生成AI

最終更新日:2025/07/28
AI技術の発展とともに、「AIエージェント」の活用が多くの企業で進んでいます。業務自動化やカスタマーサポート、社内DX推進など、幅広い分野で効果を発揮するAIエージェントですが、実際に導入・構築するためには、目的に合った設計や適切なツール選定が不可欠です。本記事では、企業担当者が知っておくべきAIエージェントの基礎知識から、開発・導入までのステップ、活用事例までを網羅的に解説します。
AIエージェントとは、人工知能(AI)を搭載した対話型または自律型のソフトウェアで、人間のように意思決定や情報処理を行うことができるシステムです。主に自然言語処理(NLP)、機械学習、知識ベース技術などを組み合わせて構築されます。
AIエージェントの主な活躍領域は、以下となっています。
AIエージェントとよく混同されるのがチャットボットです。チャットボットはあらかじめ用意された応答をするのに対し、AIエージェントはユーザーの発言意図を理解し、状況に応じた応答や判断が可能な点で異なります。
AIエージェントについてはこちらの記事でも説明しています。
AIエージェントとは?特徴や生成AIとの違い、種類や活用シーンを紹介
AIエージェントを成功裏に導入するためには、開発前の準備が極めて重要です。準備不足のまま構築に進んでしまうと、導入後に「期待した効果が出ない」「業務にフィットしない」といった課題が発生する可能性が高まります。以下の3つのポイントは、導入効果を最大化するために不可欠です。
まず、AIエージェントを導入する「目的」を明確にします。例えば、カスタマーサポートの自動化と社内ヘルプデスクの効率化では、必要な機能や連携先が大きく異なります。目的が曖昧なままだと、汎用的な設計に陥り、十分な成果が得られません。顧客対応の効率化を目指すのか、社内業務を自動化したいのかによって、設計や機能要件が大きく変わります。
エージェントに任せたい業務内容や処理の流れを整理・文書化します。
AIエージェントが担うべき業務範囲や処理フローを明確にすることは、シナリオ設計の土台となります。たとえば、問い合わせ対応であれば「受信 → 意図判定 → 回答生成」という一連の流れを具体的に定義する必要があります。この段階で現場の担当者と連携し、現実的なフローを構築しておくことが後のトラブル回避につながります。
同時に、導入後のギャップを最小限に抑えることができます。
AIエージェントの学習には、大量かつ質の高いデータが必要です。AIエージェントは、過去のデータを学習することで自然な応答を実現します。そのため、過去のFAQ、チャットログ、業務手順書などを用意しておきましょう。また、誤表記や曖昧な表現が多いデータは、学習精度を下げる要因となるため、クリーニング作業も重要です。
AIエージェントを構築するためには、以下のような担当者が必要です。
役割 | 担当者 | 主な責任 |
---|---|---|
NLPエンジニア/AIエンジニア | 社内エンジニアまたは外部ベンダー | NLPモデルの設定、意図分類・エンティティ抽出の設計、テスト・チューニング |
データアナリスト/データ整備担当 | 社内IT部門や業務部門 | チャットログやFAQなどの学習用データの収集・整備 |
業務担当者(SME) | 実際の業務を理解する部門の担当者 | ユーザーの発言パターンや業務用語の洗い出し、テスト応答の確認 |
プロジェクトマネージャー | 情報システム部門やDX推進担当 | 進捗管理、役割調整、NLPベンダーとの調整役 |
それぞれについて、担当者をアサインしましょう。
では、実際にAIエージェントの構築方法について解説します。
業務要件をもとに、AIエージェントがどのように対話・判断するべきかを設計します。AIエージェントに「何をさせたいか」「どんな機能が必要か」「どのような条件で動作するか」などを明確にする作業です。ここでは、主に以下のような項目を決めます:
これにより、開発の方向性がブレなくなり、関係者間での認識ズレも防げます。
そして、AIエージェントがユーザーとどのように対話するか、会話の流れを設計するプロセスです。ユーザーが何を尋ね、AIがどう応答し、次にどんな選択肢を提示するのか、といった一連のやり取りを、分岐図(フローチャート)や会話スクリプトで定義します。
AIエージェントの開発には、以下のようなプラットフォームの活用が一般的です。
プラットフォーム | 特徴 | 対象ユーザー |
---|---|---|
Dialogflow | Google提供、NLPが強力 | 初心者〜中級者 |
Microsoft Bot Framework | Teams連携に強い | 企業ユーザー |
IBM Watson Assistant | 高度なカスタマイズが可能 | 中〜上級者 |
LINE Messaging API + GPT | BtoC対応に適 | LINE活用企業 |
NLP(Natural Language Processing:自然言語処理)の実装では、ユーザーの発言(入力)を「AIが理解できる形」に変換し、適切な応答やアクションを返す仕組みを構築します。主な作業は以下の通りです。
作業内容 | 説明 |
---|---|
