介護福祉のAI活用!事例や将来性を人手不足解消の観点で紹介
最終更新日:2024/03/04
IT業界だけでなく、医療や工業など、さまざまな業界で活用され始めているAI・人工知能。近年は、介護福祉現場においてもAIが積極的に導入され始めているのをご存知でしょうか。介護福祉施設内の業務をサポートするAIはもちろんのこと、施設への送迎を効率化するAIサービスなども多くなってきているのです。
そこで今回は、介護福祉現場におけるAIの活用例を詳しく紹介していきます。介護福祉という分野でAIを活用するメリットを把握することで、よりAI活用のイメージが広がりやすくなりますので、ぜひ参考にしてみてください。
AIの活用事例について詳しく知りたい方は以下の記事もご覧ください。
AI・人工知能の利用例を解説!機械学習を活用した身の回りの実用例
AI(人工知能)活用とは?
AIとは、「Artificial Intelligence」を略した言葉であり、日本語では人工知能と呼ばれるのが一般的です。そんなAI(人工知能)には、機械学習・深層学習という技術が用いられているのが特徴であり、学習させることで分析・予測といった作業の自動化が可能になります。そのため、私たち人間がその都度判断基準を設定する必要もありません。
最近ではさまざまな分野で積極的にAI(人工知能)が導入され始めており、もはや私たちの生活に欠かせない存在になりつつある状況です。例えば自動車の自動運転技術では、AIが蓄積されたデータをもとに危険が発生しやすいポイントの予測を行うことができます。また、防犯カメラにAIを活用するケースなども多くなっており、行動分析や顔認証といった部分でAIの技術が用いられているのです。
そして、今回のテーマである介護福祉の分野も、まさにAIが積極的に活用され始めている分野の一つであり、大きな注目を集めています。
なお、AI(人工知能)の利用例については以下の記事でも詳しくご紹介していますので、こちらも併せて参考にしてみてはいかがでしょうか。
参考:「AI・人工知能の利用例を解説!機械学習を活用した身の回りの実用例」
介護業界が抱える課題
現在、介護業界では人手不足が深刻化しています。同時に、高齢者(要介護者)が増加していることもあり、介護が必要なのに受けられない人(介護難民)が増加してしまっているのです。厚労省の発表によると、要介護3以上で特別養護老人ホームの入所を希望しているものの入れない人は25万3000人ほど存在すると言われており、この介護難民をどのように減らしていくかが重要な課題として浮き彫りになっています。
参考:厚生労働省「特別養護老人ホームの入所申込者の状況(令和4年度)厚生労働省」
また、65歳以上の人口に関しては、1950年には人口の5%未満であったのが1994年には14%となっており、さらに2019年には28.4%と年々増えている状況です。2065年には、人口が8,808万人となり、人口の38.4%が65歳以上となることが見込まれています。
参考:厚生労働省「平均寿命と健康寿命」
参考:内閣府「令和2年版高齢社会白書(全体版)」
こういった介護福祉業界の重大な課題を解決するための手段として、近年はAIに大きな注目が集まり始めているのです。
AIを活用するメリット
では、実際にAIを活用することでどのようなメリットが得られるのでしょうか。介護福祉分野におけるAI活用のメリットについて、詳しくみていきます。
人手不足が解消する
先ほどもご紹介したように、介護福祉業界では人手不足が深刻化しています。そのため、いかに業務効率を高められるかが重要な課題となっているわけです。そのような課題を解決するために、最近では積極的にAIが活用され始めています。
AIを活用すれば、これまで人間が担当しなければならなかった作業の一部をAIに任せて自動化できるようになるため、大幅な業務効率化を実現できます。AIの活用によって現場の負担が軽くなれば、従業員一人ひとりのストレス軽減やワークライフバランスの改善などにもつながっていくため、新規就業者の増加に繋がっていくことも期待できるのです。
介護の質が向上する
介護の質が向上するという点も、AIを活用するメリットの一つと言えます。これまでは、全ての作業を人間が行わなければならなかったため、本当に重要な業務に集中できる時間も限られてしまう傾向にありました。
その点、AIを活用すれば「人間でなければならない仕事」「AIに任せられる仕事」の棲み分けを行えるようになるため、より重要な仕事に集中しやすい環境を整備できます。こういった環境の整備によって介護の質が高まれば、介護される側とその家族の満足度も高まっていくため、全ての人にとって大きなメリットとなるのです。
AIを活用するデメリット・問題点
AIを活用することで得られるメリットがある反面、いくつかのデメリット・問題点が存在することも忘れてはなりません。ここからは、AIを活用するデメリット・問題点について確認していきます。
コストがかかる
大きなデメリット・問題点として挙げられるのは、やはりコストがかかってしまうという点です。システムの導入にコストがかかるのはもちろんのこと、導入したシステムを維持するコストも発生してしまいます。
