GENIACとは?国内生成AI・国産LLM開発プロジェクトの参加企業・支援内容を解説
最終更新日:2024/11/21
生成AIの開発に興味のある方、GENIACプロジェクトについて知りたい方必見です。本記事では、国内の生成AI開発力強化を目的としたGENIACプロジェクトの概要から、参加企業、支援内容、今後のスケジュールまで詳しく解説します。
最後まで読めば、GENIACプロジェクトへの理解が深まり、日本の生成AI開発の現状と展望が見えてくるはずです。
GENIACとは
GENIAC(Generative AI Accelerator Challenge)は、経済産業省が2024年2月に立ち上げた国内の生成AI開発力強化プロジェクトです。生成AIの核となる基盤モデル開発に注力し、日本の開発力底上げを目指します。
具体的には、GPUなどの計算資源提供、利活用企業やデータホルダーとのマッチング支援、グローバルテック企業との連携支援、コミュニティイベントの開催、開発される基盤モデルの性能評価などを実施。官民一体で生成AI開発を加速させる国家プロジェクトと言えるでしょう。
GENIACプロジェクトの目的
GENIACプロジェクトは、日本の生成AI開発力強化を大目標に掲げています。現在、米国や中国など海外勢が生成AI開発を牽引する中、日本の存在感は薄れつつあります。そこで、国を挙げて開発支援に乗り出し、日本発の革新的な生成AIを生み出すことを目指すのがGENIACプロジェクトです。
特に基盤モデルの開発力は、生成AIの利用可能性やイノベーションの幅を左右する重要な要素。GENIACプロジェクトでは、計算資源提供やマッチング支援などを通じて基盤モデル開発の加速を図り、日本の国際競争力強化につなげていく方針です。
GENIACプロジェクトの参加企業
GENIACプロジェクトの公募は既に終了しており、以下の事業者が採択者として参加しています。
【GENIACプロジェクト 採択事業者】
事業者名 | 取り組みの内容 |
株式会社ABEJA | 企業のDX推進を支援。日本語LLMの精度向上とコストパフォーマンス改善に注力 |
Sakana AI株式会社 | トップレベルの研究者が創設。小規模モデルの連携で環境適応型AIを目指す |
大学共同利用期間法人 情報・システム研究機構 | 日本語に強い大規模言語モデル構築に取り組む |
ストックマーク株式会社 | 自然言語処理を活用した意思決定支援。130億パラメータの日本語LLMを公開 |
Turing株式会社 | 完全自動運転EVを手掛けるスタートアップ。日本の交通環境に適したマルチモーダルAIを開発 |
国立大学法人 東京大学 | 多様な日本語能力の向上を目指す公開型基盤モデル開発を推進 |
株式会社Preferred Elements | 1000億パラメータの画像・音声対応マルチモーダル基盤モデル開発に着手 |
株式会社ELYZA | 企業向けにLLMをベースとしたプロダクト・ソリューションを提供 |
株式会社Kotoba Technologies Japan | 世界に先行し、音声における基盤モデル技術の研究開発を行う |
富士通株式会社 | 「Fugaku(富岳)-LLM」をはじめとする基盤モデルの開発、複数の生成AIモデルを組み合わせる混合技術と、安心して業務活用するためのトラスト技術の研究開発を行っている |
株式会社AIdeaLab | AIとアイデアを組み合わせたプロダクト開発を行うスタートアップスタジオ。画像生成や議事録作成支援などの革新的なサービスを展開。 |
AiHUB株式会社 | AI技術を用いたプラットフォームを提供。企業の業務効率化やデジタル化を支援することに特化 |
AI inside株式会社 | AI-OCR技術を中心に業務自動化やデータ活用を進める企業 |
株式会社EQUES | AIとIoT技術を融合したスマートホームソリューションの開発 |
NABLAS株式会社 | AIと量子コンピューティングの融合による新しい計算技術の研究開発 |
株式会社Preferred Networks | 深層学習技術の研究開発に注力。自動運転やロボティクスなど多様な分野でAIソリューションを提供 |
SyntheticGestalt株式会社 | 合成生物学とAI技術の融合による新しいバイオテクノロジーの開発 |
ウーブン・バイ・トヨタ株式会社 | 自動運転やモビリティサービスの研究開発。「ウーブン・シティ」プロジェクトを中心に活動 |
株式会社オルツ | 対話型AIソリューションや個人アシスタントの開発。人々の日常生活や業務効率化を支援 |
国立研究開発法人海洋研究開発機構 | 海洋科学技術の研究開発とその応用によって地球環境問題への貢献を目指す |
カラクリ株式会社 | チャットボットなど対話型AIソリューションによる顧客対応業務の効率化支援 |
株式会社データグリッド | 高度な機械学習アルゴリズムによるデータ解析サービスを提供 |
ヒューマノーム研究所 | 人間中心設計(HCD)とAI技術を融合した製品やサービスの開発 |
フューチャー株式会社 | ITコンサルティングおよびシステムインテグレーションサービスを通じ企業DXを推進支援 |
株式会社リコー | 多様なオフィスソリューションや産業向け製品・サービス提供によって業務効率化と生産性向上に寄与 |
