UX（ユーザーエクスペリエンス）とは？UIとの違いやデザイン作成のポイントを解説

最終更新日:2025/01/30

UXとは？

スマートフォンを使うときやお気に入りのアプリを起動するとき、Webサイトを閲覧するときなど私たちは日々、意識せずともテクノロジーとの関わりの中で様々な「体験」をしています。この「体験」の質を表す言葉が「UX（User Experience）」です。

製品やサービスを使う際の満足度や使いやすさ、感情的な響きまで、ユーザーを取り巻くあらゆる体験を包括する概念として、今やビジネスの成功を左右する重要な要素となっています。本記事では、このUXの基本的な考え方から、なぜ今それが重要視されているのかまでを詳しく解説していきます。

UX（ユーザーエクスペリエンス）とは

UX（ユーザーエクスペリエンス）とは、製品やサービスを利用する際にユーザーが得る総合的な体験のことを指します。

例えば、コーヒーショップでの体験を考えてみます。店内の心地よい香りやバリスタの丁寧な接客、使いやすいモバイルオーダーアプリや居心地の良いデザイン、そして美味しいコーヒーの味わい。これらが全て一つのUXを形成しています。

デジタルサービスでは、スマートフォンアプリの使いやすさやWebサイトの見やすさ、目的の情報に辿り着くまでのわかりやすさなども重要なUXの要素です。良いUXは、ユーザーに満足感や喜びをもたらし、そのサービスや商品のファンになってもらうための重要な要因となります。

ユーザーの期待を超える体験を提供することで、ビジネスの成功にも直結するのです。

UXとUIの違い

UXとUIは密接に関連していますが、その範囲と目的は異なります。UI（ユーザーインターフェース）は製品やサービスとユーザーを繋ぐ接点そのものを指し、例えばスマートフォンアプリのボタン配置や文字の大きさ、色使いやアイコンのデザインなどが該当します。

一方、UXはそれらのUIを含めた体験全体を包括する概念です。例えば、ECサイトでの買い物を考えてみましょう。商品を探しやすい検索機能や見やすい商品写真、分かりやすい決済ボタンといった要素はUIですが、商品を見つけてから購入完了までの一連の流れがスムーズで満足できたか、という体験全体がUXとなります。

つまり、UIは優れたUXを実現するための重要な構成要素の一つといえます。使いやすく魅力的なUIデザインは、より良いUXの実現に貢献します。

UXが重視される3つの理由

UXが重視される理由は、現代のデジタル化が進む社会において、単に機能を提供するだけでなく、ユーザーが製品やサービスと触れ合う際の体験全体が重要視されるようになったためです。

UXが重視される主な理由を3つ挙げると、以下のようになります。

商品そのものよりも体験への価値が上がっている
顧客の多様化が進んでいる
ロイヤルカスタマーの獲得につながる

商品そのものよりも体験への価値が上がっている

現代社会では商品やサービスの機能的な違いが小さくなり、その商品を使用する際の体験の質が、選択の重要な判断基準となっています。例えば、スマートフォンの基本的な機能は各メーカーで大きな差がなくなっていますが、使用時の心地よさや直感的な操作性、感動を与えるような体験が製品の価値を大きく左右します。

また、サブスクリプションサービスの普及により「所有」から「利用」へと消費者の価値観が変化しており、継続的な利用を促すためには優れたUXが不可欠です。音楽配信サービスを例にとると、楽曲の品質だけでなく、好みの音楽との出会いやすさやプレイリストの使い勝手、シームレスな再生環境など、総合的な体験の質が重要になっています。

このように、UXは製品やサービスの差別化要因として、そして顧客満足度と継続的な利用を促進する要素として、ますます重要性を増しています。

顧客の多様化が進んでいる

デジタル技術の進化とライフスタイルの変化により、顧客の価値観や行動パターンは著しく多様化しています。

例えば、同じ商品を購入する場合でも、実店舗で商品を手に取って確認したい人・スマートフォンで手軽に注文したい人・詳細な商品情報を比較検討してから判断したい人など、様々なニーズが存在します。このような多様化する顧客に対して、画一的なサービスでは十分な満足を提供できなくなってしまいます。

UXが重要視される理由は、顧客一人ひとりの行動や感情を深く理解し、それぞれにあった最適な体験を設計できるためです。優れたUXを提供することで、多様な顧客層それぞれの期待に応え、継続的な利用や信頼関係の構築につながります。

特にデジタルサービスでは、顧客との接点が増える中で、きめ細やかな体験設計がビジネスの成否を左右する重要な要素となっているのです。

ロイヤルカスタマーの獲得につながる

UXが重視される大きな理由は、優れたユーザー体験の提供がロイヤルカスタマーの獲得に直結するためです。

例えば、あるECサイトで商品を探す際、スムーズな検索機能や詳細な商品情報、スピーディーな決済手続き、そして丁寧なアフターフォローまでが一貫して優れていれば、ユーザーはその心地よい体験を通じて「このサイトなら安心して買い物ができる」という信頼感を抱きます。

この信頼感は、次回の買い物時に同じサイトを選択する動機となり、継続的な利用につながります。さらに、素晴らしい体験を得たユーザーは、自然とその体験を周囲に共有したくなり、口コミによる新規顧客の獲得にもつながります。

このように、優れたUXは単なる一時的な満足度向上だけでなく、長期的な顧客との信頼関係構築において極めて重要な役割を果たすのです。

UXを向上するためにやるべきこと

UXを向上させることは、現代のビジネスにおいて非常に重要です。ユーザーが製品やサービスをより快適に、そしてより効果的に利用できるよう、様々な施策を講じることが求められます。

