外観検査装置とは?AIを用いた外観検査装置との違い・仕組み・カメラ選びの重要性・導入事例を解説
最終更新日:2024/10/23
製造業における品質管理の重要性が高まる中、外観検査の自動化に注目が集まっています。外観検査は、製品の見た目や表面の状態を確認し、欠陥や異常がないかをチェックする工程です。しかし、人手による検査では、検査員の疲労や個人差によって検査品質がばらつくことがあります。そこで、外観検査の自動化を実現するのが、外観検査装置です。
本記事では、外観検査装置の基本的な仕組みや導入するメリット、導入時の注意点などを詳しく解説します。
外観検査装置とは
外観検査装置とは、製品の外観を自動で検査できる装置です。カメラ、赤外線などのセンサー、画像処理技術を駆使し、従来の目視による外観検査を自動化します。これにより、製品のキズや異物混入などの異常を検出し、品質保証を支援します。
外観検査とは
外観検査は、製品や部品の外観上の欠陥や不具合を確認する検査工程です。キズ・バリ・欠け・変形など、視覚で識別できる異常を対象に、良品と不良品を判定します。
外観検査の目的
- 不良品の市場流出防止
- 不具合の原因特定と品質改善
外観検査で見る主な欠陥
- 食品パッケージの穴や異物
- 金属や樹脂部品のキズや汚れ
- 布の汚れや縫製不良など
外観検査は「見る・観る・視る・診る・看る」という5つの「みる」を用いて、製品の良否判定から不良の原因分析まで幅広く実施されます。
従来の目視検査は、人手不足や検査品質のバラつきなどの課題がありました。これに対してAIを活用することで、検査の自動化・高精度化が進み、これらの課題に対処できるようになっています。
AI外観検査装置の役割
外観検査装置は、製造プロセスにおいて品質管理を担う重要な役割を果たしています。主に、以下の点で製造業の効率化と品質向上に貢献しています。
人為的エラーの削減
従来の目視検査は人間の技能に依存するため、エラーの発生リスクが高くなります。外観検査装置は一貫した基準で製品をチェックし、人間によるミスを減らします。
長時間にわたる検査
機械は人間のように疲れることがないため、長時間にわたる安定した検査が可能です。これにより、製品の品質チェックが常に高精度で行われます。
コスト削減と品質の向上
外観検査装置の導入により、労働コストを削減し、欠陥品の早期発見による無駄を防ぐことができます。これにより、製品の品質を一貫して保つことができるため、ブランドの信頼性向上にもつながります。
AI外観検査装置の仕組み
AIを活用した外観検査装置の仕組みは、以下の要素で構成されています。
- 画像取得
- 画像処理
- ディープラーニングによる欠陥検出
- 分類
画像取得
高解像度カメラやその他のセンサーを使って、検査対象の製品画像を取得します。特定の照明条件やカメラアングルを調整することも重要です。
画像処理
コンピュータビジョン技術を使い、取得した画像から重要な特徴を抽出します。ノイズ除去・エッジ検出・コントラスト調整などが行われ、AIが製品の細部を正確に認識できるようにします。
ディープラーニングによる欠陥検出
大量の画像データを使ってAIモデルが学習を行い、欠陥のある製品を自動的に検出します。畳み込みニューラルネットワーク(CNN)が多く使われ、製品の表面の微細な傷や欠陥を見逃すことなく検出します。
分類
AIが製品の品質を評価し、合格品か不良品かを分類します。
AIによる外観検査とは
AI外観検査と従来の汎用画像センサには、判定方法や適応できる範囲に大きな違いがあります。従来の外観検査では、主に数値的な基準に基づいてOK/NGの判定を行いますが、AI外観検査は人間の感覚に近い柔軟な判断が可能です。以下にそれぞれの違いを詳しく説明します。
AI外観検査と従来の外観検査との違い
判定方法の違い
従来の汎用画像センサを用いた外観検査は、対象物の面積・色の濃さ・幅などを数値で計測し、事前に設定した閾値に基づいて判定します。
この方法は、明確に基準を定めやすく、例えば寸法や色の偏差など、数値で表現できる特徴に対しては効果的です。NG判定が下された場合、具体的な数値的根拠を示すことができるため、検査結果に対する説明もしやすいというメリットがあります。
一方、AI外観検査は、事前に学習データをもとに判定を行います。AIは機械学習により、過去の検査データを学習し、人間の目視に近い感覚で良品と不良品を区別します。
このため、閾値が曖昧な場合や、数値では表現しにくい複雑な欠陥にも対応できるという柔軟性があります。特に、人間が感覚的に行う官能検査のような場面においても、AIは有効に機能します。
メリットの違い
汎用画像センサを使った検査の最大のメリットは、NG判定時に具体的な数値的根拠を提示できることです。これは、寸法や色などで基準を設定する必要がある場合に強力なツールとなります。例えば、寸法が基準値を超えた場合や特定の色が基準外であるなど、数値的な証拠に基づいた検査が容易に行えます。
一方、AI外観検査のメリットは、人間による官能検査に近い判断ができる点にあります。従来の画像センサでは対応が難しい、良品のばらつきが大きい場合や複雑な形状のワークを扱う場面でも、AIは柔軟に学習して対応します。
また、学習データに基づいて判定を行うため、製品の品種が多い場合や、予測困難な不良の検出に優れいています。
デメリットの違い
汎用画像センサによる検査のデメリットとして、閾値が曖昧な状況には対応できないことが挙げられます。数値で明確に表せない欠陥や、不良の基準が変動する場合には、この方式は適しません。
