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TensorFlowとは?特徴やメリットと活用事例を解説

最終更新日:2024/02/07

AI技術の進化に伴い、さまざまなサービスにAIが活用されるようになっています。そこで重要となるのが、迅速かつ効率的な開発に欠かせないフレームワークです。TensorFlowはAI活用に欠かせない機械学習を行うためのライブラリで、効率的なAI開発を可能にします。

本記事では、TensorFlowの概要、特徴、利用するメリットと注意点のほか、基本的な利用方法などについてお伝えします。

機械学習について詳しく知りたい方は以下の記事もご覧ください。
機械学習とは?種類や仕組み、活用事例をわかりやすく簡単に説明

TensorFlow(テンソルフロー)とは

AI開発に欠かせない機械学習のライブラリであるTensorFlowは、Googleが開発したものです。ここでは、そもそもTensorとはどのようなものなのか、開発の経緯やKerasとの関連性について解説します。

そもそもTensorとは

そもそもTensorFlowのTensorとは、機械学習に欠かせない多次元データの集合体です。数学の世界では、行列の概念として、0次元の配列を「スカラ(0階のTensor)」、1次元を「ベクトル(1階のTensor)」2次元を「行列(2階のTensor)」と呼びます。

たとえば、3人のプロ野球選手の年間ホームラン数で見てみましょう。

2020年度 2021年度 2022年度 合計
A選手 5本 20本 15本 40本
B選手 2本 12本 40本 52本
C選手 35本 42本 32本 109本
合計 42本 74本 87本 203本

この場合、ホームラン数がスカラ(0階のTensor)です。そして、年度ごとの3選手のホームラン数の合計もしくはそれぞれの選手の3年間のホームラン数の合計がベクトル(1階のTensor)になります。そして、3選手の3年間、すべてのホームラン数を見たものが行列(2階のTensor)です。

さらに、これが3選手ではなくもっと多い人数で年度も5年、10年と増えていけば取得できるデータは多次元に増加します。このデータの集合体がTensorです。

開発の経緯

Googleは以前より、クローズドソースでのディープラーニングフレームワーク開発を行っていました。ただ、2011年にかけて開発された「DistBelief」は、Google社内では一定の成果を出したものの、オープンソースとしての公開は、汎用性が低いとして見送られています。

そこで、Googleはオープンソースとして公開できる汎用性の高いディープラーニングフレームワークの開発を目指し、2015年にTensorFlowをオープンソースとして公開。さらに2017年には、TensorFlow1.0として正式版のリリースにこぎつけたのです。

ちなみにTensorという名は、その後、GoogleがAndroidスマートフォン、Google Pixelに搭載したSoCであるTensorの由来ともなっています。

TensorFlowとKerasの関連性

Kerasとは、ニューラルネットワークライブラリの一つで、TensorFlow上で動作します。ディープラーニングのベースとなる数学的理論部分を最初から開発する必要がなくなり、効率的な開発が可能です。

KerasもTensorFlow同様、Googleで開発されたライブラリで、ニューラルネットワークを自由に拡張し、カスタマイズを可能とするインターフェースになっています。

どちらもGoogleが開発していることから、関連性も高く、2017年にはTensorFlowがKerasのサポートを決定。さらにTensorFlowの最新版となる2.0ではKerasがTensorFlowに統合されました。

TensorFlowの特徴

TensorFlowの特徴として挙げられるのは、データの読み込みや前処理、計算・出力などの処理のすべてに前述したTensorを使い、データフローグラフを構築して処理することに特化している点です。

また一般的にAI開発で使われるPythonのコアライブラリのほか、C++のコアライブラリやJavaScript向けのライブラリも提供されている点も特徴といえるでしょう。

モバイルやIoT向けのTensorFlow LiteではAndroidだけではなくiOSでも利用できるなど、言語やデバイスを問わず利用できるのもTensorFlowの特徴の一つです。

ほかの特徴としては、kerasが統合されたことで複雑なモデル作成も可能になった点。効率的なデバッグを可能にするEager Executionの提供、アドオンライブラリの充実など、エンジニアのニーズに応じて自由にライブラリを選択できる点が挙げられます。

TensorFlowのメリット

TensorFlowを利用する主なメリットは次のとおりです。

利用者が多く困ったときの助けが多い

TensorFlowは、オープンソースであるうえ、Googleが開発していることもあり、世界中で多くの開発者が利用しているフレームワークです。

そのため、習得時に困ったことがあっても参考になる情報がWeb上にも多く公開されています。コミュニティもいくつもあるため、情報交換をしながら習得するのに適したフレームワークといえるでしょう。

