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ACP(Agent Communication Protocol)とは?

最終更新日:2025/12/26

ACPとは?

チームで業務を進める中で、複数のAIエージェントを活用して効率化したいものの、うまく連携できず悩んでいる人はいませんか?

近年のAIは質問に答えるだけの存在から、自ら考えて行動するAIエージェントへと進化し、さまざまな業務を自律的にこなせるようになってきています。

この記事では人間とAIの分業をより円滑にし、現場の人手不足を支える仕組みとして注目されるACPについて解説します。

ACP(Agent Communication Protocol)とは?

ACPとは複数のAIエージェント同士が共通のルールで情報をやり取りし、協力してタスクを進めるための通信規約(プロトコル)のことです。

私たちの身近には、用途ごとにさまざまなプロトコルが存在します。

プロトコルの名称 役割
ACP AIエージェント間の通信
HTTP Web通信
SMTP メール送信
FTP ファイル転送
MIDI 音楽機器の通信

メーカーや仕組みが異なるAIエージェント同士でも、ACPを使うことで情報を交換し役割分担をしながら協力して作業を進められるようになります。

参考:Github「ACPがLinux Foundation #5の下でA2Aと提携」

※2025年3月にIBM Researchによってリリースされ、2025年8月26日にLinux Foundation の下でA2A(Agent2Agentプロトコル)と正式に統合されましたが、技術基盤としてACPの理解は不可欠です

ACPとMCPの違い

MCP(Model Context Protocol)とはプロトコルの1つで、AIモデル(LLM)と外部のデータソース・ツール・アプリケーションを、安全で統一的な方法で接続するために用いられます。

従来AIとシステム連携をするには毎回APIを個別に実装しなければならず、認証方式、データ形式、セキュリティ設計も統一されていませんでした。

しかしMCPを使用することで、AIを用いて以下のようなことができるようになったのです。

  • 社内DBや業務システムへのアクセス
  • ファイルサーバーとの連携
  • SlackやNotionなどSaaSとの接続
  • API経由での業務操作
  • ツール実行結果の安全な受け渡し
  • 監査ログやアクセス制御の統一

ACPはAIエージェント同士の連携を目的とした通信規格であるのに対し、MCPはAIモデルとデータソース・業務システム・ツールなど外部環境との接続を目的とした通信規格です。

連携する対象は異なるものの、業務の自動化や効率化を実現する基盤技術として共通する役割を担っている点が特徴的だと言えるでしょう。

ACPとA2Aの違い

A2A(Agent-to-Agent)とは、複数のAIエージェント同士が共通のルールに基づいて情報をやり取りし、協力してタスクを進めるためのプロトコルです(2025年4月にGoogleが公開、Linux Foundationでプロジェクト化)。

一方のACP(Agent Communication Protocol)は、IBMのBeeAIを起点に整備された、HTTPネイティブでRESTfulなインターフェースを特徴とするエージェント間通信プロトコルです。

ACPチームは技術・知見をA2Aへ移しながら、移行ガイド等で既存ユーザーの移行を支援するとしています。

2025年8月、ACPはでA2Aに合流することが公表されていますが、これはAIエージェント同士の通信仕様を一本化し、相互運用性や拡張性を高めることを目的として行われたものです。

ACPの開発を監督してきたIBM Researchのインキュベーションディレクター、ケイト・ブレア氏は「ACPで培ってきた資産と専門知識をA2Aに取り入れることで、AIエージェントのコミュニケーションと協働のあり方に、より強力な統一標準を構築できる」と語りました。

ACPの開発チームは技術と専門知識を直接A2Aに提供し、ACPユーザーがA2Aにスムーズに移行できるようサポートすることとなっています。

この統合によりAIエージェント同士の連携技術はさらに高度なものとなり、新たなビジネスモデルの構築や業務効率化に貢献できるのではないでしょうか。

参考:Github「ACPがLinux Foundation #5の下でA2Aと提携」

ACPをビジネスで活用するメリット

ACPをビジネスの場で活用するメリットは以下の通りです。

項目 概要
業務自動化の促進 複数のAIエージェントが役割分担して、調査・分析・資料作成・報告などを連携して実行できるため、人が行うタスクを減らせる
業務の属人化を解消できる 業務を行う過程をAIエージェント間の通信として設計できるため、担当者個人のスキルに依存しない業務設計が可能
部門間の連携を効率化できる 営業エージェント、経理エージェント、マーケティングエージェントなどを連携させ、部門を横断して情報を自動連携できる
ミスの削減ができる 情報伝達を人を介さずにAIエージェント同士で行うため伝達ミスや認識のずれが起きにくくなる
AIの活用規模を拡大できる チームで少数のAIエージェント同士の連携から開始し、慣れてきたら全社的に拡大するといった対応が可能
運用管理を一元化できる AIエージェント間の通信をルール化できるため、管理・監視・ログ収集を統一的に行いやすい