実際、介護事業者向けのアンケートでも、6割が導入コストに不安をおぼえていると回答しました。最近ではさまざまな種類のAIが存在しており、それぞれに異なる特徴が存在しているため、まずは自社の課題を明確にした上で、その課題を解決するための機能が搭載されたAIの導入を検討していくことが大切になります。
令和2年度介護労働実態調査 事業所における介護労働実態調査 結果報告書| 公益財団法人 介護労働安定センター
慣れるのに時間がかかる
適切な戦略のもとでAIを導入できれば、業務効率化や満足度向上といった成果を得られる可能性も高くなりますが、必ずしも導入直後から成果を得られるとは限りません。場合によっては、運用に慣れるまでに時間がかかってしまい、むしろ手間が増えてしまうケースもあるからです。実際に介護事業者向けのアンケートでも、3割が技術的に使いこなせないという不安をおぼえていることがわかっています。
こういった点を防ぐためにも、導入前の段階から現場の従業員を含めて入念にコミュニケーションを図ることが重要であり、常に情報を共有しながら導入を進めていくことが重要です。
介護におけるAI活用事例4選
介護福祉の分野では、実際にどのような形でAIが活用されているのでしょうか。ここからは、介護におけるAI活用事例を5つご紹介していきますので、ぜひ参考にしてみてください。
介護福祉施設の送迎をAIで効率化するサービス「DRIVEBOSS」
(参照:業務車両管理システムDRIVEBOSS-ドライブボス | Panasonic)
パナソニックカーエレクトロニクス株式会社が開発した「DRIVEBOSS」というサービスは、AIを活用することによって介護福祉施設の送迎を効率化できるという特徴を持っています。その仕組みとしては、利用者ごとの状況に対応しながらAIが適切な送迎ルートと送迎計画の作成を行い、効率化を図るというもの。より効率的なルートをAIが導き出してくれるため、介護スタッフの負担軽減につなげることができるのです。
介護福祉施設の送迎では、乗車や降車にかかる時間を考慮した上で計画を立てる必要がありますし、直前の欠席連絡によるルート変更などにも柔軟に対応していかなければなりません。しかし、「DRIVEBOSS」を活用すれば、それらをすべてパソコンで管理できるようになるできるため、ミスの減少にもつなげられるわけです。
モノの持ち運びを行う自律型ロボット「アイオロス・ロボット」
(参照:Our Robots | Aeolus)
アメリカのアイオロス・ロボティクス社が開発・提供している自律型ロボットの「アイオロス・ロボット」は、モノの持ち運びを得意としていることから、介護福祉分野での活躍が期待されています。また、人間に近い見た目をしており、二本のロボットアーム、頭がついた上半身のみのロボットで、知能や視覚、移動といった機能の実現にAI・人工知能が活用されているのです。
そんなアイオロス・ロボットが得意とする業務のひとつに、「モノの持ち運び」があります。周りの環境を認識し、学習した上で、二本のロボットアームを駆使して2kg程度までのモノを持ち運ぶことが可能です。この「モノの持ち運び」という作業は介護福祉において頻繁に発生するものなので、スタッフの負担を軽減できるという点で大きな魅力があるといえます。
介護福祉の人手不足を補う「AIさくらさん」
(参照:人工知能(AI)搭載キャラクター「さくら」による接客システム | AIさくらさん)
株式会社ティファナ・ドットコムが開発・提供している「AIさくらさん」という音声会話型接客システムも、介護福祉における人手不足を補う存在として注目を集めています。AIさくらさんは、介護福祉の分野に特化したシステムというわけではなく、社内ヘルプデスクやコールセンター、インバウンド接客といった業務を代行するシステムです。ただ、介護福祉業界では夜間業務も多いため、高齢者とのコミュニケーションを代行してもらえるという点で期待が寄せられているのです。
介護福祉施設では、夜間にトラブルが発生することが多々ありますが、その中にはAIでも解決できるレベルの問題も少なくありません。そういった、簡単に解決できる問題への対応がストレスの原因につながることも少なくないのです。
だからこそ、頻繁に発生する業務や質問をAIさくらさんに任せることで、スタッフの業務負担を軽減させることが可能になります。当然、業務負担が軽減されれば他の業務に力を注ぐことが可能になるため、より施設内の安全性を高めることにもつなげられるのです。
介護福祉現場だけでなく自宅でも活躍するAIロボット「パルロ」
(参照:会話ロボット最先端! PALRO(パルロ)【公式】 富士ソフト)
富士ソフト株式会社が開発・提供しているAIロボット「パルロ」は、言葉を発するだけでなく身振り手振りを交えながらコミュニケーションをとることができます。そんなパルロの特徴としては、介護福祉現場だけでなく自宅で使用されることも想定している点が挙げられます。
