AIでデザインの仕事はどう変わる?デザインAIの事例とサービスをご紹介
最終更新日:2024/02/07
AI(人工知能)が幅広い領域で浸透する中で、デザイン分野においても「デザインAI」の進出が始まっています。現在はパッケージデザインやWebサイト制作などで活躍するデザインAIによって、デザイナーの仕事はどう変わるのか気になる方は多いでしょう。
今回は、デザインAIの事例とサービスを交えて、デザインにおけるAIの活用について紹介します。また、デザイナーの仕事がAIによってどう変わるのか、デザインAIができることなども解説しています。デザインAIの導入や活用を検討している方は、ぜひお読みください。
AIの活用事例について詳しく知りたい方は以下の記事もご覧ください。
AI・人工知能の利用例を解説!機械学習を活用した身の回りの実用例
デザインAIとは
デザインAIとは、デザイン分野にて活用されるAI(人工知能)機能のことです。AIが持つディープラーニングの精度向上と並行して、AIが応用される範囲が広がり、デザインというクリエイティブ領域にもAIの自動化機能や代替作業が可能になりました。
例えば、あるテキストを元に自動で画像やイメージを生成するツールや、大量のデザインデータから用途に合ったパターンを瞬時に提案する機能などが挙げられます。スマホに採用されている顔認証システムも、画像認識というAI機能を用いています。
他にも、画像編集やロゴ制作、Webサイト制作などにデザインAIが採用されています。近年は、動画編集や3D設計などにも導入されており、デザインAIが活躍するシーンは今後さらに増えていくでしょう。
デザインAIが活用する3つの機能
デザインAIでは、クリエイティブに関するさまざまなAI機能を担うことが可能です。ここでは、デザインAIで活用されている代表的な3つの機能について解説します。
- 画像認識
- 予測・推論
- 自然言語処理機能
画像認識
昨今多くのシーンで活用されているのが、「画像認識」機能です。画像認識機能は、写真やイラストなどから特定の対象を判別・分類する機能のことで、ディープラーニングにより大幅に進化してきました。
デザインAIは、画像加工ツールでのトリミングや境界線の認識、色の区分けといった作業を実行します。画像を瞬時にデータ化できるAIの機能により、正確さが求められる画像制作での工数や労力の節約につながります。
また、二次元の画像だけでなく、テキスト情報からの画像出力も可能です。近年では、動画や3Dデータへの応用も増加しています。
予測・推論
デザインAIでは、AIが得意とする「予測・推論」機能も重要視されています。AIの予測・推論機能とは、ディープラーニングを用いて大量のデータを学習・分析し、未来予測に活用する機能です。過去のデータを用いた将来予測と、過去の事象が将来再度発生する可能性を計る予測という2つの役割があります。
デザインの分野において、大量のデザインの中から特徴や共通点、用途に合ったモデルなどを抽出する際にデザインAIが役立ちます。ユーザーから好意的な評価を得ているデザインや、トレンドの変化に応じたモデルの提案も可能です。
デザインというクリエイティブの場にAIを持ち込み、両者を組み合わせることで理論的な予測が得られ、一定の結果が見込めます。
自然言語処理機能
AIの「自然言語処理」機能とは、人間が使う言葉(自然言語)を、類似表現や類義語などを含めて認識・解析する機能です。AIが大量のデータを学習し、言語の使用パターンを判断します。
近年では、まるで自然言語の意味を理解しているかのように、人間と同じように使いこなすレベルまで進化を遂げています。
デザインAIでは、単語の意味を瞬時に判断できるため、過去のデータからデザイン事例を探すのにも役立ちます。
AIはデザイナーの代わりになるのか?
