エッジAIとは?クラウドAIとオンプレミスの違いやメリット・デメリットを解説
最終更新日:2024/02/14
AI技術の発展に伴い、近年はさまざまな業界でAIが導入され始めています。医療や工業といった分野だけでなく、一見AIとは無縁のように思える農業や漁業といった業界でもAIを活用するケースが多くなってきているのです。そのため、AIは私たちの日常生活に浸透しつつある存在と言っても決して過言ではありません。
そのような中で、近年とくに注目を集めているのが「エッジAI」です。エッジAIは自動車の自動運転などに欠かせない技術のひとつであり、今後さらに注目される存在になっていくことが予想されます。そこで今回は、エッジAIの基本的な情報を詳しく解説していくとともに、今後エッジAIの活躍が期待される分野についてもご紹介していきますので、ぜひ参考にしてみてください。
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エッジAIとは?
エッジAI(Edge AI)とは、その言葉からも分かるように「端」を意味するもので、端末機械や無線基地局などを指した言葉です。そのため、「スマートフォン」や「IoTの電化製品」などがエッジAIに該当します。
エッジAIは、技術の発達とともに増大していくデータをリアルタイムに処理するためには欠かすことのできない技術です。特に近年はIoT化が加速している状況ですので、極めて重要な役割を担っている技術といえるでしょう。
クラウドAIとは?
クラウドAIは、GoogleやAmazon、Microsoft、IBMといった企業がクラウド上で提供しているサービスのことを指します。
クラウドAIとエッジAIにはこのような違いがあるわけですが、クラウドには「膨大な量の学習データを蓄積した上で、CPUとGPUのパワーによって高速処理を行い学習モデル構築できる」というメリットがあることから、多くの企業がクラウド上でのサービス提供を行ってきていました。
また、最近ではIoTが普及し始めたことにより、状況も少しずつ変わりつつあります。IoTの普及により、端末が無線通信でデータ収集することも可能になり、クラウドに自動でアップしていく環境が整い始めているのです。ただ、こういったクラウドが前提のものでも、必ずしもメリットばかりというわけではありません。データ量が増加するにつれて通信料も高額になってしまうからです。
そして何より、データによってはクラウドにアップすること自体がハイリスクなものも存在します。機密情報などをクラウドにアップするのは、やはり危険を伴うと言わざるを得ないでしょう。
それに加え、よりスピーディーな処理が求められる場合、ネットを介して処理する必要があるクラウドでは時間がかかってしまう傾向にあります。そのため、近年は少しずつ端末側で高速処理を行う「エッジAI」への注目度が高まってきているのです。
エッジコンピューティングとオンプレミスの違い
近年多くの人が活用し始めている「IoT」の分野において、エッジコンピューティングという言葉を耳にする機会が多くなりました。
このエッジコンピューティングとは、クラウドの普及に伴って情報量が増大することで生じる「レスポンススピード」「通信コスト」といった課題を解決するためにクラウドとオンプレミスをうまく連携させるという考え方のことです。
製造業の現場などでは特にリアルタイム性が求められるため、このエッジコンピューティングの考え方は非常に重要なものといえます。
エッジAIとIoT
先ほどもご紹介したように、スマートフォンやスマートスピーカー、カメラ、車、冷蔵庫、洗濯機といったIoTデバイスにおいて、エッジAIは不可欠な存在といえます。膨大な量のデータを処理するためには、エッジAIの技術が必要だからです。
クラウドAIでは時間がかかってしまうような分析であっても、エッジAIであれば迅速に行えるというメリットもあります。ただし、エッジAIは推論に使用するデバイスのパワーが限られているので、行える計算にも限界があります。
エッジAIのメリット・デメリット
エッジAIにはどのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか。エッジAIによって得られるメリット・デメリットを詳しくみていきましょう。
エッジAIのメリット
リアルタイムでの判断が可能
エッジAIを活用する最大のメリットともいえるのが「リアルタイムでの判断が可能」という点です。エッジAIは、AI処理を端末で行うため、クラウドAIのようにタイムラグが生じることはありません。そのため、端末制御、状況把握といった迅速さが求められる作業において重宝されています。
通信コストを削減できる
先ほどもご紹介したように、エッジAIは端末側で処理を行います。そして、学習に必要となるデータだけをクラウドへと送信していくため、余計な通信コストを削減することが可能です。端末内のデータをすべて送るクラウドAIよりも通信コストを抑えられる点は、大きなメリットといえるでしょう。
セキュリティを強固にできる
エッジAIは、推論(端末)と学習(クラウド)が異なる場所で行われるという特徴があります。そのため、情報漏洩のリスクが懸念されるデータに関しては、端末内に留めておくことが可能です。
また、インターネットを経由せずに処理が行われるので、ネット環境の脅威に晒される心配もありません。
エッジAIのデメリット
処理能力には限界がある