クイズやゲーム、音楽、運動など、介護福祉施設でのレクリエーションとして最適な機能が多く備わっている一方で、人間のように自然な会話をすることができる特徴もあるため、自宅での使用にも最適なロボットといえるのです。
少子高齢化によって、今後はロボットのサポートを必要とする高齢者も増加することが予想されるため、このようなAIロボットはさらに増加していくかもしれません。
厚生労働省が推奨するAI・ロボットの活用
厚労省では現在、介護ロボットの開発と普及に力を入れています。知能化した機械システムをロボットと定義しており、このうちの介護機器が「介護ロボット」と呼ばれています。先ほどもご紹介したように、昨今は少子高齢化に伴い人手不足が深刻化しており、いかに業務効率化を図るかが重要なポイントとなっています。
その課題を解決するための手段として、AI・ロボットはまさに最適な存在であり、多くの人々に注目され始めているわけです。「人間にしかできない仕事」「AIにも任せることのできる仕事」の棲み分けが明確になれば、より一層効率的かつ働きやすい環境整備が進んでいくと考えられます。
厚生労働省による6つの重点分野
厚生労働省では、以下の6つを「重点分野」として定めており、これらの分野でのAI導入が特に期待されています。
- 移乗介助
- 移動支援
- 排泄支援
- 見守り、コミュニケーション
- 入浴支援
- 介護業務支援
ちなみに、入所型施設で「見守り・コミュニケーション」のロボットが導入されている率が16.6%で最も高くなっています。しかし、「いずれも導入していない」に関しては全体で80.6%となっているため、全体として導入率が低いことがお分かりいただけると思います。では、6つの重点分野について、より詳しくみていきましょう。
参考:公益財団法人 介護労働安定センター「令和2年度介護労働実態調査 事業所における介護労働実態調査 結果報告書」
移乗介助
移乗介助とは、ロボット技術を用いて介助者のパワーアシストを行う装着型の機器や、ロボット技術を用いて介助者による抱え上げ動作のパワーアシストを行う非装着型の機器のことです。
移動支援
移動支援とは、荷物等を安全に運搬できるロボット技術を用いた歩行支援機器のことです。高齢者等の外出をサポートすることを目的としています。高齢者等の屋内移動や立ち座りをサポートしたり、トイレへの往復、トイレ内での姿勢保持などを支援したりする歩行支援機器も存在します。
排泄支援
排泄支援とは、ロボット技術を用いて排泄を予測し、的確なタイミングでトイレへ誘導する機器のことです。トイレ内での下衣の着脱等の排泄の一連の動作を支援します。これにより、介護者の精神的負担を大幅に減らすことが期待できます。
見守り・コミュニケーション
高齢者等とのコミュニケーションにロボット技術を用いた生活支援機器です。高齢者が抱えがちな問題の一つに「孤独」がありますが、AIの活用によってコミュニケーションの充実を図ることで、高齢者の孤独を解消し、より暮らしを豊かにしていくことが期待できます。また、頻繁なコミュニケーションによって認知症予防に繋げられる点も大きな魅力と言えます。
入浴支援
ロボット技術を活用し、浴槽に出入りする際の一連の動作を支援する機器です。浴槽への出入りは、床が滑りやすく大怪我に繋がりやすい動作でもあります。そのため、ロボット技術の活用によって、出入りの動作を支援することで、大怪我を防ぐことが可能です。
介護業務支援
ロボット技術を用いて、見守り・移動支援・排泄支援などの介護業務に伴う情報を収集し、蓄積されたデータをもとに高齢者等の必要な支援に活用していくことを可能とする機器のことです。
これにより、さまざまな介護業務の負担を軽減できるようになるため、別の業務に力を注いだり、新たな課題解決のヒントを見つけ出すための時間に充てたりすることが可能になります。
介護におけるAI活用の将来性
少子高齢化に伴う人手不足は深刻化しており、さまざまな分野において「業務効率化」は極めて重要なキーワードとなっています。もちろん介護福祉業界も例外ではなく、今後以下にAIを活用しながら効率的かつ安全に介護を行えるようになるかが重要といえます。
すでにAIの導入は進んでおり、今後さらにこの流れは加速していくことが予想されます。近い将来、介護AIが用いられるのが当たり前になっていくかもしれません。
まとめ
今回は、介護福祉現場におけるAI・人工知能の活用事例をご紹介しました。厚生労働省が重点分野を定めていることからも、介護分野におけるAI活用に大きな期待が集まっていることがお分かりいただけたと思います。AIであれば、業務効率化をサポートする役割を担えるため、今後さらにAIが多くの介護福祉施設で重宝されるようになることが期待されます。
現在もなお進歩を続けるAI技術がどのような形で介護福祉現場をサポートしていくのか、今後の動向にも目が離せません。
AIについて詳しく知りたい方は以下の記事もご覧ください。
AI・人工知能とは?定義・歴史・種類・仕組みから事例まで徹底解説
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