RPAによる公的機関での業務効率化、横浜市の活用事例をもとに
最終更新日:2024/04/04
RPA (Robotic Process Automation)による定型的な事務作業の自動化が求められる中、NTTデータらが公表した横浜市における「RPAに関する共同実験」という報告書が注目を集めています。今回は、RPAによる公的機関での業務効率化について、横浜市の活用事例をもとにまとめました。
RPAの活用効果、最大99.1%の作業時間削減
今回の共同実験は、横浜市官民データ活用推進計画が掲げる「データやICTを活用した効率的、効果的な行政運営の推進」「働き方改革」「長時間労働是正の取り組み」の一環として実施されました。
実験では、2018年7月から2019年3月にかけて月報作成やデータの収集・入力といった7つの定型業務について、RPAによる作業の自動化を実施。NTTのとりまとめた報告書によると、RPAを活用した業務では平均84.9%、最大99.1%の作業時間削減効果を確認したといいます。
RPA活用は市職員のITリテラシーにばらつき、全体の底上げが必要
今回行った実験では、さまざまな課題も見受けられました。ひとつは、市職員のITスキルにばらつきがある点です。
対象業務を選定する際にも、そもそも部署内や職員にRPAの活用イメージがないため、RPAが 活用しやすい業務が思ったように出てこなかったといいます。また、マニュアルを見てもマニュアルのどこを見ればよいのかが分からなかったということもありました。
NTTデータのRPAツールWinActorは、シナリオ作成にあたりマクロやプログラミングの特別な知識を必要としないという点を売りにしています。ただ、一定程度のITリテラシーは求められるため、そうでない職員にとっては導入のハードルがあるかもしれません。
RPAは導入したら終わりというわけでなく、効率的な運用には定期的なメンテナンスが求められます。定期的にメンテナンスを行わなければ、対象業務のプロセスが変更された際に活用できなくなり、無用の長物と化してしまう可能性があるからです。このメンテナンス業務を一部のITリテラシーの高い職員に属人化し、ブラックボックスにしないためにも、全体のスキルの底上げが求められるでしょう。
このほか、手書き入力や数字のデジタル化といった課題や、「エクセル単独の処理であれば、RPAよりもVBA(マクロ)を活用したほうがよい」という指摘も見受けられました。たしかに、RPAは米マイクロソフトのOfficeだけにとどまらないさまざまなパソコン上の処理を自動化できる点に強みを持つソフトウェアなので、Officeだけの処理であればマクロで十分、という指摘もうなずけます。
一方で、これまで手書きで対応していた申請書類をタブレット上での入力に切り替えるなど、懸案だった入力作業の効率化や窓口業務のデジタル化に向けた糸口もつかむきっかけになったといいます。
横浜市のRPA活用事例、日本企業や公共機関におけるIT化の一助に
この横浜市の共同実験では、「最大99.1%の作業時間削減」という数値にインパクトがあったため、「業務自体がもともと不要なものだったのでは」「現場の人員削減がますます進む」といった言説が飛び交い、ネット上で話題を呼びました。
ただ、横浜市は3万5,980人もの職員を抱える組織で、東京都区部を除けばその規模は全国1位です。その巨大組織全体での仕事量や労働時間数と比べれば、自動化できた分野や削減時間はほんの微々たるものにすぎないという指摘もあります。結果的には、RPAの活用によって市職員の削減が始まるといった極端な状況に陥る可能性は、現時点では低いかもしれません。新しい技術は期待値が現実を上回りがちで、RPAの活用に関してもそういった側面は否めないでしょう。
それでも、横浜市の取り組みは今後、日本の企業や公的機関が業務の効率化を進める上で、さまざまな知見をもたらすものとして注目すべきものであることは間違いありません。
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