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最終更新日:2025/03/26
Hunyuan Turbo Sは、中国の大手IT企業 Tencent(テンセント)が2月27日に発表した最新AIモデルです。同じ中国の最新AIモデル「DeepSeek-R1」が世界に衝撃を与えてから約1ヶ月、複雑なタスクの処理と応答スピードを両立させたハイスペックなモデルが公開されています。
本記事では、Hunyuan Turbo Sの特徴から、DeepSeekをはじめとする競合モデルとの比較、料金体系まで詳しく紹介します。Hunyuan Turbo Sのリリースが中国を含む世界のAI業界に与えた影響についても解説しますので、ぜひご覧ください。
Hunyuan Turbo Sとは、中国のIT企業Tencent(テンセント)が開発した最新AIモデルです。中国の高性能AI「DeepSeek-R1」よりも応答スピードを高速化することに成功しています。
また、テンセントの副社長である Qiu Yuepeng氏によると、Hunyuan Turbo Sでは「Hunyuan シリーズの派生モデルの中核基盤として、推論や長文生成、コーディングなどの基本機能を提供する」仕様です。開発コストを前世代モデルよりも大幅に抑えている点も強調しています。
中国のIT企業「Tencent(テンセント)」は、メッセンジャーアプリ「WeChat」をはじめ、SNSなど幅広いサービスを提供しています。本社は広東省深セン市にありますが、株式の大半は外国の投資家が保有しています。
Hunyuan Turbo Sの特徴として、ハイブリッドアーキテクチャによる性能の強化や、高速応答などが挙げられます。また、前世代モデル「Hunyuan T1」に比べて、トレーニング効率やデコードスピードなどにおいても向上が見られます。
ここでは、Hunyuan Turbo Sの主な特徴を見ていきましょう。
Hunyuan Turbo Sは、MoE(Mixture of Experts)構造とMambaアーキテクチャを統合した初めての大規模モデル(LLM)として公開されています。MoE構造とは、小さなニューラルネットワークや機械学習モデルを複数組み合わせることで、より効果的にタスクやデータを処理できる仕組みです。
また、Mambaアーキテクチャは、従来の Transformerモデルが抱える長文処理タスクにおける課題解決を目的として開発された技術です。長文処理においても、より少ない計算量やメモリ消費で対応することが可能となっています。
Hunyuan Turbo Sでは両者を組み合わせることで、推論コストの低減や処理スピードの向上に成功しています。
Hunyuan Turbo Sでは、ユーザーが入力したクエリに対し、応答時間1秒以内の高速反応を実現しています。この応答スピードは、DeepSeek R1や前モデル(Hunyuan T1)といった他のAIモデルを上回っています。
また、単語生成速度は従来の最大2倍で、最初のトークン遅延も44%ほど抑えられています。
Hunyuan Turbo Sの前モデル「Hunyuan T1」は、深い推論能力を持つモデルですが、Turbo Sは即時応答に特化した設計です。具体的には、以下のような性能の向上が見られます。
上記によって、GPT-4oに匹敵する性能を実現しています。
Hunyuan Turbo Sは、前述の通り、同じく中国発の生成AIモデルである DeepSeek-R1を上回る応答スピードを実現したとされています。ここでは DeepSeek-V3に加えて、Qwen 2.5-MaxやGPT-4oとの比較を、各ベンチマークのデータを踏まえて紹介します。
DeepSeek-V3は、中国企業 DeepSeekによって開発された高速対話AIモデルです。モデル構造の詳細は非公開ですが、Hunyuan Turbo Sと同じMoE構造を用いているとされ、応答スピードと性能の両立に成功しています。
Tencentのデータによれば、Hunyuan Turbo Sが高難度の知識(MMLU-pro)や数学(AIME2024)、論理的推論(ZebraLogic)などのベンチマークにおいて、DeepSeek- V3の結果を上回っています。
コード生成や一部の知識推論などでは、DeepSeek V3の方がわずかに優位ですが、中国語の理解や生成を含め多くの能力においては高い性能を打ち出しています。
