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エンタープライズサーチとは?機能やメリットと導入のポイントをわかりやすく解説

最終更新日:2024/03/05

企業が保有するデジタルデータを一括で横断検索するエンタープライズサーチ。業務のデジタル化に合わせ膨大に増え続けるデジタルデータを迅速に検索できるとして、多くの企業で導入が進んでいます。

本記事では、エンタープライズサーチの概要、主な機能、活用のメリット、導入時の注意点を解説します。新たにエンタープライズサーチの導入を検討している企業の担当者様はぜひ、参考にしてください。

エンタープライズサーチとは

エンタープライズサーチ(Enterprise Search)とは、企業が保有し社内外に保管しているデジタルデータを、保管場所を意識せずに一括で横断検索するものです。企業内検索やエンタープライズ検索とも呼ばれる場合もありますが、機能はどれも変わりません。

最大の特徴は、自社内のサーバーだけではなく、クラウドのストレージやローカルに保管されているデジタルデータも一括で検索できる点です。

また、ファイル形式もMicrosoftのOffice、PDF、画像・動画ファイルなど種類を問わず検索できるため、迅速に求めるものを見つけ出せます。

エンタープライズサーチの歴史とAIの発展

近年、大きな注目を集めるエンタープライズサーチですが、その登場は2000年代初頭で、すでに20年近い歴史を持っています。ただ、登場してすぐは、まだ多くの企業が紙ベースでの業務を行っていたため、利用範囲も少なく、あまり注目もされていませんでした。

エンタープライズサーチが注目を集め始めたのは、業務のシステム化が進む2005年~2010年頃です。手作業からシステム化によって自動化は進みましたが、データの検索はシステムごとに行う必要がありました。そのため、横断検索が可能なエンタープライズサーチの導入が進み始めたのです。

エンタープライズサーチがより大きな注目を集めるようになった理由はもう一つあります。それがAI技術の発展です。自然言語処理や機械学習により、画像や音声、動画などの非構造化データでも簡単に検索できるようになりました。

デジタルデータが膨大に増加する今、エンタープライズサーチは企業にとってなくてはならない必須のツールになろうとしています。

エンタープライズサーチの基本機能

エンタープライズサーチは、種類にもよりますが、一般の検索エンジンと機能的には大きく変わりません。

ただし、企業には機密情報が記載されたデータも多く存在するため、一般の検索エンジンにはない閲覧制限や認証機能が付いています。ここでは、エンタープライズサーチに搭載されている主な機能について見ていきましょう。

エンタープライズサーチの基本機能

検索

エンタープライズサーチの根幹部分となる機能です。ファイルサーバー、データサーバー、クラウドのストレージ、Webサイトなど保管場所を問わず、求めるデータの検索を行えます。

また、検索するデータも、ExcelやCSVのような構造化データだけではなく、メール、契約書、デザインデータ、動画・音声データなど非構造化データも検索可能です。

製品にもよりますが、検索方法も通常検索のほか、ファイル形式別、日時指定、あいまい語、絞り込みなどさまざまな方法で求めるデータを見つけ出せます。

検索方法 概要
画像検索 プレビューやサムネイルにて検索結果を表示し、視覚的に文書を検索可能
完全一致検索
あいまい検索
キーワードの「完全一致検索」や、キーワードと類似したドキュメントの検索が可能な「あいまい検索」が可能
あいまい検索では、アルゴリズムを工夫すれば、より精度の高いものにしていくこともできる
ハイライト表示
ソート表示
検索語句のハイライト表示や、関連度順や日付順で並べ替えた結果表示が可能
関連文書検索 選択した文書と類似度や関連性の高い文書を表示する機能
ファセット検索 所有者、サイズ、日付、文章タイプ、場所、サイズなどの条件を指定することで集計を実施し、集計結果から絞り込み検索が可能
関連キーワード これまで検索されたキーワードから検索語の同義語など、同時に検索されやすいような語句を推薦する機能
重複検索 重複するようなデータの発見や、検索した時に排除する機能
検索履歴 過去に検索したキーワードの履歴や、クリックしたコンテンツの履歴の確認が可能な機能

エンタープライズサーチでは、上表のようなさまざまな検索方法によって、目的の文書や画像を検索できます。蓄積されたデータから目視で探すことは非常に大変な作業なため、さまざまな条件を指定することで目的のデータを迅速に検索できます。