株式会社ユビタス | 高度なクラウドゲームプラットフォームの開発と提供により、新しいエンターテインメント体験の創出 |
株式会社Deepreneur | ディープラーニング技術による革新的なプロダクトやサービス開発 |
参考:
経済産業省|GENIAC
経済産業省|GENIACコミュニティKick Offイベントを開催!|GENIAC通信|GENIAC
GENIACプロジェクトの支援内容
GENIACでは、最大の目的である生成AIの開発力強化を図るために、以下の要素の支援を行っていきます。
支援内容 | 概要 |
計算資源の提供 | 生成AIのコア技術である基盤モデルを開発する上で確保しなければならないGPUなどの調達を支援する(2024年2月に計算資源提供者としてMicrosoft Azureを採用) |
データ活用の促進 | データ活用に向けた支援プログラムなどを通じて、ユーザーなどデータ保有者との連携を促進する |
ナレッジの共有 | イベントやコミュニケーションツールによって、国内外の開発者同士や政府の各種制度担当者との交流を促進する |
参考:
経済産業省|GENIACコミュニティKick Offイベントを開催!|GENIAC通信|GENIAC
経済産業省|GENIACにおける計算資源の提供支援について、計算資源提供者としてMicrosoft社を選定し、追加公募を開始しました
GENIACコミュニティの活動内容
GENIACプロジェクトでは、採択事業者以外の開発者も交流・情報共有できるコミュニティを立ち上げる予定です。具体的には、勉強会やセミナーの開催、Slack等を活用した開発ノウハウの共有、開発企業と利活用企業のマッチングイベントなどを企画。日本の開発力底上げに向けて、オープンイノベーションを推進していく方針です。
GENIACコミュニティでは以下3つのコンセプトが掲げられています。
【GENIACコミュニティのコンセプト】
- 共有知の在り方を作る
開発事業者間での情報知見を共有し、積極的なコミュニティの発信を行う - パートナーシップの在り方を創る
実際にAIを利用する企業、基盤モデルの上でアプリケーション開発を行う企業とのマッチングイベントを開催する - ルールの在り方を創る
社会実装を進める上で、どういった規制やルールがハードルになるのかを検討、提言する
参考:経済産業省|GENIACコミュニティKick Offイベントを開催!|GENIAC通信|GENIAC
現在予定されているGENIACコミュニティの主な活動内容として以下のようなものがあります。
【GENIACコミュニティの活動内容】
活動内容 | 概要 |
グローバルテック企業・アカデミアを招いたセミナーの実施 | 基盤モデルの開発を行う企業を招いて、どのような基盤モデルの開発しているのか今後の展望を共有し、ディスカッションを実施 |
開発者間でのノウハウの共有・議論を通じた相互支援 | 個別の議論の場、成果報告会など、一連の開発の中で得られた成功だけでなく、どのようなチャレンジや失敗があったか成果を発表 |
ベストプラクティスの収集・蓄積 | Slackを使い、知見やノウハウを共有、ディスカッションして、そのやり取りをベストプラクティスとしてNotionに蓄積 |
開発企業ー利用企業・アプリケーション企業等とのマッチング | 社会実装に向けて、エンドユーザーや開発事業者とのマッチングイベントを実施 |
参考:経済産業省|GENIACコミュニティKick Offイベントを開催!|GENIAC通信|GENIAC
コミュニティへの参加には審査と同意が必要となり、募集開始はGENIACサイトやニュースレター等で案内される見込みです。国内の生成AI開発者にとって、有益な交流・学習の場になることは間違いないでしょう。
GENIACプロジェクトの今後のスケジュール
GENIACプロジェクトは2024年2月にスタートしたばかりで、今後のスケジュールは以下の通りです。
出典:経済産業省|GENIAC
- 2月:第1期がスタート。7事業者の採択を発表。
- 4月:第1回有識者イベントを開催予定。
- 5月:マッチングイベントの開催を計画。
- 6月:第2回有識者イベント、LTイベントを開催予定。
また、3月18日には第1期の追加公募が締め切られたものの、今後も新たな募集が行われる可能性は十分にあります。最新情報はGENIACサイトやニュースレター等で随時アップデートされるため、こまめなチェックがおすすめです。
日本の生成AI開発は、GENIACプロジェクトを追い風に大きく前進しようとしています。ぜひプロジェクトの動向を注視していきましょう。
まとめ
GENIACは、デジタル技術を活用したイノベーションの創出を目指す企業向けの支援プロジェクトです。大企業とスタートアップのオープンイノベーションを促進し、新規事業の創出や社会課題の解決を目的としています。プロジェクトには、大手企業やベンチャーキャピタルなど多様な企業が参加しており、資金調達やビジネスマッチング、メンタリングなどの支援を提供します。
また、参加企業間の交流を深めるためのGENIACコミュニティを運営し、セミナーやワークショップ、交流会などを開催しています。今後は、支援プログラムの拡充や国内外への展開を予定しており、イノベーション創出のプラットフォームとしての役割を強化していく方針です。
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