エッジAIは端末で処理を行っていくため、大規模なデータの処理は難しいというデメリットがあります。また、推論と学習が異なる場所で行われるという特徴もあるため、高度な処理には適していません。
運用のハードルが高い
「端末にAIを搭載する」というエッジAIの特性上、運用のハードルは決して低くありません。システムの設計や保守運用は難しくなるため、専門の知識を持つ担当者がいない企業にとってはハードルが高くなるでしょう。
エッジAIの利用シーンと活用事例
エッジAIは、実際にどのような場所で活用されているのでしょうか。ここからは、エッジAIの利用シーンと活用事例を詳しくご紹介していきます。
自動車の自動運転
エッジAIの活躍が特に期待される利用シーンの代表として挙げられるのは、自動車の自動運転です。自動運転は、近い将来実現することが予想されていますが、この自動運転はエッジAIの「高速処理」があるからこそ実現できる技術だと言われています。
自動運転の仕組みとしては、AIが画像認識によって前方車両や歩行者、信号などの情報を取得し、適切な判断を下していくというものです。ただし、自動車は時速40km以上のスピードで走行する場面も多いため、わずか0.1秒の判断の遅れが命取りになる可能性も決して少なくありません。そのため、歩行者が車道に飛び出してきたときや、車同士が衝突しそうになったときにネット越しでデータ処理を行っていては、その状況を瞬時に判断することができないのです。
また、自動運転を安全に続けるためには、走行状況の変化にも臨機応変に対応していかなければなりません。たとえば、自動車のタイヤが磨耗した場合、その自動車の運動形態に変化が生まれる可能性があります。そのため、タイヤの磨耗具合に応じた走行を行うための学習が必要になるわけです。
このように、自動運転のデータ処理においては特に「リアルタイム性」が求められるため、できる限り現場近くでデータ処理する必要があります。そこで注目を集めたのがエッジAIだったのです。
自動運転を行う車にエッジAIを搭載すれば、その車が自ら画像を解析した上で判断することができるようになります。そのため、クラウドAIでは課題とされていた通信のタイムラグをなくすことができるわけです。
製造業でのロボット活用
製造業においても、エッジAIは積極的に活用され始めています。その代表例とも言えるのが、産業用ロボットです。産業用ロボットにエッジAIを導入すれば、リアルタイムでの推論が可能になるため、より的確な情報把握によって制御を行えるようになるのです。
少子高齢化に伴う人手不足によって、ロボットによる自動化が期待されている昨今、産業用ロボットへのエッジAI導入は、極めて大きな価値をもたらすといえるのではないでしょうか。
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収穫予測でスマート農業化
一見AIとは関係性が薄いように思える農業分野においても、エッジAIは活用され始めています。その一例として挙げられるのが、エッジAIカメラによる収穫予測です。エッジAIを搭載したカメラを活用することによって、より確実な収穫予測を行ったり、気候のモニタリングや予測を行ったりすることが可能になるのです。
農業でも人手不足は深刻化しつつあるため、このような形で業務効率化・生産性向上を図れるようになることは大きなメリットといえるのではないでしょうか。
金融業界はATM操作の異常検知などに活用
金融業界でもエッジAIは活用され始めています。その一例として挙げられるのは、北洋銀行の一部店舗で実施された「エッジAIを活用したソリューションによる振り込め詐欺対策」です。
エッジAIを搭載したカメラによって、電話をかけながらATM操作を行う人を検知し、銀行職員へ通報するという仕組みにより、振り込め詐欺の予防に繋げていきます。また、このソリューションではカメラ映像を録画せずに分析するため、プライバシー情報漏洩のリスクが減少するというメリットもあるそうです。
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ドローンの自動操縦
エッジAIは、ドローンでも活用されています。エッジコンピューティングを搭載することによって、より高度な自動操縦を実現しているのです。
エッジAIには、通信のタイムラグが少ないという特徴があるため、障害物を自動検知して避けたり、素早く状況を判断して写真撮影を行ったりすることができます。そのため、ドローンによって農作物のチェックを行ったり、イベント時のセキュリティ強化に繋げたりすることも可能なのです。
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スマートフォンのデータ送信量を必要最小限に
多くの人に利用されているスマートフォンも、エッジAIの活用事例の一つといえるでしょう。たとえば動画などの容量が大きなデータを扱う場合にインターネットに出す前の段階でデータを処理することによって、必要最小限のデータのみの送信に留めることが可能です。
人流解析で顧客管理
エッジAIは、日々多くの人が訪れる商業施設でも活用されています。商業施設では、エッジAIを活用して人流解析することで、人の流れや人数を把握しているのです。
どのような人の流れがあるか、どれくらいの人数が来店するのかを把握することができれば、新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐためのヒントも得られるようになります。より安心して顧客が来店し、混雑を避けながらも楽しくショッピングを行える環境を整える上で、非常に重要な技術といえるでしょう。