サジェスト

サジェストとは、検索機能の一つで、検索窓に検索するキーワードの一部を入力しただけで、候補となるキーワードを一覧で表示するものです。求めるデータの正式名称を一部だけでも覚えていればすぐに見つけ出せます。

たとえば、プロジェクト名の一部を入力すれば、プロジェクトに関連するさまざまなデータ名が一覧表示されるので、後はそのなかから求めるデータを選択するだけです。

サムネイル

サムネイルとは、検索結果にデータの内容がわかるサムネイル画像を表示させる機能です。種類によっては、検索キーワードと前後のテキストを強調して表示するものもあります。たとえば、画像データを探している場合、画像データのタイトルだけでは内容がわからないと一つひとつを開いて確認しなければなりません。

しかし、サムネイル機能があれば、検索結果を見るだけで内容がわかるため、一つひとつを開く必要がなくすぐに求める画像を見つけ出せます。

閲覧制限と認証機能

閲覧制限とは、データの種類によって閲覧できるユーザーを限定できる機能です。たとえば、財務に関するデータや新製品の情報などを誰もが閲覧できるようにしていると、情報漏洩のリスクが高まります。

そのため、一部の社員だけが閲覧できるようにするための機能です。また、認証機能を搭載することでよりセキュリティ面を強化しているものもあります。

情報収集(RSS)

エンタープライズサーチは、社内外のデジタルデータ以外に、通常のWebサーチをすることも可能です。RSS機能は、頻繁に訪問するWebサイトの更新情報を配信してくれるもので、通知が来た時にだけ確認すればよくなり、効率的な情報収集が可能になるでしょう。

たとえば、競合他社の新商品情報や株価情報、自社が属する業界の最新情報などを更新しているWebサイトを登録しておけば、情報の収集漏れがなくなります。

エンタープライズサーチを導入するメリット

メリットイメージ

エンタープライズサーチの概要を見てきました。具体的に何ができるのかはわかったものの、導入によってどのようなメリットがあるのかについてはまだ、わからない点も多いのではないでしょうか。

ここでは、エンタープライズサーチを導入することで、企業にどのようなメリットがあるのかについて解説します。

効率的に企業内で情報共有できる

異なる部署が保有する情報でも簡単に検索できるようになるため、企業内での情報共有が効率的に行われるようになります。

たとえば、マーケティング部が販促企画を実施する際、過去に発売された商品の販売データを調べるには、営業部や販売部にある注文書や納品書などを閲覧しなくてはなりません。

以前であれば、それぞれの部署にある文書管理システムやファイルサーバーへログインしてから探す必要がありました。しかし、エンタープライズサーチを使えばそれぞれのシステムにログインする必要なく、瞬時に検索が可能です。

企業内の情報共有比較イメージ

ほかにも、財務部が営業部の領収書を検索できれば、わざわざ、領収書データのやり取りをする手間がなくなり、スムーズに精算業務を行えるようになるでしょう。

データ収集の時間を短縮できる

種類にもよりますが、エンタープライズサーチは、検索対象となるデータの保管場所に対し、事前にクローリングを行いすべてのデータを専用のサーバーにインデックスします。そのため、検索キーワードが入力されるたびに対象のデータ保管場所をクロールせず、瞬時に検索結果を表示することが可能です。

ペーパーレス化により、紙書類の多くはデジタルデータに置き換わりました。しかし、それでもまずどこに保管しているかを確認してから検索するため、求める情報を見つけるにはある程度の時間はかかります。エンタープライズサーチは求める情報を見つける時間を短縮できるため、業務効率化が可能です。

文書を新たにゼロから作成する際は、元になる情報の検索や構成を考えるために多くの時間を要します。そのため、過去に作成した文書を参考にして雛形として使用すれば作成時間を削減できます。ただ、参考とする文書を探すためにはある程度の時間を要します。探索しても結局みつからず、探した時間がムダとなってしまうケースもあるでしょう。

エンタープライズサーチを使用すれば、参考となる過去の文書を探し出す確立がアップし、検索する時間も大幅にカットできます。

エンタープライズサーチの導入前と導入後について、以下の条件を想定のもと、作業者一人当たりのデータ検索時間を比較したところ、1カ月あたり15時間を削減できることがわかりました。