また、良品にばらつきがある場合、設定した閾値が適用しにくく、誤判定が増える可能性があります。
反対に、AI外観検査のデメリットは、NG判定時に数値的な根拠を示すのが難しい点です。AIの判断は学習データに基づいているため、その結果がなぜNGとされたのかを明確に説明することが困難な場合があります。
特に、クライアントや上層部に対して検査結果を報告する際、数値的な説明が必要な場面では弱点となることがあります。
外観検査装置の導入時の注意点
外観検査装置を導入する際、いくつかの注意点があります。まず、最も重要なのは導入に伴うコストです。外観検査装置の導入は、評価、実証・検証、ライセンス、開発、導入ハード機器、サポートなど、様々な項目にわたって初期コストが発生します。これらの費用は、企業の財務状況に大きな影響を及ぼす可能性があるため、導入前に綿密な計画と予算の検討が必要です。
また、導入には手間もかかります。特に製品が複雑な形状をしている場合、AIと人で検査範囲を分担するなど、ルールの設定が必要になることがあります。さらに、誤検出を減らすためには、良品や不良品のサンプルを増やしてAIに追加で学習させる必要があります。
このような設定や調整には、専門的な知識が求められ、導入後も継続的な管理が必要になる場合があります。
外観検査装置の導入におけるカメラの重要性
外観検査装置の導入において、カメラは非常に重要な役割を果たします。カメラは、人間の目に相当し、製品や部品の表面にある欠陥や不具合を確認するために使用されます。このため、検査対象に適したカメラを選択することが重要です。
対象が動いている場合にはブレない高画質のカメラが、細かいキズや汚れを検出する場合には高解像度のカメラが必要になります。
また、カメラと同様に照明の選択も重要です。照明は、カメラによる検査の性能を左右し、検査対象物の特徴を正確に捉えるためには適切な光量と色温度の照明が必要です。例えば、細かいキズを見つけるためには青色の照明が、赤色の文字を検査する際には緑色の照明が有効です。
AI外観検査装置の導入事例
AI外観検査装置は、さまざまな業種の企業で導入されています。以下に、導入事例を紹介します。
- キューピー|惣菜の原料検査工程へのAI導入
- 清水建設|鉄筋継手の外観検査への画像認識AI導入
キューピー|惣菜の原料検査工程へのAI導入
キューピーは、惣菜の原料となるカット野菜の検査に、AIを活用した自社開発の原料検査装置を導入しました。この装置の導入により、カット野菜の検査工程が自動化され、作業効率が向上しました。特に、ポテトサラダなどに使用されるいちょう切りのニンジンの検査工程で、この技術が活用されています。
従来、人の目で行われていた検査は身体的負担が大きく、作業改善が必要でしたが、AI原料検査装置の導入により、効率的かつ人にやさしい工程が実現しました。この装置は、ディープラーニングを用いた画像解析により良品を選別し、「良品以外」を全て「不良」として検出することで、精度の高い検査を実現しています。
参考:キューピー|AIを活用した原料検査装置をグループに展開
清水建設|鉄筋継手の外観検査への画像認識AI導入
清水建設では、鉄筋継手の外観検査に画像認識AIをトライアル導入しました。この技術の導入により、施工現場での検査が効率化されています。スマートフォンを使用して鉄筋継手の画像を撮影し、画像認識AIが施工状態のOK/NGを判定します。これまで目視で行われていた検査と比較して、判定結果の精度が向上し、作業時間が短縮されるなど、多くの利点があります。
外観検査の項目のうち、5つを画像認識AIで代替し、検査時間を従来の1カ所あたり5分から20秒から30秒程度に短縮しました。
参考:IT Leaders|清水建設、鉄筋継手の外観検査に画像認識AIを導入、5分の目視検査を20~30秒に短縮
外観検査装置のサービス比較と選ぶポイント
外観検査装置のサービスを比較する際には、いくつかのポイントがあります。まず、検査要件に合ったソフトウェアの性能を確認することが重要です。AIの活用が進んでいる今日では、AIの学習プロセスと方法が検査要件に合っているかどうかが、検知精度に大きく影響します。また、サポートの有無も重要な判断基準です。
導入後に発生する可能性のある問題に対して、迅速かつ適切なサポートが受けられるかどうかが、装置の運用を安定させる上で重要になります。
次に、導入実績の多さも装置選択の重要なポイントの一つです。多くの導入実績がある装置は、他社での成功事例が多いことを示しており、トラブル発生時の対応がしやすいという傾向があります。
最後に、検査設定のしやすさも評価するべきです。検査設定が容易でない場合、設定作業が属人化し、特定の技術者に依存することになりがちです。これは、技術者の不在時に問題が発生するリスクを高めるため、思いどおりに設定が容易にできる装置を選ぶことが推奨されます。
まとめ
外観検査装置は、製品の外観を自動で検査する装置であり、カメラやセンサーを使って製品の画像を取得し、AIやディープラーニングによって不具合を判別します。
外観検査装置のサービスは多岐にわたるため、自社の要件に合ったサービスを選択することが重要です。導入前に、複数のサービスを比較検討し、コストパフォーマンスや導入実績、アフターサポートなどを総合的に評価することが望ましいでしょう。適切な装置を選定し、導入することで、品質向上と生産性向上の両立が期待できるでしょう。
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