画像からテキスト、音声から画像など複数の情報をもとに処理が可能な「マルチモーダル」な使い方も当たり前になるでしょう。
また、これまでは処理系をきれいに整理してからシステムを開発する必要があったのですが、今はいろいろなタスクを整理しないままChatGPTに任せ、システム側はそれらを使いこなせば良いだけなので、ビジネス領域でもコンピューターがカバーできる範囲が圧倒的に広まりました。
――高畠氏
自治体公認のVTuberがAI技術により対話できるようになったり、生成系AIから誕生したタレントの写真集が人気になったりと世界は大きく様変わりし、AIを世の中が受け入れつつあります。企業のビジネス活用にとどまらず、通訳サービスや栄養バランスの取れたレシピの自動作成など生成系AIが日常生活に溶け込むのも時間の問題ですね。
登壇者情報
株式会社デザインワン・ジャパン 代表取締役社長 高畠 靖雄氏
1975年、兵庫県高砂市生まれ。岡山大学大学院工学研究科修了後、富士通へ入社しスーパーコンピュータの研究開発、CRMソリューションソフト事業に携わる。2005年9月、すべての消費者の暮らしをより発見的で豊かなものにするために「世界を、活性化する。」というミッションを掲げ「デザインワン・ジャパン」を設立。2007年に地域の活性化をコンセプトにした口コミ型地域情報ポータルサイト「エキテン」をリリースし、2023年に16周年を迎えフルリニューアル。
株式会社デザインワン・ジャパン 取締役・明治大学 理工学部 情報科学科 教授 高木 友博氏
1954年、石川県金沢市生まれ。1979年東京工業大学大学院総合理工学研究科システム科学専攻修士課程修了。1983年同博士後期課程修了し、カリフォルニア大学バークレー校コンピュータサイエンス学科客員研究員に。1984年インターフィールズシステムズ、1988年松下電器産業に入社。1998年から明治大学理工学部情報科学科助教授、2000年同教授。計算型人工知能における世界的権威として、多数の大手企業との共同研究実績を有する。趣味はバイク。
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