DX(デジタルトランスフォーメーション)とは?意味や推進方法までわかりやすく解説
最終更新日:2024/02/29
「DX(デジタルトランスフォーメーション)を始めたいが、何をすれば良いかわからない」
「従来のIT化とDXは何が違うのか」
このような疑問を持つ方々に向けて、この記事ではDXの基本から、その必要性、そして成功への具体的なステップをわかりやすく解説します。DXとは単なるデジタル技術の導入ではなく、ビジネスモデルそのものを変革するプロセスです。DXの全体像を理解すれば、より効果的にDXを推進できるでしょう。
DX(デジタルトランスフォーメーション)とは
DX(デジタルトランスフォーメーション)とは、AIやIoTなどのデジタル技術を活用し、企業の業務プロセス、製品、サービス、ビジネスモデル、組織文化を一新し、競争力を強化する変革プロセスです。
企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること
引用元:経済産業省「デジタルガバナンス・コード2.0」
もう少しわかりやすく説明すると、企業が急速に変わるビジネス環境に適応するため、データと最新のデジタル技術を使って、顧客や社会の要望に応じた新しい製品やサービスを開発することです。これにより、仕事のやり方、組織の構造、企業の文化も変わり、他社との競争で優位に立つことができます。
DXを推進する目的
DXを推進する目的は、ビジネスプロセスの効率化、顧客体験の向上、新たな価値創造を通じて企業の競争力を高めることにあります。
具体的には、デジタル技術を活用して業務を自動化し、時間とコストを削減すること、データを分析して顧客のニーズをより正確に捉え、満足度を向上させること、また、これまでにない新サービスやビジネスモデルを開発することです。
これらの取り組みにより、企業は持続可能な成長を実現し、変化する市場環境の中でも生き残ることが可能となります。
DXを推進する必要性
DXを推進する必要性は、デジタル化が進む現代社会において、企業が生き残り、成長を続けるためには避けられない課題となっているからです。
技術革新のスピードが加速する中、従来のビジネスモデルや運営方法では、顧客の期待に応えることが困難になり、市場競争での不利が生じます。
また、働き方改革や環境への配慮など社会的要求の変化に対応するためにも、DXは不可欠です。デジタル技術を活用することで、企業は柔軟かつ迅速にこれらの変化に対応することが可能となり、持続可能な社会の実現にも貢献できます。
日本におけるDXの推進状況
令和5年の時点で、日本におけるDX推進に取り組んでいる企業は50%を下回っており、特に中小企業を中心にDXへの取り組みが遅れている状況です。これは、資金や人材、知識の不足が主な原因とされています。また、企業文化の面で、変化を恐れる風潮やデジタル技術への理解不足も障壁となっています。
このようにDX推進において後れを取っていることは、国際競争力の観点から見ても大きな課題であり、政府や産業界によるさらなる支援や啓発活動が求められています。日本企業がグローバル市場で競争力を保つためには、DX推進への積極的な取り組みが不可欠です。
DX化とIT化・AI活用の違いとは
DX化、IT化、AI活用はよく混同される言葉ですが、それぞれ異なった意味があります。
用語 | 意味 |
DX化 | デジタル技術を活用してビジネスモデルや業務プロセスを根本的に変革し、新たな価値を創出すること。 |
IT化 | 情報技術を導入して業務の効率化や自動化を図ること。 |
AI活用 | 人工知能技術を利用してデータ分析や意思決定を自動化し、業務の質や速度を向上させること。 |
DX化とIT化の違い
IT化は、主に業務の効率化や自動化を目的として、情報技術を導入することを指します。一方、DX化は、IT化を進めることに加え、デジタル技術を駆使してビジネスモデル自体を変革し、新たな顧客体験や価値を創出することを目指します。
IT化が業務プロセスの改善にフォーカスしているのに対し、DX化はより広範な視点から企業全体の変革を目指しています。
DX化とAI活用の違い
AI活用は、人工知能の技術を利用して特定の問題を解決することに焦点を当てています。これに対し、DX化はAI技術を含むさまざまなデジタル技術を活用して、企業のビジネスモデルや業務プロセス全体を変革することを意味します。
