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CM視聴者の脳反応の個人差AIの予測に芝浦工大が成功

最終更新日:2024/04/10

芝浦工業大学工学部情報工学科の新熊亮一教授、国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)脳情報通信融合研究センター(CiNet)の西田知史主任研究員、西本伸志特別招へい研究員らの研究グループは株式会社NTTデータと共同で、簡単なアンケートの回答からCMを視聴中に脳が反応するパターンの個人差(類似度)を予測することに成功しました。

ターゲットがCMに興味を示すかを、簡単なアンケートで予測

CMを見た各実験協力者の脳反応のネットワークグラフ上の距離(類似度)をマトリクスで示したもの(数字は各実験協力者)

 

CMが個々の視聴者に与える好感度などを予測できれば、効果的なマーケティングが実現できます。一方でCMに対して視聴者が好感を持ったかなど、どのような影響を与えたかの直接的な効果測定は困難です。

視聴者Aの脳反応と、あるCMに興味を示した視聴者Bの脳反応との類似度が高ければ、AはBと同じCMに同様の興味を示すことが予測できます。

この研究ではその類似度の予測を、株式会社NTTデータ経営研究所の「人間情報データベース」構築の一環で実施した5~10問程度の簡単なアンケートの回答に機械学習を用いることで可能にしました。簡単なアンケートで回答者それぞれの脳反応を予測できるため、モニターなど協力者の負担、さらにはモニタリングコストを大幅に減らすことができます。

 

比較が困難な脳反応の類似度を、ネットワークグラフ型数理モデルで表現

実験協力者の脳活動反応における、各CM間の相関を示したネットワークグラフ
(赤丸は実験協力者No.1が視聴した各CM、青線はCM間のグラフ結合を表す)

 

2021年4月から芝浦工業大学に着任した新熊教授が京都大学在任中の2019年に発表した同研究グループの研究では、CM映像に対する脳の反応に関して、個人間の類似度を推定する手法を開発しました。

具体的には、複数の実験協力者にCM(15~30秒程度の音声付動画)を視聴してもらい、その時の脳反応指標をNICT CiNet内で無害で脳活動を調べる fMRI法(functional Magnetic Resonance Imaging)を用いて取得しました。今回実施した実験は、NICTの倫理委員会の承認を得ており、実験協力者には実験内容を事前説明の上、参加への同意を取っています。

実験協力者それぞれの脳反応モデルを、それぞれのネットワークグラフで表しました(図1)。さらにそれらを実験協力者間で比較し、個々のモデルが似ている度合いを新たにネットワークグラフで表すことで、脳反応の個人間の類似度を推定できるようにしました。

 

NICT CiNetで導入しているMRI装置(左)とスキャンした結果から推定した脳の活動状態(右)

 

脳反応モデルを推定するために機械学習するアンケート項目を、特徴選択で重要度の高い10問に絞り込み

CMのターゲットとする視聴者層をモニターとして、毎回fMRIでの脳スキャンに協力してもらうことは現実的ではありません。そこで今回発表した研究では、数問程度のアンケートから回答者それぞれが示す脳反応と前述の実験協力者が示す脳反応の類似度を推定する技術を開発しました。

具体的には、300問ほどの設問項目を含むアンケートから特徴選択によって、類似度の推定に対する重要度のスコアが高い上位10問の設問を抽出しました。設問数を減らしながらも、約300問全てを使って推定したときと変わらない程度に、推定精度を高く保つことを可能にしました。

これにより、モニターからたった5~10問程度のアンケートの回答を得るだけで、前述の実験協力者(既知の脳反応)との類似度を推定し、一般視聴者のCMに対する脳反応の個人差を精度高く予測できるようになりました。数問のアンケートで脳反応の個人差を推定できるため、モニタリングコストも低く済みます。

fMRIの先行研究の多くは、脳反応から個人の属性の予測を目的とするものでした。一方で今回の研究はアンケートの回答から脳反応を予測し、モニタリングコストを削減することを目的としています。研究グループは、機械学習や特徴選択を脳反応や個人の属性と組み合わせる点に新奇性があり、革新的としています。

この成果は工学分野でトップクラスのジャーナルの「IEEE Transactions on Systems, Man, and Cybernetics: Systems」に、7月16日に掲載されました。

 

出典:@Press

AIsmiley編集部

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