・条件
① 文書作成の平均数=1件/1日
② 文書捜索時間の平均=40分/1件
③ システム導入後の文書を検索する平均時間=1分/1件
④ 目的の文書が見つかった際の文書を再作成する平均時間=40分/1件
⑤ 目的の文書が見つかる確率=60%
⑥ システム導入後に目的の文書が見つかる確率=80%
⑦ 目的の文書が見つからない際の文書を再作成する平均時間:60分/1件
・導入前の計算
①✕(② + ④ ✕ ⑤+⑦ ✕(1-⑤)=88分/1日
・導入後の計算
①✕(③ + ④ ✕ ⑥+⑦ ✕(1-⑥)=45分/1日
・1日あたりの1人の従業員における時間削減効果
(導入前)88分 -(導入後)45分 = 43分/1日

以上のように、1日あたりの1人の従業員における時間削減効果は「45分」と算出できました。1カ月(20日間の稼働)で換算すると、15時間削減できることになります。

・1ヵ月あたりの時間削減効果
45分(1日)✕ 20日=15時間

さらに、従業員の人数をかけ合わせることで、さらなる検索時間の削減効果を見込めます。

DXの推進につながる

DX(デジタルトランスフォーメーション)とは、デジタル技術の活用によってビジネスに変革を起こし、競合に対する競争優位性を確保するものです。

DXを実現させるためのポイントはいくつもありますが、なかでも重要なポイントとして、データ活用の効率化が挙げられます。

日々、増え続けるデータを効率的に活用するためのツールやシステムは、たとえばワークフローシステム、MA(マーケティングオートメーションツール)などさまざまです。しかし、もっとも身近で利用しやすいものといえば、検索システムではないでしょうか。

特にエンタープライズサーチであれば、迅速な検索により、データ収集を短時間で行えるため、分析や実行にかける時間もつくれ、DX推進に大きく貢献します。

セキュリティ対策につながる

データ活用の効率化を行ううえで、誰もが簡単に求めるデータを見つけ出せることは重要なポイントです。その半面、誰もが簡単にデータにアクセスできるようになれば、情報漏洩のリスクも増大します。

セキュリティ対策をしながら、データ活用を進めていくには、誰もがアクセスできるデータと閲覧者を限定したデータをしっかりと分け、適切に管理しなければなりません。エンタープライズサーチは閲覧者権限を細かく設定できるのに加え、認証機能も使えるためデータの適切な管理が可能です。

システムの導入が容易

導入に関する設定や事前準備が煩雑なシステムは、どれだけ便利であったとしても、慎重にならざるを得ません。また、導入後の使い勝手や管理に手間がかかってしまうのも、導入に二の足を踏んでしまう要因の一つです。

しかし、エンタープライズサーチは、事前に準備するものはシステムを設置するための専用サーバーぐらいで、あとは特に用意するものもありません。また、設定も各ストレージにアクセス権を与える以外には難しい作業もないため、比較的容易に導入が可能です。

また、検索自体は誰もが行う行為のため、改めて使い方の研修を行う手間が少なくて済むのもエンタープライズサーチのメリットといえます。

エンタープライズサーチを導入するデメリット

エンタープライズサーチの導入により、データの検索精度を高めるため、チューニングを継続的に行う必要があることはデメリットと言えます。

社内に蓄積されるデータは、日を追う毎に情報量が増えていきます。従業員が使いやすいよう、また誤った方法で使用しないよう管理しなければならず、社内においてこれらを管理する時間や手間をデメリットと感じることもあるでしょう。

しかし、エンタープライズサーチを使用するルール作りや、検索元の整備をしっかり意識することでデメリットを改善できます。たとえば、データ格納先のカテゴリ分けや、更新日や属性、ダグ付けなどによって情報を体系化し、社内ルールとして徹底していくと効果的です。

また、社内における情報管理の課題を洗い出し、それらを改善できるツールを選定することも重要です。操作性に優れたシンプルなUI、導入から運用までをサポートしてくれるサービスを選定することでデメリットを軽減できます。

エンタープライズサーチツールの選び方

エンタープライズサーチのメリットを理解したところで、実際に導入する際にチェックすべきポイントを解説します。

エンタープライズサーチツールの選び方

扱える情報量と情報の種類

種類により、扱える情報量や情報の種類が異なります。たとえば、自社で扱うデータが数十TB(テラバイト)もあるのに、数百GB(ギガバイト)しか扱えないものではあまり役に立ちません。