つまり、AI活用はDX化の一環として行われることが多く、DXの範囲はAI活用を超えて広がります。
DXの推進で活用されるデジタル技術
DXの推進に用いられるデジタル技術は、のAIの他にも多数あります。
種類 | 概要 |
AI(人工知能) | データ分析や意思決定プロセスを自動化し、業務の質と速度を向上させます。 |
クラウド | 柔軟かつスケーラブルなITリソースを提供し、ビジネスの迅速な拡張とイノベーションを支援します。 |
IoT | デバイスや機器をインターネットに接続し、リアルタイムでのデータ収集と分析を可能にします。 |
ICT | 情報のデジタル化と通信技術を組み合わせ、遠隔地でもスムーズなコミュニケーションと情報共有を実現します。 |
RPA | 情報のデジタル化と通信技術を組み合わせ、遠隔地でもスムーズなコミュニケーションと情報共有を実現します。 |
DXを推進するうえでの課題
企業がDXを推進する際に直面する主な課題は、以下のようなものがあります。
- 老朽化した既存システムの刷新
- IT人材の育成および活用
古くから使用している既存システムを刷新し、IT人材を育成する必要があります。これらの課題に対する対応として、最新のデジタル技術への投資と、デジタルスキルを持った人材の確保が求められます。
老朽化した既存システムの刷新
多くの企業では、古いシステムが業務プロセスの効率化を妨げる大きな障壁となっています。これらのシステムを最新の技術に置き換えることは、DX推進の基盤を固めるために不可欠です。この過程では、システムの選定から導入、従業員へのトレーニングに至るまで、綿密な計画と実行が必要となります。
IT人材の育成および活用
DXを成功させるためには、デジタル技術を理解し、活用できる人材が不可欠です。IT人材の不足は、DX推進の大きな障害となり得るため、人材の内部育成や外部からの確保が重要です。また、従業員が新しい技術を積極的に学び、応用できる文化の醸成も、DX成功のためには欠かせません。
DX推進は、これらの課題に対して継続的に取り組むことで、企業を成長させ、競争力を強化することが可能です。
自社でDXを推進する方法
企業がDX化(デジタルトランスフォーメーション)を推進するには、以下の手順を踏むことが望ましいです。
- 自社の現状や課題を洗い出す
- DX化に適した人材と組織を構築する
- デジタルを用いて業務を効率化する
- 効果の測定・分析・改善をする
- ビジネスモデルを変革する
いきなり社内全体をデジタル化するのではなく、計画的かつ段階的にDX化を進めることが重要です。ここからは、DXを進める手順について詳しく解説します。
ステップ1:自社の現状や課題を洗い出す
自社の現状を把握して課題を抽出するために、まずは以下のことを実施します。
- 既存システムのデータ収集
- 従業員や顧客からのフィードバック
- SWOT分析
- 業務フローを視覚化してボトルネックを特定
- KPIによる業務効率化や成果の測定
- 市場や競合他社の分析
自社の現状や問題点を明確にすることで必要なリソースを適切に割り当てられ、効果的なDX戦略を計画できます。また、参入市場や競合他社を分析することによって、競争上の優位性を確立するための戦略立案が可能です。
現状や課題を洗い出す際は、全社的な視点で客観的に分析し、従業員の意見を取り入れることが重要になります。最新データの活用、外部意見の導入、技術面と従業員側のバランス、リスク管理にも注意が必要です。
ステップ2:DX化に適した人材と組織を構築する
DX化に適した人材と組織を構築するには、デジタルスキルを持つ人材の育成と採用、多様な専門知識を持つチームの形成が重要です。また、柔軟で革新的な思考を促進する組織文化の醸成、継続的な学習と成長を支援する環境の提供、異なる分野や部門のメンバーによる協力体制の奨励も不可欠となります。
【求められるDX人材の特徴】
- DX推進を主導するリーダーシップがある
- DXを企画立案して推進できる
- DXに関するシステム設計・実装ができる
- データ解析・分析ができる
- AI・ブロックチェーンなど先進的なデジタル技術を扱える
DX化に必要なデジタル人材を育成・採用して組織を構築するために、様々なスキルの専門家を集めて革新的な思考を促すことが重要です。また、継続的な学習やオープンなコミュニケーションができる環境作りも大切になります。
ステップ3:デジタルを用いて業務を効率化する