GPU操作が不要で効率的な開発が可能

一般的にディープラーニングのライブラリには、その都度、GPUの処理が必要になるものも少なくありません。しかし、TensorFlowは元々GPUを使用する設定になっているため、都度、処理をする必要がなく、効率的な開発が可能です。

TensorFlowの注意点

TensorFlowを利用する際、いくつか注意しなくてはならない点があります。具体的には次のとおりです。

独特なソースコードを使用するため、慣れるまでに時間を要する場合がある

前述したようにTensorFlowは、データの読み込みや前処理、計算・出力などをTensorで情報管理しているため、特殊なソースコードを使用します。

一般的に使用されるソースコードとは異なるため、その理解と多次元配列に関する知識の習得など、慣れるまでに時間を要してしまう場合もあるでしょう。

高いマシンスペックが求められる

TensorFlowは、元々GPUを使用する設定となっているため、GPUを搭載したマシンでないと本来のパフォーマンスを最大限には発揮できません。スペックの高いマシンを用意しなければならないのは、TensorFlowを利用するうえで十分な注意が必要です。

TensorFlowとPytorchの違い

TensorFlowはGoogleが開発した機械学習のフレームワークですが、Pytorchは、Facebookが開発した機械学習のフレームワークです。リリースはTensorFlowのほうが1年早く、利用者もTensorFlowのほうが上回っています。

Pytorchの特徴は、通常のニューラルネットワーク構築に使われるライブラリが静的な計算グラフで設計されているのに対し、動的な計算グラフで設計されている点です。そのため、高い柔軟性があり、複雑なネットワークでも比較的容易に実装が行えるメリットがあります。主に研究分野でよく使われているフレームワークです。

Pytorchについては、下記記事で詳しく紹介しておりますのであわせてご覧ください。

PyTorchとは?特徴を解説

TensorFlowの利用方法

TensorFlowを利用するには、TensorFlowが利用できる環境を用意したうえで、インストールしなくてはなりません。ここでは、具体的な手順について解説します。

TensorFlowが利用できる環境

TensorFlowは基本的に環境を選びません。MacOS、Ubuntu/Linux、Windowsのどの環境でも利用可能(CPUは64bitのみ)です。また、モバイル環境においても、Android、iOS、Raspberry Piのどれでも利用できます。

利用する際は、GitHubのレポジトリからのインストール。モバイル環境ではGitHub上のモバイル機器向けに公開されているコードを使います。また、使用できるプログラミング言語はPython、C言語、C++です。

ただし、TensorFlow本来のパフォーマンスを最大限に発揮させるためには、GPUが搭載されている高いスペックのマシンを用意しなくてはなりません。

TensorFlowをインストールする

TensorFlowを利用できる環境を準備したら、次はTensorFlowのインストールを行います。2022年12月現在、TensorFlowのバージョンは2.0で、システム要件(すべて64ビット)、ソフトウェア要件は次のとおりです。

  • システム要件
    Ubuntu 16.04 以降 (64 ビット)
    macOS 10.12.6 (Sierra) 以降 (64 ビット) (GPU サポートなし)
    Windows ネイティブ – Windows 7 以降 (64 ビット)
    Windows WSL2 – Windows 10 19044 以降 (64 ビット)
    ソフトウェア要件
  • Python 3.7–3.10
    Linux ( manylinux2010サポートが必要) および Windows 用の pip バージョン 19.0 以降。 macOS の pip バージョン 20.3 以降。
    Windows ネイティブには、Visual Studio 2015、2017、および 2019 用の Microsoft Visual C++ 再頒布可能パッケージが必要。

上記の要件を確認のうえ、TensorFlowのWebサイトから「パッケージをダウンロードする」をクリックします。

「パッケージをダウンロードする」をクリックして表示されたページで、それぞれの環境に合わせてTensorFlowのインストールを行います。

TensorFlowで実現できること

TensorFlowを利用して実現できるおもなことは、「自然言語処理」「画像認識や音声認識」「翻訳」です。それぞれについて具体的に解説します。

自然言語処理(NLP)

自然言語処理(Neuro Linguistic Programming:NLP)とは、人が普段使っている話し言葉や書き言葉などの言語(自然言語)を機械で処理し、その内容を抽出するものです。