1インテント分類の設定 | ユーザーの発言から「目的(意図)」を識別します。例:「商品を返品したい」は「返品処理」のインテントに分類されます。 |
2 エンティティ抽出の定義 | ユーザーの発言内に含まれる具体的な情報(商品名、日付、氏名など)を抽出します。 |
3 NLPエンジンの選定と設定 | Dialogflow、Watson、Azure Language Service、OpenAI GPTなどから適したNLPエンジンを選び、言語モデルを設定します。 |
4 トレーニングデータの用意とチューニング | 過去の問い合わせデータや想定質問を使って、モデルに学習をさせ、意図分類・応答精度を高めます。 |
5 ユーザー発言とAI応答のテスト | 実際の会話パターンを複数試し、誤認識や誤応答がないかを検証・調整します。 |
NLPの精度が低いと、ユーザーの質問を誤認識したり、的外れな回答を返すAIエージェントになってしまいます。結果として「使えない」「問い合わせが増える」と逆効果になるため、このステップはAIエージェントの“使いやすさ”と“信頼性”を決定づける中核工程です。
社内システム(CRM、SFA、データベース)と連携させることで、より高度な業務支援が可能になります。API設計が重要なポイントです。
AIエージェントの構築方法は、「技術力」「予算」「導入スピード」「運用体制」などの要素によって最適解が異なります。事前にツールの特性を理解して選定することで、開発の手戻りを防ぎ、運用開始までの時間を短縮できます。
プログラミングの知識がなくても、ドラッグ&ドロップ式のGUI(画面操作)でAIエージェントを構築できるツールを利用する方法です。代表的なツールには、以下のようなものがあります。
主に技術リソースが限られている中小企業・部門単位での導入、プロトタイプやPoC(実証実験)を短期間で作りたいときにおすすめです。
エンジニアがPythonやJavaScriptなどの言語で、AIエージェントの各機能(NLP、対話制御、外部連携)をコードベースで実装していく方法です。使われる主なライブラリやフレームワークは以下の通りです。
主にセキュリティ要件が厳しく、クラウドではなくオンプレミス開発が必要な企業、独自の業務フローや専門的ロジックを細かく制御したい場合、社内にAI/エンジニアリングの専門人材がいる企業などにおすすめです。
Google、Microsoft、IBM、Amazonなどのクラウドプラットフォームが提供するAIエージェント作成サービスを活用する方法です。主なツールは以下の通りです。
サービス名 | 提供企業 | 特徴 |
---|---|---|
Dialogflow | 高精度な自然言語処理、GCP連携がスムーズ | |
Azure Bot Service | Microsoft | TeamsやMicrosoft 365との連携に優れる |
IBM Watson Assistant | IBM | 高度な対話制御と多言語対応 |
Amazon Lex | AWS | Alexaの技術を活用、音声エージェントにも対応 |
主にすでにGCPやAzureなどのクラウド基盤を使っている企業、セキュリティ、拡張性、スケーラビリティが重視される大企業、多言語対応や音声認識が求められるグローバル対応案件におすすめです。
AIエージェントの導入は非常に魅力的ですが、万全な準備と運用体制がなければ思わぬリスクを招く可能性があります。以下に、企業が特に注意すべき3つの観点を解説します。
AIの判断は、学習に使われるデータの質と量に強く依存します。偏ったデータや例外的なケースが多く含まれていると、AIエージェントは正しく学習できず、誤った応答を返してしまう可能性があります。たとえば、特定の時期や製品に偏ったサンプルしか学習していない場合、他のケースでは対応できません。定期的なデータの見直しと再学習が求められます。
企業が扱う情報の中には、個人情報や営業機密など機密性の高いデータが含まれることが多くあります。AIエージェントがこれらのデータにアクセス・処理する場合、不正アクセスや情報漏洩への対策が必須です。クラウドサービスを利用する場合も、データの保存場所、通信の暗号化、アクセス制御の仕組みなどを事前に確認しておくことが重要です。
AIエージェントは導入して終わりではなく、ユーザーのフィードバックや業務の変化に応じてシナリオや応答内容を継続的に改善していく必要があります。運用開始後に、エージェントの応答内容が古くなっていたり、適切な対応ができなくなっていたりするケースも珍しくありません。そのため、運用を担う担当チームを明確にし、改善のサイクルを定期的に実行する体制を整えることが不可欠です。
AIエージェントは、企業の業務効率化やDX推進を支える重要な存在です。目的の明確化からデータ整備、プラットフォーム選定、構築・運用までを段階的に進めることで、実用的かつ効果的なAIエージェントを導入することができます。
アイスマイリーでは、AIエージェントのサービスとその提供企業の一覧を無料配布しています。自社での業務効率化や顧客対応の強化に活用できる、最適なAIサービスを選定するためにぜひご活用ください。
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