紙の文書、メモ書き、パンフレットなどの物理的な情報、あるいはFAXでのやりとり、請求書のファイル管理などのアナログ業務を、デジタル形式に変換します。これにより、データの効率的な管理、アクセス、分析が可能になり、業務の自動化や効率化が進みます。
具体的なデジタルツールの活用例には以下のものが挙げられます。
- 生成AIによるメールの自動返信
- OCR製品を用いた紙書類の電子化
- クラウドストレージを用いたペーパレス化
- 各種SaaSを用いた業務のデジタル化
- RPAを用いた定型業務の自動化
デジタルツール導入時のポイントは、既存業務を細かく分析し、予算や作業の進めやすさなどを考慮した上、適切なツールを選定することです。スピーディにデジタル化を進めるために、すでに使っているツールやシステムもうまく活用しましょう。
ステップ4:効果の測定・分析・改善をする
データを定期的に収集・分析をして、設定した目標とKPI(重要業績評価指標)に対する進捗状況を把握しましょう。また、分析結果をもとに、業務プロセスの改善点を特定し、必要に応じて戦略や実装方法を調整します。
データによる効果測定と分析によって見つけた課題を、さらに改善するという一連のサイクルを繰り返すことで、デジタル化の効果を最大化させることが可能です。
ただし、データの解釈には慎重さが必要であり、単一の指標に依存せず複数の視点から分析することが重要になります。また、様々な変化に対して柔軟に対応できるよう、必要に応じて戦略や業務プロセスを迅速に調整しましょう。
ステップ5:ビジネスモデルの変革に繋げていく
収集して蓄積した社内データと市場分析をもとに、顧客ニーズや市場動向をさらに深く掘り下げていきます。そして、新しいビジネスモデルやサービスを創出し、従来のビジネスを再定義しましょう。たとえば、以下のことが挙げられます。
- ビッグデータを活用した製品・サービスの開発
- 生成AIで業務を自動化しコストを削減
- VR技術を使った仮想オフィスでのリモートワーク
ここで重要なのは、組織全体でのオープンなコミュニケーションと部門間を超えたチームワークの促進です。こういった企業風土を作っていくことで、革新的なアイデアを生み出せる文化が育ちます。
DXを推進してビジネスモデルを変革していくには、経営トップや経営陣の強いリーダーシップとともに、全従業員の理解が必要です。いかにして組織全体を巻き込みながら変革を進めていけるかがポイントになります。
自社のDX推進を成功させるためのポイント
スイスの国際経営開発研究所(IMD)が発表した「世界デジタル競争力ランキング2022」によると、日本はデジタル技術の利活用能力が29位と大きく遅れをとっています。また、経済産業省は「DXレポート」の中で、既存システムの問題を解決してデータ活用ができないと、2025年以降に年間最大12兆円の経済損失が出ると警鐘を鳴らしています。
そこで、企業がDX化を成功させるために、以下のポイントを踏まえてDXを推進していくことが大切です。
【DXを成功させるポイント】
- 部分的に段階的に導入する
- DX化の妨げとなる古いシステムから潔く脱却する
- 部署単位ではなく会社が一体となって行う
やみくもにデジタルツールを導入するだけではDX化には繋がりません。ここからは、企業がDXを成功させるために押さえておくべきポイントを解説します。
部分的に段階的に導入する
システム導入の失敗リスクを減らすため、まずは部署単位あるいは業務プロセス単位でデジタル化を進めることが望ましく、そこから徐々に拡大していくことで不具合や運用上の問題へ対応しやすくなります。また、従業員が新しいツールやシステムに慣れる時間を確保でき、変化への抵抗を減らすことも可能です。部分的で段階的な導入は、リソースの効率的な配分と持続可能な変革を実現するための鍵となります。
このように小さな成功体験を積み重ねていくことで、チームや従業員のモチベーションが向上し、より変革への意識が芽生えます。たとえ小さな成功であっても、大規模なDXプロジェクトへの信頼と支持を構築するのに役立ちます。
DX化の妨げとなる古いシステムから潔く脱却する
古いシステムは新しい技術やビジネスニーズに対応する柔軟性に欠けるだけでなく、業務プロセスの効率化や市場ニーズへのスピーディな対応ができません。イノベーションの促進には最新のテクノロジーが必要不可欠であり、古いシステムのままでは新しい製品やサービスの開発、ビジネスモデルの革新といったことが困難になります。
