人工知能が医療分野を変革?AIによる医療診断の仕組みとは?
最終更新日:2024/04/04
近年は、IT業界のみならず、製造業や農業、漁業といったさまざまな分野にもAI・人工知能が活用され始めています。それは、医療の分野も例外ではありません。
日本では少子高齢化が加速しており、今後さらに医療の分野における人手不足は深刻化していくことが予測されています。
そのような中で、AIは一体どのような形で活用されていくのでしょうか。また、AIが医療の現場で活用されることにより、具体的にどのような変化が期待できるのでしょうか。今回は、AIによる医療診断の仕組みと、その仕組みによって期待できる効果について詳しくご紹介していきます。
医師の診断をサポートするAIの仕組みとは?
冒頭でもご紹介したように、今後は少子高齢化の加速が進み、医療分野における人手不足も深刻化していくことが予想されています。そのため、医療分野で活用できるAIの開発に着手している企業も少なくありません。
たとえば、株式会社エムネス(以下、エムネス)では、医師の画像診断をサポートするAIの開発が行われています。これは、AIが画像分析を行い、脳動脈瘤やアルツハイマーの疑いがある可能性を見極めていくというものです。画像を読み取って脳の体積を推定していくため、脳がどの程度収縮しているのかも判断することができるといいます。
ちなみに、エムネスが開発した画像診断システムは、クラウドともつながっていため、医師が遠隔で操作し、診断していくことも可能です。そのため、今後さらに増加するであろう「医師不足」の解消も期待できるのです。特に、地方や発展途上国などは医師が不足するケースも多いため、この画像診断システムの活用によって医療格差が縮まることには極めて大きな価値があるといえるでしょう。
AI活用により夜間在中の人員削減も可能に
また、医療施設における夜間在中の人員削減という点においても、AIが大きな役割を果たしています。2018年に介護報酬が改定されたことにより、「見守り機器」が導入されていれば、関連施設における夜間在中の人員を削減することができるようになったからです。そしてこの「見守り機器」こそが、AIの技術を活用することで実現されているものになります。
凸版印刷は、その「見守り機器」を提供している企業のひとつであり、特に見守りが難しい傾向にある「個室」に特化した見守りサービスを開発しています。その仕組みとしては、複数のセンサーを搭載することで施設内の利用者の転倒などを即座に検知できるようにするというものです。
ただ、基本的に医療施設ではネットワーク通信を利用した機器が多数使用されているため、電波干渉を受ける可能性が極めて高い状況であり、それが導入にあたっての大きな課題となっていたといいます。そこで、凸版印刷では低消費電力広域ネットワークのZETA(ゼタ)という電波を活用。この電波の活用によって、他の医療機器からの電波干渉が少なくなり、クラウドやオンプレミスで情報を管理したり、確認したりすることが可能になったのです。
具体的な設置場所としては「トイレ」「シャワー室」「お風呂」などが該当し、それぞれの個室内に人感センサーや開閉センサーを設置することで、利用者の状況を適切に把握していくといいます。そして、そのセンサーで得た情報がクラウドやオンプレミスに蓄積されていき、ナースステーションなどでも確認することができるようになるという仕組みです。
凸版印刷が提供しているサービスに導入されている「ZETA」という電波は、他のワイヤレス医療機器で使用されている通信帯域とは異なる帯域で通信を行うため、これまでの診察や看護などに影響を及ぼすことがありません。そして、このサービスにはAIが搭載されているため、これまでに蓄積した検知パターンを学習し、緊急時の早期発見(容態急変)を検知するスピードを向上させていくことができるのです。
AIの活用により、これからの医師に求められるようになるものとは?
このように、AIが医療診断をサポートする存在になっていった場合、多くの医療関係者の負担は軽減されていくことが期待できます。しかし、それはあくまでもAIを適切に使いこなしていることを前提とした場合の話に過ぎません。AIを適切に使いこなすことができなければ、これまで以上に医療関係者の負担が増してしまう可能性さえあるのです。そのため、あくまでもAIは「補助ツール」という位置づけで活用していくことが大切になるでしょう。
もちろん、AIを活用すれば高い精度で画像を分析していくことも可能になりますが、最終的な判断を下すのは医師に他なりません。また、画像の分析だけではなく、患者の顔色や受け答えのスピードなども踏まえた上で、総合的に判断することが求められます。患者の顔色や受け答えのスピードなどはAIが判断できる部分ではないため、やはり総合的な診断結果は医師が行わなくてはならないということです。
また、診断を踏まえた上での「治療方法」に関しても、複数存在するケースは多々あります。その複数存在する治療方法の中から、どの治療方法を選択していくかの判断は、患者と医師のコミュニケーションによって生まれるものになります。そのため、人とのコミュニケーション能力に優れているわけではないAIでは、治療方法を判断していくことは難しいと言わざるを得ないのです。このような部分に関しても、AIは「補助ツール」という位置づけで考える必要があるでしょう。
ただし、「抗がん剤の投与を決めた後の、適切な抗がん剤の選択」などであれば、AIが行っていくこともできます。そのため、「AIに任せられる部分」と「AIには任せられない部分」の棲み分けを明確にしていくことが大切になるわけです。
AIは、計算をしたり、データを分析・予測したりする作業を得意としますが、創造性が求められる作業は得意ではありません。一方の人間は、計算やデータ分析などの能力はAIに劣るものの、創造性を必要とする作業やコミュニケーションが求められる作業はAIに勝ります。
こういった強み、弱みをしっかりと理解した上で、適切な業務にAIを活用していくことこそが、医療分野における人手不足問題の解消にもつながっていくのではないでしょうか。
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