デザインAIの登場と浸透により、従来のデザイナーの仕事をAIが代替することが可能です。一方で「デザイナーの仕事がなくなるのでは?」という不安の声も出ています。
結論から言えば、デザインAIが人間のデザイナーの代役を完璧にこなせるわけではありません。デザインAIのできること・できないことを理解した上で、役割分担をおこなうことができれば、企業にとってもデザイナーにとってもメリットがあります。
例えば、デザイナーが担う業務を、部分的にデザインAIに任せることで、デザイナーがクリエイティブ活動に集中しやすい環境を作ることができます。データ処理など時間や手間のかかる作業は、AIが得意とする分野であり、短時間で大量のデータを正確に扱うことが可能です。
デザイナーは、生まれた時間の余白で、人間にしか担えない感情や心理を含むクリエティブ面にエネルギーを費やせます。
AIがより身近になっていく社会で、デザインAIとデザイナー両者がお互いの強みを組み合わせていくことが大切です。そのために、デザイナーはAIを含む最新テクノロジーにアンテナを張っておく必要があるでしょう。
デザインAIのメリットとデメリット
ここで、デザインAIのメリットとデメリットについて解説します。デザインAIの導入によって、さまざまな利点が得られますが、一方でデメリットもゼロではありません。両方を理解した上で最適なデザインAIシステムを採用することが大切です。
デザインAIのメリット
デザインAIのメリットとして、下記4点が挙げられます。
- デザイナーの雑務が削減できる
- 大量のデータ処理・分析が短時間で正確に実行できる
- “人間しかできない”デザイン業務に集中できる
- デザイン関連のコスト節約が見込める
デザインAIを導入する最大のメリットは、デザイン周辺の雑務を削減できる点です。AIが得意とする短時間での大量データ処理や、HTMLやCSSなどのコーディングを一任してしまうことで、デザイナーはクリエイティブに集中できます。時間とエネルギーを使えるため、自分らしい個性の表現を磨くことが可能です。
デザイナーやデザイン制作会社に外注する場合、ロゴ制作は安くて約2万円、Webサイト制作なら最低5万円前後かかります。デザインAIサービスの中には一部無料でロゴ制作やWebサイト制作を依頼できるものもあり、デザイン制作にかかるコストを節約できる可能性は高いといえるでしょう。
デザインAIのデメリット
一方で、デザインAIのデメリットとして、下記項目が考えられます。
- ゼロからイチを創造できない
- 感情や心理、倫理観など”人間らしい”判断基準はない
- 導入後の継続的な学習が必須
デザインAIはデータを元に判断するため、何もないところから何かを生み出すことはできません。また、人間が持つ感情や心理、倫理観といったものが必要とされる場面では能力を発揮しにくいでしょう。ユーザー心理を汲み取るマーケティングなどは”人間の担当範囲”です。
また、デザインAIは導入して終わりではなく、適切に運用するための教育や業務フローの見直しも必要となるでしょう。
デザインAIの活用事例3選
ここで、実際のデザインAIの活用事例を紹介します。すでにデザインAIによるプロダクトデザインやWebデザインによって、製品開発に成功している企業は国内にも存在しています。課題解決や業績向上など、目的に合ったデザインAIの導入方法を考える際に、ぜひお役立てください。
カルビー
大手企業カルビーでは、ポテトチップス「クランチポテト」にAI評価システム「パッケージデザインAI」を採用しました。キャッチフレーズの「最堅食感」を効果的に表現することに注力し、パッケージデザインをリニューアルした結果、売上は1.3倍増(カルビー社調べ)にのぼります。
バリバリという食感やしっかりとしたチップスの堅さを伝えるために、5つのパッケージデザイン案をデザインAIで比較。ユーザーの目線を可視化したヒートマップや、好感度の高さをデータにしました。調査結果とデザインを組み合わせてパッケージデザインを決定、販売したところ、売上も伸びを見せています。
アサヒグループホールディングス
アサヒグループホールディングス株式会社は、株式会社Cogent Labsと「AIクリエーターシステム」を共同開発しました。
2020年より試験運用が行われているデザインAIシステムは、コンセプトや素材などの情報からデザイン案を作り出す機能と、デザインの良し悪しを数値化する機能という2つを主軸にしています。飲料食品の特長だけでなく、ユーザーの好みやスタイルも汲み取り、パッケージとして完成させることが可能です。
ディープラーニングを活用することで、AIが優良なデザインデータから共通点を見出し反映することで、ユーザーの購買意欲の刺激につながっています。最新のトレンドを反映しつつ、人間では思いつかないような独創的なパッケージデザインの生成も可能です。
より多くの選択肢を使ったテスト販売と検証を通して、最適なパッケージデザインの実現が期待できます。
オルビス
大手化粧品会社のオルビスでは、スキンケアラインのブランドLP(ランディングページ)制作にデザインAIを採用しました。
30代女性をターゲットとしたエイジングケアブランドのWebサイトを作るにあたって、AIによる自動LP制作ができる「AIR Design」を利用。結果、制作時間の短縮化とページのCVR(コンバージョン率)の1.6倍増を達成しています。デザインAIによって、LPの制作からLPの効果検証までを迅速に実行できました。
一般的なLP制作はデザイン会社やデザイナーに依頼することが多く、最短でも1ヶ月ほどを要します。デザインAIなら2分の1から3分の1の期間でLPを制作でき、実際にオンラインに公開した後の検証と改善もスピーディに実行可能です。
デザインAIのサービス6選
ここからは、デザインAIによるサービスを6つ紹介します。先述した製品パッケージデザインやWebサイト制作の他にも、デザインAIによるサービスは多数登場しています。自社や業界に合った使い方を検討する上で、ぜひ参考にしてください。