たとえば、「はしをもってしょくじをする」といった文で、人であれば、「箸を持って食事をする」という意味であることを瞬時に理解します。しかし、機械では、「橋を持って食事をする」「端を持って食事をする」など、どの「はし」を使うべきかが理解できません。

自然言語処理は、さまざまな文章を機械学習し、この場合の「はし」が「箸」であることを導き出せるようにします。

TensorFlowでは、「Word2Vec」のモデルを用い、さまざまな単語をベクトル化することで、文章の前後を読み取り、正しい解釈を行えるようにします。

画像認識や音声認識

TensorFlowを使い、AIやディープラーニング分野に欠かせない画像認識や音声認識を行うことも可能です。

数万以上の膨大なデータでも比較的容易に分析を行えるため、「渋滞中の車を形や色で車種を認識する」。「顔認証で防犯カメラのセキュリティを高める」などの用途で使えます。ほかにも、手書きの文字や数字の認識も可能で、筆跡鑑定や手書き文字の翻訳などにも効果を発揮するでしょう。

また、音声認識では、声の高低やクリアボイス、ハスキーボイスなどの声質の違いで、人の声を区別することが可能です。ほかにも会議やセミナーの書き起こしも音声認識を使って行えます。

翻訳

英語から日本語、フランス語からイタリア語など、翻訳もTensorFlowを使えば実現可能です。Webサイト上で簡易翻訳サービスを提供する、海外からのメールや手紙を翻訳するなどに使えます。

TensorFlowの活用事例

ここで、実際にビジネスでTensorFlowを活用している企業事例を紹介します。

Twitter

Twitterでは、数百数千人をフォローしているユーザーが、自身のタイムラインのなかから重要なツイートを見逃してしまう問題に対応するため、TensorFlowを活用しています。

Twitterは、ユーザーに関連性の高いツイートをタイムラインの最上部に表示する「ランク付きタイムライン」を導入しました。そして、この機能をTensorFlowで使い、機械学習によってよりユーザーにとって重要なツイートを上位に表示させられるように改善し、ユーザーの利便性向上を実現しています。

Google

開発元であるGoogleでも、TensorFlowを活用し多くのサービスを提供しています。検索や翻訳はもちろん、Gmailでも機械学習により、迷惑メールの選別や広告表示でTensorFlowは欠かせません。

また、世界でさまざまな人が抱える人道的課題や環境問題への対応促進目的としても、TensorFlowが重要な役割を担っています。

TensorFlowの学習方法

実際にTensorFlowを使いこなせるようになるには、どのような学習方法があるのでしょう。ここでは、特に独学でTensorFlowを学びたいと考えている開発者に向け、「チュートリアル」を使う方法と「書籍・動画」を使って学習する方法を紹介します。

チュートリアル

TensorFlowは、利用者が多いこともあり、さまざまなチュートリアルが公開されています。ただ、最初はTensorFlowの公式Webサイトで公開されているチュートリアルを使うのがおすすめです。

TensorFlowの公式Webサイトでは、初心者向けとエキスパート向けのチュートリアルが用意されています。初心者向けでは、Karasを使用したMLの基本やデータのロードと前処理などが日本語で学べるので、しっかりと基本を抑えるのに最適です。

書籍や動画で学習する

チュートリアルで基本を学び、さらに詳しく学習していきたいとなったら、書籍や動画で学習する方法がよいでしょう。

TensorFlowは、少し探しただけでも画像検索、物体・画像認識、自然言語処理などを学べる書籍を多数見つけ出せますので、必要な書籍を選んで学習するのがおすすめです。

また、YouTubeでは、TensorFlowの公式チャンネルがあり、すべて英語ではありますが、最新情報の入手や学習が行えます。日本語で解説している動画も多数公開されているので、役に立ちそうな動画を探して見るのもよいでしょう。

TensorFlowは今後さまざまなシーンでの活用が期待される

TensorFlowとは、Googleが開発した機械学習のオープンソースライブラリで、多くのエンジニアや開発者が画像認識・音声認識、翻訳、自然言語処理などに活用しています。

さまざまな言語、デバイスで使える自由度の高さやGPUの設定不要で効率的な開発が可能な点などのメリットを活かせば多くのサービス開発が可能です。

また、日本でも利用者が多く、情報共有や日本語のリファレンスが多数あるのもおすすめするポイントの一つです。

今後、成長が見込まれるAI、機械学習のライブラリとしてさまざまなシーンでの活用が期待される、TensorFlow。今の時点からしっかりと学習し、自由に扱えるようにすることで、多くの人の役に立つサービス開発が可能でしょう。

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