新規材料を探すための実験回数をAIで「半分以下」に削減するアルゴリズムをハカルスが開発
最終更新日:2024/02/05
HACARUSは、東京工業大学・物質理工学院の中山亮特任助教、一杉太郎教授との共同研究の成果を用いて、「実験計画アルゴリズム」を開発しました。新規材料を発見するための実験回数を、条件によっては従来の半分以下に削減できます。
このAIニュースのポイント
- HACARUSは、東工大物質理工学院の中山特任助教、一杉教授との共同研究の成果を用いて「実験計画アルゴリズム」を開発
- AIが自ら重要なデータを抽出して学習と推論を行う「スパースモデリング」を活用
- 新規材料を発見するための実験回数を、条件によっては従来の半分以下に削減
株式会社HACARUS(ハカルス)は、東京工業大学・物質理工学院の中山亮特任助教、一杉太郎教授との共同研究の成果を用いて、「実験計画アルゴリズム(手順)」を開発しました。
このアルゴリズムは、新規材料を発見するための実験回数を、条件によっては従来の半分以下に削減できます。AIが自ら重要なデータを抽出して学習と推論を行う「スパースモデリング」を活用したのが特長で、新材料開発に要する時間と費用の削減に貢献。
「SDGs(持続可能な開発目標)」や「脱炭素社会(温室効果ガス排出量の実質ゼロ)」の達成を目指す上で、マテリアル(材料)研究開発は未来社会の要となっています。今回開発した独自AIにより、工場や自動車の二酸化炭素排出削減に必要な材料から、電子機器に用いる希少金属代替材料まで、幅広い分野で新規材料をより効率的に探し、人だけでは成しえなかった材料の開発が期待できます。
スパースモデリング:AIを支える手法は複数あり、このうち「ディープラーニング(深層学習)」は、AIが自ら結論を導き出すための「モデル(計算式)」を作り上げるまでに、大量のデータが必要です。その一方で、「スパースモデリング」は、データの中に潜む本質的な違いに注目して「モデル」を作り上げるため、少量データに対しても有効な手法として知られています。
マテリアル分野における諸外国との競争激化を背景として、材料開発の効率化に向けて、AIの手法(機械学習など)を活用した合成条件最適化に近年注目が集まっています。
これまでの材料開発においては、AIを活用する場合においても、温度や圧力、原料の比率など多数の合成パラメータ(実験条件)の中から、材料を研究する科学者の知識や経験に基づいて、入力する合成パラメータを絞り込む必要がありました。これは金銭的・時間的コストを減らすため、現実的な実験回数で最適化を完了する必要があるためです。
今回、ハカルスのスパースモデリング技術を活用し、必要な実験回数を大幅に低減することに成功しました。
四つの合成パラメータを調整する実験をするとします。従来の手法では、この四つの合成パラメータをそれぞれ均等に扱って、探索を行っていました。新アルゴリズムでは、この四つのうち一つの合成パラメータについては材料特性の変化がほとんどない場合、その合成パラメータを探索の対象から自動的に取り除き、実験総数を従来の2分の1程度に削減します。
さらに、二つの合成パラメータが特性に大きな影響を与えない場合は、実験総数を3分の1程度に削減できることを確認しました。これは、不要な合成パラメータを事前に取り除いた場合と同等の実験回数に相当します。しかし、一般に不要かどうかは事前にわからないので、専門家の判断を基に使用する合成パラメータを決定しますが、本手法を使用することで合成パラメータの吟味がそもそも不要となり、実験回数の削減も期待できます。
これまでの材料開発では、材料科学者の知識や経験に基づき、事前に合成パラメータを絞り込む必要がありました。過去に、電気を通す「導電性プラスチック」や送電ケーブルやリニアモーターカーへの活用が期待される「超伝導体」の開発において、研究者の常識や先入観を覆す予想外の発見(セレンディピティ)がありました。
そのため、専門家の勘や経験によって、合成パラメータを絞り込むのではなく、本手法を使用してなるべく多くの合成パラメータを検討することで、より広大な探索空間を扱うことができるため、新材料の発見が期待できます。
本手法に基づいて実験を繰り返すことで、合成パラメータの重要度を推定できます。この重要度と材料科学の専門家の判断との違いが明確になるため、差を埋めるための新しい理論の構築にも役立つとみられます。その差をなくしていければ、結果的に材料科学の専門家の判断の質向上につながります。
出典:PR TIMES
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