ACPを導入することで、業務の属人化やセクショナリズムなど企業が抱えやすい課題をシステムレベルで解決しやすくなるのが大きなメリットだと言えるでしょう。

ACPをビジネスで活用するデメリット

ACPをビジネスの場で活用するデメリットは次の通りです。

項目 概要
導入の難易度が高い 複数のAIエージェントの役割分担や通信設計を検討する必要があり、導入の難易度が高い
運用ルールの整備が必要 AIエージェントの権限管理者の指名、エラー時の対応ルールなど事前に運用ルールを策定する必要がある
AIエージェントの選定ミスをすると効果が出にくい 業務内容や現場のニーズに合わないAIエージェントを選ぶと、連携しても予想した効果が出にくい

しかし上記のデメリットは計画的・段階的に導入を進めることで解消できます。

事前にACPについて理解を深め現場のニーズをヒアリングした上で、自社に合った形での導入を推進しましょう。

ACPの使い方

ACPの使い方を、3つのステップにわけてご紹介します。

ACPの始め方

ACPでは、AIエージェント同士が処理を依頼したり結果を受け取ったりする際にHTTPリクエストを使って通信します。

HTTPリクエストとは、インターネット上で情報の送受信を行うための通信手段の1つです。

これを踏まえACPの始め方として、AIエージェントを作成して実行する手順を見ていきましょう。

①プロジェクトを初期化する

画像出典:Agent Communication Protocol「クイックスタート」

最初に my_acp_project というフォルダ(プロジェクト)を作り、その中でPython バージョンを 3.11以上に指定して初期化します。

これは、使うライブラリやコードが最新のPython機能(例えばasyncの新機能など)に依存する場合があるため、互換性を担保するために重要です。

この後の作業は作成したフォルダの中で行われます。

②ACP SDKを追加する

画像出典:Agent Communication Protocol「クイックスタート」

次にACPの公式SDKをインストールします。

SDKとはSoftware Development Kit(ソフトウェア開発キット)の頭文字を取った言葉で、プログラムを作るときに必要な部品、説明書、便利ツールをひとまとめにしたセットのことを指します。

ACPの公式SDKはACPを使うためのスターターキットとも言える存在のため、インストールすることでACPがすぐに使える状態になるのです。

③エージェントを作成する

画像出典:Agent Communication Protocol「クイックスタート」

次に、HTTP通信とエージェントの仕組みが正しく機能しているかを検証するため、受け取ったメッセージをそのまま返す役割を持つ「エコーエージェント」を作成します。

@server.agent() を使うことで関数をAIエージェントとして登録でき、server.run() を実行すると、HTTP経由で呼び出せる状態になります。