パッケージデザイン
パッケージデザインAI
「パッケージデザインAI」は、株式会社プラグが開発したパッケージデザインのAIシステムです。先述のカルビーの他、ネスレ日本や森永乳業など、国内の大手食品メーカーを中心に導入されています。
590万を超える学習データを元に、約10秒ほどでターゲット層に対するパッケージデザインの好意度を5段階スコアでAIが判定します。また、パッケージでユーザーが最も注視する箇所のヒートマップを作成し、デザイン案の修正に役立つデータを提供してくれます。
デザイン案の生成も可能で、1時間で約1,000ものパッケージデザインを提案してくれます。時間短縮とコスト削減が期待できます。画像単位の使い切りプランと、サブスク型の使い放題プランの他、2ヶ月間の無料お試しプランも選べます。
AIクリエーターシステム
「AIクリエーターシステム」は、アサヒグループホールディングス株式会社と株式会社Cogent Labsが共同開発したデザインAIです。
画像素材やコンセプトとなるキーワードをAIに読み込ませてデザインを作る「デザイン生成システム」と、生成されたデザイン案を評価、数値化する「デザイン評価システム」という2つの機能で構成。組み合わせることで、デザイン案の採点から高評価デザインの採用までをAIが担います。
3,000枚ものテストデザインを約300人のデザイナーが評価したデータをAIに学習させており、”人間寄り”の評価をAIが出すことに成功しています。
Webサイト・LP制作
WiX ADI
「WiX ADI」は、Webサイト制作サービスWixで採用されているデザインAIです。ADI(Artificial Design Intelligence)により、ユーザーの要望に最適なWebサイトの構成を提案します。
Webサイトの目的や用途などに関する質問に答えて、500以上あるテンプレートから好みのものを選択すると、AIが自動でサイトを作成。Wix内の無料素材を使ってアレンジし、必要なテキストを入力すればWebサイトが完成します。
HTMLやCSSなどの専門知識は不要。管理画面からレイアウトや配色の変更も数クリックで行えます。ノーコードでプロのデザイナーに匹敵する本格的なWebサイトを立ち上げることが可能です。
AIR Design
「AIR Design」は、株式会社ガラパゴスによるWebサイトデザイン制作AIシステムです。WebサイトやLP、バナー、動画といったWebコンテンツをAIが作成します。
デザイン専用のソフトやツールを使うことなく、オンラインマーケティングに必要なコンテンツを制作可能。先述のオルビスをはじめ、上場企業から優良ベンチャー企業まで500社以上への導入実績があります。
AIのデータベースには、インターネット上に存在する全世界の画像やテキスト、レイアウトなど膨大な要素が蓄積されています。制作物のイメージや必要情報を入力し、AIが提案するフォントや配色、構成などを選ぶだけで、複数のデザイン案を取得できます。
ロゴ制作・線画自動着色
Tailor Brands
「Tailor Brands」は、企業や店舗のロゴマークをAIが自動で作成するサービスです。現在日本語には対応しておりませんが、英語など8ヶ国語で利用できます。企業名と業界、会社の雰囲気などの簡単な情報を入力し、関連キーワードや好きなロゴのスタイル、フォントなどを選択するだけで、スピーディに複数のロゴマークを制作してくれます。
独自のロゴを作り出すだけでなく、具体的な利用方法についても提案してくれる点が便利です。デザインの知識がなくても、オンライン上のブランディングやマーケティングに適したロゴを手軽に制作できます。
2014年の創立以来、2018年までに累計4,500万以上のロゴを手がけており、今後の展開に注目が集まっています。
Petalica Paint
「Petalica Paint」は、ベンチャー企業の株式会社Preferred Networksが開発した自動着色サービスです。使ってアニメや漫画の大量なデータを学習したAIが、ユーザーがアップロードした写真や線画イラストを判別して、自動的に着色します。
色付け機能は、淡いスタイルとコントラストの強いもの、グラデーション込みなどから選択可能。また、ラフスケッチを自動で線画に仕上げてくれる機能や、部分的な色合いの調整機能も備えています。
クリエイターの現場作業である着色工程をAIにお願いする、という業務フローの変化が業界に衝撃を与えました。日本が世界に誇るアニメ産業とも相性が良く、世界的に注目を集めるデザインAIの1つです。
デザインにAIを活用しよう
デザインAIの登場は、従来のAIでは難しいと言われてきたクリエイティブの領域にも、AI技術を活用できることを証明しています。デザイナーやクリエイターの仕事を部分的にAIが担うことにより、業務の効率化や負担軽減、コスト削減といったメリットが見込めます。
ただ、デザイナーの仕事をAIが完璧に代われるわけではありません。感情や心理といった人間らしさの扱いが難しいAIと人間が、共存・進化していくことがクリエイティブ業界に求められていると言えます。記事内で紹介したデザインAIサービスや企業の導入事例を参考に、社内におけるデザインAI活用方法を検討しましょう。
AIsmileyでは、デザインAIをはじめAI製品・サービスを一覧で比較できる資料を無料配布しています。各ツールの利用料金やトライアルの有無などを、画像認識やAI予測といったジャンル別にまとめています。デザインAIツールの比較検討にぜひお役立てください。
AI資格を保有したコンサルトによる無料相談も承っております。まずはお気軽にご相談ください。
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AI・人工知能とは?定義・歴史・種類・仕組みから事例まで徹底解説
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