また、圧縮されたファイルは中身の詳細な検索ができないものもあるため、対応ファイルが何か、対応していても制限があるファイルは何かを確認します。

自社で扱う情報量や情報の種類をしっかりと確認したうえで、適応したものを選択するようにしましょう。

機能や操作性

機能や操作性も重要な選定ポイントです。操作性に関しては、基本的に検索システムのため、それほど大きな違いはありませんが、インターフェースはそれぞれ独自のものとなっています。可能であれば、試用版やデモを使ってもっとも使いやすいと感じるものを選択するとよいでしょう。

機能に関しては、絞り込み、あいまい語、サムネイル、画像・動画・音声検索などが搭載されているかいないかで使い勝手も大きく変わります。これも自社にとってもっとも必要な機能は何かを検討したうえで選択してください。

導入費用・保守費用

エンタープライズサーチの利用料は、買い切り型もしくはサブスクリプション型のどちらかです。サブスクリプション型のほうが導入費用は抑えられますが、長期的に使うと買い切り型のほうが安くなる場合もあるので、予算に合わせて検討してください。

また、導入費用が安くても保守費用が高いと万が一、トラブルが発生した際に思わぬ費用がかかってしまいます。導入費用だけで見るのではなく、導入支援や保守費用などアフターフォローがしっかりしているかどうかで選択するほうが、結果として費用を抑えた運用が可能です。

セキュリティ対策

閲覧制限や認証機能があるのはもちろん、どれだけ細かい設定ができるのかどうかをチェックしましょう。

簡単なパスワードだけで閲覧できてしまうようでは不安が残りますが、あまり厳重過ぎても使い勝手が悪くなります。情報漏洩リスクを減らしつつも使い勝手が良く、柔軟な設定ができるものの選択がポイントです。

エンタープライズサーチツールの導入事例

ここでは、エンタープライズサーチツールの導入事例を紹介します。

丸紅情報システムズ

丸紅情報システムズでは、社内ポータルサイトによってさまざまな情報を集約し、ファイルサーバーにも多くの情報が蓄積されていました。既存の検索システムの検索対象はポータルサイトに限定されていたため、ファイルサーバー内の情報を探し出す際はファイル名でしか検索できず、時間がかかっていたのです。

エンタープライズサーチツールの導入後、全文でのキーワード検索が可能なことから、これまで検索しにくかった資料も見つけられるようになりました。検索結果画面では、ファイルの中身を画像で縮小表示されるため、どんな内容なのかを一目で確認できるようになったのです。ファイルを開く手間を省けたことで、短時間でデータへアクセスできるようになりました。

また、1台のサーバー構成で導入できたことで、機器の調達コストを抑えられ、運用管理の効率化などの効果も得られました。

再春館製薬所

時代の変化とともに、顧客との接点が多岐化され情報量が増加し、既存の情報検索の仕組みでは目的の資料が探し出せず、情報整理に時間がかかるという課題がありました。コールセンター内における紙運用では、2重運用の管理やノウハウの属人化などの課題も抱えていたのです。

エンタープライズサーチツールの導入により、必要な情報を迅速に引き出せるようになり、通話中に顧客を待たせることなく回答できるようになりました。

また、紙ベースでの運用から一新し、何冊ものファイルを保管する必要もなくなり、必要な情報を素早く探せるようになりました。資料を登録する際、特別な手順も必要ないため、社員の負担にならない程度の文書管理ルールを適用するだけで済むようになったのです。

エンタープライズサーチで効率化をはかろう

エンタープライズサーチとは、企業が保有するさまざまなデジタルデータを保管場所を意識せず一括で横断検索できる検索システムです。

多くの企業がペーパーレス化により、紙資料からデジタルデータへと移行を進めています。しかし、ペーパーレス化がゴールとなってしまい、管理が十分ではなく、求めるデータを見つけるのに時間がかかるケースは少なくありません。

デジタルデータを瞬時に検索し、デジタルデータ活用の効率化を実現するエンタープライズサーチは、これからの企業になくてはならないシステムといえるでしょう。

ただ、エンタープライズサーチはすでに多くのベンダーから提供されているため、自社に合うシステムを選択するのは容易ではありません。そこで、AIsmileyでは、さまざまなエンタープライズサーチを紹介しています。導入の検討をされている際は、ぜひ、参考にしてください。

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AIsmiley編集部

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