GPT-4oは、高精度な Transformerモデルであり、MoE構造とMambaアーキテクチャのハイブリッド構造を持つ Hunyuan Turbo Sとは異なるアプローチを取っています。前述のデータでは、Hunyuan Turbo Sは、高度な知識問題(MMLU-pro)や知識推論(GPQA-diamond)、複雑なタスクを含む難易度の高い推論などにおいて、GPT-4oより高いスコアをマークしました。
また、Chinese-SimpleQAをはじめとする中国語圏向けのテストでは、圧倒的に高い結果を出しているものの、英語での質疑応答はGPT-4oが上回っています。
コスト面でも、GPT-4.5のAPI料金は出力100万トークンあたり150ドルであるのに対し、Hunyuan Turbo Sは100万トークンで1ドルも満たないため、低コストで運営できる点で優位性があります
Qwen 2.5-Maxは、中国の大手企業 Alibabaが2025年1月に公開した最新のMoE構造モデルです。トレーニングには20兆ものトークンが使用され、規模の大きさと処理の効率性のバランスが取れたモデルとなっています。
Qwen 2.5-Maxの公式データによれば、多くのベンチマークにおいて、DeepSeek-V3やGPT-4o、Claude-3.5などの競合モデルを上回る性能を達成したことを公開しています。Hunyuan Turbo SとQwen2.5 Maxとの正式な比較は発表されていないものの、中国語の知識テストや安全性におけるスコアでは Hunyuan Turbo Sの方が高いと推測されます。
ただ、中国語圏内に特化した性能で圧倒的なスコアをマークしている Hunyuan Turbo Sは、英語の能力は競合モデルを下回っています。一方、Qwen 2.5-Maxは英語にも強いとされているため、英語での知識応答ではQwen 2.5-Maxの方が優位と考えられます。
Hunyuan Turbo Sでは、API料金が設定されています。具体的な金額を見ていきましょう。
Hunyuan Turbo SのAPI料金は、以下の通りです。
上記は、前世代の T1 モデルよりも圧倒的に金額が抑えられています。なお、Tencent Cloud経由で Hunyuan Turbo Sの無料トライアルを利用することも可能です。
Hunyuan Turbo Sは現在、Tencent Cloud 上で利用可能です。以下の手順でクラウドを通じてモデルにアクセスできます。
Tencentは、今後 Hunyuan Turbo Sを WeChatをはじめとするさまざまな自社サービスに統合し、実績を積み上げることを計画しています。また、Hunyuan Turbo Sのリリースは、DeepSeekをはじめとする中国のIT企業や技術業界にさらなる影響を与えることが推測されます。
2025年にDeepSeekが最新モデル「R1」を公開すると、AI関連株価が大幅に変動し「DeepSeek ショック」とも呼ばれました。また、その数日後には Alibabaが最新モデル「Qwen 2.5-Max」を発売するなど、中国だけでなく世界のAI市場における競争の激化を示しています。
Hunyuan Turbo Sは、Tencentが開発した高速応答が可能な最新AIモデルです。MoE構造とMambaアーキテクチャを統合することで、より効率的で高性能な対応を実現しています。特に、知識や推論、数学、中国語の分野において GPT-4oなどの他社モデルよりも高い評価を打ち出しています。
DeepSeek-R1やQwen2.5 Maxなど、中国国内では次々と新しいモデルが開発され、中国におけるAI競争に世界中が注目しています。
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はい、Hunyuan Turbo S は日本から利用可能です。Tencent Cloudは、日本を含む複数の国と地域で展開されており、 Hunyuan Turbo Sもサービスの一部に含まれています。 利用を開始するには、Tencent Cloud の公式サイトでアカウントを作成し、Hunyuan Turbo S のAPIキーを取得する必要があります。
Hunyuan Turbo S は、応答スピードの速さと高い性能を活かし、幅広い分野での利用が期待されます。主な活用シーンは他社の生成AIチャットと同様ですが、中国語での質疑応答や文章処理に優れているため、中国語と日本語、英語などの翻訳や文章生成、要約といった用途で活躍するでしょう。 他にも、バーチャルアシスタントなど、スピードが要求されるような場面でも役立ちます。ただし、APIの制限や利用規約などを確認した上で導入することが重要です。
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