AI鑑定とは?人工知能を活用し偽物を見破る真贋鑑定サービスの事例を紹介
最終更新日:2024/04/11
ファッション業界において、模倣品問題は古くから問題視されてきました。とくに最近は模倣品のクオリティも高くなっており、見分けるのが難しくなりつつあるのです。
そのような中で、偽物を高い精度で見破ることができるとして、AIを活用した真贋鑑定サービスに大きな注目が集まり始めているのをご存知でしょうか。今回は、AIを活用した真贋鑑定サービスの仕組みについて詳しくご紹介していきますので、ぜひ参考にしてみてください。
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偽物は増加傾向にあり、輸入差止点数が7年ぶりに100万点超え
(参照:KANTE(カンテ)-ブランド品やジュエリーのプレミアムフリーマーケット)
2020年8月18日、株式会社コメ兵(KOMEHYO)は、本物か偽物かを見極める真贋判定に加え、モデル名や型式などの判定も可能とするAIを開発したと発表しました。8月25日からKOMEHYO名古屋本店に導入されており、今後も順次拡大予定としています。
財務省が2020年3月6日に発表した「令和元年の税関における知的財産侵害物品の差止状況」によれば、近年は偽物(知的財産侵害物品)の日本への流入が増加傾向にあり、2019年には輸入差止点数が7年ぶりに100万点を超えたそうです。とくに近年は、オークションサイトやフリマアプリが普及したことで個人間取引のハードルが下がっているため、知らぬ間に偽物を手にしてしまうという可能性も決して少なくありません。
実際に、KOMEHYOが運営している「KANTE(カンテ)」という鑑定機能付きフリマアプリでは、真贋判定機能の「KOMEHYOカンテイ」サービスを希望した購入品の約1割が偽物と判定され、出品者に差し戻されているといいます。ただ、KOMEHYOの鑑定士は真贋チェックだけでなく「モデル名や型番の特定」「状態チェック」「買取金額の算出」「買取金額の説明」といった業務もすべて1人で手がけているため、その負担は決して小さなものではありません。
そこで、鑑定士の負担を軽減させるべく開発されたのが、今回発表されたAIというわけです。買取業務において顧客との会話が発生しない「真贋チェック」「モデル名や型番の特定」といった業務をAIがサポートしていくことで、スタッフは別の業務に力を注ぎやすくなるといいます。
とくに、顧客の不安や疑問を解消するための「コミュニケーション」は、人間でなければ行えないものなので、コミュニケーションに注力できるという点は大きな魅力といえるのではないでしょうか。
ファッション業界でもAIが偽物チェックを行うサービスが登場
(参照:FAKE BUSTERS|スニーカーやアパレルの真贋鑑定サイト|ホーム)
偽物チェックを行うAIサービスは、模倣品が多いとされているファッション業界でも登場しています。そのサービスというのが、IVA株式会社が開発した「FAKE BUSTERS(フェイクバスターズ )」です。
ファッションにおいては、ブランド品を中心に多くの模倣品が安価で取引されており、ブランド価値にも悪影響を与えてしまっています。また、模倣品のクオリティは年々高くなってきているため、専門知識を持たない消費者では偽物かどうかを見極めるのが難しくなってきているのです。
このような問題を解決すべく開発されたのが「FAKE BUSTERS(フェイクバスターズ )」であり、このサービスでは独自のテクノロジーを用いて高い精度で真贋チェックを行うことが可能です。海外ユーザーからの需要もあり、現在は日本語だけでなく英語、簡体中国語、繁体中国語にも対応しています。
サービスとしては、画像で鑑定を行う「クイック鑑定(550円〜)」と、実物を郵送して鑑定する「コンプリート鑑定(2,200円〜)」という2つの種類が用意されており、現時点ではナイキ、アディダス、Yeezy、コンバース、プーマ、New Balance、Supreme、OFF-WHITE、BALENCIAGAといったブランドが対象です。
鑑定士とAIを掛け合わせることで鑑定の精度がさらに向上
画像で鑑定を行うことができる「クイック鑑定」では、膨大なデータベースをもとに開発されたAIの活用と併せて、経験を積んだ鑑定士をブランドごとに配置するというチーム編成で、1点ずつ細部に至るまで徹底的に鑑定します。
また、実物を郵送する「コンプリート鑑定」では、クイック鑑定の業務フローをさらに強化し、スニーカーの素材や重量といった部分まで細かく計測を行うことで、より正確に鑑定していくわけです。さらに、チームを編成して行われていた鑑定を「鑑定士全員による鑑定」に切り替えることで、鑑定結果の精度を高めていくといいます。
IVA株式会社では、これまでに数多くの鑑定を行ってきたことから膨大な「鑑定データ」が蓄積されているそうです。だからこそ、そのデータを教師データとして活用したAIを実現させることができたといえるでしょう。このデータベースは鑑定を重ねるごとにアップデートされていくため、今後も継続的に鑑定の精度は高まっていくと考えられます。正規品と非正規品のデータをそれぞれ大量に保有しているからこそ実現できるものなのです。
ただ、いくつか課題も残っており、とくに「製造上の品質差」を見分けるのが難しいという点は、大きな課題となっているといいます。正規品でも、やはり多少の品質差はあるため、それを本物と見極めることは簡単ではありません。基本的にAIは過去に学習した正規品の情報をもとに、「正規品との違い」を見つけ出していくことで真贋チェックを行うので、品質差が大きい製品に関しては、真贋チェックを行うのは難しいと言わざるを得ないでしょう。
ただ、だからこそAIだけに鑑定を任せるのではなく、「鑑定士×AI」という形で人間とAIが助け合う体制を整えることで、AIの弱点を補うことが可能になります。そのため、今後もAIは「鑑定士の仕事をサポートする役割」を担っていく可能性が高いのではないでしょうか。
鑑定士とAIはお互いをサポートする関係へ
今回は、AIを活用して偽物を見破る真贋鑑定サービスの仕組みについて詳しくご紹介しました。近年は模倣品のクオリティも高くなってきているため、購入者が見分けるのは難しくなってきていますが、AIを活用したサービスを利用すれば高い精度で鑑定できるということがお分かりいただけたのではないでしょうか。
ただ、いくらAIでも100%の精度で真贋チェックを行うことはできませんので、今後は鑑定士とAIがお互いをカバーしていく体制が一般的になっていくかもしれません。進化を続けるAIがどのような形でアパレル業界に貢献していくのか、今後の動向にも注目が集まります。
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