エッジAIの開発企業
Googleでは、2019年に150ドルのワンボードコンピュータ「Coral Dev Board」を発表し、大きな注目を集めました。この「Coral Dev Board」は、エッジでAIを利用するためのワンボードコンピュータであり、低電力消費デバイス向けの機械学習アクセラレータである「Edge TPU」が搭載されています。
Apple
Googleと並び、エッジAI開発企業の代表格といえるのがAppleです。エッジAIに取り組むスタートアップXnor.aiを約220億円で買収するなど、エッジAI事業にも精力的に取り組んでいます。
Xnor.aiの買収によってデバイス上で機械学習に必要なプロセスの処理が行われるようになる可能性も秘めており、大きな期待が寄せられている状況です。
Microsoft
Microsoftも、積極的にエッジAIの開発を進めている企業の一つです。2018年には、エッジとクラウドのAIを開発する新しいテクノロジを発表したことで大きな注目を集めました。
Microsoftが2018年に発表したAI for Accessibility プログラムは、5 年間にわたる 2,500 万ドル規模のプログラムであり、世界の10 億人超の障碍のある人々の能力拡大のために活用していくことを目指しています。
NVIDIA
NVIDIAでは、「より高速でスマートな世界を創造すること」を目標に、エッジでのAI向けソリューションの開発に力を注いでいます。小売業、製造業(工場現場)といったビジネスシーンだけでなく、交通安全にもエッジAIの活用を広げていくことを想定しており、さまざまな形で業務効率化や安全性向上などに貢献しています。
マクニカ
(参考:株式会社マクニカ)
半導体、ネットワーク、サイバーセキュリティ、AI/IoTにおけるトータルサービスを提供している株式会社マクニカも、エッジAIの開発を行っています。2020年には、アドバンテック、Allxonの2社と共同で、さまざまな環境における大規模なエッジAIリモート管理を実現したことにより大きな注目を集めました。
このソリューションでは、Windows/Intel以外も含むマルチプラットフォームのリモート管理を実現することができます。
コニカミノルタ
コニカミノルタでは、「エッジAIカメラ MOBOTIX 7シリーズ」を中心に、エッジAIに関連する事業を展開しています。コニカミノルタが長い歴史の中で築き上げてきた各事業が、それぞれの強みとして育てた「画像技術」に、AI・IoTの技術を組み合わせることによって、「画像技術によるデータ活用」という点で強みを持ったサービスプロバイダーへと進化を遂げています。
そんなコニカミノルタの技術は、労働安全、動体カウント、密検知といったさまざまな目的で活用されている状況です。
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フツパー
(参考:はやい・やすい・巧い AIを。|株式会社フツパー Hutzper)
大阪府大阪市に本社を置く株式会社フツパーは、「最新テクノロジーを泥臭く民主化する」をモットーに、画像認識エッジAIサービスを展開している企業です。
眼の役割を担う画像認識エッジAIモデル「Phoenix Vision」や、エッジAI特化型のSaaSである「Phoenix Insight」など、エッジAIを軸としたさまざまなサービスを展開しています。
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EDGEMATRIX
(参考:EDGEMATRIX株式会社|エッジマトリクス)
東京都渋谷区に本社を置くEDGEMATRIX株式会社は、エッジAIの導入、管理、拡張を手がけている企業です。デバイス、サービス、セキュリティ対策、設置工事といった業務をワンストップで提供しています。
映像をAIで分析する技術を中心にさまざまなサービスを展開しており、エッジAIの導入・運用をサポートする企業として大きな注目を集めています。
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エッジAIの課題と未来
エッジAIは、さまざまな業界でのAI導入が加速する現代において、非常に重要な役割を担う存在であることがお分かりいただけたでしょう。非常に大きな可能性を秘めているエッジAIですが、現状ではまだ「デバイスのパワーが限られるため行える計算には限界がある」という課題もあることを忘れてはなりません。
とはいえ、AIの技術は今も進化し続けていますので、将来的にはこの課題も解決される可能性があるでしょう。どのような形でエッジAIが進化を遂げていくのか、ますます目が離せません。
エッジAI導入して課題を解決しよう
今回は、エッジAIの仕組みやメリット・デメリットについてご紹介しました。さまざまなメリットがある一方で、まだまだ進化の余地がある「デメリット(課題)」も存在することがお分かりいただけたのではないでしょうか。
なお、AIsmileyでは、エッジAIサービスの利用料金・初期費用・無料プラン・トライアルの有無などを比較検討することができる資料を無料でお配りしています。エッジAIサービスの利用を検討される際は、ぜひお気軽にご活用ください。
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