④エージェントサーバーを起動する

画像出典:Agent Communication Protocol「クイックスタート」

エージェントとして登録した関数を、外部から呼び出せる状態にするためにサーバーを起動するステップです。

⑤エージェントが起動しているか確認する

画像出典:Agent Communication Protocol「クイックスタート」

本当にエージェントが起動していて、外から見えているかを確認するための工程です。

プログラムの世界では起動していると思っても実際にはエラーが出ているといったことがよくあるため、このような形で動作確認をしておくのが望ましいと言えるでしょう。

⑥HTTP経由でエージェントを実行する

画像出典:Agent Communication Protocol「クイックスタート」

HTTP通信を使って試しにエージェントに仕事を依頼し、本当に動くエージェントなのか確認するための工程です。

⑦ACPクライアントを作成する

画像出典:Agent Communication Protocol「クイックスタート」

クライアントとは、AIエージェントに対して処理を依頼するための操作用プログラムです。

ACPクライアントを作成することで、AIエージェントをHTTP経由で呼び出し、指示を送るための専用プログラムが完成します。

⑧ACPクライアントを実行する

画像出典:Agent Communication Protocol「クイックスタート」

作ったクライアントが正しく動くかを確認する最終確認工程です。

工程1つ1つをなぜそのような操作が必要かを確認しながら行うとスムーズにACPが始められるでしょう。

参考:Agent Communication Protocol「クイックスタート」

利用可能なAIエージェントを探して実行する

利用可能なAIエージェントを探すには、主に次の2つの方法があります。

方法 概要 向いている場面
REST API
  • curl やブラウザからURLにアクセスする
  • 確認・テスト用
  • AIエージェントの存在確認
  • 動作チェック
  • 初期導入の検証
  • 開発者以外の確認
Python SDK
  • Pythonプログラムから取得する
  • 本番・サービス開発用
  • システム連携
  • 自動処理
  • 実行結果の保存
  • 複数のAIエージェント連携

REST APIはプログラミング初心者向けの方法、Python SDKは中級者以上向けの方法と考えるとわかりやすいでしょう。

一方ACPには次の3つの実行モードがあります。

モードの種類 概要 向いている用途
同期実行(Synchronous)
  • 処理が終わるまで待って結果を受け取る
  • エコーのテスト
  • 簡単な質問応答
  • 単発処理
非同期実行(Asynchronous)
  • すぐに実行IDが返り、後から結果を取得する
  • 大量のデータ処理
  • 分析系タスク
  • 長時間ジョブ
ストリーミング(Streaming)
  • 処理途中の結果がリアルタイムで返ってくる
  • チャットボット
  • 文章生成
  • 進捗表示

AIエージェントを探す方法や実行するモードを実務に応じて変化させられるのが、ACPの大きなメリットだと言えるでしょう。

参考:Agent Communication Protocol「ディスカバリー・アンド・ラン・エージェント」

複数のエージェントを連携する

ACPでは、複数のAIエージェントを役割・順番・処理方法ごとに組み合わせる設計のテンプレートである「エージェント連携パターン」を用いて連携をスムーズにしています。

主なエージェント連携パターンには以下のようなものがあります。

項目 概要 向いている用途
プロンプトチェーン(Prompt Chaining) AIが順番通りに仕事をするパターン 工程通りでないと次に進めない業務
ルーティング(Routing) AIが受付になって仕事を振り分けるパターン 内容によって処理が変わる業務
並列処理(Parallelization) AIが同時に仕事をするパターン 順番にこだわらず、効率を重視した業務
階層型(Hierarchical) 司令塔のAIが部下AIを動かすパターン 考えるAIと作業するAIを分けたい業務

ACPでは、AIエージェントにさせたい業務に応じて最適な連携方法を選べるのが大きなメリットです。

参考:Agent Communication Protocol「コンポジション・エージェント」

ACP導入時の注意点

ACPをスムーズに導入したいなら、以下のポイントを意識しましょう。

  • 事前にどのAIエージェントに何をさせるか決めておく
  • 小規模な構成から始める
  • エラー処理を必ず実装する
  • AIエージェント名と役割を明確にする
  • ログと実行履歴を記録する

一度で完璧な連携を求めるのではなく、運用しながら少しずつ改善していくのがおすすめです。

まとめ

ACPとは、複数のAIエージェント同士が共通のルールで情報をやり取りし、協力してタスクを進めるためのプロトコルのことです。

記事内でも触れた通り、ACPは2025年8月に「A2A(Agent-to-Agent)プロトコル」へと統合されました。しかし、これはACPが役割を終えたということではありません。むしろ、ACPが築いた技術基盤がLinux Foundationという公的な管理下に入り、「特定のベンダーに依存しない世界標準規格」へと進化したと捉えるべきでしょう。

今後のAI活用は、「人間が個別のAIツールを使い分ける」時代から、「AIエージェント同士が連携し、自律的にプロジェクトを完遂する」時代へと確実にシフトしていきます。

2026年以降、業務システムやSaaSが「A2A対応」であることが当たり前になる世界がやってくるでしょう。その時に備え、今のうちからACPを通じて「エージェント連携」の概念や設計思想を理解しておくこと。それこそが、次世代のビジネス自動化において競合他社と差をつける決定的なポイントになるはずです。

まずは小さな業務フローから、AI同士がつながる可能性を試してみてください。

アイスマイリーでは、AIエージェントのサービス比較と企業一覧を無料配布しています。課題や目的に応じたサービスを比較検討できますので、ぜひこの機会にお問い合わせください。

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