また、セキュリティリスクが高く、規制基準に準拠していない古いシステムは、情報漏洩やハッキングなどの問題を引き起こす恐れがあるだけでなく、システムを維持するにも多額のコストが必要です。
デジタル化が進む市場において、新しいシステムへの移行は市場での競争力を維持・拡大するために不可欠であり、古いシステムからの脱却はDX化における重要なステップとなります。
部署単位ではなく会社が一体となって行う
DXは単なるデジタル技術の導入ではなく、ビジネスモデルや組織文化の変革を伴うため、全社的なアプローチが必要です。部署単位での取り組みだと、異なる部門間での連携やデータ共有が不十分となり、効率的な業務プロセスの確立や全体最適化が困難になります。
また、DXは顧客体験の向上を目指すものであり、これを実現するためには、顧客接点を持つ部署だけでなく、製品開発、マーケティング、サポートなど、会社全体で一貫した戦略と実行が求められます。
さらに、会社全体での取り組みは、従業員のデジタルスキル向上やデジタルマインドセットの醸成にも寄与します。これにより、デジタル変革に対する理解と支持が組織全体に広がり、変革への抵抗を減らせます。
DX推進を評価されている企業の取り組み事例
経済産業省は、DXの推進に積極的に取り組む企業を表彰する「DX銘柄」を毎年発表しています。2023年度では、株式会社トプコンと日本郵船株式会社が「DXグランプリ企業2023」に選定されました。
企業名 | 業種 |
株式会社トプコン | 精密機器 |
日本郵船株式会社 | 海運業 |
参照:経済産業省|「DX銘柄2023」「DX注目企業2023」「DXプラチナ企業2023-2025」を選定しました!
これらの企業の取り組みを通じて、DX推進の成功事例とその学びを探ります。
株式会社トプコン
株式会社トプコンは、精密機器の製造販売を行う企業であり、DX推進によって業務プロセスの効率化と新たなビジネスモデルの創出を目指しています。同社のDX推進の背景には、市場の変化に迅速に対応するとともに、顧客ニーズを的確に捉えた製品開発を加速させる目的があります。
トプコンの取り組みでは、以下のポイントが特に注目されます。
【取り組みのポイント】
- デジタル技術を活用した新規事業の創出
- IoTやAIなどの先端技術を用いた製品やサービスの開発
- クラウドやビッグデータなどのデジタル基盤の整備
- DXに対応した組織や人材の育成
一例として、農業分野において、ドローンや衛星画像などを用いて、作物の生育状況や病害虫の発生を把握し、最適な栽培管理を支援する事業を展開しています。これは、農業の効率化や品質向上に貢献するとともに、農業者の負担を軽減することを目的としています。
参考:株式会社トプコン|トプコンのデジタルトランスフォーメーション(DX)
日本郵船株式会社
日本郵船株式会社は、海運事業を中心とした総合物流サービスを提供する会社です。同社は、DXの推進によって、海運業界のリーディングカンパニーとしての地位を確立し、社会に貢献することを目指しています。
日本郵船株式会社の取り組みでは、以下のポイントが特に注目されます。
【取り組みのポイント】
- デジタル技術を活用した海運事業の変革
- IoTやAIなどの先端技術を用いた船舶や港湾の運営の最適化
- クラウドやブロックチェーンなどのデジタル基盤の整備
- DXに対応した組織や人材の育成
海運事業において、デジタル技術を活用して、需要や供給の予測や調整、価格や収益の最適化、契約や決済の効率化などを行う「デジタル海運プラットフォーム」を構築しています。このプラットフォームは、海運市場の透明性や流動性を高めるとともに、顧客の利便性や満足度を向上させることを目的としています。
まとめ
DXは、AIやIoTなどのデジタル技術を活用し、企業の業務プロセス、製品、サービス、ビジネスモデル、組織文化を一新する変革プロセスです。従来のIT化と異なり、DXは全体的な変革を目指します。
DXの進め方として、現状分析、適切な人材・組織の構築、デジタルツールの活用、効果の測定・分析・改善、ビジネスモデルの変革が挙げられます。そして、成功のためには、段階的な導入、古いシステムの脱却、全社的な取り組みが重要です。
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