UXを向上するためにやるべきこととして、以下の5つをご紹介します。

ユーザー視点で考える
ターゲットを分析する
競合サービスと比較してデザインを考える
ゴール（目標）を設定する
定量的な評価・検証を繰り返す

ユーザー視点で考える

UXを向上させるためには、常にユーザーの立場に立って考えることが不可欠です。

例えば、飲食店の予約サイトを作る場合、開発者やデザイナーの視点ではなく、実際に予約をするユーザーが何を求めているのかを深く理解する必要があります。空席状況がひと目でわかる表示・予約完了までの最小限のステップ数・直感的な操作性など、ユーザーが抱える課題や不便さを丁寧に洗い出し、それらを解決する機能を実装していきます。

また、実際のユーザーから定期的にフィードバックを集め、使用時の困りごとや改善要望を把握することも重要です。このように、サービスを利用するユーザーの行動や感情に寄り添い、その視点から継続的に改善を重ねることで、真に価値のあるUXを実現できます。

ターゲットを分析する

UXを向上させるための第一歩は、ターゲットとなるユーザーを深く理解することです。

例えば、育児中の母親向けのサービスを開発する場合、実際の育児の現場でどのような課題を抱えているのかや子育ての合間のどの時間帯にサービスを利用するのか、片手で操作する必要があるのかなど、具体的なシーンや行動パターンを詳しく分析する必要があります。

このためには、アンケート調査やユーザーインタビュー、実際の利用状況の観察など、様々な方法でデータを収集します。さらに、年齢層・生活環境・デジタルリテラシーのレベルなども考慮に入れることで、ターゲットユーザーにとって真に価値のある、使いやすいサービスを設計することができます。このような綿密な分析がUX向上の基盤となります。

競合サービスと比較してデザインを考える

UXを向上させるためには、競合サービスとの比較分析を通じて自社のデザインを戦略的に考える必要があります。

例えば、音楽配信サービスを提供する場合、主要な競合他社のアプリがどのように楽曲を表示し、どんな検索機能を備え、プレイリストの作成をどう設計しているかを詳しく調査します。その上で、競合サービスの優れている点を参考にしながらも、「より直感的な操作」や「パーソナライズされたレコメンド機能」など、自社ならではの独自の価値を付加することが重要です。

ただし、競合の模倣に終始するのではなく、ユーザーの潜在的なニーズや不満点を深く理解し、それらを解決するデザインを目指すことで競争優位性のあるUXのを実現できます。

ゴール（目標）を設定する

UXを向上させるためには、明確なゴール設定が不可欠です。

例えば、ECサイトであれば「商品購入までのステップを3クリック以内に抑える」「カートの放棄率を現状の30%から20%に下げる」といった具体的な数値目標を定めることが重要です。

しかし、単なる数値目標だけでなく「初めて訪れたユーザーでも迷わず目的の商品に辿り着ける」「決済時の不安や疑問をゼロにする」といった、ユーザーの感情や行動に基づいた質的なゴールも設定する必要があります。

これらのゴールは必ずユーザー視点で設定し、定期的な分析と改善を通じて段階的に達成を目指します。明確なゴールがあることで、チーム全体が同じ方向を向いて改善に取り組むことができ、効果的なUX向上が実現できるのです。

定量的な評価・検証を繰り返す

UXの向上には、ユーザーの行動や反応を数値化した定量的な評価・検証を継続的に行うことが不可欠です。

例えば、ECサイトであれば、商品ページの滞在時間やカートへの追加率、購入完了までの離脱率などのデータを収集・分析します。アプリであれば、特定の機能の使用頻度・エラー発生率・ユーザーの操作パターンなどを追跡します。

これらのデータを基に、「なぜこのページで離脱が多いのか」「どの機能が使いにくいと感じられているのか」といった課題を特定し、改善策を実施します。そして改善後も、継続的にデータを収集・比較することで、変更が実際にユーザー体験の向上につながったかを検証します。

このPDCAサイクルを繰り返すことによって、より効果的なUXの実現が可能となります。

よくある質問

ここからは、UXについてよくある質問に回答していきます。

優れたUXの特徴

優れたUXの特徴は、ユーザーが直感的に理解し、快適に利用できる予想が組み合わさっている点です。

具体的には、以下のような特徴が挙げられます。

シンプルで分かりやすいデザイン
ユーザー目線を考えたサイト設計
操作のしやすさ・利便性

まず、シンプルで分かりやすいデザインにより、ユーザーは必要な情報や機能に迷うことなくアクセスできます。例えば、大手ECサイトでは商品検索バーが目立つ位置に配置され、カテゴリー分類も明確で、視覚的な情報が整理されています。

また、ユーザー目線を考えたサイト設計では、商品詳細ページから購入完了までの動線が最適化され、必要最小限のステップで目的を達成できます。さらに、スマートフォンでの快適な操作性やページの読み込みの速さなど、利便性を高める工夫が随所に施されています。

これらの要素が調和することで、ユーザーはストレスを感じることなく、スムーズにサービスを利用できるのです。

UX改善の成功例

UX改善の成功例を2つ紹介します。

サブスクリプション型の音楽配信サービスにおける成功例では、ユーザーの音楽の好みを分析し、パーソナライズされたプレイリストを自動で作成する機能を導入しました。これにより、ユーザーは新しい音楽との出会いを楽しみながら、より深い音楽体験を得られるようになり、サービスの継続利用率が大幅に向上しました。

また、大手コーヒーチェーンのモバイルオーダーアプリでは、注文履歴からよく利用するメニューを学習し、次回の注文をワンタップで完了できる機能を実装。さらに、店舗での待ち時間をリアルタイムで表示することで、ユーザーの時間を効率的に活用できるようになりました。食料品のデリバリーサービスでは、配達時間の正確な予測システムと商品の鮮度保証という価値を組み合わせることにより、顧客満足度を著しく向上させることに成功しています。